フィルが寝てる時
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
フィルが退室してから……
「ところで、何処までの話だったかな?」
「そうですね。話の内容はこの島の文化を残しつつ、統治は李・白夜殿へお願いするという事です。」
統治権を借金返済にて渡すという。
「子供達の統治の能力も、あのように問題アリです。この独自文化を廃れさせる訳にはいかないのです。」
「確かにな。あの調味料が無くなるのは、コチラとしても困る。」
「私もあの調味料は、これからとても重要になります。この島独自の文化をしっかり守っていきます。」
李・白夜はそう言って、プルンとした寒天を口に含んだ。
「それじゃあ、あのガキどもはどうするんだ?」
「もちろん法に則って捌く予定ですよ。」
「どちらの島も、同じ国ゆえ法は同じだ。自分のした事を、しっかり理解せねばなるまい。」
将軍は少し冷めたお茶をグイッと飲んで、フウとため息をついた。
「今夜中に概要は決めてしまい、明日には民達へ説明する予定です。と言っても予定が早まっただけですので、そこまで大変ではありません。そして問題の方々ですが……」
船の強奪計画・人さらいや殺人未遂など挙げられる。
それこそ国家転覆もあるので、罪状に酷さを彼は全く理解していない。
「それだけまだまだ子供だという事だ。そこを分からないと、罰を与えたとしても逆恨みするだろう。」
そうなっては本末転倒だから、どうしようかという。
未熟な者に罰を与えても、ムダな作業でしかない。
だが時間もヒマもないので、早急に対処し片付けたい。
互いに妥当な罪状と理由、そして性格や問題点など洗い出して言った。
「王の呼び出しに来なかったのは、好きとか心配ではなく行きたくないからが濃厚だな。」
「ああ、あのしつこさを考えると、兵馬にそこまで恋愛感情があるとは思えん。」
そう言った意味では、まだ弟の方がマシなのか。
「文姫は全くわかっていない。問題外だ。」
将軍が店であった事を話し、その後お船も話していく。
その話を聞いた時、王と王妃は頭を抱えていた。
「ありゃーとんでもないぞ。変に気が大きくなって最悪だ。そう言った意味では、露姫はどうなんだろうな。」
とにかく誰が始めに言い出し、計画を立てたのは誰かという事が重要だった。
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【 風魔視点 】
王様と王妃様はホント落ち込み方が凄かった。
ご主人様がいなくなると、フッとため息をついた瞬間、20年は歳を取ったと思う。
それだけ子供らがやった事に、ショックを受けていたのだ。
「ハハ……素を曝し申し訳ない。何分いろいろと思う所がありましてな。ホントに何故この様な事をしたのか……」
「若者らと楽しそうに計画を立てていると思っていたら、やっていい事と悪い事の分別が出来ないとは……」
そう言って静かに考えて込んでいる。
そんな彼らに李・白夜は言った。
「島から出ずに身内だけだと、子供らの成長は乏しいものだ。大切にし過ぎて、肝心要な事を教え損なうのだ。大事にするなとは言わないが、それなりの厳しさも必要だ。」
李・白夜の島では、ある一定の年齢で皆海上に出るという。
そうする事で周りから刺激を受け、精神成長が速くなり大人になり責任感も強い。
「自分一人で矢面に立つ事が、海上では日常茶飯事。自分で身の安全を確保する為には、成長せねば命がなくなる。」
逆に島の中で成長する子供達は、周りは身内と知り合いばかりで甘やかされる。
いつまでも子供の気分のままに成長し、大人になっていく。
そんな話をしながら待っていると、彼らが来た様で宰相が呼ぶ。
部屋に入って来たのは、露姫と義康。
今回の騒動を、皆の前で説明する様に伝えてある。
罪状についての話は、まだ何もされていない。
だからだろう、始めに李・白夜達を見て睨み付けた。
そしてその後風魔と俺を見て喜びの顔を見せ、なぜか勝ち誇った顔をする。
「父上、お呼びとの事で参上致しました。」
「父上、この方々は私どもの家来となるのでしょうか?」
そんな二人をため息を付いて、項垂れる王と王妃。
「露姫と義康様、王よりの話を聞いていないのですか?」
宰相が二人を冷めて目で言い、王も首を振ってウンザリしている。
”いつもこのような感じなんだろう。自分に都合のいい話しか聞かないってヤツだな。”
いろんな話が出れ来るが、自覚がないらしい。
何でもかんでも自分の都合のいい様に解釈している。
その為、物凄い勘違いをしていたのだ。
年齢的には露姫は18歳、文姫17歳、康孝は16歳だ。
姉弟揃って知らない事実がとてもおかしい。
それには王と王妃も唖然としている。
それに対して宰相は言った。
「だいぶ勉強をサボり、甘やかされなされたな。」
教師らが子らの推進を、噓八百で塗りつぶされていたようだ。
忙しいとかまけて信じていた、王らの責任もあるだろう。
「まず…… ヒノクニは島の名前で国ではない。島では王と言われているが、島の統治者であって王とは違う。この国の王は選出制で、今はこの李・白夜殿の父君が首長という名の王だ。」
「そう言う事だ。ついでに俺も役職があるぞ。外交官というモノがな。」
茫然とした顔で聞いている、露姫と康孝。
「そして島の現状を話そう。この島は莫大な借金を抱えている。そして今回お主らの起こした騒動で更に増えた状態だ。」
「何んでよ!!あんたが脅したの?!」
「卑劣なヤツだ!そんなに金が大事か?!」
スゴイぞ、コイツ等自分の事思いっきり棚上げ状態だ。
横では一郎が大爆笑をしている。それぐらい笑えるのだ。
俺もおかしくて笑っちまう。
「お前らがそれを言うんだ。自分らが何をやったのか、理解していないな?」
李・白夜がそう言って、ニヤリと皮肉気な顔で笑う。
「お前らの罪状を伝える。人さらい、殺人未遂、国家転覆、盗みと…… それ以外でもいろいろと罪状が出て来ている。今までつくづく呆れ返ったわ。ついでに船の強奪計画に関して言えば、外交官所有という事で、更に罪状が重くなる。死罪は確実だ。」
「そして人さらいだが、お主らが牢に入れた幼女こそ姫だ。よその国の姫を牢に入れるなど、その国に宣戦布告をしたと同じ事だ!!」
告げられた内容に蒼褪める康孝と、うろたえる露姫。
「知らなかったのよ。それに計画は破綻したんだからいいでしょう!!」
「計画は一部実行された時点で、犯行扱いだ。それも教国も認めた姫巫女様になにをした。この罰当たり共が!!」
「神より天罰があっても仕方がないでしょ。自業自得です。」
将軍と黒狼が鋭い目つきで二人に言った。
自分らのやった事が、子供遊びの延長線上から逸脱した行為である事を、今更ながら分かった様だ。
康孝など怯え縋る様に俺達を見るが、罪人を見るような冷めた目で見返す。
露姫は現状を受けいてたくないのか、
「そんなに脅さなくてもいいでしょ!その男と結婚すればいいんでしょ!そうすればなしって事じゃないの?!」
と馬鹿げた事を言い出した。
「申し訳ないが、罪人と結婚する馬鹿が何処にいるんだ?」
そんな露姫に李・白夜は怒気を浮かべた目で言う。
「お前と婚姻するのはこの島の文化を守る為だった。その文化を壊そうとするお前と婚姻など有り得ない。だいたい船と命狙っておいて、ふざけた事抜かすんじゃねぇよ。」
睨み付け侮蔑を含んだ眼差しで、露姫に向け言った。
罪人と言われ蒼褪め、次々に言われる言葉に自分の現状を把握する。
「兵馬もよその要人に手を出したんだ。だから罪人扱いになる。関係した者達も同様だ。」
「あの兵馬という男は、こちらで処理する。」
一郎が淡々と言っているが、たぶん魔付きにするつもりだな。
一郎が考えている事はいつもお嬢第一、何らかのカタチで使うのだろう。
「兵馬をどうするつもりだ?」
康孝が一郎を見て言うが、知らんぷりだ。
その後俺を見たが、俺もなんだという風に睨み付けニヤリと笑う。
そんな俺達を見て、露姫が潤んだ目で見つめている。
コイツはホントに頭がお花畑だな。
「わ、私を好きにしていいから、康孝と兵馬を助けてお願い!」
そう言えば助けてくれると思い、ウルウルとコチラを見つめる。
それを見て一瞬俺は考えた。もちろん一郎も同じ事を考えたのだろう。
「それってどんなカタチでもいいから、命を助けてくれって事?」
一郎は露姫をジッと見つめ、確かめるように聞いている。
ただ悪質なのは、色を含んだ眼差しと表情で見つめている事だ。
もちろん露姫は騙され、頬を染めて頷いている。
康孝は何かに気づき、慌てて止めようとする。
他の者達も何かに気づきはしたが、もう一郎と契約を済ませちまった。
「お前悪質だな…… わかってたけどよ。」
「だってコイツら嫌いだもん。」
「だな、もう一人はどうするんだ?」
「もちろん、貰うよ。雌は需要があるからね。」
そう言ってうっそりと仄暗く笑う、一郎。
お嬢は気づいてないが、従魔の中でコイツが一番悪質なんだ。
あれだけお嬢の事を、好き勝手言って無事なはずがない。
ただでさえコイツの目の前で掠め取るなど、馬鹿がする事だ。
”俺だってやらねーよ。”
ホントたまたまのタイミングで、出来たんだろうが恐ろしいね。
コイツ等姉弟は、知らないうちに地獄の扉をこじ開けた。
もちろん他の者達は、俺達の正体を知っている。
そんな俺達がその後を引き受けた事に、人がどうこうできる事は出来ない。
王や王妃、その他の者達も蒼褪め怯える。
その様子に、一段と怯え私達をみる、康孝。
だがただ一人、勝ち誇った表情で一郎にしなだれかかる、露姫。
そんな露姫の頭を撫で、残虐性を秘めた微笑みをたたえる、一郎。
”アーアー……、俺知らねーよ。コイツが選んだんだ。”
自分で選んだ選択だ。責任は持たなきゃな。
俺も実際この女が、どうなろうと知った事じゃない。
せいぜいコイツの身内らと、縁を切らせて貰うとしよう。
そう思い、お優しい俺は海流に念話を飛ばした。
だからコイツ等は、ほぼこの国と縁なしとなった訳さ。
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「しかし俺達は、少し早めの隠居生活になりそうだな。せっかくだから、いろんな国を見て回りたいモノよ。」
「その時は、私どもの船に乗っては如何でしょうか?将軍様なら、むしろこちらがお金を払いますよ。」
そう言って間者の黒狼が、ニコニコ笑顔で言っている。
「俺の次の職場は安泰のようだな♪」
「私は一時ゆっくりとしてますよ。文化の功労者の研究がしたいです。」
宰相は、織機や調味料を作った人物に興味があるそうだ。
今回の件も踏まえて、島の若者の教育に力を入れたいらしい。
「それなら私もそちらの手伝いをしたいと思うよ。」
王様も、もともとその人物に憧れがあった。
「この島の文化をしっかり継承に残したいからね。」
皆先を見越して、先に進む道を考えている。
そんな皆の話している姿を、俺と海流は静かに見守っていた。
子らはどうなったかって?
そりゃあ、子供の頃の記憶、特に感情を伴う縁を切った。
名前に記憶あっても、島に対して大罪を犯した者達という記憶しかない。
自分達の子供だった記憶がないという事だ。
民が教えたとしても、大罪の記憶が強すぎて嫌悪感しか湧かないだろう。
つまり奴らは罪人、ただそれだけだ。
たが李・白夜だけは、記憶を残している。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




