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数年前、医療用のために開発され急速に進化を遂げたバーチャルリアリティ技術は
今では一般人でも扱えるくらいの物になっている。
はじめは、体を動かすのが困難な人に仮想空間でのスポーツなどのサービスを提供されていたが、
今年、ついにゲームでの実用化が発表された。
──VRMMO《Destiny Gate Online》
俺は歓喜した。
自分がゲームのキャラになって実際に動かすというのはゲーマーだけでなく、全ての人からからすれば憧れだろう。
このDestiny Gate Onlineのオープンβのリリースを知ったときは、気づいたら既に応募してたくらいだ。
話によると、一万人しか取らないオープンβに約十五万人の人が応募されたらしい。
その一万人の中に運良く入れた俺は一ヶ月間の至福の時間を過ごしていた。
授業が終わったら速攻で家に帰ってシャワーを最速で浴びてゲーム。
この生活を一ヶ月間続けた。
自堕落と言われても否定はしない。
──そして今日。
また自堕落な生活をし始めるというわけだ。
ネットで三つ予約していたDestiny Gate Online。略してデスゲをインストールし終えた所だ。
何故三つなのかというと一つ目は俺、二つ目は2個年下の双子の妹の分、三つ目は双子の弟の分だ。
三人兄弟揃ってこのデスゲをやる事になった。
俺がオープンβ時代の時の事楽しそうに話したら二人ともやりたいという話になって、後は流れるように流されていった……。
流石に金は少し弾むが、買ってしまったものは仕方ない。
「兄さん。インストール終わったよー!」
「僕も終わったよー!」
妹と弟がこれ以上ないほどの興奮状態で言う。
まだ時間まで五分ほどあるが、ゲームに繋げるだけ繋いでおこう。
「了解。じゃぁ始めようぜ」
また至福の時間を過ごせると思い、ゲームを始めた。
無機質な空間に俺は立っていた。
この場所はオープンβの時代に一度見たから知っている。
キャラの外装決める場所だ。
攻略掲示板の情報ではなるべく自分の骨格に合わせてキャラを作ったほうが動かしやすいとあったので、
少し髪型を変えたくらいの物で、あとは適当に済ませただけの外装。
名前を決める画面で《ミナト》とパネルに打ち込んだ──。
名前の由来は自分の名前が御巫 湊だから。
ちなみに妹の名前は御巫 雅で、
弟の方は御巫 葵だ。
葵は自分の名前が女っぽいという事で多少コンプレックスを抱いているみたいだが、今回は葵で登録すると言ってったけ。
そんなこと思い出して──
目の前のパネルのゲームスタートを押した。