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命の行方  作者: 焼魚
第1章:邂逅・啓発

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5/5

5:武器選び

霞田さんはそのまま、道場とは反対の方向に歩き始めた。すると一度足を止め、振り向いたうえで「ああそうだ。あの二人に気にすることないって言っておいて」と、私へ告げた。


「わかりました」とだけ言い、道場へと戻る。

そこには、頭を抱えるハルトがいた。


「な……なあミオ。あの人俺のこと、何か言ってなかったか?」

「ん? ああ……“気にすることない”ってさ」


霞田さんからの言伝を聞き、ハルトは膝から崩れ落ちた。

「よかったぁ〜……」


力ない彼の様子を見て、私はミツハへと訊いた。

「やっぱ霞田さんのこと斬ったのがヤバかったの?」

「ヤバいなんてもんじゃないね。最悪私たち二人とも首が飛んでたよ」

「えっ、そんなに?」

「『反乱を起こしてはならない』。亡霊狩りで最も重要視されている規則。これを破ると、亡霊狩りとしての資格の剥奪と永久に牢屋暮らし、もしくは死刑になるんだ」

「へぇ〜……なるほどね。道理でハルトがこんなになるわけだ」


その時、ミツハのスマホから着信音が聞こえた。彼女はスマホを取り出し、耳に当てる。

「もしもし御影さん?」


どうやら、電話の相手は御影さんのようだ。彼女は相槌を打ちながら、少しの間電話によって会話していた。電話を終え、彼女は私たちへと言う。


「御影さん急用ができて本部に戻ってこれないから、先に帰っていいってさ」

「そっか」


したがって私たちは本部から出て最寄りの駅──高台たかだい駅へと歩いた。二人の家は私の家とは真反対の方向にあるそうで、駅のホーム内で彼女らとは別れることとなった。その際、私は彼女らと連絡先を交換し「何かあった場合にはすぐ呼んで良い」と言ってもらった。


私たちは笑顔で別れの挨拶を交わす。

「それじゃあ、またね」

「うん、また」


    **


高台駅から3つほど駅を跨ぎ、私は今、本元もともと駅の前にいる。歩きながらスマホを取り出し、時刻を確認した。現在時刻20時24分。私の家に門限などはないが、あまり遅くなるのも良くないだろう。


……それに、今日は寄り道をするような雰囲気じゃない。

電車に揺られながら、考えていた。マイとユウナのことを。二人は、私のせいであの化物に殺された。そして今後、他の私の友達たちも同じような目に遭う可能性がある。


学校に行くのはダメだ。そして今まであった交友関係も、切らなければならない。

そう考えると、胸には寂しさが刺さった。


徒歩15分。私は家に辿り着いた。呼び鈴を鳴らすと、母が現れた。

「おかえり。遅かったね」

「ちょっと色々あってさ」


今日あった出来事、亡霊狩りに所属したということ、世間から狙われているということ。それらの情報は秘匿しなければならないと、御影さんから念を押された。たとえその相手が、母親であったとしてもだ。


そして学校へ行く代わりに、毎日本部へと通い、御影さん指導のもと能源や能力のトレーニングを行うこととなっている。これから先の日々は、亡霊狩りとしての基礎を作っていく見通しだ。


食事、風呂を済ませ、一度自室のベッドに寝転んで天井を見上げた。今日のことを振り返る、なんてことはしない。きっと、哀惜と自責の念とで、感情がぐちゃぐちゃになってしまうだろうから。


ベッドで寝転び、感情を殺していると、母が私の部屋の扉の場所に立っていた。

「ミオ。今日なんかあったの?」


できる限りの作り笑顔で、私は母に接する。

「ん? ううん。別に何も」

「……そう。早く寝なね」

「うん。おやすみ」

「おやすみ」


母はリビングへと戻っていった。

……きっと、私に何かがあったことは感づかれている。母は女手一つで私をここまで育ててくれた。何年も一緒に過ごしている人間の表情の揺らぎに気づくことなど、造作もないことだろう。


気が重いな。


    **


翌日午前8時、私は制服で亡霊狩りの本部へと向かった。入口付近には御影さん一人の姿。ミツハとハルトはいなかった。


「おはようございます御影さん」

「おはよう。よく来てくれたね」


挨拶の際、私は彼から手帳のようなものを受け取った。それは、霞田さんが持っていたものと同じ体裁のものだった。

「これが君の“証明手帳”だ」

「証明手帳?」

「そう。亡霊狩りとしての身分証明のために使うもの。常に持っておくと良いよ」


その後私たちは本部の中へと移動し、道場ではなく、地下にあった空間へと足を運んだ。そこには道場の扉と同じようなサイズの扉。開けると、その向こうには、剣や盾など無数の武器が置いてあった。


「……すっごい数ですね」思わずそう口に出すほどに。


「全部訓練用の武器さ。今日は君に適した武器を探していく。それと並行して能源の流し方も訓練する。オッケー?」

「オッケーです」


私に適した武器……か。一体何だろう?

こういうのは自分で評価するよりも、人から評価してもらった方が良いだろう。自分で捉える自分の輪郭なんて、人から見たらちっぽけな一部なのだから。


と、言うわけでそれから私は御影さん付き添いの下、自らに適した武器を探し始めた。


まずは盾。小中大すべてのサイズを試したが、体術に精通していない私にとって、盾はかえって邪魔になった。

次に銃。こちらは実弾ではなく、能源を銃に込めることによってその能源を小さな弾丸のように打ち出すといった仕組みのもの。但しこれは精密な能源の操作技術が必要とされるため、今の私では銃弾を放出することもままならなかった。


色々と試したが結局は“刀”が一番しっくりときた。昨日ハルトのを使わせてもらっていたということもあったかもしれないが、私は刀に能源を最も強く流すことができたのだ。


「決まりだね。ミオの武器は刀だ」


私は刀を鞘に納め、御影さんの話を聞く。

「刀ならハルトが戻ってきてから教えてもらった方が良いね。俺たちは能源操作の方を訓練していこう」

「……そういえば、今更なんですけど二人は今日いないんですか?」

「二人は今日、それぞれ単独で任務にあたってる。多分、昼過ぎには戻って来ると思うよ」

「学校には行ってないんですか?」

「任務が無い日はたまに行っているそうだけど、そこら辺は俺も詳しくは知らないな」


てっきりミツハとハルトは、平日は学校に行っているのだと思っていたのだけれど、実際はそうじゃないみたいだ。

「それじゃ一度、休憩を挟もうか。昼は何か奢るよ」

「えっ、いいんですか!?」

「うん」

ラッキー!


    **


ミオと御影が武器選びに勤しんでいる間、ハルトは単独での任務遂行のため、本部から遠く離れた位置にある宵暁よいぎょう市の外れ、崩れかけた廃墟へと足を運んでいた。


本日そこでは銃の違法取引が行われる予定であり、ハルトの任務はそれを現行犯で捕らえることだ。

そして時は来た。二人の男がそれぞれ廃墟の中へと忍び込み、両者持っていたアルミ製のトランクを交換する。片方には金、片方には銃が入っていた。


ハルトはトランクが両者の手に渡った瞬間、隠れていた瓦礫から飛び出す。

それから間もなくして、ハルトは二人を手錠で拘束することに成功した。ハルトは彼らを床に座らせ、本部から亡霊狩りの人間が来るまで、彼らから話を聞くこととした。


「銃なんて密輸して、一体どうする気だったんだ?」

「…………」

「だんまり、か。まあいいさ。いずれわかることだしな」


その時、拘束していた一人の男がハルトを嘲笑うような表情で言った。

「悪いな。俺たちは一方通行の人間だ」


瞬間、彼らの体が内部から淡く発光した。本部──御影から情報を受け取っていたハルトは、その光をもとに推測し、トランクを持ってその場から逃れようと、走り出す。


同刻、彼ら二人の体が爆発した。


    **


「……ったく、散々だ」

「あ、ハルト帰ってきた」


道場にて、能源操作を訓練していたところ、ハルトが任務から戻ってきた。彼は不機嫌そうな顔を浮かべながら私たちへと言った。

「“能力者連盟”の奴らと交戦した」

「……! 本当かハルト! 詳しく教えてくれ」

「ああ。まあ交戦って言っても、奴らは戦闘向きの能力じゃなかったみたいだからな。余裕で拘束できた。その後で奴らの体が“爆発”したんだ」


能力者連盟。爆発。その二つの言葉が私の心に不可解を生み出した。

「ハルト。能力者連盟って?」

「ミオか。……御影さん。説明は?」

「…………忘れてた」


このような経緯から、私は御影さんより能力者連盟というものに関する情報を得た。


能力者連盟。昨年結成されたというその組織は、世を統べることを目的として暗躍している。現在、その目的のため、私が狙われているそうだ。

そして、その組織に所属する人たちは、体内に爆弾を仕込まれている。というより、起爆のタイミングは爆弾を仕込まれた本人によって決定することができるため、一種の自死の手段であると言えるだろう。


ハルトはそんな能力者連盟に所属する者同士の銃の違法取引の現場を押さえ、彼らを拘束した。その後で爆発を起こし、命からがらその爆発を避けることに成功した。


一連の話を聞き、私は気になった点を尋ねた。

「ちょっと質問。何で能力者連盟の人同士で取引を?」

「そこは俺も気になった点だ」


爆発した人は二人。つまり二人とも能力者連盟に所属していたということ。同じ組織に所属するのであれば銃は共有すればいい。そうはせずに一対一の取引をわざわざ人気のない場所で行うのには理由があるのだろう。


「御影さんはどう思う?」

「……考えられるのは大きく分けて三つだろう。組織内で武器を共有するために金銭を要求するようなこすい連中か、組織内での個々の繋がりがあまり強くないか、」

「もしくは彼らの一人が実は能力者連盟の奴ではなかったか、だな」

「……どういうこと?」

「“対象と自分の状態を同じにする”なんて能力を持つ能力者だったら、二人が同時に爆発しても不思議じゃないだろう? それに俺は奴らの能力を見ていないからな」

「なるほど」


その時、私たちのもとへ、霞田さんがやって来た。

「やあ三人とも」


その声、言葉、姿にハルトがビビっていた。

「お疲れ様です! 霞田さんっ!」

「お疲れハルト君」


御影さんは彼へと言った。

「用件は?」

「相変わらず話が早くて助かるよ。上層部からの通達だ。内容は『煌然澪への司令』」


途端、御影さんの表情が怒気を含んだものへと変わっていたが、私はそれに気づくことなく霞田さんへと訊いていた。

「私への指令? どんな内容ですか?」

「ミオさん。君にとっての初めての仕事だ。そこのハルト君と一緒に沖亜おきあ市にいる『傀儡使い』という亡霊を捕まえてほしい」

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