第28話 付与術師はまた精神的ダメージを負う
(な、な、何が起きてるのぉぉぉぉぉ?!!)
「はい、これを握ってください」
「………はい」
(私、何を握ってるのぉぉぉぉ?!! 何だかピカピカ光る剣の様なものを握らされているんですけどぉぉぉぉぉぉぉ!!!)
「う~ん、意外とメイさんの手って、小さいんですね。じゃあちょっと細くしますね」
「………はい」
(て、手が小さくてごめんなさぁぁぁぁい!! って、え?!! え?!! え?!! この人、素手で木材削ってるんですけどぉぉぉぉ?!! 怖い! 怖い! やっぱりこの人怖ぁぁぁぁい!!)
「はい、もう一度握ってください。特に太すぎないかチェックしてください。多少細い分には、この後、紐を巻きますので調節できます」
「………はい」
(怖すぎて「はい」しか言えなぁぁぁぁぁい!! あれ? 今なんて言われたっけ? 「太すぎないかチェック」?! わ、わ、私の二の腕太すぎてごめんなさぁぁぁい!! 紐を巻いたら骨付きハムです。ごめんなさぁぁぁい!!)
「ちょっと振ってみてください」
「………はい」
(ふる?! ふる? ふる? ふる!! こんな二の腕で良ければ喜んで!!)
「良さそうですね。じゃあ、紐を巻きますので渡してください」
「………はい」
(ああ、私の二の腕も紐を巻いて出荷ですかぁぁ…………………………)
「ちょっとシド、何かメイさん白目剥いて立ったまま気絶してない?」
「え?! ほ、ホントだ! メイさん! メイ教官! しっかりしてください! メイ教官!!―――――――」
(…………………………な、何だか香ばしい香りがする。串焼きのいい匂いだ。ミオさん家に来て、何だかお礼を言われて、「せいぞくせいけん」とか言うキラキラする物をあの怖いシドさんに持たされて、私の二の腕骨付きハムを出荷………何か嫌な夢を見たなぁ。やっぱりストレスが溜まってるんだなぁ。またダイゴさんの治療を受けに行かなくっちゃ……………)
「あ! メイさんが目を覚ました!」
「メイさん心配しましたわ」
「ここは?」
「私の家の家族用の食堂だよ。一緒に朝食を取っているところ。メイさんの分もあるよ」
「そうでしたか。すみません、何か眠ってしまった様で……あと、妙な夢を見まして……」
(私の二の腕は……無事だぁ~)
「夢って何の夢?」
「なんだか、キラキラした剣の様なものを握らされて、振り回して……」
「ああ、メイさんの聖属性剣ならそこに置いてあるよ!」
「せいぞくせいけん?」
(せいぞくせいけん……世俗意見? 何てコメントすれば……)
「はい、私とミオからのお礼の品ですわ。あと、シドもメイさんへのお詫びにと言っておりました。シドは剣の調整の後、クエストを受けに出て行きましたわ」
(おれいのしな……お? 例の品? 何か注文したっけ?)
「はい、これね」
(これはロングソード。私の持ってるものと同じくらいの長さで、柄も鞘もシンプルで、普段使いの剣のよう……。公爵家の放出品かな? おれいのしな……ああ、お礼の品ということか! 今使ってる鋼鉄のロングソードは伯父の形見で、大切に使ってたんだけど、結構あちこち痛んできてたんだよねぇ。とってもありがたいけど、 私何にもしてないのに、お礼って、受け取っていいのかな?)
「私、何もしてませんけど、お礼なんて、いいんですか?」
「何言ってんの! メイさん、私たちのためにゴブリン迷宮を貸切にしてくれるよう支部長に交渉してくれたり、自分の儲けにならないのに囮役を引き受けてくれたり、黙々と魔石とドロップ品集めを手伝ってくれたり、魔石が多かったので、査定に時間がかかるので納品は自分がするって言ってくれたじゃない!」
「そうですわ。ギルドから給与が出るとはうかがっておりましたが、ドロップ品の収入がメイさんに全く入らないのは私たちも心苦しいですわ。せめてもの気持ちですから受け取っていただきたいですわ」
(私、本当に何にもしてないのに……。貸切にしたのは二人を目立たせないためだし、囮役をしたのはそれくらいしかできること無かったからだし、魔石とドロップ品集めも二人だけにさせてたら私の何もしてない感が増して居たたまれないだけだし、査定に納品したのは二人をギルドに近寄らせないためだし……。でも、これで二人の好意を拒否してこの後一年間気まずくなるのも嫌だなぁぁ………)
「わ、分かりました。伯父の形見の剣が痛んできていましたから、ありがたく使わせていただきます」
「その剣、魔物特効があるから、とっても役に立つよ!」
「そうですわね。切った相手に聖属性攻撃を与えますから、弱い魔物なら一撃で、強い魔物にも継続ダメージを与えますわ」
「まものとっこう……せいぞくせいこうげき……??」
(………………………ふ、二人の言ってることが何一つ分からない。ど、どうしよう…………)
「でも、その剣、ピカピカ光るので鞘に納めてないと、奇襲がばれちゃうよね!」
「そうですわよね。そのあたりは玉に瑕ですが、効果上、仕方ないですわね」
(や………や………やばい………やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、これはやばいぃぃぃ! こ、こ、この光は聖属性の光! 聖属性……聖属性……聖属性、せいぞくせいけん…………聖・属・性・剣ん?!! な、な、な、何を私は持ってるのぉぉぉ?! こ、こ、これって、国宝級の剣じゃないのぉぉぉぉ?!!)
「あ、あ、あの………」
(何か言わなくっちゃ! こんなの受け取れない!! 絶対、絶対、絶対、ぜぇぇぇったい!! 無理ぃぃぃ!! どうにかして、どうにかして断らなきゃ! でも、どうやって、どうやって断るのぉぉ! これって、公爵家からの下賜品だよねぇ!! そんなの、断った途端、不敬罪で捕まっちゃうよぉぉぉ!! どうすれば、どうすれば、どうすれば………そ、そうだ! ギルドだ! ギルドに行って渡してしまおう!)
「あ、あ、あの……ギルドの規約で、わ、私たち教官がお礼の品を受け取った際にはギルドに報告の義務があ、ありまして……、今から報告に行ってきてもよ、よろしいでしょうか?………」
(と、とっさの嘘としては、よくつながったわ! これで、この場からは一旦逃げることができる……)
「そうなんだ。じゃあ、私たちもギルドに顔を出すよ」
「そうですわね。ギルドに寄った後、本日もゴブリンダンジョンに行って、この剣の試し切りをしてみたいですわ」
「それいいね! 大賛成!」
(まずい! この二人が同席すると、ギルドにこの剣を押し付けられない!!)
「あ、あの、ギルドに寄るとダンジョンに遠回りになります。私だけ急いでギルドに行ってきますので、お二人はここで少しお待ちください。すぐ行って参りますから」
(お願い! おとなしくここで待っててください!)
「別に大した距離じゃないから、気にしなくっても……」
「まあ、メイさんのお心遣いですから、お受けしてその間、私たちはメイさんの朝食のお弁当でも用意して待つのがいいですわ」
「そうだね。メイさんご飯まだだから、行く道で、歩きながら食べられるものを用意しておこうか?」
(ど、どうにかなったぁぁぁ!!)
「お二人ともありがとうございます。では、行って参ります!」
「いってらっしゃーい!」
「お気をつけてですわ!」
(ど、どうにかこの場はやりすごせたけど、ギルドまでこの国宝を持って行かなきゃならないなんて……い、胃が痛い……)




