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命の行方  作者: 焼魚
第1章:邂逅・啓発

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3:能力、その分類

「お手柄だな、御影」


果てしなく広がるような黒の空間。そこは亡霊狩り上層部の人間らとの連絡を取るための場であり、御影を中心として、四方八方から人の声がするという状況。御影は両手をポケットに突っ込みながら、彼らと会話をしていた。


「これから一年ほど、ミオの管轄権を俺に譲渡してくれません?」

「それは無理な話だな。もし暴走して儂らにまで被害が及んだらどう責任を取るつもりなんだ?」

「そんな事態にはなりませんよ。それとも、少女一人の力にねじ伏されるてしまうような組織なんですか? この亡霊狩りという組織は」

「そういう話ではない。非常時の話をしているのだ」

「臆病ですね。あなた達上層部の人間は。そんなんだから亡霊狩りの殉職率は上がる一方なんですよ」

「減らず口は相変わらずだな。……まあ良いだろう。これ以上お前の相手をするのは煩わしい。ただ、その代わり煌然澪の制御が効かなくなった場合、お前がどうなるかは理解しているよな?」

「ええ、当然ですよ」


かつて上層部との契約────口約束であったとしても、それを遵守できなかった者たちは、皆余すことなく消息を絶っている。言葉の通り、御影はその事を理解していた。


    **


「取り敢えず、ミオの管轄権に関しては剥奪できた。あいつら、ちょっと挑発しただけで顔面真っ赤だったよ」


半笑いしながら、御影さんは私たちにそう言った。私はその凄さをイマイチ理解できていなかったが、ミツハさんとハルトさんの反応から、その程度の著しさを知った。


「この人マジか……」


「凄い」と言うよりかは「ドン引き」の方が近いかもしれない。御影さんは私たちを先導して歩き始めた。


ここは県の外れにある亡霊狩りの本部。ドームのような大きさをしている建物だ。私たちは今、厳重な検問を済ませこの建物の中を歩いている。


私は少し気になった点があり、隣を歩いていたミツハさんに訊いてみることにした。

「ミツハさん。御影さんって上の方と仲悪いんですか?」


先程の口ぶりや様子からして、彼が上層部の人間を好き好んでいるようには見えなかった。ミツハさんは私へと言う。

「ん〜、まあ亡霊狩りで上澄みの人たちはみんな嫌ってるかな」

「……? なんでですか?」


御影さんは私たちの会話を聞いていたようで、私の疑問に口を挟んで答えた。

「あいつら大した実力者でもないのに偉そうなんだよね。自らの地位に頼ってる感じ。面倒な仕事は全部こっち側に押し付けるし、全ての言動が上から目線。それがどうも気に食わない」

「それは嫌ですね」


「色々な事情がある」と、そう解釈してこの話題はこれ以上掘り下げないことにした。とその時、私たち二人よりも少し前を歩いていたハルトさんが言った。


「というか、ミオ。いつまで敬語使うつもりだ? 俺達は同じ年齢なんだからタメ口で良いぞ。あと呼び捨てな」

「えっ、同年齢?」

「うん、私達二人とも高校一年生。ミオと同じだよ」

「あ、そうなんだ。えっと、じゃあ……タメ口で話すね」


私は決してコミュ強というわけじゃない。コミュ障とコミュ強の間で、どちらかと言えばコミュ障寄りの人間だ。同じような年齢だとは思っていたが、こうやって自然とタメ口にさせてくれるのは、私としてはありがたい。


先導していた御影さんが、足を止める。

「着いたよ君たち」


彼は目の前の、自身の三倍はあるであろう重厚感のある扉を開ける。するとその先には、道場のような空間が広がっていた。体育館のような木目の床とそれに沿った壁。


その空間へと足を踏み入れ、御影さんは振り返り、私たち三人と向き合うような形を取る。

「さっ、それじゃあ死なないためにも、まずは訓練をしよう。ミオ。今から君に、幾つか質問をする。まあ義務教育で習うような範囲だから、気楽に答えてくれ」

「わかりました」


とは言いつつも、義務教育を真面目に受けてこなかった私からしてみると少し心配だ。

「能力を扱うために消費するものは?」

「『能源のうげん』……ですよね?」

「正解。じゃあ分類される能力のタイプ2つを答えてくれ」

「えっと確か……『事象』と『非事象』です」

「その通り。流石だね」


能力とは、身体に備わった個々人が有する千差万別の力。体を動かす時に筋肉を利用するように、その力を利用するためには、能源という媒体が必要。また、この脳源というのは生体に宿る生命のエネルギーである。


能源を利用した能力は2つのタイプに分類される。事象タイプと非事象タイプ。事象とは能力の効果が体の外で現れるもの。非事象とは能力の効果が体の内に現れるもの。例を挙げるとすれば、事象はミツハの放換ブラスト、非事象は肉体や身体能力を強化させる能力、といった感じだ。


確かに、御影さんの言った通りこの程度の知識は義務教育の時点で身につけたもの。答えられなければならないという常識的なものだ。


「じゃあ次は少し専門的なところを攻めようか。事象は2タイプ、非事象は2タイプ。それぞれまだ分類することができるんだけど、知ってる?」

「えっ……いやぁ〜、わからないですね……」

「まあここは習わないからね。じゃあ説明しよう。ミツハ。手伝って」

「わかった」


ミツハは御影さんの隣に立つ。彼は彼女の肩をがっしりと掴んだ。

「ミオも直接見たからわかるだろうけど、ミツハの能力は事象の能力として分類される。ただ、この時ミツハの能力は『ベクトル系』の能力として更に分類されるんだ」

「ベクトル系……?」初耳の言葉だ。

「そう。方向と大きさ、即ち長さを持った能力のことをそう分類している。そして俺は、事象から枝分かれする2つの分類のうち、ミツハとは異なる分類に位置する能力を持ってる」


そう言い、御影さんは距離を取ってからミツハへと手のひらを向ける。対してミツハはあの時の杖を再び同じ方法で彼へと向けた。


「『放換(ブラスト)』」


ビームが御影さんに向かって直進していく。それが御影さんの手に触れた瞬間、ミツハの能力は粉々になり、空気中に舞う粒子のようになって爆散した。


「これが俺の能力『消散(デランヴ)』。相手の能源の流れを乱すことで能力を無効化する能力だ。『具変(ぐへん)系』という、事象のうち、対象に関わらず能源を変化させたり具現化することができる分類に含まれる」

「ベクトル系と具変系……それが事象から枝分かれする分類なんですね?」

「物わかりが良いね」


御影さんはミツハを引き寄せ、その肩に手を乗せる。

「俺は具変系、ミツハはベクトル系。そしてハルトは非事象タイプ。ハルト、君も手伝ってくれ」


彼は名指しされ、無言で前へ出る。御影さんはポケットに手を突っ込み、ボールペンを取り出した。そしてそれをハルトの前へと放る。


ハルトはそのボールペンへと能力を発動した。

「『追重力(プラスグラビティ)』」


空中にて、ペンは垂直に、勢いよく落ちた。ハルトは説明し始める。

「物体に掛かる重力を増加させる。それが俺の能力だ」


御影さんはペンを拾い、ハルトの肩に手を回す。

「ハルトの能力は非事象のうち、能力の使用者以外の物・人に対してその効果が付与される能力『他者系』に分類される。また、自分に対して能力の効果が発揮される能力の分類が『自己系』って呼ばれてる。この場にその分類の能力者はいないけどね」


なるほど、と私は心の中で情報を整理する。


能力の大まかな分類は『事象』と『非事象』の2つ。

事象は『ベクトル系』・『具変系』、非事象は『他者系』・『自己系』に分類される。


「そしてミオ。君の分類は────」


その言い出しを聞かされ、私は内心ドキドキしていた。

私の分類……! 何だろう? 今までの話でいくとベクトル系? いや具変系かな?


「『特異』と呼ばれる分類だ」

「……特異?」


ドキドキは爆ぜて無くなり、私の頭には疑問符が浮かんでいた。


    **


立本たつもと 正志まさし。男。32歳。独身。対亡霊犯罪専門組織、通称亡霊狩りに所属。

上層部からの命令により、本日15時より能輩、筒井つつい 蓮也れんやの事情聴取を行う。尚、同人筒井は亡霊狩りに所属する御影 亮によって拘束された。


現在彼は亡霊狩り管轄下の建物内、他の亡霊狩り監視のもと、取調室に立本とガラス一枚隔てた空間に拘束されている。

「教えてくれ筒井。なぜ煌然澪を狙った? お前は能力狩りの人間じゃないよな?」

「…………」


筒井は沈黙を貫いていた。立本は続ける。

「そのまま黙秘しても構わないが、もうじき人の頭の中を覗ける能力者がやって来る。今喋らずとも、後で真実は確実に明らかになる。いいか筒井。これは俺からの優しさなんだよ。事実を述べるタイミングは自分で選ばせてやるって言ってるんだ」


筒井がため息を吐きながら口を開く。

「お前ら亡霊狩りに教えておいてやろう。去年の五月……中旬だったかな。一部の亡霊と能力狩り、能輩とが同盟を組み『能力者連盟』が発足した」

「何だと……!?」

「お前らが自然発生する亡霊をのうのうと逮捕する中、俺たち能力者連盟は社会の闇に隠れ、着々と力を身に着けた。今となっては国家の軍をも凌ぐ勢力だ。そして俺たちは今、勢力を上げて煌然澪の捜索に着手している。この意味がわかるか?」


立本の脳裏に焦燥が迸る。それは自身が個人で感じるもの、それとは異なり、組織に所属しているという義務感から感じるもの。


「煌然澪の能力は、この世の理を壊す能力だ。使用者次第で世界が滅びかねない。だから俺たち能力者連盟が彼女の能力を頂き、世を統べる」


立本は鋭い眼光で筒井を見る。対して筒井はへらへらとした態度を取っていた。

「そんなこと、俺たちがさせねぇよ」

「……ああ、そうだ。もう一つ教えておいてやろう。俺たち能力者連盟は互いに信頼関係を結ぶため、一部の人間の体内には能力者の爆弾が仕込まれている。そしてその起爆のタイミングを決める権利は当人と能力者にある」


途端、筒井の体が内部から照らされるように淡く光った。

「助かるといいな、亡霊狩り」

「クソッ……!!」


筒井の狙いを理解すると同時、立本は能力の発動を試みるも、結果としてそれは間に合わなかった。

半径80メートル。亡霊狩り管轄下の施設の消失と共に、周囲にあった建物がその被害に遭う。


死亡者、立本 正志を含む117名。負傷者58名、うち重傷者46名、軽傷者12名。

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