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眼前に広がる光景は実に驚愕だった。
あれほど俺達を苦しませたドラゴン──《煉獄のダンゼル》がこんなにも容易く絶命してしまうのだから。
──水龍刀。
水の刃を自在に操る事ができる。
その威力は絶大だった。
しかし消費するスタミナも生半可なものではない。
節約する方法を考えないとだな。
──戦闘が一段落して。
後ろで見守っていたパーティがこちらに向かってきた。
「ありがとう、助かったよ。お礼を食事でもしようと思うのだがどうだ?」
と召喚術師が聞いてきた。
俺って考えてみればこの二年間ろくな物を食べてなかったからな……。
久しぶりに普通の料理を食べるのも悪くないか。
「そうだな。じゃあ、お言葉に甘えるとするよ」
──そんな事があったのつい先程の事。
「まずは自己紹介だね。このギルドのマスターのナガトだ。職業は《召喚術師》をやっている」
あの後、かなり大きなギルドハウスの中に入って現在パーティ真っ盛りである。
外見的特長を挙げると、黒いローブに身を包み、黒髪ときて全体的に黒である。唯一異彩を放っているのギルドアイテムと思われるシルバーネックレスが特徴的だ
「次は俺ね。サブマスターのロキだ。職業は《ランサー》。よろしく」
装備している槍が二本あることから双槍使いと予想できる。
マスターと同じように全員が黒の防具を装備している事からこのギルドでは黒がギルドカラーなのだろう。
「《アーチャー》のシヅキだ」
ダンゼルとの戦いの時、全ての矢を顔に命中させていた恐ろしい奴だったな……。
現在は弓を装備してないので、どういう奴か少し忘れていた。
「《魔法使い》のカムラだ。《風属性魔法》と《闇属性魔法》を得意としている。」
闇属性魔法!?
そんな属性なんてあるのか?
「もしかして、レアスキル持ちか?」
そう聞くと、微妙な顔をした。
「ん?知らないのか?今となっては《闇属性魔法》は条件を満たせばできるからそこまで珍しくないぞ?」
そういえば、俺の知識は二年前でストップしているんだった……。
「いやそうだったな。ソロプレイをしてたからつい忘れてたんだよ」
ここは誤魔化しとこう。うん。
「最期に俺だな……。《アサシン》のルシ……。」
俺の正面に居たのにも関わらず、全く気付かなかったわ。
戦闘の時何をしていたのかもあんまり覚えていないわ。
「これで全員なんだな。五人パーティとは珍しいな」
このゲームでは六人パーティが主流なので、そう口にした。
「まぁ、色々な……。こっちは全員自己紹介したんだ。次はお前の番だぜ」
そうだったな。これじゃあ失礼だし。
しかしなんと言ったらいいのやら。
とりあえず正直に言うべきなのだろう。
「俺の名前はミナト。職業は《エリートニート》をやっている」
──そう告げた途端。
全員が何言っているんだこいつ……とでも言いたげな視線を俺に向けた。
「それでは自己紹介が終わったところで、本題に入る」
俺がみんなに職業の事を説明した後──ギルドマスターのナガトが切り出した。
俺がニートだという事を知ってまだ動揺しているようにも見える。
「あぁ、そうだったな」
とサブマスターのロキが思い出したように言った。
「えーと、俺等のギルドは現在わけがあって、パーティが五人だ」
ほう。
「しかもこのパーティには近接を請け負うメンバーが居ない」
なるほど。
「つまり、俺等は現在困っているのだ。」
この時点でなにが言いたいのかは分かった。
「あのさ、回りくどいのは嫌いだからさっさと言ってくれないか?」
「そうだな。すまなかった」
そう言い終えた途端、ナガトは改まって口にした。
「俺達のギルド──Black Shadowに入ってくれないだろうか?」
俺はその言葉を聞いた瞬間。
心拍数が跳ね上がった。
ギルドの勧誘の事に対してではない。
Black Shadowというギルドについてだ。
掲示板で見た《閣下》という呼び名の人物が死んだという話。
たしかこのBlack Shadowというギルドに所属していたはずだ。
「その申し出──引き受けます」
そう承諾すると、
「そんなあっさり決めちゃって良いのか?」
まぁ二年間ソロを突き通して来た経歴の人だからおどろいても仕方ないだろう。
「俺は好きでソロをやっていたわけじゃないからな。ただし──」
「ただし──?」
「条件がある」
そういうとみんなはやはりかという反応をした。
「内容は?」
「質問を三つほど」
俺はこの《閣下》という呼び名にどうも引っかかっていたのだ。
掲示板では《閣下》は最強のプレイヤーとして扱われていた。
このデスゲーム内で最強のプレイヤーになるにはおそらくβ時代を経験した者でないと無理だろう。
そうなると話は変わってくる。
β時代で最も強かったプレイヤーがおそらく《閣下》だ。
そう考えるのが妥当だ。
「そのくらいならいいぜ」
これから俺が質問する内容を知らずにナガトがそう答えた。
「じゃぁまず一つ。」
──このギルドは現在わけあってパーティが五人と言ったが、前に所属していたメンバーが居たという事だな?
この質問をした途端──空気が静まり返った。
このギルドの中でもっとも触れてはいけない部分に踏み込んだと自覚する。
「あぁ」
「その所属していたプレイヤーは《閣下》と呼ばれていたか?」
もはやどうにもならないほどの重い空気が室内を取り巻いた。
「あぁ。」
──《閣下》
俺の予想が正しければβ時代で最も強かったプレイヤーだ。
俺はその人物に心当たりがある。
あまりにも強すぎた彼を。
《閣下》に当てはめようとしている。
知りたいことがある。
知らない方がいいと分かっていても。
聞かずにはいられないのだ。
「最後の質問ね。」
──《閣下》という奴の名前はジウンというやつか?
その名前を口にした途端。
俺は懐かしい響きに囚われていた。
かつてそう呼んでいた彼を。
思い返していた。
空気はさらに冷たくなる。
この質問がどういう意味を持つかを彼らは知っているのだから。
しばらくして、ナガトがついに口を開いた。
「……そうだ。」
嫌な予感はしていた。
一度疑いだしたら、考えられずには居られない。
それが人間というものだ。
結果からすると──。
どうやら、このゲームでできた俺の最初の友達は既にこの世には居ないらしい──。
どうも赤砂糖です。
読んでいただきありがとうございます。
初投稿から大体三ヶ月経ちました。
本当に今更感がありますが、活動報告的な物をします。
実はこの小説を11月24日で投稿をやめようかと思っていました。
理由は、来年の大学受験と、この小説を面白く感じれなくなってしまったから。
の二つです。
それで最後にと思って三話分ほど11月24日に投稿しました。
その時に初めて感想を書いてくれた方がいまして……。
「面白い。」
その一言だったのですが、妙に嬉しくなった自分がいて。
次の日にもう1つ投稿したら、頑張ってくださいといってくれる方達がいて。
そしたら新しい話を書いてしまう自分がいて。
もう一度頑張ろうと思いました。
ありがとうございます。
とりあえずここで第三章-Neet-終了です。
この回を書くのは本当に難しかったです。
β時代の伏線が少なすぎたために、急に知らない奴の名前が出てきて驚いている方もいると思いますが、これは本当にただの私の力量不足としかいいようがありません。
次回からは気をつけます。
少し長くなってしまいましたが、以上です。




