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1話 悪魔のささやき、天使のおさそい

 アーバン・レジェンドの屋根裏部屋。埃っぽい部屋にある小さな椅子とテーブルの上をハンカチで一拭きしてから、ましろは腰掛けた。


「はぁ……。今日のシフトは鵜久森さんと来夢……。ボクは屋根裏の掃除にあてがわれるなんてなぁ……」


 先程コンビニに寄って買ってきたハーゲンダッツ……悪魔のささやき(チョコレート)と天使のおさそい(ホワイトチョコレート)のフタを開け、ましろは肩を落とす。


『よくこんな埃っぽいところでアイスを食べようなんて思うね』


 ラプスが歩いた後には足跡が付くほど床に埃が溜まっている。


「だってここのところ毎日暑いんだもの。掃除をする前にアイスを食べて元気にならなきゃ」


 悪魔のささやきと天使のおさそいを交互に食べながら、ましろは至福の時を味わう。


「悪魔のささやき……ソルティチョコレートソースを混ぜたアイスクリームに、とろりとしたバターココアソース……。濃厚なお味で流石、「手に取らずにはいられない」「一度食べたら虜になって抜け出せない」と謳われてるだけはあるね……。天使のおさそいも、ホワイトチョコソースを混ぜ込んだホワイトチョコアイスクリームにミルクコーティング……。乗せてあるホワイトフィアンティーヌのほのかな塩味とサクサク感がたまらない……」


 早く食べないとアイスが溶けてしまう。と、もっと味わいたいのは山々だが、ましろはいつもよりも急いでスプーンを進めた。


「うう……!早く食べないと溶ける……!今度また買って食べよう……」


 ましろがハーゲンダッツを食べ終え、容器をコンビニ袋に放り込んだ直後、部屋の隅に黒いもやと白いもやが吹き出した。中から現れたのは2匹の犬(?)。


「えええ!?ポチが2匹??」


 屋根裏部屋に突如現れた悪魔のような黒い身体を持つティロ……もはやポチと言った方が良いのだろうか……が、白いふさふさな愛らしいサモエド姿のポチと一緒に並んでいた。

 黒いポチは何かを咥えており、白いポチは何かを足元に置いている。


「なんだろう……」

『気を付けなよましろ。猫琉羅斗の飼い犬だ。何かあるに違いない』


 ラプスが威嚇するように毛並みを逆立てる。ましろは恐る恐る2匹に近付いた。


 どうやら黒いポチは、奇妙なアラベスク模様に表面が覆われた長さが12センチほどある大きな銀の鍵を咥えている。

 白いポチの足元には、小箱と宝石。宝石は黒光りしている。


「わっ……!?」


 宝石を直視した途端、ましろの意識はぐらついた。慌てて視界を手のひらで遮り、宝石を見ないようにする。


『どうやら、どちらかを選ばないと消えてはくれないみたいだね』

「見た目は白いポチの方が安全な気はするけど、小箱と宝石の方が、なんだか危険な感じがするよ……!黒いポチの銀の鍵の方にしよう」


 すると、人語を理解したのか、黒いポチは銀の鍵を床に置いた。ましろが銀の鍵を拾うのを見届けると、黒いポチは何かを囁くように吠えて姿を消した。白いポチは残念そうに鳴き、器用に小箱を抱えて黒光りする宝石と共に姿を消す。


『……正に悪魔のささやき、天使のおさそいだったね』

「あ、悪魔のささやきを選んで正解だったのかなぁ?」


 大きな銀の鍵を手にしたましろが首を傾げた。



 ◆◆◆



『銀の鍵を手に入れた……だと!?』

「うん。コレってどういうアイテムかなぁって。持ってても大丈夫そう?」


 屋根裏の掃除を一通り終え、水で綺麗に洗い、タオルで拭いた銀の鍵を自室のテーブルに置いたまま、ましろはスマホ越しの夜闇鴉よやみあろうに尋ねた。


『クトゥルフのアーティファクトのひとつだ。銀の鍵は香木製の箱に補完され、大きな羊皮紙に包まれている筈だが……』

「箱と紙はついてなかったよ」

『……おそらく、それは物理的な扉を開ける鍵じゃあない。時間や空間、次元を超越する為の精神的で概念的な鍵だ』

「ふーん……。なんかすごい鍵なんだね」

『ふーん……じゃない。すごいという一言では片付けられないくらいすごい。使用には危険が伴う筈だから無闇に使うなよ』

「使うもなにも、使い方なんてわからないしなぁ。とりあえず、誰かに悪用されない為にも、常に持っておくことにするよ」


 とりあえず、銀の鍵をお菓子と共にスクールバッグに入れる。夜闇鴉が実際に居たら、扱いが雑すぎると言われそうだ。


「じゃあね。話しはそれだけだよ」

『あっ!おい待て!勝手に切るな!話しはまだ』


 普段は向こうが勝手に切る癖に、とましろはため息を吐きながらスマホの通話を切る。


「先に夜闇鴉に話しちゃったけど、来夢も銀の鍵のこと知ってるかなぁ?」

『まーた厄介なものを!とか言われて怒られそうだね』

「だって仕方ないじゃないか。強制的に選ばされたんだよ?」

『これは、猫琉羅斗の思い描いた通りの選択なのかな?』

「うーん、そこがわからないから厄介なんだよねぇ。でも……あの黒光りした如何にも怪しげな宝石よりも、こっちの方が危険が少ないと感じた勘を信じるしかないよ」


 それよりも、とましろはスクールバッグを肩にかけて出掛ける用意をする。


「ハーゲンダッツ……他のフレーバーにしようかな」

『悪魔のささやきと天使のおさそいはいいのかい?』

「うん。今度は公式で1位だったガナッシュショコラと、2位だったタルトタタン……カラメリゼ林檎のタルトを買おう!」




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