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王妃の所業

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 



 ホント奴との思い出はいい事など、これっぽっちもない。

 口を開けば、いつも嫌味や文句を言う奴だった。


「子も出来ないとは、女の出来損ないめ」


「何故子が出来ない。一日中すれば孕むのか」


 こちらの状態など気にせずに、義務の様に閨に誘う。

 子が出来れば終わるのか、いつもそればかり考えていた。

 私が妊娠しても気を使う事なく、仕事は増えるばかりで一向に減らない。

 休む暇ない程で、そりゃあ流産するよと納得もする


 それなのにヤツが私に執着する。

 馬鹿にするのもたいがいにしやがれ。

 死んでご縁が切れてさようならだろうが!ふざけるな!!


「かなりお怒りモードだね。姫ちゃんガンバ」


「仕方ありませんよ。全てアイツが元凶ですからね」


 大河と泉はヨシヨシと私の頭を撫でる。


「自分本位な感情を、向けられた相手は地獄だね。一度死んでるんだからわからないのかね」


「一度死んでるって奴がかい?」


「そうさ。死ぬ間際の執着感情だね。だから強いのさ。ちょうどタイミングが良かったんだろ。」


 ちょうど私が死ぬくらいに、奴も死ぬタイミングだったらしい。


「異世界だから時間の速さが違うのさ。」


 話によれば恒星に近い程時間の経過が速く、遠い程時間の経過が遅くなるそうだ。

 そこら辺よく判らないが、とにかくタイミングが最悪だったって事だな。

 だがもう奴との縁は切れたのだ。


「とにかくもう関係がない。会わなければそれまでだ」


「今では領地の立場も、姫巫女の価値も上がっている。そう簡単に無下にもできない」


 ”関係ない♪関係ない♪楽しいこと考えて、忘れちゃえ♪”


「姫様、マリリン様のご厚意で川の近くに温泉が出来ましたよ」


「朝風呂は最高の癒しだよ」


 フフフ♪もう奴の事はどうでもいいさ。

 朝風呂だよ。それも温泉!最高か!!


「幸せだね~。温泉、温泉、朝風呂、温泉♪」


 いそいそと皆を引きつれ温泉へ向かう。

 川の隣を囲う様に岩を組み風呂場が出来ている。

 ミミズ達が更にその周りを木々を使って囲い目隠しをする。

 土魔法でイスやテーブルを作って、使い易い様に整備した。


「ありがとう。素敵な風呂場が出来たじゃないか♪」


 服をいそいそ脱いで、暖かな湯船に浸かる。

 隣には他の従魔も湯船に浸かった。

 ただ問題は、ミミズ達以外が人型で浸かっている事。

 混浴風呂になっていた。


 ”まあ、私は幼女だからいいんだけどさ。うん、従魔だからいいのか?”


 もう深く考える事を放棄する。

 だって景色も良くて気持ちがいいから。


「風も心地がいいね。温泉に入ったのはいつぶりだろう」


 あちらの世界でもある程度歳をとると、温泉にも行かなくなる。


 ”80歳までは行けたかな?”


 とにかく久しぶりの温泉思う存分に堪能する。


「さてここでのんびり会議としようか」


 風魔が酒を片手に、場に合わない事を言い出した。

 海流もコップを差し出し飲むつもりらしい。


「姫様、先程のライチ、隣の川でまた冷やしております。頂かれますか?」


「風呂に入りながら食べるのは楽しそうだ♪」


 皆も楽しそうだし、私も楽しむ事にしよう。

 ウダウダ言っても、相手は人ではない。

 悪酔いする事もないだろう。

 マリリンも酒を飲むらしい。

 ミミズの一郎以外はどこかへ遊びに行ったようだ。


「この前の麻薬の件だが、俺が聞いた話では最近こちらに越して来たらしい。ちょうどこの領が盛り上がってきた辺りだな。そして最近は神官どもの出入りがある事で、周りの皆が気にしていた様だ。」


「こちらにも民達から、何人かの神官を見たと言う者がいた。うちの領は教会よりも御社寄りの者が多いから、なぜ神官がと思いわれらに関係があるかきいてくる。」


「全く関係ないって言うけどね♪」


「そうそう、この国の神官とは関係ありません♪」


 教会でも一枚岩じゃない様だね。

 教会のお祈りの場所も慎重にしなきゃいけないらしい。


「いつも太陽にお祈りしているじゃないか。あれで十分なんだよ。祈りはいつもちゃんと伝わっている」


「教会は人が作ったモノだからね」


 風魔とマリリンも教会にはいろいろと思う所があるようだ。


「この国の教会は独自の考えばかり先行して、本山をおろそかにしているからな。そのうち鉄槌がくだされるだろう」


「そうだな。神に仕えている割に、神の願いとは真逆な事をしているのだから笑える」


 ”だからご主人様はこの国の教会は無視でいいからね。”


 麻薬と関わりがあるとか、その事も踏まえると教会は最悪だな。


 ”三郎の話だと王妃関係の貴族が今回関わりがあるみたい”


 王妃……… 思い出したくないね。


 王妃に関しては、とにかく複雑な思いしかない。

 子供の頃から関わった人だ。いいも悪いもなかった。

 母親と思っていた時期だってあった。


 ”王妃がどう思っていたかは知らないけれど”


 でも彼女が関わっているというなら、私も多少は知っている可能性はある。

 とにかくありとあらゆる仕事を私に請け負わせ、関わらせていた。

 王妃の仕事を覚える為だと言い、気にいらないとため息交じりに言う。


「まだまだね。どうしてこうなるのかしら?もっといい方法があるのではなくって」


 具体的な案もなく、ただ気に入らないという感情だけで言う。

 言われた方は堪らない。具体性がないから、何が正解かわからない。


 “なんか腹が立って来たな。ホントあの頃は碌な思い出がない”


 しみじみと縁が切れた事に安堵する。

 しかしウ~~ンと考え込む私。

 何故その事が発覚し、事件となったんだろうか?


 確か王妃付きの侍女が、お茶を飲んで倒れたのが発端だったような………

 とても親切な侍女で、私にもいろいろと心を砕いてくださった方だ。

 でもあの当時不思議だったのよ。

 あの時の王妃が妙に大袈裟?いつもより騒ぐような印象だった。

 皆はそんなに大事な侍女だったのかと同情していたけれど、私はそれがおかしくて笑いたくなった。

 だっていつも彼女は傷だらけだった。

 だから会えば、私はこっそり手当をしていた。

 私付きになる様に言ったけど、私に迷惑かかるからと断られてた。

 私が段々人が行う細かな行動に、意識を向ける様になったキッカケは彼女だ。

 王妃に対して疑問を持ち始めたのも、それが原因だった。


「王妃は慈悲深いとか出来た人など言うが、実際どうだった?」


「淑女の中の淑女とも言われていますよね」


 なんで魔物がそんなこと知っているのか疑問だけど、ホント外面の皮の厚さは凄い。

 さすが親子だと、変に感心したのを思い出す。


「お嬢の顔見るとそうじゃない様だね」


 マリリンがとても愉しそうに笑う。

 大河も泉もクスクスと意地の悪い笑いをしている。

 のんびり温泉に浸かりながら、自然豊かな木々に囲まれている。

 でも話している内容は不穏。


「とにかく意地の悪い人だったよ。自分をよく見せる事にも長けていた。そういった意味では淑女らしい淑女だろうね。微笑みの中に途轍もない残虐性を秘めた人だよ」


 私は侍女の彼女の事を思い出す。

 彼女はとにかく王妃に怯えていた。

 何故王妃付きになったのか?彼女に聞いても教えてくれない。

 だから初めて仕事以外の事を、ヤツに聞いたのだ。


「王妃付きの侍女がいてね。彼女は王妃の姉だった。そんな彼女を小間使いの様に使ってる。それが私でもおかしいと思い聞けば、身内程甘やかしたらいけないんだと、何の疑問も持たずに答えていた。ホント何て歪んだ考え方なんだろうね。クソみたいな人達だよ。」


 彼女は隠れた所でいつも王妃から虐待されていた。

 自分のストレス発散の為、あの笑顔の下でやっているのだ。


「ホント魔窟だな。俺達も残虐だが、人の残虐は快楽でしかないから質が悪い。」


「本能のストッパーは人ほど高いらしいが、意味をなさない者もいる様だ。人ほど血を分けた者を大切にすると思うのだが……… 」


「身分が高い程そんな(モノ)に意味をなさないんじゃないのかい。よく血で血を争うなんてある事じゃないか」


「「人も獣だね~~~♪」」


 ”魔物より質悪い♪”


 ホントにそうだね。

 淑女ではない、人の皮を被った獣だ。


「とにかく彼女がその麻薬の入ったお茶を飲んで倒れた事が発端だった。その後亡くなったから凄い騒ぎになってね。皆が王妃に同情をして、悲劇のヒロインの様だった。」


「それはおかしいね。だって虐待していたんだろ?」


「そうだから凄く滑稽でバカらしかった思いがあるよ」


 ホントアレには笑いたいやら悲しいやら、人を人とも思わない所業に嫌気がさした。


「王太子殿下はそれに対して、どう思ってたんだろうな」


「ただ鼻で笑って終わった記憶があるよ。王妃にも声掛けは確かにしなかった」


 皆が同情している中、ヤツは冷めた目で見ていた。

 王妃が呼んでも無視してどこかへ行った。


「多少は知っていたって事だな」


 風魔はため息をついて私を見た。


「よかったな。そんな魔窟と縁が切れて」


 ニカッと笑って私の頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。


「僕暑くなったから川で泳いで来る」


「私も~♪」


 私はのぼせる前に、一郎が頭に乗せてくれた。

 もちろんタオルを巻いた状態だ。


「だが実際はその王妃が関わっていたなら、口封じで殺されたって事にならないかい?」


「そうだな。そしてそれをオスバルド達に擦り付けたって事か」


「やっぱりそうなるよね」


 私はそれを知らずにいた事が申し訳なくなる。

 何も知らず知らされず、王宮の片隅で仕事に追われていた。


「だが何故この領に目をつけられた?お嬢が嫁ならそんな事はしないだろう?」


 風魔が不思議そうに私を見る。

 確かに言われてみればそうだよね。


「ねえ、その出来事はいつ頃あった話なんだい?」


「確か死ぬ五年前くらいだったね。側室が男の子を産んで盛大に祝われた年だから」


 ”側室ってこの前のアレ?”


「そうだね。アレだね。」


 前回とだいぶ様相が変わりそうだね。


「この領に何かあるのか、そこら辺はオスバルド達に聞かないとわからないな」


 海流も暑くなったのか立ち上がり、風呂から上がりながら言う。

 脇に作られたイスに座り、水を出し飲んでいる。


「姫巫女もいかが?」


 冷たい水の玉が目の前に現れた。


「ありがとう♪」


 ライチを食べていたけれど、水があるなら水も飲みたい。


「しかし考えれば考えるほど、建国は有りだね」


 マリリンも風呂の端に座り、くつろぎ涼んでいる。

 だから風魔も立ち上がり、同じく端に座った。

 皆一応嗜みを忘れていない。

 隠す処はちゃんと隠して偉いね。


 ”あのね。今三郎から最新情報が届いたよ。どうやらここの土地が欲しいらしいよ。ちょうど貿易港でしょ。その利権を手に入れたいんだって、後ご主人様の能力を手に入れたいみたい。自分の為に使ってあげるとか言って、ムカつく~って言ってるよ。報復してもいい?”


 イヤ隠密中だからダメでしょ。

 首をフリフリしてダメのサインをする。


「別にバレなきゃいいんじゃないか」


「報復すればいい。何様だ」


「俺が呪いでもかけるか?」


 コラコラそんな事言うから、やっちゃえ~とか一郎が言っちゃうしヤバいじゃないか。


「まあこれで以前の理由がわかった。お嬢もその後の記憶あるんだろう?それとどうやって擦り付けたかだが、これは俺の仮説だけどな。王妃はお嬢を人質にしたか、脅すかしたんじゃないのか?それに書類整理していたんだろ?そこに擦り付ける書類があった可能性もある。それくらいやりそうだろ?」


「なるほど、それに関わったのがその侍女の可能性もある訳ね。」


「タイミングも子が生まれたから、もう完全に執務関係を任せようと思った。孫を今度は利用する為に育てなきゃならないからな。ホント蜘蛛の様な女だな」


 言われてみれば確かにそのあたりから、仕事量が半端なく増えたような気がする。

 王もあの頃、よく療養のため離宮に行っていた。

 もしかして私は王の分まで渡されていたのか?!


「だとするとお嬢が過労死したその後はどうなったんだろうな?」


「ある意味ざまぁ展開があったんじゃないのかい♪」


「だから王太子ドリアスの執着の念か。なるほど、迷惑だな」


 ”三郎が王宮内の土地の栄養を最低限に引き下げたよ。楽しみだね”


 ちゃんと考えているもんだ。

 しかし土地の栄養分が最低限だとどうなるのか?

 せいぜい花が咲かなくなるとかくらいだろうか?

 景観のない城はそれはそれは味気なく貧相だろうね。(笑)

 いい気味だwそれくらいやり返してもいいだろう♪

 私だってやられたらやり返す。


 そこまで人間出来ていないからね。







読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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