優しい残酷な男の独白【200字】
温もりが欲しい。
柔らかな身体を抱きしめたい。
愛したい。愛されたい。
そう願い、触れ合えば触れ合うほど。
愛するほど、愛されるほど、僕の顔は見えなくなるらしい。
不透明な冷たい壁に阻まれ、疲れ、諦めて去っていく。
流れた血を吸って濁ったこの氷の壁は、あとどれだけの人を傷つければ溶けるのだろう?
僕が諦めれば、もう誰も傷つかないのに。
それでも僕は人を好きになる。
いつか、誰かとひとつに溶け合えることを願い続けて。
「優しい」の優の字は優柔不断の一字。
ただ優しいだけでは表面上の付き合い以上はできません。
それどころか、切れ味の鈍い凶器にすらなり得ると思います。