表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/68

知らない内の無双

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 





 城に着くと、すぐに食事の用意がしてある大広間へ連れて行かれた。

 それは腹の虫が、クークーと自己主張し出したからだ。


「すぐに着きますからね。もう少しの辛抱ですよ。」


 そう言って足早に案内する、お船さん。

 その後ろを一郎に抱っこされ、連れて行かれる私。

 更にその後ろに、大爆笑の将軍と苦笑いの風魔。

 海流は淡々とついて来ていた。


「やっぱり子供はしっかりご飯食べないとな。姫巫女様は年齢的にも小さい。」


「一時期はガリガリで、骨と皮だった。」


 そう言って、私の重さを堪能する一郎。


「まだまだ軽すぎ、もっとご飯食べないとダメだよ。」


 ヘニョンと眉を下げる一郎。

 私としては結構食べているつもりなんだけど、一郎的にはダメのようだ。


 ”と言うか、一郎のいい基準が怪しくないかな?”


 私はその事に気づき、自分感覚で維持する事にした。

 そんな私達一行の移動を、周りは騒めいて通路を通してくれる。

 まあ… 私の腹虫の主張で慌てて、苦笑いで退いてくれるのだ。

 ホント皆すみません。燃費の悪い身体なんです。


 そんな騒めきの中、一人の若い男性が通路に現われる。

 そして私を見つけ、走り寄ると頭を下げた。


「お初にお目にかかります。アセリアの姫巫女様。私は隣島の李・百夜と申します。此度は大変ご迷惑をおかけしたとの事、本当に申し訳ございません。」


 そう挨拶する相手に、私の腹虫が返事を返す。

 さすがの私も恥ずかしく、顔を赤らめてしまう。


 ”なんでこのタイミングで鳴るのかね。全く……”


 李・白夜もその音を聞いて、目を丸くする。

 そして慌ててその場を退いて……


「重ね重ね申し訳ない。直ぐ食べれる状態ですので急ぎましょう。」


 そう言って部屋へと先導する様に、前を歩いて行く。


「クックック……、姫巫女様の腹虫は面白いな。」


 将軍様は身体を震わせ笑っている。

 そんな将軍の様子を驚く様に、城の者達は見ていた。

 逆にその様子を、私達は不思議に思い見ていた。

 今日一日将軍は、ほぼ笑った状態だったからだ。

 もちろんその間も足の速度は緩むことなく、目的地へと向かっていた。




 部屋に着けば、王様と宰相、そして王妃様。

 そして先程の李・白夜が座り、その隣に昼に合った間者がいた。

 どうやら間者とたまたま一緒に、このヒノクニへ来ていたようだ。

 このタイミングで来るとは、彼もなかなか運がいいのだろう。


 ”それとも何らかの動きを察知したのだろうね。”


 どちらのしろ杜撰な図り事で、バレバレだったのだろう。

 そしてそれに何故か引っかかり、一郎達から掠め取ったのだからスゴイ。


 ”それに全て運を、使い果たしたんだろうね(笑)”


 どちらにしろ終わった事だ。それにこっちも役得だ。

 だっていろいろ買って貰い、棚ぼただった。


「姫巫女様、コチラの椅子にどうぞ。」


 そう言って王妃様が近寄り、私の座る場を整えてくれた。

 腰かけ椅子の高さを調節し、クッションを設置する。

 一郎が座らせると、王妃様自ら高さ確認をされた。


「ちょうどいいわ。さあ、どうぞ召し上がって下さい。」


 そう言ってニコニコほほ笑んでいる。

 何処か嬉しそうな様子に戸惑う私。


「王妃様は姫巫女様の様子が、懐かしいのです。」


 お船さんは微笑んだ。場は和やか雰囲気だった。

 私のお膳には、鯛めし、漬け物、湯豆腐、味噌汁、お煮しめ、桃の寒天寄せ。

 もちろん私の頭はフィーバータイム♪だった。


 ”豆腐だよ。と・う・ふ!!それに寒天に桃。寒天があるんだね♪”


 私は頭の買い物リストに書いていた。

 久しぶりに食べる豆腐の柔らかさと温かさ。


「ハア~~、幸せの柔らかさだわ~♪」


 ニマニマ顔を綻ばせて、食事を堪能していた。

 鯛めしもいい感じに炊かれ、山椒の香りとゴマがいい感じでアクセントになった。

 漬物もやっぱり年月の深みが違う、奥深さには勝てない。

 ポリポリ音をたて食べ、鯛めしを口に入れる。

 漬物の塩気が、口の中で鯛めしを美味しくさせた。


「姫巫女様、どうぞお茶でございます。」


 そう言って侍女が、私にお茶を渡す。

 つかさず隣にいた風魔が、そのお茶を手に取り口に含む。


「美味いほうじ茶だな。少し熱めだ。」


 そう言って私に渡した。

 私はフーフーして、ほうじ茶を飲んだ。

 これで口の中はリセットされた。


 ”さてさて桃寒天。久しぶりの桃さま♪寒天さまもお久しぶり~♪”


 私は知らなかった。どうやら私は無意識にしゃべっていたそうだ。

 機嫌良さげにニコニコ笑って、料理を見る度に喜ぶ。

 一口含めば満面の笑みを湛え、とても嬉し気な様子。

 とにかくヒノクニの料理を幸せそうに食べ喜ぶ。

 その様子を見た王様たちは、とても嬉しく満足気だったようだ。



「ハア~~…、美味しかった。ホント安心して食べれた。何でうちの大陸あんなに飯マズなんだろ?」


「というかなんで美味いんだ?外の飯は多少マシって感じなのに?」


 風魔も頭を捻りながら、おかわりを催促していた。


「料理の仕方のようです。やっぱり生だったり、そのままでは美味しくありません。」


 言われてみれば、全て火を通した料理だ。

 なるほど、あく抜き処理でもしたんだろう。

 この島も野菜のえぐみなら、確かに有効手段になるだろう。

 うちの大陸ほどえぐみが酷くないのだから……


「ヒノクニの料理は好き♪ご飯が美味しい。美味しいは正義。」


 ウンウンと頷きながら食べる、一郎。

 その独り言を聞いて、ホッとする将軍とお船さん。

 風魔と海流もそれに同意する様に頷いて、黙々食べていた。



 大変美味しく堪能しました。満足です♪

 上機嫌な私は、のんびりとお茶を飲んでいる。

 風魔達も満足した様で、同じくお茶を飲んでいた。


「さて皆さんが落ち着いた事ですし、今後の島の話を致します。」


 それを聞いて、私聞いていいのかしら?と首をかしげる。


「ちょっと待った。うちのお嬢関係ないじゃないか?」


 風魔もそう思い、待ったをかけた。


「申し訳ございません。確かに姫巫女様には関係ない事でしょう。ですがこの島をお気に召した姫巫女様には、聞いて頂きたいと思ったのです。」


 それを聞いて私は、風魔を見て頷いた。

 聞いた方がいいと思ったから、この独自文化が無くなる事だけは避けたい。


「まず改めて姫巫女様には、今回の事大変申し訳ございませんでした。全ては私ども大人の説明の足りなさが原因なのでしょう。ホントご迷惑をお掛け致しました。」


 そして李・白夜にも同様に謝罪し話し始めた。




 今回の起こした原因。

 それはもちろん長女への婿入りが発端だった。

 何故長男がいるのに、長女が夫を取りその者が王になる。

 それは長年島暮らしをした者達には驚きだった。

 長年その島に住んでいる者達、魔石に関係する者達は納得した。

 でもそれを言う事は出来なかった。それはどうしてか……

 言えば糸を提供する蜘蛛達に、悪さをする可能性があったからだ。


「いつの頃か蜘蛛達への感謝を忘れ、蜘蛛を隷属的扱いをする者達が出てきました。注意しようと逆に増えていく。そのうち織機関係は一部の一族が扱う事になりました。そうする事で蜘蛛達の安全を確保したのです。」


 そこから糸はどのように手に入れ、魔石がどの様に消費しているのか。

 知っているのは上層部のみとなっていく。

 実際、織物の需要が多く技術の漏洩防止にもなった。

 だけどその内、島の魔石は段々と算出を減らしていく。

 しかし比例して島の人口は増え、織物産業も拡大し、交易の要となる。

 それに伴い魔石の消費は、逆に増えていく一方だった。

 だから織物以外を産業の活路に模索していた。


「ですがなかなかこちらが思う様に、受け入れられませんでした。大陸の野菜はこちらの物に比べ、エグミが強すぎた。それに調味料の見た目も悪いし、香りも独特。どうする事も出来なかった。」


 それならと大陸に合う調味料を試作したり、合う料理を模索したそうだ。

 そういう者達が、いろんな国に住み着いたのだ。


 ”うん?という事は、あのおやきのおっちゃんとお店の店主がそうなのか!”


 なるほど…… ここに繋がる訳だ。


「そしてアセリアに住む同胞の者から、えぐみもない食材が作り出された事を聞きました。」


 それにより多くの国から注目を集め、食材その物の改良へと舵を切る風潮が出来上がりつつあった。

 それにアセリアの食材を使い、ヒノクニの調味料を使った時の旨さは凄いと絶賛された。


「私共はもしかしたら、この調味料が脚光を浴びるかもと思ったのです。」


 だからこそヒノクニは無理をして、アセリアに店を開いたそうだ。

 アセリアで注目を集めれば、確実に各国に受け入れて貰えると考えた。

 もしかしたらと思い願い託して……


「それと同時に、この白夜殿の手腕を私どもは欲したのです。」


 どうやらこの李・白夜は、交易に精通した人物らしい。


「もともと私共の島は、海上を主とした産業なのです。」


 島同士をつなぐ船頭や、大陸へ向かう海運業が生業だった。

 だかたまたま近年、島の下に魔石がある事を発見したそうだ。

 おかげで大きな船で運行し、いろんな国と交易できるようになる。


「私がコチラの島と婚姻を交わそうと思ったのも、アセリアの存在があったからです。」


 李・白夜が私を見て、ニヤリと笑った。


「お嬢、偉くいろんな所と関わってないか?」


「無自覚とは恐ろしいな。」


「イヤ、ホント何もしてないし……」


「ご主人様最強♪」


 そんな私のワタワタとした顔を、王妃様とお船さんは微笑んで見ていた。

 将軍様は風魔と同じように、呆れ顔だったけどね。










読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ