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第12話 結界師は自分のスキルを確かめる

「やはり、結界の形状変化がスムーズになってるな……。それに、意識すると色を付けられるようになった……」


俺は新人冒険者試験の後、帰宅する道すがら自分のスキルを確かめることにした。


もちろん「冒険者は家に帰りつくまでが冒険」であることは忘れていないが、今はD級冒険者の方々が俺たち新人を取り囲むように移動しているため安全が確保されている。

常時緊張状態でいることは逆に良くない。

仲間を信頼し、任せる時は任せることも冒険者の心得だと読んだことがある。


ちなみにミオとキャサリンはフィーネさんからその様な冒険者の心得を聞きながら歩いている。


二人には明日から必要な知識だろうけど、俺は当面、街の中で雑用クエストだろうから、今は三人の会話から外れて自分のスキルを確認することにしたのである。


「グラスウルフの討伐時には簡単な輪型の結界が作れたけど、今はもっと自由度が上がった気がするな」


俺は色付きの結界を球体、立方体、星型、棒状、箱型などいろいろな形状に次々と変化させた。


「結界の生成は何か無属性の法力を形成するのと似てる感じだな。違いは、一旦形成した結界は意識して維持しなくてもそのままの形状が維持できるという点だな……」


無属性の法力は常に形状維持に意識を割く必要があり、意識が途切れると法力は霧散してしまう。


また、高圧縮の無属性の法力は急にコントロールを切ると爆発することもある。


以前はよく意識が途切れて爆発させてしまい、近所の人が警吏に通報して、伯父さん伯母さんに迷惑をかけたものであるが、今はそんな失敗は決してしないくらいに鍛錬を続けてきた。


一方、結界師のスキルで形成した結界は、たとえ俺が寝ていたり、失神しても形状が変化しない。


それは常時発動型の職業スキル固有の性質だ。


ミオのような前衛の職業の場合、身体強化は常時発動しており意識しなくても身体強化が途切れることはない。


戦闘を行う際に重要なのは敵に集中できるかどうかだ。


身体強化に意識を割くことなく、敵の動きにだけ集中できることは冒険者として重要な要素だ。


その点、俺の今の戦闘スタイルは冒険者向きではない。


俺は一対一でなら無属性の法力の身体強化でミオと戦っても決して負けない自信がある。


しかし、この自信はあくまで『一対一でなら』だ。


俺は無属性の法力による身体強化をしつつ、戦闘を行う訓練を続けてきた。


その中で気づいたことは、この戦闘スタイルは多対一の戦闘には向いていないということだ。

今日の戦闘でそれがよりはっきりした。


今日のグラスウルフでの戦闘で俺は無属性の法力による身体強化で戦うことを選択しなかった。


持っていた武器が細身の槍だったことも理由ではあるが、無属性の法力の身体強化をしつつ複数の個体に意識を割いて戦うのは、勝てたかもしれないが、リスクが大きいと判断したのだ。


結果、俺はグラスウルフに法力を流し込み足止めに徹することを選んだ。


リーダー個体にとどめを刺せたのは、法力を流し込み続けることは身体強化を維持し続けることよりも単純作業だったからだ。


それに魔物がグラスウルフのように、身体強化されていない俺の力では刺し通せない様な強固な個体の場合、俺はひたすら足止めに徹するしかできなかっただろう。


また、ミオたちが受け持っていた個体が一匹でも突破してきたら、俺はあっさり倒されていただろう。


その場合、俺が足止めしていた個体が動き出し、俺は命を落としていたかもしれない。 それほど危うい状況だった。



戦闘の安全性だけでなく、俺たちの職業成長の面でも考えてみよう。


さっきの買い取り査定の金額からいって、おそらくギルド側は続けてホーンラビット狩りを俺に期待するかもしれないが、今日の経験からそれは断った方がいいと感じた。


ホーンラビット狩りでは魔物を倒した際の職業成長率が悪すぎる。


ミオやキャサリンはもっと強い魔物と戦って職業スキルの成長を高めるべきだ。


俺に付き合ってホーンラビット狩りに付いてきていては、彼女たちの成長が遅くなる。


かといって、俺が他の冒険者とパーティーを組んだり、他の冒険者を雇うことはミオが絶対に許さないだろう。


「やはり、今の俺ではミオたちと一緒にはパーティーを組めないな……」


俺は明日出される結果で俺がH級冒険者になることが一番ミオたちにとっては良いことだと思えた。



しかし、俺もこのままというつもりはない。


ミオたちがD級以上の中級冒険者になるまでには多対一の戦闘方法を編み出して、俺もG級に昇格できればと思う。


そのためにはどうにかしてこの結界を多対一の戦闘につなげる工夫をせねばならない。 俺はそう思いつつ、結界の性能の確認を続けた。


「問題はやはり強度と結界の生成数だな……」


結界師は防御職だ。 だが、その結界の防御力が低い。

また、今のところ生成できる結界の数は一つのみだ。


俺の知っている過去の結界師の例では、結界を生成しつつ魔物を討伐し続けることで結界の数は増えていくようだ。


しかし、肝心の強度が弱くては魔物を倒していくことは困難だ。


俺は結界を作り、それをナイフのように圧縮形成した無属性の法力で刺してみた。


身体強化していない状態だと何度か耐えたが、身体強化して刺すとあっさり一発で刺し通してしまった。


ちなみに無属性の法力のナイフは透明で他の冒険者には見えていない。


「これじゃあ、ホーンラビットの全力の突進は止められないな……」


俺は愚痴をこぼしたが、その時、おかしな光景を見た。


「なんだこれ?!」


俺は刺し通された結界が無属性の法力と融合していくのを見て驚いた。


(ひょっとすると、結界と無属性の法力は相性がいいのかもしれない⋯⋯)


まあ、どちらも元々は俺の中から外部に出た法力なのだから、相性は悪いはずはない。


そう思って、俺は立方体に圧縮形成した無属性の法力を覆うように結界を生成してみた。


「あれ? 無属性の法力の制御がしやすい……いや、しなくても形状を維持できる!」


俺はまた驚いた。 なんと、無属性の法力を結界で包むことにより法力が霧散せずに固定化できるようだ。


これを見て、俺は直感的に閃いた。


「これって、ひょっとして体外で法力を貯蔵するタンクになるんじゃないか?!」


俺は結界の中から法力を吸い出して体内に戻して、また再び結界内に法力を注いでみた。


(そうだ、 これは法力ポーションの代わりに使えそうだ!)


ポーションの様に液体を飲み込まないのでお腹がタポタポになる心配がない。


俺はさらに効果的な使い道を考える。


「待てよ、これ鍛錬に使えるんじゃないか?」


体内の法力容量は、法力切れ手前の飢餓状態を一定刻経過することで増やすことができる。


だが、法力切れになるぎりぎりまで体内から法力を出すと意識が朦朧とし、法力の形成維持がとても辛くなるのだ。


初期の鍛錬で法力を爆発させていたのは、正にこの意識が朦朧としている時だった。


今では俺は朦朧としつつも法力の形成を失敗することはないくらい手馴れているが、維持が辛いことには変わりがない。


そこで、この結界内に無属性の法力を貯める方法だ。


これを使えば、ぎりぎりまで結界内に法力を貯めた後、ぶっちゃけ寝てしまっても問題ないのだ。 今日帰った後、寝る前にこの方法を試してみよう。


「何してんのシド? もうすぐ西門だよ」


色々と考えているうちに西門の前まで来ていた。


「ああ、ちょっと結界について調べてたんだよ」


「そうなんだ。ねえ、今日だけどキャサリンに泊っていってもらおうかと思ってるんだけど」


「え? あのミオの汚部屋に……グフォ! み、みぞおちに肘鉄はやめろ!」


「シドが余計なこと言うからよ! 急いで片付ければ大丈夫よ!」


「まあ、伯父さん伯母さんが良いって言えばいいんじゃないか」


「それはたぶん大丈夫よ。キャサリンのお泊り、楽しみだわ!」


そう言うとミオはキャサリンの所へ戻っていった。


「あの二人を納得させた上で俺がH級に留まる良い方法があればいいんだけどな………」


俺は結界師の長所を見つけたが、一方で二人と一緒に冒険をするにはまだ時間が必要だと感じる。


「二人と一緒に冒険ができない言い訳を考えなくちゃな……」


俺はそうつぶやいて、家までの帰路を言い訳を考える時間に充てたのだった。



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