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第三幕:40億年先のインフレーション

押し寄せる壇ノ浦の波をローファーで踏みつけながら、魔界光命はふぅ、と息を吐いた。


「なぁ頼朝。お前のいる時代から40億年経つとさ、国家とか、幕府とか、そういう『組織』っていう概念自体が、ただの古いバグとして消去されてるんだよね」


「何を世迷言を!」


頼朝の命令で、鎌倉スフィンクスが光命に飛びかかった。その鋭い爪が光命の胸当てに触れようとした瞬間――。


光命の身体から、40億年先の物理法則が放射された。


「魔界光命流・超次元バルサン・システム」


光命が指をパチンと鳴らすと、スフィンクスの周囲の空間が「40億年分のハイパーインフレーション」を起こした。

鎌倉幕府が発行した「下地中分」の公文書や、頼朝のサイン入りの御教書が、突如として無限にコピペされ、神殿中を埋め尽くした。その数、およそ10の68乗枚。


『グワーッ!? 領地宛行状(土地をあげる書類)が多すぎて、処理が追いつかん! 幕府のサーバー(脳内)がパンクするぅぅぅ!』


情報過多。頼朝が絶対の信頼を置いていた鎌倉の法制度と官僚機構が、未来の無限のデータ量によって物理的に圧殺されていく。スフィンクスは紙の波に呑み込まれ、爆発して消滅した。


「は? 書類をコピペしただけで自滅したんだけど。脆弱すぎだろ、お前の幕府」


光命が呆れ顔で頼朝を見ると、征夷大将軍はガタガタと震えていた。


「ば、馬鹿な……我が平家を滅ぼし、奥州藤原氏を討ち取ったこの頼朝が……このような、わけのわからぬ未来のガキに……!」


「わけわかんないのは、エジプトで幕府開こうとしたお前の方だよ」


光命は手にした古代剣の先から、ほんの少しだけ「光命」の本源たる超新星のエネルギーを解放した。ビカァッ! と神殿が昼よりも眩しく輝き、頼朝の持つ日本刀がドロドロの液体へと溶けていく。


「これ以上やると、この地球の地殻が40億年早くマントルに還っちゃうから、大人しく鎌倉に帰りな。あ、帰る時、ナイル川に放流した鮭の稚魚、ちゃんと回収しとけよ」


光命の圧倒的な「倫理の通じない強さ」に、頼朝は「おのれぇぇ! 覚えておれ!」と捨て台詞を吐きながら、時空の裂け目(鎌倉方向)へと退却していった。


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