そろそろお暇だ。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
部屋へ風魔と一郎と共に戻り、あの三姉弟がどうなったのか聞く。
「弟の康孝は、自分の行いを理解していたぞ。」
風魔が冷めた目を向け、淡々とした調子で話し始めた。
露姫の態度と心情を話していく。
やった事を理解しても、そこに伴う罰から逃れようとする。
そして逃げた先が……
「一郎と露姫は契約したんだ。勝ち誇った顔だったが、とても哀れだよな。」
ヤレヤレという風に、頭を振る風魔。
嫌いと言って憚らない一郎と契約?
「とにかく一郎は、あの三姉弟と兵馬を貰ったよ。ホクホク顔だった。」
ちょうど一郎がヒョッコと顔を出す。
海流は今、ヒノクニの人達と出かけている。
一郎は私達が何を話していたか判り、あの姉弟と兵馬って護衛の話引き継いだ。
「今ちょうど修行という名のお仕置き中だね。ご主人様の悪口言ったんだ。言葉の重みを実感しないとね。」
そう言う一郎は、この島近くの魔窟へポイッしてきたそうだ。
「死ぬ様な事はないから大丈夫。魔物を主とした契約だから、その重みも理解しないとね。」
それを聞いて疑問に思った私は、頭をコテッて傾げる。
「力の強い魔物は、人を隷属する契約が出来るんだ。俺達が人の社会に情報通なのも、それが理由だ。」
風魔もそういう隷属した者を、何名か飼っているそうだ。
先の大戦を反省して、不穏な気配を事前察知する様にした。
だからこの世界の魔物達は、コミュニケーションを取り合っている。
「それじゃあ…… あの四人は一郎に隷属したって事?」
「女二人だけ喜んで隷属したよ。女は少ないんだ。男らはしてないよ。人手不足だったからよかった♪」
そう言って嬉しさで頬が緩む一郎。
”露姫と文姫大丈夫かね?人手不足って何?”
何とも不審げな目を向け、ため息をつく私。
王様と王妃様とか、宰相や将軍さんはどう思っているのか。
「海流が親子の縁を切ったからな。名前に記憶はあっても、今は赤の他人だよ。他の者達もそうさ。だからお嬢が気にする事はない。彼らはこれからが、人生の本番てやつなんだろう。」
風魔が肩を竦めて、詳しく説明した。
李・白夜はそのまま記憶を保有し、康孝と兵馬をその後預かるそうだ。
「兵馬は魔付きになるだろうが、康孝は余りに世間知らずだ。それに上の姉らがあれだったから、世間に揉まれれば成長して変わるだろう?」
これからは自分の力で、頑張って行かなければならない。
兵馬は康孝と一緒に旅をし、護衛として付いて行くようだ。
世界を周り、いろんな情報を一郎に目を通して送る役目がある。
そして李・白夜は、交易や流通に関して指南役だそうだ。
それがこの二人を、一郎から預かる条件となった。
なんでも一郎達は交易に関して考え中なんだとか……
そして露姫と文姫は……
「文姫は親子の縁を切る時点でも、解っていなかったよ。さっさと縁を切って、喜んで契約した。」
そう言って知らけた笑いを顔に乗せる、一郎。
露姫は多少躊躇いを見せながらも、縁を切ったそうだ。
でも契約をする時は、何処かうっとりした表情だったそうだ。
「自分達二人が何と契約して、どういう事になるのか理解したのは、魔窟に着いてからだよ。凄く騒ぎ立ててたけど、自業自得だよね。露姫なんて自分で言ったんだもの。好きにしていいって♪」
とにかく今は、魔窟に四人はいるそうだ。
兵馬は自分の力を理解する為に、康孝はいろんな意味で知識不足だ。
そして女二人は……
「僕の隷属だからね。いろいろと大変だと思うよ?」
ワームはとにかく忙しい。
ありとあらゆる陸を移動し、あっちこっちと回っている最中なのだ。
「四郎が交渉に使ったのは料理と肥料だったんだ。」
肥料らしきモノは食べようと思えば、食べる事が出来るだろう。
だけど料理はそう簡単て食べる事が出来ない。
「ワームが人化するのは、他の種族に比べて大変なんだ。だから料理が食べたい欲求が募るんだ。」
だけどワームの見た目は嫌われ者対象なため、せっせと耕しても虚しいだけ。
だって美味しい料理が、食べられないから……
どんなに耕しても、美味しい料理を食べるのは自分達じゃない。
「確実に不満が溜まっちゃうでしょ。だからお料理をしてくれる賄いさんが必要不可欠なんだ。」
だから一郎達は、料理の作れる人材派遣を各地にしている。
ついでに情報収集と推進状況も行っているのだ。
「だけどあの四人は、料理を作った事がないだろう。だから今修行中。周りは腹ペコ魔物だらけだから必死だろうね。」
「どちらにしろ料理は出来た方が、何かと便利だからな。康孝と兵馬も旅に出るんだ。よかったじゃねぇか。」
風魔もそう言ってせせら笑った。
つまり魔窟の中で、ワームに囲まれた状態で料理を必死に練習している。
その魔窟、今では魔物のレストラン状態なんだそうだ。
「料理は物々交換で食べれるようになっている。だから食材が足りなくなる心配はないよ。」
いつもたくさんの、ありとあらゆる種族の魔物がやって来るらしい。
そして大盛況で、皆が沢山食べて行くんだとか……
”魔窟レストラン…… おいでませ。”
私はとても遠い目で空を仰いだ。
そこまで行っちゃった魔物達に、「あなた達は何モノ?」と伺いたい。
そう言えばゴブリンが畑仕事も驚いたけれど……
”一郎いつの間にか、魔窟レストランのオーナーになってた。”
世界にたくさんあるそうで、作ってくれと催促されるそうだ。
ホント一体どういう事だろう。
そう言えば一郎、よく料理をお手伝いしてくれるよね。
「ちゃんとご主人様の作った料理は、バッチリ伝授して作らせてるよ♪」
ホント抜け目のない一郎なのである。
とにかく最悪の場合を考えていただけに、ホッとする私。
”イヤいい事なんだよ。残虐性も残酷さもなく、とっても合理的で勉強になるだろう。”
それでも…… 彼らにとっては、過酷な環境なのは間違いない。
「でもアイツらも良かったな。なんだかんだと魔物が人化すりゃ、自分好みのイケメンになるんだからさ。(笑)」
風魔が人の悪い微笑みを浮かべ、「ざまぁ……」と呟いた。
そして中央広場では民達に、ヒノクニの今後の話を通達しているのだろう。
その場に私はいないけれど、一連の騒動の話もするらしい。
これからこの国も、ドンドンと新体制でいろいろと変わっていく。
「姫巫女様、良かったのですか?織機はそのまま利用して貰うという事で?」
「私もこちらの織物好きだから、織機はそのままこちらで頑張って貰いたいんだ。幸い魔道具の得意なクリス兄や妖精がいるから、たぶん自分達で作ると思う。魔石もうちにたくさんあるし、今後交易をする予定でしょ♪」
他にもいろいろ文化は残し、発展して欲しいと思う。
「では私もコチラの目途がつきましたら、姫巫女様の所へ移動致しましょう。」
「ウン、お船さんこれからよろしくね。私もいろいろオシャレで考えているの。名産品も一緒に考えようね。」
そう言ってお船さんを見れば、うっとりとした表情になっていた。
「新たに商品を開発するんですね。織機も更にスケールアップでするのかしら?フフフ……今からとっても楽しみですわ♪」
お船さんと洋服で、このショートヘアに合う服や、動き易い服など話をする。
その横で、一郎はあくびをしながら、ぼうっとしている。
魔物でも睡眠不足で、眠気があるのかな?
「昨日いろいろ動いて疲れちゃった。ご主人様抱っこ……」
そう言って人化を解いて、私の腕に巻き付いた。
まるで影石のブレスレットみたいな見た目だ。
「そう言えば海流に、中央広場へ行って貰ったけど疲れてないかな?悪い事しちゃった。」
「大丈夫だろう。もうそろそろ戻って来る時間だ。」
「しばしお別れですね、姫巫女様。次回会う時は、考えたオシャレ服を詳しく教えて下さいませね。後ヒノモトの服もう数点作りましょう。何色がいいですか?」
お船さんがいかにも嬉しそうに聞いてくる。
だから桜をイメージした物と椿の絵柄をお願いした。
それに従魔達を扱った絵柄も楽しそうだな。
私がそんな話をしていると、ガヤガヤと遠くで騒がしい音がする。
どうやら皆が、中央広場から戻って来た様だ。
という事はそろそろ私達も、お暇をする時間になったという事。
おせち料理の材料も貰ったし、出来た料理も真空魔法でバッチリ確保済み。
後は豚の角煮と淡雪と、スペアリブのマーマレード煮とか美味しそう。
明日する事を考えながら、ヒノクニの濃密な滞在時間を思い起こす。
”第二の故郷だね、ここは……”
石田さんの石碑がある。石田さんが待っている。
微かに感じる前世日本の息吹……ヒノクニ。
たぶんまた来るだろう。だから織機を残していく。
ここでずっと石田さんがいた時から変わらない。
パタンパタンと機織りの音を、ずっとこれからも刻んで貰うのだ。
*******************
その頃魔窟では……
「ホラ急いで皿洗いしろ。あのテーブル急いで片付けろ!」
「わかってるわよ!ちょっとアンタ邪魔よ!通れないじゃない!!」
今日も魔窟の食事処は大賑わい。
昨日の夜は絶望し、これからどうなるんだろうと途方に暮れた。
でもそんな時間もないくらい忙しい。
「皿洗いぐらいさっさとしろ!!」
「露姉!いい加減動いてよ!忙しんだから!!」
全く動かないと、機嫌が悪くなる魔物がどうなるか分からないじゃない!
「露姉!とにかく動いてください。せめてバックで皿洗いしてください。」
「使う皿がねぇ!!さっさとしろ!!」
「お、おれが早急にします。」
「馬鹿野郎!お前は来た素材をサッサと捌けよ!溜まって置く場所なくなるだろうが!!」
「す、すみません。直ぐ片づけます!!」
「ウ、ウッウッ…… こんなはずじゃなかったのに……」
「いい加減にしろ!!テメー餌になるか?!どうなんだ!!」
「「露姉!!!」」
「す、すぐ洗いますー--!!」
今日も魔窟レストランはとっても忙しかった。
次々にたくさんの魔物達がやって来る。
兵馬の前には次々と物々交換用の、食材が積まれていく。
文姫と康孝は一輪君を駆使して、食事の終わった皿を次々に片づけテーブルを片付ける。
バックでは露姫が必死に皿洗い。
それ以外でもたくさんの人達が、調理をし配膳して行く。
目の前には、サイプレスにオーガ、ネクロマンサーやヨルムンガンド、そしてたくさんのワーム。
その間を避けて移動し、皿を次々に片付ける。
注意事項
迅速に対応すること。命が惜しいなら……
調理を手早くする。以下同文
直ぐの片付ける。 以下同文
待たせない。以下同文
とにかく暴れさせない。連鎖反応で大乱闘になるから。
ここはとても命懸けのとても忙しい職場だった。
ひたすら頑張って働く。命惜しいから……
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




