フィル、グラ爺に合う。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
マリリンの所へ行くと、ちょうど一郎が待っていた。
「ご主人様、早速マリリンにお願いして、お味噌が手早く作れるように出来るよ。」
一郎が目をキラキラさせ、期待いっぱいに私を見つめる。
どうやら今すぐ作業をしたそうな雰囲気だ。
だけどこっちの予定は、中華ちまき。
お腹がすっかりお待たせて状態だった。
「一郎、今からちょっと別の物を作る予定でね。」
そう言うと、とても残念そうにしょんぼりとする一郎。
上目遣いでチロリと見るが、申し訳ない。
「マリリン、ただいま。お土産は頂いたかい?」
「おかえり、姫巫女。土産はさっき貰ったよ。なかなか洒落たモノじゃないか♪」
「セクシーだろう♪」
「そうだね。着た時に皆が、どんな反応をするか楽しみだ♪」
アオザイは、やはりボッキュッボンじゃないとね。
スタイルのいい体型ほど、とてもオシャレに見える衣装だ。
上は白にし、ズボンを赤に♪全て無地素材にする事で、生地の良さが際立つ。
「そう言えば、ヒノモトの衣装もあるんだってね。ぜひ見てみたいよ。一郎が可愛いと絶賛していたからね。」
「ホントに可愛いよ。全部柄物なのに、調和するから不思議なんだ。」
確かに着物は全て柄物、せっかくだから晩餐にでも着ようか。
「しかし姫巫女、クリスの落ち込みは凄かったね。これからは人に出来ないと頭抱えていたよ。(笑)」
ヒノクニでトラブルに見舞われ、それに関しての謝罪の手紙と贈り物。
それを受け取った両親は寝込み、クリス兄はさっき言われた状態だ。
「別に私からツッコんだ訳じゃいないんだ。」
「そうだな。ありゃ衝突事故だな。被害者はお嬢と俺達。」
「それだけ、トラブルを呼び込み易い運を持っているんだろ。」
なんかすごく失礼なことを、笑いながら言う、マリリン。
だが、その分たくさんお土産を頂いてしまったので、ある意味役得である。
「またいつか行きたいと思うよ。ホント良くして頂いたからね。」
ヒノクニの景色を思い浮かべ、まだそれほども経っていないのに、とても懐かしく思うのだった。
早速持参した食材を使って、料理を作り始める。
用意するのは中華鍋、そこにモチ米をドバっと入れて海流が炒めてくれる。
横のテーブルでは、タケノコと人参を角切りにし、鶏肉を一口大の大きさに切る。
干しキノコは水に漬け戻し細切りにして、もち米以外の食材を炒める。
しんなりしたら、その後キノコの戻し汁と調味料を入れ味付け、炒めたモチ米を入れる。
水分がなくなるまで炊き、その後冷まし包み込んでいくのだ。
だから冷ましている間に、バンブーの皮を拾いに行こうと思う。
砂蒸し周辺に植えてあるバンブーの木。
そちらに向かっていると、風魔がダランと寝そべっている姿が見えた。
「気持ちよさそうだね。(笑)」
何ともだらしない姿に、思わず笑いがこみ上げる。
「じっわりと気持ちいいからな。」
そのままウトウトと首を動かし、のんびりと身体を休めている。
この後は中華ちまきを食べて、酒でも飲むつもりなのだろう。
何とも上げ膳据え膳で優雅な時間だね。まったく……
海流とバンブーの林に向かい、下に落ちた皮を拾っていく。
手頃な大きさで、丈夫で穴が開いていない物。
海流と二人で拾い集め、もと来た道へ戻って行く。
すると先程の風魔がやはりダラリとし、本来の姿で寝そべっていた。
そんな風魔を見て、海流と二人でため息を付きそのまま調理場へ戻った。
調理場へ行くと、一郎が大量の大豆を水に漬けている。
戻したら、そのままここで蒸すらしい。
海流はバンブーの皮を水洗いをしてくれる。
だからその間、ヒマな私はマリリンとおしゃべりをしていた。
「私がいない間いろいろとあった様だね。」
「まあね。だけどそれはそれで、なかなか楽しかったよ。」
そう言ってほほ笑むマリリン。
ほとんど母マリアナの護衛状態だったそうだ。
「ありがとう。おかげで気楽だったよ。」
私がそう言うと、頭を撫でられ抱きしめられる。
「いいって事さ。しっかり寝てしっかりご飯を食べ、身体もしっかり動かしたんだろ。」
人懐っこい笑顔を見せ、確認する様に聞いて来る。
だから満面の笑みを向け、しっかりと頷いた。
「さっきアスレチックで、木登りの特訓成果を確認しようと思ったんだけどね。ドリアスのせいで確認出来なかったんだ。ヤツのお上品を見て、私のマナーの心配をされてね。」
「領民達から、 ヤツと比べられて心配されたんだ。姫巫女と……」
「なるほどねー、ヤツは王子なだけに、ちゃんとしているからね。」
「それは私がちゃんと貴族としての、マナーがなってないとでも言うのかい。」
「してたら木登りはしないと思うけどね。まあ体力があるのはいい事だ。」
呆れ顔で言うマリリンを見て、私は肩を竦めてニヤリと笑った。
「どうやらヤツは登れなかったらしいよ。( ̄m ̄〃)ぷぷっ!」
領民からその話を聞いた時、勝ったと妙に嬉しく思った。
身体を動かす事は大好きだ。
「今度護身術でも習おうかな。とにかく剣術でもいいけれど、鍛えたいね。」
「姫巫女、あんた何処を目指してるんだい。」
呆れを通り越した様で、顔が困り果てている様だ。
「あのね、姫巫女。マリアナから相談される事もあるんだよ。お転婆過ぎるのもほどほどにしな!」
なるほど…… だけどちゃんとマナーは出来るんだよ。
私が言いたい事が分かっているのか、手を前に出し話そうとする私を静止する。
「いいたい事はわかるよ。だけどね、領民が心配するほど普段の行動が問題なんだ。わかるかい?」
まあね。間者さんが見て本国に情報を流すんだろう。
その時たぶん言われるのさ。
フィラメント・フォン・アセリアは山猿で暴れ馬であるって……
とてもじゃないが、普通ではないとでも言われるのかね。
「わかっててやってるのかい…… 」
「前々世の結婚生活が最悪だったからね。する気起きないんだよ。」
「前世は大丈夫だったんだろう。出来るじゃないか?」
「この世界でしたいと思わないんだよ。申し訳ないけれどね。」
まあ実際はどうなるか分からない。
もしかしたらあるかもしれないが、今はあまり考えたくないね。
「姫巫女、冷えましたよ。」
海流が私を呼ぶ。そろそろ中華ちまきを包もうかね。
「私も手伝った方がいいかい?」
「以外に難しいよ。試しに一つ包んでごらんよ。」
そう言って、中華ちまきを包む作業を始めた。
出来上がった中華ちまきを持って、屋敷へ戻るフィル。
もち米を使っている料理だから、腹持ちが凄くいいだろう。
「今度作る時はナッツ系を入れようかな。今回はたまたまなかったけれど、あるとアクセントなって、更に美味しいんだよ。」
「そっか。また作って欲しい。楽しみにしているよ。」
「包むのは、なかなか骨が折れたね。」
「アレはなれると平気になるよ。」
皆とガヤガヤおしゃべりしながら、ダイニングへと向かうフィル達。
すると前の方から、眼鏡をかけた年輩の男性が歩いて来る。
「こんにちは。」
ご挨拶は基本だね。一体誰だろう?
そう思いながら、ニッコリ笑顔を向ける。
「こんにちは、妹君。私はグランド、クリスの従魔ですよ。」
面白そうに眼を細めほほ笑む年配の男性。
だが耳に入って来た言葉に度肝を抜かれる。
「従魔?エッ?!グリフィン!!」
「ハイ、お初にお目にかかる。」
ニコニコと微笑ましそうに、私の驚き顔を眺めている。
そんなグランドを嫌そうな顔で顰める風魔とマリリン。
海流と一郎はキョトンとした顔で首を傾げている。
「ホッホッホ♪久しいのー、フェンリルの若造とサラマンダーよ。元気そうで何よりじゃ。そして初めましてじゃな。ワームの総督になるのかの?それに黒ケルピーか、若武者だの♪ウムウム、何よりじゃな。」
何だかとても嬉しそうに楽しそうに笑っている。
その姿を見て、なるほどなぁと思った。
まるで往年の自分を彷彿とさせる顔に、魔物の大御所様って所かね。
「妹君、私の事はグラ爺とでも呼んで下され。クリスはそう呼んでおるでの。」
「ハイ、グラ爺様よろしく。私はフィルでもいいよ?」
「ホッホッホ!ありがたいがの、同じ従魔が、妹君の名を呼ばぬのは意味があるのじゃ。じゃから私も妹君とさせて貰おう。」
そうなんだ、あんまり深く考えていなかったけどそうなんだね。
「ついでにそれが適応するのは、妹君だけじゃ。それだけ神様が君を守っておると思って欲しい。」
そう言うグラ爺様に、バツの悪そうな顔をする私の従魔達。
どうやらいろいろと内緒にしている様だ。
だって神様うんぬん関連が関わっているらしい。
一体なんだろうね。それを話さない彼らも良くわからない。
「ご主人様、ご主人様はまだ7歳でしょ。どうやら8歳で教会でお祝いがあるんだ。だからそれまで言えないんだよ。」
「すまん、決まりなんだ。」
「すまないねぇ、姫巫女。」
「まったく、クソ爺が余計な事言いやがって!!」
皆が困った顔で謝罪する中、風魔だけが食って掛かる。
そんな風魔を見ながら、おどけた顔をするグラ爺様。
「ほんに口が悪いの。年寄りの軽口じゃろ、気にするな。」
のほほんと返された言葉に、従魔達はイラっとした顔をした。
なかなか食えない御仁のようだ。
クリス兄に素敵な従魔が付いた事に、ホッとするフィル。
いろいろと相談に乗ってくれるだろう。
クリス兄にとって、とても頼もしい存在だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)
次回から王都編。
なのでフィルは出て来ません。
視点入り乱れになるかも、よろしくお願いします。
日曜〜投稿します。




