王都へ…… ②【 ドリアス視点 】
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
話を聞くと、ゴブリンが畑仕事をしているそうだ。
アセリアみたいな美味しい野菜を作る為、ワームと最近は共同経営してるらしい。
“そんなバカな…… ”
つまりライオネスが、以前落ち込んでいた理由はこれだったのだ。
というか、こりゃマジでヤバくないか……
「それぐらい、貴方の国は遅れているのですよ。」
とどめを刺す様に言って、ほほ笑んでいる四郎殿。
その横では、三郎殿が黙々と食べていた。
私は枢機卿を見るとニッコリと笑って、
「急ぎましょう。いろいろと大変でしょうがね。」
ホント今回は前世と全く状況が違い過ぎる。
上手くいくのか不安だが、一人でやるはずの事をこれだけの助っ人達がいる。
”大丈夫だ。私はやれる。”
そう気合を入れて、王都を明日はしっかりと目指すのだ。
今まではやはり帰りたくない気持ちがとても強かった。
それからもいろんな話を聞いていくと、魔物達の間にはその食材を使った食事処があるそうだ。
魔窟にいくつか存在し、取り扱う食材はもちろん美味しい食材。
それに物々交換な為に、高級なお肉が沢山あるらしい。
”何その贅沢なレストラン……”
枢機卿と私は羨ましそうな目で、魔の者達を見つめてしまう。
魔窟なだけに行ける訳ないし、でもどうにか行く事は出来ないのだろうか?
なぜか隣に座るライオネスは、先程からいい笑顔で機嫌がいい。
「殿下、明日も早いですから、部屋にそろそろ帰りましょう。」
そんなライオネスに促されて、夕飯を済ませ部屋へと戻った。
その後ライオネスは、アレク達に任せ部屋を後にする。
たぶんまたあの会場へ行き、明日の予定を確認するのだろう。
****************
次の日の朝、騎士達にもあのゴブリンが畑を耕す話が知れ渡る。
やはりショックは大きい様で、朝飯の騒がしい時間がお通夜の様にとても静かだった。
しかし歩く速さは昨日の倍の速度で、戦争を前にした戦士の様だ。
騎士達の顔は皆、強張らせかなり危機感を募らせている。
「アレク、みんなどうしたの?変わり過ぎでしょ。」
「ハイ、さすがにショックでしょう。もうこのまま王妃の下へ、突っ込みそうな勢いでした。」
それこそアセリアの砦の前で合流した、暗部の者達がそうである。
王妃に騙され来た者達は、恨みの籠った目で罵り怨嗟の声を上げる。
「あの者達が、すぐに始末しそうです。」
個人的な考えでは、そんな簡単に死んで欲しくない。
だって前世からの恨みがそんなに簡単なモノではないのだ。
何の気なしに王印を使い、気付きもしないで暢気に恋愛ゲームを楽しんでいる王妃。
分かろうともしない。自分さえよければそれでいいのだ。
”絶対後悔させてやる。死んだ方がマシだと言うほどに……地獄へ堕としてやる!”
もしもそのせいで自分も地獄に堕ちるのなら、喜んで堕ちて行くだろう。
だって前世も似た様に、地下坑道で長い年月堕ちていたのだから……
そう考えれば、今世は恨みを晴らした状態で堕ちるのだ。
”喜んで私は堕ちるだろう。”
清々しい気持ちになり、死ぬ事の憂いも湧かない。
あの当時を考えると記憶がぽっかりと空いている。
何か大切なモノが確かにあった事を思い起こさせる。
ただこの気持ちが、前世の頃より確かにマシだと言っていた。
哀しいとか悔しいとかそんなモノではない。
確かにどこか満たされる思いがあるのだ。
旅は行きに比べて順調だった。
たぶんそれ程の争いに、巻き込まれる事がなかったからだろう。
今日に夕方には王都に着くだろうなっと思いながら、窓の外を眺めるている。
するとなぜか胸の奥がザワザワとし、何とも言えない気分にさせられた。
なぜか外の景色を見ると、どうしようもない切なさと哀しさと切望感だろうか?
”私にとってここの景色は、何か意味があるのだろうか?”
大事な記憶を無くした自分がいる。その為ちょっとした胸の引っかかりを大事にするのだ。
すると馬車が静かに止まる。休憩だそうだ。
ライオネスが、アセリア公爵から貰った花束を抱える。
「ここにはとても大切な方々が寝てらっしゃるんです。ご一緒に冥福を祈りませんか?」
そう言って誘い降りて待つ、ライオネス。
枢機卿たちもやって来て、一緒に向かう様だ。
皆が静かにライオネスの後について行く。
”父上達と関係のある王族ゆかりの方だろうか?”
付いた場所はとても見晴らしのいい丘の上だった。
何かある訳ではない。ただの辺鄙な場所だ。
なのに騒めいていた胸の奥が、なぜかスッと落ち着いた。
どうしてだろう…… この場所は私にとっても大切な場所なようだ。
皆が花束を手向け祈る姿を見ていると、なぜかどうしようもなく哀しみと悔しさが去来する。
何故かわからないが、涙が次々に溢れて来るのだ。
私は一体どうしたのだろうか……
「殿下…… 」
そんな私の姿を、ライオネスが静かに抱き締める。
何故泣くのか何も聞かず、ただ慈しむ様に慰めるのだ。
私は訳も分からず嗚咽をあげ、ただただ泣き続け始める。
胸にはどうしようもない、哀しさ、悔しさ、切望、そして愛しさがこみ上げる。
とてもとても大切なモノが、ここにたぶんあったのだろう。
”ごめん、ごめんなさい。私は忘れてしまった。ここに何かあった大切なモノたち。ごめん!でもまた必ず来るから!!”
私は泣きながら泣きながら、幾度も心に誓った。
この命が尽きるまで、私はここへ来て祈り続けるだろう。
気付けば私は、馬車の中で寝ていた。
あのまま私は泣き疲れたのだろう。
ひりつく喉に顔をしかめる。たぶん顔も酷い事になっている。
目が覚めた私に気づき、ライオネスが飲み物を渡した。
おかげでひりついた喉が、落ち着いてくれた。
そして暖めたタオルを渡され、泣き腫らした目を抑えた。
「ライオネス、この蒸しタオルどうしたの?」
「どうとは?」
よく考えたら、ライオネスは魔法は苦手だったはず、というかほとんど使えない。
なのになぜ、これを準備する事が出来るんだ?
タオルに目を抑えながら、いろいろと考え込む。
行きと帰りのライオネスの行動に、微かな差異を感じたからだ。
その典型がこの暖かなタオルだった。
だけどそれよりも、今聞く事はそれじゃない。
「あの場所は、私と関わる所だろう……違うか?」
「…… 聞いてどうなさいますか?」
「……これも罰がなのか。きついな……、哀しいよ、ライオネス。私はとても悔しいんだ。」
そう言って、まだ溢れ出し始める涙……
どうしようもできない切なさに、また私は泣き出した。
ごめん、今だけは引きずらせてくれ。
終わったら戦いに向かうから、今だけは弱い自分でいさせて欲しい。
「泣きたいだけ泣かれて下さい。理由は話しません。だたその感情はとても正しい事なのです。」
チラッと見ると、目を伏せて謝るライオネスがいた。
「わかった。王都の門を越えたら教えてくれ。」
「分かりました。」
そう言って、蒸しタオルを交換させられる。
ホントどういう事だろう。やはり魔法のようだ。
それを確認して、窓の外を眺めるライオネスを見る。
するとやはりライオネスの右目が、赤く光っている様に見えた。
まるで三郎殿や四郎殿の様な赤い眼。
私の視線を感じたのか、ライオネスがスッと私を見た。
するといつもの青い瞳が、私を慰める様に見返す。
”気のせいだろうか?”
何とも不可解に思いながら、心を落ち着かせ涙を静かに流した。
「殿下…… 」
少し寝ていたようで、呼ばれて覚醒するまで時間が要した。
薄っすらと瞼を開けると、心配そうに見ているライオネスの顔が映る。
「どうやら寝ていたようだ。」
そう言う私に、ホッとした様に笑い飲み物を渡される。
「少し喉がかすれいます。痛みはありませんか?」
渡された飲み物で喉を潤し、調子を確認する。
喉の違和感はない様で、大丈夫だとほほ笑んだ。
「どうぞこちらをお使い下さい。」
目の前にはやはりホカホカの蒸しタオル。
一体どこから、というか何枚あるのだタオルが……
ライオネスをジト目で眺めていると、どうされますか?という風に首を傾げられた。
「イヤ、次から次へとタオルが出るから、何枚あるんだろうと思ったまでだ。」
そう言って、使ったタオルとホカホカのタオルを交換する。
ホカホカのタオルに顔を当てると、ホントに気持ちがいい。
せっかくなら身体も拭いたいくらいだ。
「タオルは色々使えるので、たくさんありますよ。包帯代わりにも使えますからね。」
馬車のカーテンを少し開け、窓の外を眺めるライオネス。
どこかを見て顔を引き締めている様だ。
私も窓の外をソッと見ると、そこは王国教会の前だった。
“ここに母上は滞在してるのだな。”
そう思うと憎々し気に、睨んで眺めるのは仕方がないだろう。
巡回から還った神官らしき者が、遠くから私達の馬車を眺めている。
なぜかライオネスと、見つめ合っている様な気がするのだが……
「ライオネス、あの神官と知り合いなのか?」
すると微かに笑い私を見て、ライオネスは静かに笑い告げた。
「彼はこちら側に寝返った神官です。今から教会の方でいろいろと動くつもりらしいですよ。」
冷ややかな声色で、目は獲物を狙う様に眇めている。
何処かうすら寒い微笑みが、なぜかライオネスに似つかわしく思えた。
“冷ややかライオネスはよく見るけれど、今のライオネスはどこか肉食獣じみている。”
そうなのだ。どこか血肉が通ったような感じがする。
そんなライオネスを見つめ私は考える。
もしかしてライオネスも、犠牲になった者の一人ではないのかと……
その時なぜか、頭の中で誰かが掠め消えていく。
それを感じて、私は唇を悔しく思い噛み締めた。
どうやら私にも、そんな者がいたのだろう。
私は何も言わず、久しぶりの王都を眺める。
相変わらず喧騒とゴミゴミとしたように建物が立ち並ぶ。
何処か排他的で薄ら笑いを浮かべている国民を見て、嫌悪感を抱く自分がいた。
余りにも行きと帰りの感じた印象の違いに戸惑う。
自分が守るべき国民に対して、なんという感情を抱くのだ。
眉を潜め息を吐いて、もう一度見てみる。
するとやはりなぜかいい印象を受けないのだ。
“私にやはり王は無理だな。コイツ等の為に働きたいと思えない。”
そう心の中で呟き、ライオネスに私は告げた。
「父上の婚姻の件よろしくね。早く子供を作って欲しいし、私もいつ逝く分からないからね。」
告げた内容にビクリと肩が動いき、何も言わず私に深々と頭を下げた。
”やはりライオネスは知っていたようだ。私の残り少ない時間の事を……”
私はソッとため息をついて、また窓の外を眺めた。
行きと帰りの印象の違いは、何処か傍観者の様な視点のせいだろう。
途切れる事のない騒がしさが、妙に神経を刺激し逆なでをした。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




