知らない内の無双
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
城に着くと、すぐに食事の用意がしてある大広間へ連れて行かれた。
それは腹の虫が、クークーと自己主張し出したからだ。
「すぐに着きますからね。もう少しの辛抱ですよ。」
そう言って足早に案内する、お船さん。
その後ろを一郎に抱っこされ、連れて行かれる私。
更にその後ろに、大爆笑の将軍と苦笑いの風魔。
海流は淡々とついて来ていた。
「やっぱり子供はしっかりご飯食べないとな。姫巫女様は年齢的にも小さい。」
「一時期はガリガリで、骨と皮だった。」
そう言って、私の重さを堪能する一郎。
「まだまだ軽すぎ、もっとご飯食べないとダメだよ。」
ヘニョンと眉を下げる一郎。
私としては結構食べているつもりなんだけど、一郎的にはダメのようだ。
”と言うか、一郎のいい基準が怪しくないかな?”
私はその事に気づき、自分感覚で維持する事にした。
そんな私達一行の移動を、周りは騒めいて通路を通してくれる。
まあ… 私の腹虫の主張で慌てて、苦笑いで退いてくれるのだ。
ホント皆すみません。燃費の悪い身体なんです。
そんな騒めきの中、一人の若い男性が通路に現われる。
そして私を見つけ、走り寄ると頭を下げた。
「お初にお目にかかります。アセリアの姫巫女様。私は隣島の李・百夜と申します。此度は大変ご迷惑をおかけしたとの事、本当に申し訳ございません。」
そう挨拶する相手に、私の腹虫が返事を返す。
さすがの私も恥ずかしく、顔を赤らめてしまう。
”なんでこのタイミングで鳴るのかね。全く……”
李・白夜もその音を聞いて、目を丸くする。
そして慌ててその場を退いて……
「重ね重ね申し訳ない。直ぐ食べれる状態ですので急ぎましょう。」
そう言って部屋へと先導する様に、前を歩いて行く。
「クックック……、姫巫女様の腹虫は面白いな。」
将軍様は身体を震わせ笑っている。
そんな将軍の様子を驚く様に、城の者達は見ていた。
逆にその様子を、私達は不思議に思い見ていた。
今日一日将軍は、ほぼ笑った状態だったからだ。
もちろんその間も足の速度は緩むことなく、目的地へと向かっていた。
部屋に着けば、王様と宰相、そして王妃様。
そして先程の李・白夜が座り、その隣に昼に合った間者がいた。
どうやら間者とたまたま一緒に、このヒノクニへ来ていたようだ。
このタイミングで来るとは、彼もなかなか運がいいのだろう。
”それとも何らかの動きを察知したのだろうね。”
どちらのしろ杜撰な図り事で、バレバレだったのだろう。
そしてそれに何故か引っかかり、一郎達から掠め取ったのだからスゴイ。
”それに全て運を、使い果たしたんだろうね(笑)”
どちらにしろ終わった事だ。それにこっちも役得だ。
だっていろいろ買って貰い、棚ぼただった。
「姫巫女様、コチラの椅子にどうぞ。」
そう言って王妃様が近寄り、私の座る場を整えてくれた。
腰かけ椅子の高さを調節し、クッションを設置する。
一郎が座らせると、王妃様自ら高さ確認をされた。
「ちょうどいいわ。さあ、どうぞ召し上がって下さい。」
そう言ってニコニコほほ笑んでいる。
何処か嬉しそうな様子に戸惑う私。
「王妃様は姫巫女様の様子が、懐かしいのです。」
お船さんは微笑んだ。場は和やか雰囲気だった。
私のお膳には、鯛めし、漬け物、湯豆腐、味噌汁、お煮しめ、桃の寒天寄せ。
もちろん私の頭はフィーバータイム♪だった。
”豆腐だよ。と・う・ふ!!それに寒天に桃。寒天があるんだね♪”
私は頭の買い物リストに書いていた。
久しぶりに食べる豆腐の柔らかさと温かさ。
「ハア~~、幸せの柔らかさだわ~♪」
ニマニマ顔を綻ばせて、食事を堪能していた。
鯛めしもいい感じに炊かれ、山椒の香りとゴマがいい感じでアクセントになった。
漬物もやっぱり年月の深みが違う、奥深さには勝てない。
ポリポリ音をたて食べ、鯛めしを口に入れる。
漬物の塩気が、口の中で鯛めしを美味しくさせた。
「姫巫女様、どうぞお茶でございます。」
そう言って侍女が、私にお茶を渡す。
つかさず隣にいた風魔が、そのお茶を手に取り口に含む。
「美味いほうじ茶だな。少し熱めだ。」
そう言って私に渡した。
私はフーフーして、ほうじ茶を飲んだ。
これで口の中はリセットされた。
”さてさて桃寒天。久しぶりの桃さま♪寒天さまもお久しぶり~♪”
私は知らなかった。どうやら私は無意識にしゃべっていたそうだ。
機嫌良さげにニコニコ笑って、料理を見る度に喜ぶ。
一口含めば満面の笑みを湛え、とても嬉し気な様子。
とにかくヒノクニの料理を幸せそうに食べ喜ぶ。
その様子を見た王様たちは、とても嬉しく満足気だったようだ。
「ハア~~…、美味しかった。ホント安心して食べれた。何でうちの大陸あんなに飯マズなんだろ?」
「というかなんで美味いんだ?外の飯は多少マシって感じなのに?」
風魔も頭を捻りながら、おかわりを催促していた。
「料理の仕方のようです。やっぱり生だったり、そのままでは美味しくありません。」
言われてみれば、全て火を通した料理だ。
なるほど、あく抜き処理でもしたんだろう。
この島も野菜のえぐみなら、確かに有効手段になるだろう。
うちの大陸ほどえぐみが酷くないのだから……
「ヒノクニの料理は好き♪ご飯が美味しい。美味しいは正義。」
ウンウンと頷きながら食べる、一郎。
その独り言を聞いて、ホッとする将軍とお船さん。
風魔と海流もそれに同意する様に頷いて、黙々食べていた。
大変美味しく堪能しました。満足です♪
上機嫌な私は、のんびりとお茶を飲んでいる。
風魔達も満足した様で、同じくお茶を飲んでいた。
「さて皆さんが落ち着いた事ですし、今後の島の話を致します。」
それを聞いて、私聞いていいのかしら?と首をかしげる。
「ちょっと待った。うちのお嬢関係ないじゃないか?」
風魔もそう思い、待ったをかけた。
「申し訳ございません。確かに姫巫女様には関係ない事でしょう。ですがこの島をお気に召した姫巫女様には、聞いて頂きたいと思ったのです。」
それを聞いて私は、風魔を見て頷いた。
聞いた方がいいと思ったから、この独自文化が無くなる事だけは避けたい。
「まず改めて姫巫女様には、今回の事大変申し訳ございませんでした。全ては私ども大人の説明の足りなさが原因なのでしょう。ホントご迷惑をお掛け致しました。」
そして李・白夜にも同様に謝罪し話し始めた。
今回の起こした原因。
それはもちろん長女への婿入りが発端だった。
何故長男がいるのに、長女が夫を取りその者が王になる。
それは長年島暮らしをした者達には驚きだった。
長年その島に住んでいる者達、魔石に関係する者達は納得した。
でもそれを言う事は出来なかった。それはどうしてか……
言えば糸を提供する蜘蛛達に、悪さをする可能性があったからだ。
「いつの頃か蜘蛛達への感謝を忘れ、蜘蛛を隷属的扱いをする者達が出てきました。注意しようと逆に増えていく。そのうち織機関係は一部の一族が扱う事になりました。そうする事で蜘蛛達の安全を確保したのです。」
そこから糸はどのように手に入れ、魔石がどの様に消費しているのか。
知っているのは上層部のみとなっていく。
実際、織物の需要が多く技術の漏洩防止にもなった。
だけどその内、島の魔石は段々と算出を減らしていく。
しかし比例して島の人口は増え、織物産業も拡大し、交易の要となる。
それに伴い魔石の消費は、逆に増えていく一方だった。
だから織物以外を産業の活路に模索していた。
「ですがなかなかこちらが思う様に、受け入れられませんでした。大陸の野菜はこちらの物に比べ、エグミが強すぎた。それに調味料の見た目も悪いし、香りも独特。どうする事も出来なかった。」
それならと大陸に合う調味料を試作したり、合う料理を模索したそうだ。
そういう者達が、いろんな国に住み着いたのだ。
”うん?という事は、あのおやきのおっちゃんとお店の店主がそうなのか!”
なるほど…… ここに繋がる訳だ。
「そしてアセリアに住む同胞の者から、えぐみもない食材が作り出された事を聞きました。」
それにより多くの国から注目を集め、食材その物の改良へと舵を切る風潮が出来上がりつつあった。
それにアセリアの食材を使い、ヒノクニの調味料を使った時の旨さは凄いと絶賛された。
「私共はもしかしたら、この調味料が脚光を浴びるかもと思ったのです。」
だからこそヒノクニは無理をして、アセリアに店を開いたそうだ。
アセリアで注目を集めれば、確実に各国に受け入れて貰えると考えた。
もしかしたらと思い願い託して……
「それと同時に、この白夜殿の手腕を私どもは欲したのです。」
どうやらこの李・白夜は、交易に精通した人物らしい。
「もともと私共の島は、海上を主とした産業なのです。」
島同士をつなぐ船頭や、大陸へ向かう海運業が生業だった。
だかたまたま近年、島の下に魔石がある事を発見したそうだ。
おかげで大きな船で運行し、いろんな国と交易できるようになる。
「私がコチラの島と婚姻を交わそうと思ったのも、アセリアの存在があったからです。」
李・白夜が私を見て、ニヤリと笑った。
「お嬢、偉くいろんな所と関わってないか?」
「無自覚とは恐ろしいな。」
「イヤ、ホント何もしてないし……」
「ご主人様最強♪」
そんな私のワタワタとした顔を、王妃様とお船さんは微笑んで見ていた。
将軍様は風魔と同じように、呆れ顔だったけどね。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




