間章 目覚め
――レイ
最初に戻ってきたのは、
距離の感覚だった。
遠くない。
近すぎもしない。
何かが、すぐそばにある。
目を開けた、という実感はない。
けれど、意識ははっきりしていた。
「……」
声を出そうとして、
音にならないことに気づく。
息をしようとして、
必要ないことに気づく。
それでも――
いる。
体があるかどうかは分からない。
重さも、痛みもない。
だが、
“自分がここにいる”という感覚だけが、確かだった。
レイは、意識を広げる。
すると、
すぐに分かった。
――ユリがいる。
――エリカもいる。
――リオナも、いる。
姿は見えない。
声も聞こえない。
それなのに、
位置が分かる。
まるで、
同じ部屋にいるような感覚。
壁は見えない。
床も、天井もない。
それでも、
離れていない。
「……生きてる」
誰に向けた言葉でもなく、
自分に言い聞かせるように、
レイはそう思った。
爆発の記憶が、遅れて蘇る。
光。
衝撃。
熱。
終わった、と思った。
だが、
ここにいる。
終わっていない。
レイは、意識の向きを変える。
ユリの気配に、
少しだけ近づく。
触れられない。
呼びかけても、届かない。
それでも、
同じ場所にいる。
それだけで、
十分だった。
ここがどこなのかは分からない。
なぜここにいるのかも、分からない。
ただ一つ、はっきりしている。
――自分は、
――ひとりではない。
レイは、
何もない空間で、
初めて、立ち止まった。




