井の中の蛙
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
私はヒノクニ独自の文化が好きだ。
かどわかしは子供の悪戯と思う事にした。
お船さんの対応が、丁寧で優しかったから……
この島独自の文化を大切にしたい気持ちもある。
だけれど次の世代の資質の低下が、かなり痛すぎる。
この国そのモノの、独自文化さえも危うく思えるほどに。
「お船さん、ごめんなさいね。私協力出来そうにないわ。さすがにね………」
私は申し訳なさ気に言うと、お船さんも首を振り困った顔で言った。
「こちらこそ重ね重ね大変申し訳ございません。先の件を不問にして頂きましたのに……」
そう言って頭を下げるお船さん。
その雰囲気におやっ?と、思う者もいる。
年輩の者ほど、そこに気づき考え込む。
更にまた何か言おうとする姫様に、側仕えは慌てて口を塞ぐ。
自分がやった愚かさを、余りにも軽率な行動を心底悔いる。
「それじゃ今決めた分を払いましょう。」
「いえ、コレはこちらのお詫びです。お願いします。どうかこの国の文化を気に入って頂いた、感謝の気持ちと受け取って下さい。」
そう言って、お船さんは哀し気に微笑んで頭を下げた。
そんなやり取りをしていると、入口の方でざわめきが起きる。
見れば、体格のいい男性が店に現れた。
そしてこちらの現状を把握し、大きなため息をついて肩を落とした。
「将軍様…… 」
お船さんがそう言うと、困った顔をしてさらに言った。
「何故こちらに、文姫さんがお見えになったのでしょう?」
将軍も諦めた様子で姫様をチラッと見た。
「わからん、王の面前に来るよう言っておったのに……… そちらは……聞くまでもないな。」
泣き笑いの様な顔でほほ笑み、肩を竦める将軍。
「文姫様にお聞きくださいませ。姫巫女様を大層ご不快にされました。私も弁明する気が起きません。この国の行く末を考えると、考えを改めなければなりません。民らも文姫と同じようですしね。」
上の位置にいるこの二人が、これだけ民らのいる前で、こんな意味深な話をする。
それが何を意味するのか、年輩の者達はその理由を簡単に気付いた。
蒼褪める者、悲嘆にくれる者、仕方がないとため息をつく者など様々………
そんな年輩の者達の反応を見て、それ以下の年若い民達は不安な表情をし始める。
口を塞がれ抵抗する姫様を見た将軍。
「そこの者、姫を放しなさい。」
将軍は側仕えに命じた。
姫様はニヤリと笑った風に目を細める。
側仕えは不安そうに周りを見て、塞いでいた手を外すと……
「ちょっと貴女何するのよ。仮にも主の口を塞ぐなって信じられないわ!」
そう言って叱咤した後、また私に向かって言い放つ。
「だいたい貴女、子供じゃない。そんな子供の頃から、男を侍らすなんて贅沢なのよ。私の方がよっぽど満足させられるし、絶対いいはずよ。だいたい子供がいい気になるんじゃないわよ!」
とてもいい事言ったと言う風に、満足気ない姫様。
自分の言った意味をよくわかっていないようだ。
一部の民も眉をひそめ、あきれかえっている。
だがそれを聞いて、喝采を挙げた民がいたのも事実だ。
将軍はその様子を見つめ、黙って聞いていた。
「こんな感じなのです。私もほとほと愛想が尽きました。いつからこの様な有様なのでしょうか?」
未だに騒ぎ立て囃す年若い民達、姫様は風魔達に愛想を振り撒く。
もちろん風魔達は冷笑を浮かべ、無視している。
「お前達は良く幼子にいい歳頃の者が、それだけ悪様に言えるものだな。」
将軍が、獰猛な目を向け、姫様や囃す者達を睨み付けた。
だけどそれで収まらないのが、姫様だった。
「なによ!ホントの事じゃない。どこが悪口よ!!」
バチーーーン!!
将軍から強烈なビッタが、姫様に放たれる。
その勢いで、姫様は壁の方へ飛びぶつかる。
ドン!!
手加減はしてあるだろうが、それでも左頬は腫れあがり見るも無残だ。
たぶん歯も何本か欠けただろう………
「姫、嫌……下種な女でしかないな。コイツを直ぐ引っ立てろ。牢へぶち込んどけ!!」
外に控えていた兵士らにそう言って、泣き叫ぶ姫様は、引きずられるように出て行った。
更に、面白げに喝采を挙げ騒ぎ立てた者達も同時に引っ立てられる。
そして………
「貴女もわかっているわよね。その場を作ったのは貴女の罪よ。」
お船さんはそう言って、側仕えの人も兵士に連れて行かれた。
彼女もがっくりと頭を下げ、よろよろと出て行く。
そして将軍は、詳しい説明が明日ある事を民らに言った。
その事からも今回の件は、余りいい物ではない事がわかる。
そしてそれが、多少私も関わっている事も気づく。
だからこそ……
「睨み付けているな……」
「まったくだ。筋違いにもほどがある。」
「ご主人様、僕この国嫌い。」
「「……………」」
その様子に将軍もお船さんは、何度目になるか分からないため息をついた。
「余りため息をつくと、幸せが逃げるそうよ。」
私が微かに微笑みを向けて、そう言うと……
「幼子に気を使われましたな。」
将軍は優し気な微笑みをたたえ私を見る。
お船さんも、柔らかい微笑む。
これからいろいろと大変だろう。
でも私にとっては、対岸の火事でしかない。
風魔達は私の気にしていない様子に、肩を竦めた。
だって所詮関係ないんだもの。
気にしたら疲れてしまうよ。
その後は将軍も交えて、必要な買い物を終えていく。
「しかし姫巫女様がおせちを作るとは、驚きました。それにとてもお詳しい。」
「ホントです。そのお歳でとても素晴らしいですわ。」
「フフフ♪」
私は笑ってごまかせ状態で、ニコニコ笑顔だった。
「しかし何故、離脱予定の王に贈り物として渡されるので?」
「もちろん言葉遊びよ♪」
「「言葉遊び?」」
将軍とお船さんはキョトンとした顔をした。
でもおせちを作るお船さんは、ハッと気づいたようだ。
「一の重は酒の肴ですね。黒豆はまめまめしく働く。栗は勝ち栗。昆布は喜ぶ。伊達巻は知識。後卵関係は子孫繫栄でしたわね。田作りも五穀豊穣。」
うんうん♪意味も同じなのかい!スゴイね♪
その後も二の重、三の重と意味合いを言う、お船さん。
「でも離脱する国のお土産にするには、不似合いじゃないかしら?」
お船さんが首を捻りながら言うと、私がニンマリ顔で笑う。
その顔を見た将軍とお船さんは、私の真の目的が分かった様だ。
お二人は、何とも脱力した顔をする。
「かなり皮肉の聞いた贈り物だな。」
「フフフ……♪」
「知らなきゃただの豪華な美味しい料理ですもの。相手もただ美味しいだけですわ♪(笑)」
将軍は皮肉交じりな顔をし、お船さんはとても楽し気な顔をした。
「姫巫女様もまだまだ悪戯大好きなお子様ですからな。悪戯に気づかぬ方が悪いのです。」
将軍はそう言うと、アハハと笑うのだ。
それはお船さんも同じな様で、私の頭を撫でて微笑むのだ。
もちろんコロ助を綺麗に避けている事は言うまでもない。
おせちを美味しそうに嬉しそうに食べるだろう、その国の王。
その様子を想像するだけで面白く、イヤな事を一時期忘れた。
もうそろそろ、お城の方へ向かう約束の時間だった。
昼ご飯も軽くうどんを食べた程度だったから、お腹も段々空いてくる。
「城の付きましたら、お食事の準備も出来てる事でしょう。」
「姫巫女様が、ご存じない料理があるといいのですが(笑)」
御輿の中ではお船さんが、先程のおせちの話をする。
「思い出したくもないと出来事ですが、あの床が開く仕掛けと、おせちは同じ方が考えたのです。その方がこの島の独自な文化を作り、礎を築かれました。」
その方が何処の者か分からない。たぶん船が難破したのだろう。
ボロボロな状態で浜辺に打ち上げられていた。
そういう者は、結構この島の周辺に入る。
その人はいろんな知識を持っていた。
貧しい島はその方のおかげで、段々と他の島と遜色なく交流できるようになった。
「その方の作られた織機は、魔石を使う事で多くの布を均一に量産できます。人の手もそこまで要りません。多数の蜘蛛達が、糸を提供しているのですよ。」
蜘蛛は魔石を貰う事を条件に、糸を提供している。
つまり、織機と蜘蛛には、魔石がそれだけ必要なのだ。
「ちょうどあの山の上に、その方のお墓があるのです。すぐにわかると思いますよ。不思議な文字の墓標ですから。」
不思議な文字…… それを聞いて引っかかりを感じた私は、次の日風魔にその場へ連れて行って貰った。
それが、私と同じ古里を持つ者だった。
私はとても感謝する、かの方に………
だからこそ、かの方の技術と恩恵を守らなければならない。
それが私の願いであり希望だった。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




