久しぶりの日本食は旨い
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
今日の朝食?私の従魔大集合だ。
こういうのを前世ではブランチっていうヤツだね。
目の前には美味しい美味しい懐かしの日本食がある。
ホカホカの粟や豆が入ったご飯。
採取したキノコと山菜のあえ物。
近場で釣った魚の塩焼き。
残りのキノコや山菜と芋を沢山入れた具だくさんのお味噌汁。
”そして試しに作った海苔だ。ホントいい香りだ”
前世じゃ当たり前の様に食べていた料理。
それは戦争中だってそうだ。
なのにこちらではなかなか大変だった。
「いただきます」と言って、しみじみと味わう。
それは従魔の皆もそうだろう。
「うん、美味しいね。素材の味を生かす料理が多い訳だ。確かに野菜から始めないと、この料理は無駄になる。ミミズ一家殿にはホント感謝だ。」
「ヒノクニに似た料理もあるが、やはり素材の味が違うと段違いだな。」
”””いい仕事してるね~、僕らは偉い♪”””
”これからもさらに気合を入れるぞ”
”””オーーー♪♪」♪”””
「幸せです~♪姫様に仕えてホントによかった♪」
「うんうん、僕もそう思う。ありがとう姫ちゃん」
「ミミズの願いを聞いてよかった。あの時の直感は正しかった」
皆で美味しいご飯を食べると、何とも言えない幸せを感じるモノだね。
私はこの瞬間が好きで、料理を日々作っていたんだね。
「そういえば、あの魔石山をどうするつもりなんだ?あそこまで溜め込むとダンジョンになるぞ」
「それはアタシも思ったよ。地下道で巧い事魔素の澱みを消しているけど」
味噌汁のおかわりを入れていると、風魔とマリリンがミミズ達に聞いている。
そういや何かに使うと言っていたね。
内緒ッと言われたけど、二人にはどう答えるんだろう。
”あれはね。内緒なんだ”
”そう、ご主人様にサプライズするの”
“内緒♪内緒♪”
”大丈夫、もしもの時の対策もしてあるからね”
やっぱり内緒だった。
ホント気になるねぇ。何なんだろう?
風魔とマリリンも、ヤレヤレという風にそれ以上詮索しない様だ。
「ライチがいい感じに冷えた様なので、取って参ります」
「沢山採れたね。僕も好きだよ」
大河と泉は、川で冷やしたライチを取りに向かう様だ。
海流はそんな二人に、何かを頼んでいる。
隣のマリリンが何かを二人に渡し笑った。
”ホント皆秘密主義だね。ちっともわからないが、楽しみだね”
秘密にしている事は、基本私を喜ばそうとしている事が多い。
「さてとお嬢、頼まれた調査依頼の結果がわかった。現在それに付随する事柄を、更に深く三郎殿が調査中だ。帰って来たら美味い飯を食べさせてやってくれ。」
風魔が茶目っ気たっぷりに言い、ミミズ一家を見た。
「持って来ましたよ~♪」
「いい感じに冷えてる♪」
泉と大河がピョンピョン跳ねて戻って来る。
久しぶりのライチの味はどうだろうか?
「ハムッ……… 」
皮をむき頬張ると汁が溢れる。
前世の味より若干甘みが薄いが、それでも美味しいと思う。
もう一つもう一つと食べる私。
口の周りは汁で汚れている。
「まだまだお子様だな」
そう言ってマリリンが口の周りを拭く。
「ところで昨日は名前のドタバタで、情報共有が出来てないな」
「だが、新たな力のおかげで、わかった事もある。泉」
「そうなんですよ。私の目によろしくないモノが視えます。それをどうにか断ち切りたいなって」
「ホントかなり厄介だよ。断ち切れた縁をもう一度結ぼうなんて愚か者だ」
風魔が話を向けると、貴船が口々に伝える。
その内容に私はわからないが、他の者達にはわかるらしい。
「お嬢今から話す事はあまり気持ちのいい物じゃない。だが聞いた方がいいだろう事を話す」
「姫巫女には腹が立つこともあろうが、最後まで聞いてくれ」
前振りの様に心構えを促す彼らに、若干不安な気持ちになりながらも頷いた。
話の内容は、私がなぜ前々世に舞い戻ったのか。
どうやらこの世界の神が私の境遇に同情し、憐憫を覚えたそうだ。
魂もボロボロな状態、このままではダメだと思い、別の世界へ癒すため移した。
だが飛ばした先では、戦争の真っ只中だった。
その為急いで加護を授けて守っていたらしい。
だからこそあちらでは100歳という大往生が出来たのだ。
だがここで神も戸惑う事態が起こる。
確かにこちらの魂だから、この世界に舞い戻るのは当たり前だった。
だがなぜか前々世と同じ状態に戻っている。
「これにはさすがの神も驚いただろう。せっかく休息させたのに元に戻っては意味がない。だから神は見ていたのだろうと思う。戻って来た魂の状態を診れば、記憶を持ったまま頑張って足搔いている。そして新たな智慧を授けてる。だから神託を出し何らかの手助けをする様に言ったようだ」
これが昨日の建国やら教皇が後ろ盾の理由なのね。
ホント昨日はいろいろとあって、話の整理が出来ていない。
寝ていない分、全く頭に入っていないのだった。
「姫様に執着している者がいるのです。それが原因で前々世に戻っているそうですよ。迷惑ですよね」
「全く何を考えているんだか、よほど自分に自信があるのか傲慢なんですよ!」
”そんな縁ぶった切れ!!”
”切っちゃえ♪切っちゃえ♪”
「神も今回の事はご立腹だそうで、ギリギリの所まで介入するつもりだな」
かなり神に対して酷い事を言いたい放題言っていた自覚がある。
だからこそ申し訳ないやら、情けないやら………
「それに関しては神はなんとも思ってない様だ。お嬢が叫んだから気づいた。むしろ良くやったと言った所だろう」
イヤ悪態をついて良くやったと言われても、今度ちゃんとお祈りに行こう。
今までの非礼とお礼を言わなければならない。
「さてこれが姫巫女に関係する話だな。」
「イヤ気になる事はまだあるんだけど」
私はどうしても疑問だ。
「何で神に関しての話が解るの?」
そうとても疑問です。何だか意思疎通をしているような感じがする。
「そりゃあ、フェンリルは一応神獣だから当たり前だな。それに海流もだろ」
「ああ、一応黒ケルピーは上位種扱いではあるが、貴船の姓のおかげで俺もその様な扱いになった様だ」
「ついでにアタシも精霊の上位種だよ。だから彼らほどではないが感じるね」
”ご主人様~、僕たちも感じる~。頑張れって言われてるから、お手伝いするね♪”
呆れたよ、これが嘘から出たまことってヤツかい。
御社は彼の境域を分かりやすく示すために作ったモノ。
本来の意味合いは全くなかったのだが、ホントの神域扱いになっている様だ。
「一郎殿、なんかあの魔石山の扱いがわかったぞ。確かに奴らが好みそうだ」
「アタシもわかったよ。面倒だね~」
風魔とマリリンがなぜか嫌そうな顔でミミズ(一郎らしい)を見ている。
貴船らもため息をついて、とても嫌そうだ。
そんなに嫌なら私も嫌だね。
これは一言ミミズ達に言っておこうかね。
「よくわからないけれど、厄介事はごめんだよ」
ただでさえ今も大変な事がわかったんだ。
これ以上厄介なモノは却下だ。
建国やら、麻薬やら物騒だったらありゃしない。
今世はのんびりだらりがご希望なんだ。
実際はどういう訳か逆な状態になっている。楽しいけど………
”大丈夫。ちゃんとするから安心してね。絶対ご主人様の役に立つし、とても良い事だよ”
”大丈夫!大丈夫!”
”さらに強化される”
”いい事間違いなし”
ホントだろうね?面倒なのは嫌だよ。
しかしこんな感じだと、建国した方が面倒じゃなさそうだ。
どうするのか話し合いはされるようだが、いろいろとありそうだ。
「それじゃあ、麻薬やいろんな情報を教えてくれない?いろいろとありそうじゃないか?」
先の事は判らないが、とにかく目の前の事を少しずつ片付けよう。
私しかできない事もあるはずだ。
今まで凄く守られてきた自覚はある。
だがこのままのほほんとしていたら、また前々世な状態に逆戻りし兼ねない。
”異様な執着の念、断ち切ってやるよ”
私は心の中で決意した。
ところが………
「まずは姫様、その執着の鎖を断とうと思います。」
「断ってしまいましょう♪」
そう言って泉がどこから鋏を手にし、大河がブツブツと何か唱える。
すると私の周りにどす黒い靄の様なモノが現れた。
それに向かって鋏で、チョキンチョキンと切って行く。
それはそれは細かく切って行く泉。
切られる先から靄の様に消えて行く。
そして完全に消えてなくなった。
「なくなったな。アレも元に戻った事だろう。もうご縁もクソもないな」
””まっさらだね””
「なかなかの執着でした。ベタベタでちゃんと刃の手入れします」
泉は気持ちが悪かったのだろう。
顔が引きつって、刃を何度も何度も手ぬぐいで拭いている。
「分厚かったね。気持ちワル……… 」
それは大河も一緒で腕を摩って気を紛らわせていた。
””相変わらず引くよね””
「アタシは苦手だね。切れてよかったよ」
従魔達にぼろ糞言われる執着を持った者。
魔獣をも呆れさせるって相当だと思う。
「私も気持ちが悪いよ。誰かしらないが、もう完全に断たれたんだろう?」
ホント今世では関わりたくないし、逢いたくもない。
誰かわからないけれど、それだけは絶対だ!
「ああ、関われなければな。今頃、持っていたお嬢の記憶も消滅したんじゃないか?あの執着の念は前々世のモノだ。それが断たれたら、記憶を維持するのも難しい。」
「だから細かく切りました。切った先から記憶も消えるでしょう」
”””「消滅~♪」”””
ホッとした。これで誰かわからない者との縁が消えた。
気持ちの悪い執着を持つヤツなど、関わりたくもない。
「姫巫女は誰の念だと思う?」
海流が聞いて来るが、誰でもいい。
興味ないから、考えたくもない。
「知っておいた方がいいぞ。また今世関わって執着されたくないだろう」
確かに、海流の言う通り知っておいた方がいいのだろう。
今世では絶対関わりたくもない。気持ち悪………
「念はなくなった、つまり縁はな。ただ今世に何らかの思いをお嬢に持ったなら、その思いは消せない。ココが厄介な所だな。」
「今世はまだ逢ってないから、縁は存在しないですよ」
それじゃあ逢わない様にすればいいという事!
「誰なの?気持ち悪い執着したヤツ!」
頭で考えると思い浮かぶのは王妃くらいだろう。
後は側近の何かと私に仕事を振っていたヤツとか、私が死んだ後いろいろと大変な状況になると思う。
だが実際は………
「王太子殿下のドリアスだ」
それを聞いて、ハアアアアァ?!!と私は絶叫した。
それだけは絶対ないと思っていたヤツだったから………
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)