遂に名前が決まる。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
「いかがされましたか?」
「うん、名前考えなきゃと思って」
私が困った顔で言うと、ハロルドがそうでしたねと頷く。
「ケルピーは水に関係するので、それにちなんだ名前にされてはどうですか?」
フム、どうしようかな?
そんな風に考えていると、ポンと小さな火花が散りサラマンダーが現れる。
「名前を考えているようだな。やっとか」
そう言って人型を取ると、褐色の肌に真っ赤な髪と黄金に輝く瞳の、ダイナマイトボディーの魅惑的な野性味のある女性が現れる。
うわぁ、セックスシンボルみたいな女性だわ。
もう頭はマリリンしか浮かばない。
「出来たらミミズ一家みたいに姓も欲しい。ケルピー達も言っていたから伝えておく」
ウソでしょ!姓まで考えなきゃいけないの?!
「アタシの名前決まった?」
もうさっきからマリリンしか浮かばない。
だったら面倒だから、そのまま使えばいいじゃない。
「決まったわ。もうそのまま前世の女優さんのお名前にするわ。マリリン・モンローよ。セックスシンボルでめちゃくちゃキュートで素敵な女性なの。そのダイナマイトなボディーと魅惑的で野性味のある素敵な貴女にピッタリだわ」
「ヘエ~…… イメージというか人物像が頭に流れて来たわ。なかなか素敵な女性の様ね。妖艶で純粋なんて素敵な女性じゃない。とても気に入ったわ、アタシ。ありがとう」
そう言って部屋から出て行く、マリリン。
「フフフ実はいい酒が手に入ったから、一緒に飲もうと貴女の両親に誘われたのよ。夕食も一緒に頂く予定よ。じゃあね♪」
扉から出る前に、少し振り返り魅惑的な微笑みを湛え、官能的な声で言う。
”まさにマリリンだわ。なんかすごくいい”
「お嬢様、ケルピー達の名も早く考えてください。もうそろそろ夕食の時間です。多分聞かれると思いますよ。」
ハロルドが困った様に警告をする。
多分しつこく聞かれるし、凄く拗ねると思うのだ。
水の属性はなかなか執念深い性質だと誰かが言ったねぇ………
机に向かい紙を広げて、頭をうんうんと使いひねり出す。
水に関わる物はなんだぁ~。
先程みたいには有名人の名前は使えない。
そして思付いた名前を書き、苗字を書いた。
****************
皆がいる所へハロルドが抱っこして連れて行った。
イヤ家の中だから歩くと言ったんだけどね。
私が名前をこれでいいのか考えているうちに、抱き上げられ連れ出されていたのさ。
「ハロルドは過保護だね。運動も必要よ」
そのままのんびり抱っこされて、移動中の私。
「わかっていますが、皆様もお待ちですし」
「わかっているわ。いろいろと見て動いたから、凄くお腹が空いたわ」
「そうですね。可愛らしい腹の虫が自己主張しております」
「私の腹虫はとても元気なの」
「いい事です。健康という事ですから」
私の軽口にも気軽に付き合ってくれるハロルド。
私がハロルドの首にギュッと抱き着くと、クスッと笑い頭を撫でる。
ホント凄く出来た青年だね。
凄く機嫌が良くなり、意味もなく鼻歌を歌う。
「フフフご機嫌のようね、フィル。素敵な買い物が出来て良かったわね」
「お母様、明日楽しみにしていてね。美味しいご飯作るから」
「ええ、とっても楽しみしているわ。」
ハロルドが私をソッと降ろし、マリアナと一緒に部屋へ入る。
テーブルにつくとマリアナと話をする。
他にどんなものがあったのか、ほぼ食べ物しか見ていない私に呆れ顔のマリアナ。
「フィル貴女も淑女の一員なのよ。わかっているとは知っているけれど、ちょっと女子力が不足していないかしら」
「だって今回それがメインで行ったんですもの。探すのに必死だったの」
「確かに今回手探りだったものね。また行きましょう。その時は一緒に回りたいわ」
「ハイお母様。楽しみです」
「フフフ私も楽しみだわ。いい物があったら教えてね」
「もちろんよ。楽しみだわ」
家族に隠し事せず話してホントによかった。
子供として、時にはアドバイザーとしてマリアナと話すのは楽しい。
「待たせたね。ハロルドから呼ばれたよ。フィルの腹の虫が大合唱を起こしますと」
「アハハ、今もクウクウと鳴いているけどね」
ハロルドが呼びに行くのはいいが、説明理由が何故に腹の虫。
澄まし顔で隣に立つハロルド、褒めていた私が憎い。
「ハロルドありがとう。私も気になっていたのよ。」
マリアナの感謝の言葉に頭を下げて応えるハロルド。
納得のいかない私は少し不機嫌だ。
だって笑い者にされるのだから、プウと頬を膨らませる。
「ハロルドは早くご飯を、フィルに食べさせたかったんだ。」
「そうだよ。フィルの腹の虫を満足させろとね。そう言われたら、急いで向かうしかない。」
「申し訳ございません、お嬢様。理由があんまりですが、効果がある方を求めました」
ハロルドなりの気遣い。
以前腹の虫の大合唱に遭遇したハロルド。
あの時はかなり必死に焦りながら走っていた。
「なんかごめんね。燃費が悪い身体だよ」
「子供の身体だもの。仕方ないわ」
「そうだぞ。しっかり食べて丈夫で大きくおなり」
そんな私達を暖かい目で見つめるオスバルド。
ホント今世はありがたい事だ。
こんな素敵な家族がいるのに、ほとんど交流を持てなかった。
王宮の者達は、どれだけ私の時間を拘束すればいいのか。
”絶対あんな思いはしたくないわ。近寄るな、王宮”
私は心の中で文句を言って、美味しいご飯を堪能するのだった。
”今日のガルム料理長の料理も美味しい。やっぱり素材が旨いと料理も一気に変わるわね”
今日のご飯は私が教えたハンバーグがメイン。
それにポトフと野菜のソテー。
デザートにプリンまで用意してある。
「やはり野菜の味は大切だな。ホントありがたい事だ」
「領の民も他の領には行かない。というか行けないと言っていました。」(笑)
「だろうな、俺だって行きたくないよ。学園終わった後でホントよかった」
「私も病気療養扱いにしましたわ。だってよそのお料理ダメですわ」
うち以外の野菜は以前のアクが強い物。
料理人の腕は、いかにアクを殺すかにかかっているらしい。
「お前達はホントに……… だがなぁ、実際そうなんだよ。皆が領から出られないと言って、もう離反してしまえとさえ言っている」
「そうだね。建国しろって言われたらしいよ。帝国の皇帝に」
「フフッ、私も商人から聞きましたわ。この国に渡すよりも絶対お得なんだそうよ。外の国に美味しい野菜を出してウハウハしましょうと言われたわ。(笑)」
なんか話が偉くデカくなってるね?
というかウハウハって凄いわ。
「実はそういった催促のお手紙が各国からとどいています。建国するなら後ろ盾になるという申し出もございます。」
驚きだわ。えっと建国って何だけ??
お間抜けな事を考えるくらい、思考が空回りしているよ。
だって頭に浮かぶのは、普通に高層ビルを建築して旗に祝建国記念と書かれ、看板にはアリセア公国と掲げてあるイメージ。
「なんだ?姫はそういう建物が欲しいの?」
「凄く高そうけど、眺めは良さそうだね」
「凄いですね。ミミズ一家にお願いされては?」
「何故建国と聞いて、コレを想像するのかわからん」
私達が食べながら想像していると、サラマンダーとケルピー達が部屋へ入って次々に言う。
そのまま空いた席に着くと、大量の料理が運ばれ食べ始めるサラマンダー達。
”凄い!フォークとナイフを上手に、さらに上品に使用し食べてる?!”
私が唖然として見ていると、そんな私の様子にマリアナは笑う。
「姫ちゃんお子様だから、僕たちが訪れている時寝てるよね」
「深夜に伝達しているから、知らないか」
「大人の時間だ。美味い酒を飲みながらだから仕方ない」
「姫様ごめんなさい。でもお酒は美味しいです」
つまり彼らは深夜両親と連絡や情報を話し合いながら、晩酌を楽しんでいるのだ。
時々クリス兄もご相伴に預かるので知っている。
”ちくしょう、私もお酒飲みたい。深夜のお酒は背徳な感じで美味いのだ”
「姫巫女、幼児に酒は良くないぞ」
「却下だ。成長を阻害する」
「大きくなったら付き合ってあげます」
「今は我慢だよ。姫ちゃん」
サラマンダーとケルピー達に注意される私。
それを面白そうに見ている、家族と使用人達。
ウウウゥ……… 幼児なボディが恨めしい。
「ところでフィル。名前は決まったの?約束してたね」
食事が終わった私に、クリス兄が早速聞いてきた。
するとサラマンダーのマリリンが、満面の笑みを浮かべて言う。
「私は決まった。マリリン・モンローだ。何でも魅惑的な大女優の名前らしい。」
そう言ってマリリン・モンローが得意とした、ウィンクと口を少し突き出した妖艶なポーズをする。
「素敵よ、サラちゃん♪これからはマリリンね。似合うわ♪」
「ゴホン!マリリン、そのポーズはほどほどでお願いしたい。」
「アハハ、マリリン素敵だよ♪」
うん、やっぱりマリリンで大正解だわ。
マリリンは私から取り込んだ、マリリン・モンローのマネをして楽しんでいる。
女性は普通に楽しんでいるが、男性はドギマギしたり、喜んだりと忙しい。
「なかなか楽しいな。私のライフワークにするぞ。この世界のセックスシンボルになる」
まるで「大海賊に俺はなる」みたいだな。
ひ孫の宣言が頭を掠める。よく意味がわからなかったけど………
「それで我々の名前は決まったのか?」
黒ケルピーがニヤリッと挑む様に笑う。
白ケルピー兄妹はワクワクといった風情だ。
もちろんうちの家族もマリリンもとても楽しそうな表情。
”こりゃ責任重大だねぇ”
ケルピー達に付ける予定の名前に自信がなくなる私。
バタバタと考え決めた名だ。
申し少し考えた方がいいだろうか………
「教えて貰おうか。凄く楽しみだ」
また後でっという選択肢はこれで消えた。
”腹を括ろうじゃないか。ミミズ一家より確実にマシだ”
でもミミズ一家にピッタリ名なだけに、後悔はしていない。
「それでは発表します。」
心の中で「ドドドドド……… 」の音を響かせて、
「姓は貴船。名は上から黒……海流、白兄………大河・妹………泉です。」
「俺の名は貴船 海流か」
「僕が貴船 大河」
「私が貴船 泉ですね」
海流はしみじみと喜び、大河は満面の笑みを浮かべ、泉は少し恥ずかし気にして可愛い。
「アラアラ、なんてエキゾチックで素敵な名前なの。ちょうどヒノクニっぽいわ。」
「キフネとはどういう意味なんだ?名にも意味があるのか?」
マリアナは、泉に笑顔で名を呼び褒めている。
オスバルドは、その名前の響きに興味を抱いた様だ。
「急いで決めた割には、まともな名前だったね。驚いたよ」
そしてクリス兄がとてもひどい事を言う。
ハロルドは若干ホッとした様だ。
”私が悩み唸っていた様子見てたからね”
「名を貰った時、何とも言えない力のうねりがあったな。」
「ああ、貴船は前世の有名な神社から貰ったんだ。水の神が祀られてね。気を生ずる所って意味だったかね?運気上昇・縁結び・諸願成就がご利益ね。名前も水にちなんだよ」
「どうやらご利益あった様だな。龍神も関係する神社なんだろう」
マリリンが呆れ返った様に、貴船一家を見ている。
「そうだったかね?そこまで詳しくないんだよ。これも孫からの受け売りだから」
「私何だか縁結びやれそうです。なんか糸のようなもの?うっすらと視えるようになりました」
泉がニコニコしながらとんでもない事を言い出した。
「アタシは知らないよ。今の何にも聞いてないからね。全くとんでもない事だ」
「やっぱりフィルはフィルだね。これからあちらの神にちなんだ名は付けたらいけないよ」
「僕もなんかすごくやる気に満ちているかも♪頑張れ~♪」
突然大河が応援団みたいな事をやり出す。
するとなんということでしょう。
何故かやる気に満ちて、疲れやらなにやら消えて行く。
悩みなんかポイだポイ!!
しかし悲しいかな。後数時間で寝る予定だった私の目はギンギン。
他の皆ももちろん眠気も来やしない。
おかげでその場にいた者は皆徹夜状態になり、気がつけば朝日が昇っていた。
「なんかごめんね」
大河は申し訳なさそうにしている。
ただし、てへぺろをしての謝罪だった。ホントあざといヤツだ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)