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三回戦目の相手はなんと、控え室で話かけてきたあの男だった。
見たところ両手剣使いだ。
装備も見るかぎり重装備。
パーティでなら間違いなく前衛を引き受けているだろう。
重装備相手に徒手空拳ははっきりいってあり得ないだろう。
そしてなにより俺は初期装備すらない状態だ
自慢の初期刀はポッキリ刃がなくなってやがる。
刀はいっぱい持ってるよ!
モンスタードロップとか宝箱で手に入れたやつとかあるにはあるんだよ!
しかし重さが一以下じゃないと装備できないってどういうことなの?
あ、でも水龍戦で手に入れた水龍刀が確か重さが一だった気がする。
この戦いが終わったら予選も終わるみたいだし、装備してみよう。
考えるのはここで止めて──
俺は相手と向かい合う。
「いや~まさかお前と当たるとは思わなかったね~
お前の戦いぶりを少し見させてもらったけど、なかなか強いね」
相手は続けて言った。
「でも──それだけじゃ俺には勝てないよ」
その言葉言い終えた瞬間。
勝負は始まった。
相手の攻撃は至って単純。その大きな剣で目の前を敵なぎ払うだけ。
これだけなのに俺は迂闊に近づくことすら出来ない。
完全に対人勝負に慣れているもの戦い方だ。
プログラムによって決められた行動をとるモンスター達と戦うのと対人戦で戦うのでは戦い方が変わってくる。
相手の動き。
相手の仕草。
相手の視線。
全てを読んで戦わなければならない。
目の前にいるこいつはさっきまでの奴等とは、違う。
一つ上の領域に踏み入れている。
そこに隙など存在しない。
隙が無いのなら──作るだけの事。
俺は勇気を振り絞って、話かけた。
コミュ障の俺が。
「つ、つっ、強いねっ!な、なっ、名前はなんていうのっ?」
こんな時にも噛みまくる俺。
逆に相手に不信感を抱かせる事が出来たようだ。
動きが先ほどより鈍くなっている。
「お前、俺の事知らないの?」
どうやら結構な有名人らしい。
でも俺は二年間引き篭っていたんだから、知る術などないのだ。
「う、うん」
だから俺は噛みすぎだろ……。
俺の動きも鈍くなってやがる。
「俺の名前はクライドだ。連合の幹部を務めている。」
──連合か。
つまりピーマン大好き連合の事を意味する。
攻略組のギルドじゃんっ!?
しかも幹部。
通りで強いわけだ。
「さ、先ほど名乗った通り、な、名前は、ミ、ミナト。む、無所属。」
すると、納得した顔を浮かべた。
「通りで人と話すのが苦手な訳だ」
ばれてる……。
こういうやり取りをしてる間にも攻防は続いている。
お互いにフェイントを掛け合っている状態だ。
「どうせなら、刀を持ったお前と勝負したかったよ。お前、侍じゃ結構なスゴ腕なんだろ?」
どうやら俺が侍だと思っていたらしい。
だが残念な事に俺はどうしようもなく──
ニートである。
「お、俺は侍じゃない。」
次の一言を俺は言う──
「──ニートだ」
この瞬間すべてが凍りついた。
相手の動きは急に止まり、銅像にでもなったかのように動かない。
つまりこれは、
──隙。
俺は持てる力の限りの正拳突きで勝利を得たのだった。
とあるスレでの出来事
ニート目撃情報スレ★205
1:ルートル
街中で裸や初期装備で歩いている方はニートの可能性が高いです。
みんなで協力してこのゲームをクリアするためにも、見つけたら更正させましょう。
殺す以外の手段なら何を使ってもかまいません。
あの事件を繰り返してはいけません。
2:ミスト
始まりの町で裸に初期刀を帯刀して、
挙動不審な動きで町中を歩いている奴を見つけたんだけどwww
これニートじゃね?www
3:クルーク
このスレ立つの一年半ぶりくらいじゃねw
ニート革命思い出したわwww
4:karu
<<3
嫌な事件だったよ……。
5:マルク
<<2
あぁ、そいつ見たぜ。酒場にパンツ一丁で入って来たんだけど、
速攻で店から出て行ったわwww
6:mai
<<2
そいつはニートじゃないよw
闘技場でネタ装備で参加した奴www
一回戦目だけ見てたけど、刃のない刀取り出したあと、
焦った様子で刀を収めて仕方なく素手で挑んで《鬼猿》を圧倒してたwww
7:グラクロー
<<6
鬼猿って、中堅ギルド《百鬼夜行》のギルドマスターだろ?
ありえねぇからwww
嘘乙www
8:ブル
<<7
本当だよ。
ちなみにそいつは二回戦目で《魔術協会》の《シャル》にも勝ってた。
だれか三回戦目見てた人いない?
9:バルシュ
<<7
嘘だろ……
10:ガルフ
<<8
三回戦目の相手は《連合》のクライド。
これは流石にネタ野郎も苦しそうにしてた。
クライドとネタ野郎が会話しながら戦ってて、
会話の最期にネタ野郎が放った一言でクライドを含めた全ての奴が動きが止まったんだわwww
11:ミスト
<<10
なんて言ったの?
12:ガルフ
<<11
「俺は侍じゃない──ニートだ」
13:バルシュ
え?
14:mai
<<12
なに言ってるの?ニートが戦えるわけ無いじゃん。
15:ガルフ
<<14
あいつは技スキルを一つも使ってなかったし、
二回戦目で使った水魔法も技リストに存在しなかった。
16:グスタフ
<<15
つまりそいつはシステムアシストを一切使わずに戦っていたって事?
17:ガルフ
<<16
あぁ、素手で戦ってた時が、なんだかぎこちない感じだった。
18:ミル
あきらか嘘だろwww
──その後、信じる派と信じない派で別れて、議論が続いた。




