第2話
「では、この家に住んでいたのは、被害者の他に、あなた方三人だけ。間違いないですね?」
奈土力警部という捜査責任者が、俺たち三人を一室に集めて、最初にそう確認してきた。
「はい、間違いございません」
神妙な顔つきで、明美が答える。死体を発見した時の怯え様が嘘みたいに、すっかり落ち着いた態度を見せていた。
俺たち三人は兄弟姉妹ではなく、従兄弟同士だ。その中で一番の年上は明美であり、だから三人の代表のつもりなのだろう。
「他に使用人が二人いますけどね。彼らは住み込みじゃないから『住んでいる』には相当しないでしょう」
横から牧彦が口を挟む。
「使用人に聞けばわかると思うので、先に言っておきますね。僕たち三人、ずっと伯父の世話になってきましたが、けっして仲が良かったわけではありません」
平然とした顔を見せているが、内心は真逆なのだろう。いつもより饒舌なのも、その影響かもしれない。
「死者を悪く言うのも何ですけど、伯父は偏屈な老人でした。今この瞬間も、僕たちは悲しいというより、ホッとするくらいです」
「ちょっと、あーくん!? 何を言い出すの!?」
叫ぶ明美は、酷く驚いたらしく、体をビクッとさせていた。椅子から飛び上がるかのような勢いだ。
「いいじゃないか、明美姉さん。どうせすぐに知られることだから……」
「ほう? あなたは『あーくん』と呼ばれているのですか?」
牧彦の言葉を遮る警部。
眼光は鋭く、いかにも興味津々という雰囲気になっていた。