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第三章 追う少女

花火は、空から消えた。

だが、その光は、まだ彼女の視界に残っていた。


レオナ・ヴェルデは、降下用カプセルの中で、夜空を見上げていた。

視界いっぱいに広がった色の残像が、瞼の裏から離れない。


「……見えましたか」


通信が入る。

部下の声は、仕事の音をしていた。


「ああ」


それだけ答える。


誰が、どこで、何をしたか。

解析はこれからだ。

だがレオナは、解析よりも先に理解していた。


――あれは、ただの事故じゃない。


胸の奥が、ひどく静かだった。

悲鳴も、混乱もない。

その代わりに、確信だけがあった。


レイが、あそこにいた。


理由はない。

証拠もない。

それでも、分かる。


カプセルが大気を切り裂き、減速する。

着地の衝撃が、身体を揺らした。


ハッチが開き、冷たい空気が流れ込む。

レオナは、地面に足をつけた。


遠くで、施設が騒いでいる。

警告灯、兵士、指示、怒号。

いつもの光景。


けれど、彼女の視線は、

爆発が起きた“その場所”から離れなかった。


「……レオナ様」


呼ばれて、振り返る。


養父――

エドワード・ブラッドフォードが、通信画面越しに映っていた。


「予定よりも大きな事象だ。軍を動かす」


「……私が行きます」


即答だった。


「単独でか?」


「追う必要がある」


理由は言わない。

言えない。


ブラッドフォードは、少しだけ黙り、

それから、淡々と告げた。


「感情で動くな」


レオナは、小さく笑った。


「感情でしか、追えないものもあります」


通信は切れた。


レオナは、空を見上げる。


もう、花火はない。

ただ、暗い夜と、街の灯り。


それでも、

彼女は歩き出した。


追うために。

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