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β時代のお話。
御巫 湊。
一通りこの人物のデスゲームの二年間を物語ってきたから、大体の事はわかるだろう。
──幽閉されて。
──ニートになって。
──性格が歪んで。
──落ちる所まで落ちた。
端的にまとめればこんな物だろう。
しかしその物語の中に《ジウン》と言う名の人物は登場しなかった。
それはまだ語られていないのだから──当然の事。
──彼の未だ語られていない過去。
β時代。
その一ヶ月間は彼がが閉じ込められた二年間よりも遥かに価値がある。
ほんの少しばかり──彼の過去を話すとしよう。
これは──俺の大切な一ヶ月間の回想だ。
これほど現実離れした光景を俺は見たことが無かった。
──それもそのはず。
これはゲーム内の仮想空間なのだから。
──Destiny Gate Online。
俺がβテスターに選ばれてから1ヶ月が経ち──ようやくログインをし、この地へ降り立つ事が出来たのだ。
「これが……仮想世界」
思わず呟いてしまうほどの光景だ。
長年人類が夢見た世界に俺は今立っていると思うと、やはり胸にこみ上げてくるものがあるな……。
──さて。
感心するのはいいが、それよりももっとやるべき事があるだろう。
今はとてつもなく刀を振り回したい衝動に駆られているのだから。
早く始まりの町を出てフィールドに引き篭もりたい気持ちが飽和状態になっていたのだ。
チュートリアルはすっ飛ばして、始まりの街から最速で抜け出す──。
──いつぐらいだろうか?
冒険心を忘れて部屋でゲームをする毎日を過ごすようになったのは──。
目の前に広がる草原には少年時代の忘れ物がそこに存在していたのだ。
「それじゃぁ、記念すべき第一戦──行ってみるとしようか!!」
──VSドンマナ。
見た目はキリギリス。
スライム相当なはずなのだが、初めての戦闘となると少し怖い物があるな……。
跳ねてアタックするだけの単純な攻撃なのに……
俺は──逃げ回った!!
怖い。あの変な真面目な顔でこっちに跳ねてくるが異様に怖い!!
しかも大きさが大きさなので、下手をするとあのゴキブリより生理的に受け付けない感があるのだ!!
この時。
後ろを気にしすぎため、俺は躓いて転んでしまった。
俺の記念すべき一戦が残念な結果になりそうになったその間際──。
──運命を変える出来事が起こった。
──単純な事なのだけれど。
──それで大きく変わってしまったのだ。
俺が攻撃を避けきれず受けそうになった時──。
眼の前の景色が二つに分かれた。
俺を追い掛け回したキリギリスはポリゴンが四散して視界が開けた時。
──少年と出会った。
「──怪我は無いかい?」
この時から──俺の中のDestiny Gate Onlineが始まった。
読んでくださりありがとうございます。赤砂糖です。
みなさんクリスマスをどのようにお過ごしでしょうか?
私は予備校に引き篭もっているだけです。
引き篭もっている間にもこの物語の展開をよく考えていたりします。
今回は新章導入ということで短めです。以上。




