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第55話 結界師は仲間と共に量産計画を練る

ミオが持ってきた二つのドロップ品は、うねうね動く肉片のような物そして骨。


その二つを見てまず口を開いたのはサイモンさんだった。


「ミオさん、肉片の用途は思いつかないが、骨はフォートラン商会で買い取れるよ」


「骨を?」


「ああ、骨は農園の肥料になる。うちの商会は大規模な農園を持っている。だから、骨を定期的に冒険者ギルドから買い取ってるんだ」


「そうなんだ!じゃあ――」


しかし、ここでエルノートさんが発言する。


「少々お待ちくださいミオ様。肥料にするのには賛成ですが、その骨、当工房で使用してはいかがでしょう。ミオ様はこの吹き矢をご覧になられましたか?」


「シドの作った吹き矢でしょ? 私も同じ物を作ってもらって持ってるよ」


「それは良かった。この吹き矢をこの工房で量産して販売する計画をしております」


「そうなんだ! 絶対に売れるよ!」


「はい、私もそう思っております。そして、この吹き矢の筒の材料をミオ様の取ってこられた骨を肥料にして育ててはどうかと思っております」


「筒の材料を?」


「はい。サイモン様、フォートラン商会では竹竿は取り扱っておられますか?」


「竹竿? 竹竿なら物干し用に取り扱っています。うちの農園の竹林で育てて加工していますよ」


「それは良かった。その竹の苗を少々お譲りいただけませんでしょうか?」


「それは構いませんが……ああ、竹を吹き矢の筒に加工するのですか。それはいい考えですが、どこに植えるんですか?」


「はい、この工房の裏手の空き地はシド様、ミオ様が訓練に使用されている空き地とつながっております。その隣接する空き地を当工房で買い取り、そこに竹を植えてはどうかと考えております」


「それは良い考えですね。原材料がすぐ側で調達できるのは良いと思いますが、竹が育つまではしばらくかかるかと思いますが………」


「それは、心配に及びません。シド様、聖樹の件をサイモン様にお話してもよろしいでしょうか?」


「ここにいるメンバーなら全員大丈夫ですよ」


「かしこまりました」


エルノートさんはサイモンさんおよび聖樹の件を聞いていなかったおっちゃん、エミリーさんとダンさんに説明した。




「シド君、もはや何を言っていいか言葉が出てこない……」


サイモンさんは手を目に当てて動かなくなった。


「何だか最近、目覚めが良くて、すがすがしい気がしていたがそれが理由だったか」


「すがすがしい目覚め、良いですなぁ。わしも警備のためにこの工房で今日から寝起きするつもりじゃが、ドノバン殿、朝稽古のお相手を頼めますかな? 物腰からそれなりに剣が使えそうに思うのじゃが」


「ダン殿、シドとミオの稽古をいつも見ていて、その見様見真似だが、それで良いならお相手しよう。その木がある側ならいい汗が流せそうだ」


おっちゃんとダンさんも気が合ったようだ。


「ミオちゃん、聖樹の主になったんだ!?」


「そう、祝詞で花が咲かせるんだよ。エミリーさんにも見せてあげるよ!」


「ありがとう! 花を咲かせたい植木鉢があるんだけど、家から持ってきていいかな?」


「いいよ。いくらでも持ってきて!」


ミオとエミリーさんも意気投合したみたいだ。


「お父様、工房の個室は鍵もかかるようですから、私もこの工房で寝泊まりしてよろしいでしょうか? この工房はこれからの私たちの冒険者活動に最適な場所だと思いますわ……」


「私としては淋しい気分だが、キャサリンの成長のためには必要かもしれないね。では、週に一日は家に報告をしに帰ってくることで許可しよう」


キャサリンが大胆な提案をしたが、ジョセフ様は許可された。


続けてミオも大胆な提案をする。


「じゃあ、メイさんも誘おうよ! メイさん宿暮らしだって言ってたから! エミリーさんもどう?」


「私個人としてはいいんだけど、お父様と婚約者が……」


エミリーさんがサイモンさんに目をやる。


「サイモンさんってエミリーさんの婚約者だったんだ!?」


「……まあ、この工房は我が商会の肝いりだから仕方ないが、品物の納品時はきちんと商会に顔を出して商会長に会うと言うなら、俺から商会長に口添えしよう」


「ちゃんと、あなたの家にも顔を出すから安心してね♡」


「わ、わかった」


二人のいい雰囲気に「ヒューヒュー」っとミオがちゃちゃを入れる。


「では、三階を女性専用階、二階を男性専用階とし、二階から三階に上る階段に鍵付きのドアを設置いたしましょう。シド様、よろしいでしょうか?」


エルノートさんが話を取りまとめた。


「俺はかまいません。むしろ、この工房のためには皆さんの協力が不可欠なんで助かります。エルノートさん、生活区の管理は任せて良いですか?」


「承りました。お任せください。あと、ギルドから移送されてくる二名についてですが、しばらくこの工房の二階で保護したく思っております」


その言葉を聞いてジョセフ様が凍り付き、異を唱えた。


「それは、いくら何でも危険すぎる!」


「いえ、この二人はこれからのマナエルのために重要な証人。この聖樹に近い環境で保護するのが一番安全です。二人は私が責任を持って保護し、また制限します。聖樹の祝詞には邪な心を抱かせない祝詞もあります。どうか許可願います」


「…………た、確かに当家も冒険者ギルドも安全ではないが、しかし………」


「お父様、私なら大丈夫ですわ。お父様とヴァン支部長のご様子から、その二名はとても重要なカギであると推察いたしますわ。どうぞ、私よりもお父様の責任を優先していただきたいですわ!」


「お嬢様……」


ウォルターさんも心配しているようだ。


だが、ジョセフ様は顔を上げて決意したように答えた。


「いいだろう。許可する」


「シド様、全責任は私が負います。どうかお願いいたします」


エルノートさんが真剣な表情で俺を見てくる。


多分、この二人と言うのはエルノートさんの重要な任務のキーパーソンなのだろう。


「エルノートさんの思う通りになさってください。何かあったら俺もミオもいますし、ダンさんが警護をしてくださいますから、大丈夫だと思います」


「シド殿、お任せください!」


ダンさんが「ドン」と胸をたたいて頷く。


「ありがとうございます。シド様、ダン様」


一連の話はこれで落ち着いた。


そういえば、何について話していてこんな話になったんだっけか?


「じゃあ、いいか? 話がだいぶ逸れたが、そろそろ吹き矢の筒の素材に話を戻そう」


そうそう、吹き矢の筒の話だった。


「失礼いたしました。話を戻しましょう。お話ししたように、この地域は聖樹の聖域の範囲内にあってあらゆる植物の育成をコントロールできます。竹の株を分けていただければ、すぐにでも採取、加工可能です」


「なるほど。コントロールと言うのは太さ長さもコントロールできるのですか?」


「はい、可能です」


「それはすごい」


「ただし、植物の成長には地力が必要です。そこで、アンデッドダンジョンのドロップ品の骨を砕いて撒きます」


「了解しました。では農園から竹の苗と野菜の苗も運びましょう。ここの庭に植えれば、日々の食事にも使えるでしょう」


「助かります。裏の空き地の買い取りもお願いしてよろしいですか?」


「今日中に対応します」


何から何まで俺抜きで進んでいく感じだ。


実に頼もしい。


「シド様、牽制用の吹き矢の筒の量産については、人を雇えば後は問題ないかと存じます。ハント用の特注の吹き矢は私が担当いたします。矢じりはシド様とドノバン様にお任せしてよろしいでしょうか?」


「はい、大丈夫です。一番軽いゴブリンの牙の矢じりは速度重視の矢じりとして売り出しましょう。その他に聖属性の鉄、法鉄、鉄、青銅とバリエーションを揃えて狙う魔物の種類によって矢じりを使い分けられるようにすれば費用対効果も良いでしょう」


「あの聖属性の鉄の矢じりで打ち抜かれる魔物には同情を禁じ得ませんな」


聖属性剣で岩を切ったダンさんが感想を述べる。


「良い判断だ。やはりシド君には商才があるな」


サイモンさんも満足そうだ。


「吹き矢の方向性は整った。それで、角笛の方はどうするかね?」


何かワクワクした表情でジョセフ様が聞いてくる。


そう、問題は角笛の方だ。


俺は角笛の量産のための思索を開始した。



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