39話 千の仔を孕みし森
買ったばかりのスマホからアラーム音が鳴り響く。
「うーん……あと5分……」
布団の中でもぞもぞと動き、寝返りをうつましろ。部屋のドアをノックする音まで聞こえ始める。
「ましろさん!起きていらして!大変なことになってますわ!!」
来夢の叫び声で床に置いているクッションの上で寝ていたラプスがぱちりと目を開ける。クンクンと周囲の匂いを嗅ぐラプス。
『大変だよましろ!!物語の気配だ!!それも今までで最大級の!!』
「……へ?」
ましろはのそりと起き上がり、スマホのアラームを止めた。
◇◇◇
「ましろくんおはよう!起きて早々だけど、街が大変なことになってるんだ!」
パジャマから制服に着替えて2階から降りてきたましろに挨拶をする鵜久森。鵜久森だけでなく、来夢、アーバン、綺羅々、林檎は食堂の液晶テレビから流れるニュースに見入っている。
『御伽駅を中心とした森林による侵食は周辺の建物までおよび──』
ヘリやドローンで上空から御伽駅を撮った様子がテレビに映っていた。見渡す限りの木々が街を侵食している。ましろはぽかんとした表情で目にした情報を処理する。
「──なにこれ?物語の領域展開、じゃないよね?」
『それならまだ良かったものの。これは領域展開を超えた現実世界の侵食さ!!』
ラプスが喚き立て、アーバンが難しい表情を浮かべる。
「御伽駅を中心として、周囲の建物がダンジョン化したそうだ」
『物語に似た気配……、いや、物語よりも規模が大きな気配だ!!』
「ということは……」
「クトゥルフの物語の仕業ですわね」
ましろの呟きに、来夢が頷く。
「どーすんの?行くの、ましろ」
「待って。赤羽根さんと夜闇鴉にも連絡しなきゃ」
「おはー。連絡する前にお邪魔してるってばー」
「おい、髪が跳ねてるぞ。いつまで寝ぼけてるんだ」
「わわっ!?居たんだね2人共」
ましろはスマホを取り出す前に、食堂の端の壁に寄りかかり、こちらを見ている2人を確認する。
「どーすんの?行くの、ましろ」
綺羅々が再度ましろに聞き直す。ましろは大きく頷いた。
『倒すべき敵はダンジョン最深部に居るとみて良さそうだね』
「みんな、あのダンジョンへ行く準備をして」
「言われなくても、全員準備万端だ。貴様が最後だ月影ましろ」
「あらら、そうなんだ。じゃあボクは鞄にお菓子を詰め込んで……っと」
ましろ専用のお菓子の棚から茶菓子やパック菓子をスクールバッグの中に詰めれるだけ詰め込んだ。綺羅々特製のポーションクッキーも忘れずに。
「さぁ、行こう!ダンジョン攻略だ!」




