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──青い空の下。
──草原の中。
──逆光の視界。
──一人の少年。
──差し出された手。
──それを掴む手。
──言葉を交わす。
「俺はミナト。助けてくれてありがとうな」
立ち上がって逆光の視界が晴れた時、黒髪の少年の姿が顕現した。
見た目は声の通り少年。
背丈はそれほど高くなく小さい部類に入るのだろう。
子顔なため比率は悪くない。
顔は男らしいというより女の子と言ったほうがまだ近いであろう。
かわいいとよく言われそうな顔だった
「僕はジウン。よかったら一緒にパーティを組まない?」
それを聞いて俺は戸惑う。
「いいのか?──こんな雑魚に逃げ回ってたくらいだぜ?」
少年は再度笑い─ ─
「一緒にプレイした方が楽しいからね──」
と彼は純粋に言ったのだ。
俺がパーティ申請しようとシステム画面を開こうとするが、どこにあるのか分からなくてもたついている間に彼から申請をしてきた。
「もしかしてチュートリアル省略したの?」
どうやらお見通しのようだった。
「ゲームの説明書とか見ないタイプなんだよね」
「僕の場合は最近のゲームにはチュートリアルが多いから説明書は読まないでチュートリアルだけはやるってタイプかな」
そんな事を話してる居るうちにパーティが結成された。
「パーティー名はどうする?」
「特に思いつかないな……」
「じゃぁ、プレイしていくうちにお互いの特徴も分かってくるだろうし、その時までお預けにしとこう か」
──となると。
今日限りのパーティーって訳じゃなさそうだな……。
これがジウンとの出会い。
彼は刀を片手持ちで戦う異様なプレイスタイルだった。
彼と一緒に戦うのはホントに楽しかった。
あまりの楽しさのあまりに、街に戻るのを忘れて永遠とダンジョンに篭る毎日だった。
βテストが始まって一週間が経ったある日の事。
「この扉って……ボス部屋じゃない?」
目の前に立ちはだかる大きな扉を指差しながら、ジウンが言った。
「だよな……。」
少し興奮した。
なぜならボスの情報を街で求める動きがあるからだ。
ゲーム開始から一週間経っても誰もまだ見つけられてない部屋。
みんな喉から手が出るほど欲しいはず。
ボス部屋までの道のマップデータを売るだけでも高値がつくだろうし、
その上ボスの情報を売る事でオーダーメイド防具に新調するくらいのお金が手に入るだろう。
興奮しないわけがない。
「どうする?」
「やる以外に選択支なんてあるか?」
「そうだね。でも気をつけて。さっきLv20になったばかりだから、デスペナルティもかなり上がってるはず。」
今ここで死んでしまえば、ここまで来るのに手に入れたアイテムもなくなってしまう可能性もある。
「だな……。死に戻りは極力しないで出来るだけ転移アイテムは惜しまないで使っていこう。」
「それじゃあ、開けるよ。」
そうジウンが言うと、扉をに力を入れる。
少しずつ扉同士の間隔が広がり──やがて最大の所まで達すると扉は動きを静止した。
「──入るぞ。」
少しずつ、慎重に、足を前に出す。
その空間は、とても一体目のボスが出てくるような雰囲気ではなかった。
如何にも物語のラストと呼べるような荘厳たる空気をかもし出す城の中だ。
中央の赤い絨毯を踏みしめ正面を見据える。
そこに──居た。
──二人。
俺とジウンが。
一瞬、判断が遅れたが、俺達の分身という事なのだろう。
その考えに至った時には目の前の俺は既に動きだしていた。
「ジウンっ!!俺の分身は俺が引き受けるから、お前の分身は任せたぜ!!」
「仕方ないから、任されてあげるよ」
これで背中は大丈夫。
後は目の前のこいつどう処理するかだな……。
まずは──《居合斬り》。
俺の得意技だ。
深く腰を落とし──一瞬で刃を引き抜く──!!
流石はボスと言ったところだろうか……。
俺の《居合斬り》を簡単に受け止めた。
しかしそこで俺の攻撃は終わらない。
《連斬》を発動。
──これなら通るはず!!
目の前の俺はそれすらも難無く防いだ。
一体どういう事だ?
攻撃はどうやら読まれるみたいだ。
もしもこの分身が本当に俺を参考にしているのなら。
下段からの切り上げ攻撃の後──フェイントをかけてからのバックスッテプで体制を整えるはず……。
俺は両手に握り締めた刀を二回持ち直し感触を確かめる。
──今だ!!
俺は奴との距離を最速で縮め、上段切りで攻撃を繰り出した。
突然での攻撃。
これなら相手も驚いて安全策に走るであろう。
すると奴は俺の予想どおり下段の切り上げで攻撃を防いだ後、攻撃をする素振りを見せたが、バックステップをした。
この瞬間を待っていた俺は奴のバックステップと同時に、もう一度前に踏み出して奴の胸元を狙い《一心突き》を発動した。
──決まった。
俺は心の中でそう確信した。
しかし 現実は非情である。
俺の放った《一心突き》は奴の刀で受け止められたのだ。
当然、こんな化物じみた芸当は俺にはやってのける事はできない。
つまり目の前に存在する奴は本物の俺より強いとい事実が分かってしまった。
どうしようもない力量の差。
それを実感したのだ。
しかし同時に疑問が生まれる。
目の前のこいつはこんなにも強いのにどうしてさっきの俺の上段切りに状況を立て直す手段を選んだのかという事だ。
先ほどの突き攻撃を止めるほどの実力の持ち主なら、わざわざ一旦下がってまで体制整える必要もなくそのまま俺に攻撃すれはいい話だ。
──この矛盾点。
この矛盾により俺はある一つの仮説を立てる。
俺は再び奴との距離を全力で詰め 、上段切りを繰り出した。
奴はさっきと同様に下段の切り上げで攻撃を防いだ後、フェイントをかけてバックスッテプを使い距離をとろうとした。
そこで俺はもう一度距離を詰めて──“突き”攻撃を繰り出した。
一心突きではない。
ただの突き攻撃だ。
だが俺の予想が正しければ、この攻撃は確実に通る。
なぜなら、目の前の俺は元を辿るとプログラムによって構成されたもので、それによりシステム内のどんな攻撃のほとんどを防ぐことを可能にしてるのであって、システム外の攻撃は反応できないからだ。
──どれほど俺を真似ようと。
──どれほど俺以上の反応速度があっても。
俺のシステム外の攻撃を避けるには限界が存在するのだ。
──次の瞬間 。
俺の刃は目の前の俺を貫いた。
これで──勝てる!!
「ジウン!!──システムアシストを使わなければ攻撃が通るみたいだ!!」
どうやらジウンも苦戦をしいられていたようだ。
ジウンのHPゲージが半分程削れていた。
「そういうことだったのか!!それならあとは大丈夫だよ!!」
十分後──ボス達にトドメを刺した攻撃は奥義でも無く、必殺技でも無い。
──ただの攻撃だった。
あけましておめでとうございます。赤砂糖です。
書き溜めがあと一話分になりました。
そろそろ書かないとと思ってはいるのですが、
もうすぐセンター試験なので更新控えます。




