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優しい神さま ―a living god ―  作者: 桐生 拓人
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god’s work.

 作者がうら若き乙男のときの恥作です。それぞれ短編で続いております。













 ――― ガシャンッ























 人通りの多い交差点で、今月に入って三度目の事故が起きた。

 事故現場はまるで待機していたかのように野次馬で溢れ、騒然としている。

「ねぇ、知ってる?救急車って死んだ人間は乗っけないんだって」

「へぇ」

「かわりに消防車とかに乗せるらしいよ」

 などといい終わらないうちに、遠くでサイレンが鳴り響いた。どうやら消防車のようだ。そのうちパトカーのやってくるのが見えて、現場はたちまち事情聴取を受ける人間、行う人間を見ようとする人だかりでごった返した。

「もうそろそろかな?」

「もうそろそろだよ」

 一人の人間と一匹のネコが野次馬に紛れていた。

 完璧に紛れて、ネコは必死になって人間にしがみ付く。

 それから1分も待たずに、ネコが少しそわそわしだす。

 中の様子を覗いながら、ネコがきいた。

「もういい?」

 ソレに人間は困った顔をしながら、

「しょうがないな」

 そしてそのまま人込みを掻き分け“TAKEOUT”のテープを潜る。

 立ち入り禁止区域に立ち入るニンゲンとネコ。

 だが誰も止めようとはしない。

 否、誰も気づかない。

 そんな事は気にならないのか、あるいはもう慣れているのか。

 立ち止まった足元には、真っ赤に染まる白いワンピース。投げ出された体。長い髪。赤い鮮血。

 屈みこんで息を確かめようとしたそのとき、

「何…してるの?」

 後ろから声をかけられ、驚いてふり返る。

 白いワンピースを着た少女が立っていた。

「なんだ、びっくりした」

 ネコがつまらなそうに言った。

 少女は不安そうに辺りを見回す。

「何が起きたの?こんなに大勢…」

 そのまま視線を人間の後ろに移し、ある一点でとめる。

「それは…誰?」

 その、細い四肢を投げ出した人形のようなヒトは。

 人間は少女を見据えて言った。

「これはキミだよ。キミは…死んでしまったんだ」

「っ!」

 途端に少女は青ざめる。

「そんな…だって…私まだ――っ」

 すっかりパニックになる少女に、人間が優しく声をかけた。

「大丈夫。生まれ変わればいつかまた巡り逢える」

「ホントに?」

 優しく微笑んで言った。

「あぁ。ホントに」

「よかった…」

 ほっと胸をなでおろす。

「その機会に伝えればいい」

「…そうね」

 少女は笑いながら、人間は無表情で涙を流した。

 それと同時に体が透ける。もう還るときがきたようだ。

「ありがとう」

 そう言って、少女は空になった。



 少女が空に昇るのを見届けながら、ネコが聞いた。

「あの人何だってパニクってたの?」

 ニンゲンがポケットから紙を取り出して読み上げる。

「アヤ・ナカムラ。18歳女。“14’04分死亡。身内が黄泉側に四名。魂葬の言葉は『生まれ変われば云々』未練は―…」

 そのまま人間が固まる。

「如何したの?シロ」

「”未練は『菓子の取り合いで喧嘩した彼と仲直りしてない』”……」

「……」

 しばし固まる。やがて人間がポツリと呟いた。

「泣いて損した」







 


        god’s work.

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