プロローグ
MOON NIGHT HUNTERと月詠学園が思うように書けないので気晴らしに書いて見ました。
ラムドと呼ばれる街に繋がる街道を赤い毛の虎を連れた二人連れの男達が歩いていた。
一人は身の丈ニメートル程の筋骨隆々な男で黒い短髪に後ろ髪を腰まで伸ばして首の後ろで結び、黒い着物に白い袴を履き左右の腰に二本の刀を括り付けていた。
見る者が見れば男の格好が東方の国のサムライの服装だと解るだろう。
しかも良く見ると耳が尖っているため、男がエルフかハーフエルフだと言う事が解る。解るのだが、恐らくは誰も信じないだろう。何故なら彼はエルフやハーフエルフにしてはがっしりし過ぎて居るからだ。
もう一人の男は白い髪を背中の中ぐらいまで伸ばして顎には無精ひげ、黒いボロボロのコートに黒い皮のズボンを履いている。頭にはこれまたボロボロの黒いカウボーイハットを被り、左右の腰には白銀の龍を象った銃と黒金の龍を象った銃を下げている。
彼の姿は銃士と呼ばれる者達に似ていた。
『のう、主よ』
赤毛の虎が人語を発し、サムライに話し掛ける。
「何だ?カグツチ」
サムライからカグツチと呼ばれたこの虎は炎虎と言う炎の精霊に属する種族でカグツチは炎虎の中でも300年を生きる長老格の存在だったのだが、ある時このサムライに出会い話をする内にサムライをすっかり気に入ってしまい、彼と主従契約を結び以後彼の旅に着いて来る様になった。因みに種族はカグツチの次に長生き(210年生きている)な炎虎が治めている。
『ちと遅いかも知れんが、魔物に囲まれとるぞ?』
「「カグツチ(ちゃん)?もっと早く言おうな(汗)」」
既にゴブリンやオークに囲まれた二人が声を揃えてカグツチにツッコミを入れた。
「ドラグロス!シルバリア!起きろ、出番だぜぃ!」
銃士の男が腰に下げている二丁の銃に声を掛けながら構える。
『ふぁ〜。む?何だ雑魚ではないか』
『トゥーガン。我等が友よ。この程度なら我等を起こさずとも倒せるでしょう?』
黒金の銃が欠伸をしながらゴブリンやオークを見て言い、白銀の銃は尋ねる様に言った。
トゥーガンと呼ばれた男が下げている二丁の銃は元々はドラグロス・シルバリアという名の黒き魔龍と白き聖龍だった。
彼等がこのような銃の姿になったのは今から3000年程前の事。
話せば長くなるので、後の話に回す事にしよう。
「あんな雑魚でもエーテリアは有るんだろ?お前達の飯代わりにはなるだろうさ」
※エーテリア・万物に宿る魔力の事。この世に生きる全ての物に宿っており、宿る量は種族に寄ってまちまち。因みに、魔物→人間→精霊→魔族→神族の順に宿る量は大きくなる。
『質が悪そうだ』
『食べたらお腹壊しませんよね?』
「好き嫌い言ってたら大きくなれねーぞ」
『大きくなる必要無いんだが?』
「おーい。流石に俺達だけだとキツいから早く援護してくんねぇ!?」
『ああもう!数が多すぎるのじゃっ!?』
トゥーガンとドラグロス・シルバリアが掛け合いしてる間にもサムライとカグツチが魔物達を退治していたが、如何せん数が違い過ぎた。
「おっと、済まんねぇドラグーン!」
『済まぬ!』
『今、援護する!』
トゥーガン達はドラグーンと呼ばれたサムライに謝るとすぐさま援護を開始した。
数分後。
『うぶっ。胃にもたれる』
『やはり、質が悪すぎましたね』
トゥーガン達の援護もあり、魔物の群れをあっさり倒した後、ドラグロスとシルバリアは魔物に宿るエーテリアを吸収したのだが質が悪過ぎたのか気持ち悪そうにしていた。
「無いよりマシだろ〜ぐがっ!」
のほほんとしていたトゥーガンの首が飛んだのはそんな時だった。
「グルルルル……」
ドシャッと言う音と共にトゥーガンの身体が倒れるとその後ろに錆びた大剣を持ったオークが立っていた。
「おっと、まだ一匹残ってたか」
ドラグーンが刀を抜こうとするとその腕が何者かに掴まれる。
「ドラグーン。おっちゃんに任せときなって」
ドラグーンの腕を掴んだのは、あろうことか首の無いトゥーガンの身体だった。
「大丈夫か?」
どう見ても大丈夫では無い。
「あ〜、死ぬほどいてえけど何とか。それよかおっちゃんの首拾って来てくんね?」
「あいよ。って何処に飛んでった?」
『主、彼処じゃ!早よせんと川に落ちてしまうのじゃ!』
ドラグーンが飛んでったトゥーガンの首を探していると、カグツチが小川に向かって転がって行くトゥーガンの首を発見した。
「ギャアアアッス!ドラグーン、急いでおっちゃんの首をーっ!」
首無しトゥーガンが焦ったように叫ぶ。
「まちやがれぇぇぇぇぇっ!」
『急がぬと川下のラムドで大騒動なのじゃーっ!』
慌ててドラグーンとカグツチが川に向かって走って行った。
『済まんトゥーガン』
『我等が油断しておりました』
ドラグロスとシルバリアが首無しトゥーガンに向かって謝る。
「良いって良いって。油断してたのはおっちゃんも一緒。つーか、さっさとコイツ倒してドラグーンに合流っしょ」
首無しトゥーガンはオークに向き直るとドラグロスとシルバリアを構えて引き金を引いた。
……所で、トゥーガンは首が無いのにどうやって喋っているのだろうか?
「そいつはおっちゃんの秘密なんよ♪」
『主、誰に向かって話しておるのだ?』
『また、電波でも拾いましたか?』
「おお、ありがとさんドラグーン」
首無しトゥーガンはオークを倒した後、ドラグーン達の向かった方向に歩いて行って川に落ちずにすんだ首を受け取って元の位置にグジュグジュっと押し付けた。
「相変わらず不気味だな(汗)」
『流石に気持ち悪いのじゃ(汗)』
それを見ていたドラグーンとカグツチがさも気持ち悪そうにうんざりとした顔をしていた。
「シルバリア、エーテリアの糸で縫合頼むわ」
『分かりました』
首を付けたトゥーガンがシルバリアに頼むとシルバリアンは直ぐにエーテリアの糸を紡ぎ出しトゥーガンの首を縫合した。
「しかし、久々に首を切られたね〜。こう言う時はこの忌々しい『不老不死の呪い』が有り難く感じるねぃ」
トゥーガンは縫合を終えた首に包帯を巻きながらけらけらと笑う。
そして、トゥーガンとドラグーンとカグツチは再び街に向かって歩き出した。
トゥーガンにかけられている『不老不死の呪い』とは?
ドラグーンは何の目的で旅をしているのか?
それはこれからの話の中で明らかになる……かもしれない。
次回はキャラデータです。