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親の心子知らず

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。





私は先人のありがたさに身に染みた。

彼が私と同じ転生なのか、それとも転移だったのかは分からない。

ただ彼がいたから、今の私はとても助かったのだ。

これは間違いのない事だった。



この国の王といっても島を統治する人だけどね。

ひい爺様はあの仕掛けを子供時代に聞いたそうだ。

たぶん歌舞伎の仕掛け話をしてたんだろうね。

ひい爺様もその仕掛けを使って、劇をし民を楽しませていたそうだ。

そうやってこの国は、王族と民は近しい関係で成り立っていたのだろう。

だけど島だけでは、成り立たなくなる実情があった。

織物を作るのに魔石は必要だった。

織物は島の産業で、外貨獲得する唯一の物だった。


この国は島だ。まわりにもたくさんの島がある。

要するに部族ごとに島で独自の文化が形成され、まとまり国としての体を作った。

個々の島はある意味貧しい。島々だけの交易では成り立たない。

だから更に先の大陸へと交易を伸ばし、外貨獲得をし足りない物資を得ようとする。

でも海上は海賊や魔物などが横行し、天候などにも左右され危険が伴う。

島々の交易に比べ利益も大きいが、船が転覆すれば全て海の藻屑となる。

ギャブル的要素が物凄く、交易が成り立つかどうかは未知数だった。


このヒノクニはホントに独自の文化だ。

調味料もしかり、思うように大陸に受け入れられなかった。

手をこまねいているうちに、島の魔石も底をつき始める。

魔石を獲得するには、ダンジョンがある帝国と交易が必要。

でも先程も言ったように、うまくいかなかった。

だからまだ魔石貯蔵量が十分にある島との縁を結ぶ事にしたのだ。




だけどそんな事情を全く考慮せず、自分の事しか考えない。

その後どういう事になるのか………

あれだけ人目のある所で騒ぎを起こせば、婚姻予定の間者もいる。


「王よ、この婚姻の話は破棄します。この様な馬鹿げた騒ぎを起こすのです。こちらも助かりました。最悪の事になる所でした。」


そう言ってご破算と相成った。

婚姻予定の島の者は、とってもいい笑顔だ。それに比例し……


「王様真っ青だな。」


「そうね。それと子と親世代も、何なんだろうね。」


風魔と顔を見合わせ、何とも言えない顔をした。

子供といっても16歳以上はあるけど、自分の思惑通り事が運んで喜んでいる。

それに比べで大人達は、これからの事を考え真っ青状態だった。

それを見ながら私は思った。

あの子らは島の状態を知らないのだろうか?

私は先程お船さんに訊ねたのだ。

一体私はなぜこんな事になったのか?

ただ買い物に来ただけだというのに………


この子らも何故婚姻を結ぶのか、理由を聞かなかったのだろうか?

それとも理由も言わず、婚姻の事実だけ言ったのか?


”だけどね、もうこうなるとこれでいいんだよ。”


子供達は選んだんだ。自分達のこの後の未来を……

どんな状況になろうと、それを選んだのは子供達だ。

後で知らなかった間違いだったと言っても、婚姻予定の関係者の目の前で喜ぶ姿は誤魔化せないのだ。

だからこそ大人達は、これから子供らの対応を間違えてはいけない。

ここで甘やかすのではなく、現実をしっかり見せないといけないのだ。

この騒ぎを起こした代償がどういったモノなのかを、自覚しなければならない。


だってもう彼らは子供ではないのだ。

16歳過ぎた時点で、ホントなら大人扱いなのだから………


”それに比べればフィルちゃんなんて、ピチピチの7歳です。まだまだお子ちゃま♪”


ホントそう考えると、コイツ等9歳も下の幼女に何してくれてんだ!!

私だからよかったモノの、他の幼子ならとんでもない事だよ!

しっかり代償を払って貰わなきゃね。だいたい犯罪なんだよ。


”それをなに喜んでいるんだか……”


相手国の間者も冷めた目で、その様子をながめていた。

そして私の視線に気づいた間者は、とても申し訳なさげに頭を下げた。

その様子に、コチラも申し訳ない気持ちになった。



「何と言うかコイツ等、ホント馬鹿なんだな。」


しみじみと言う風魔の言葉に、何とも言えない顔をするお船さん。

今は私付きという事で、私達と一緒にいるのだ。


「後ほど王より説明があると思います。」


こちらも申し訳なさそうに顔を伏せる。

ホント子供の教育ってとっても難しいよね。

私はしみじみと彼らを見ながら、つくづく思った。

親が思う様に、子は育たたないものだなと………



その後はお開きとなり、私達は時間もないという事で買い物を再開した。


「お嬢、これとこれを組み合わせよう。」


風魔が差し出したのは、白をベースに桜の絵柄が入った物だ。

そしてズボンの色は緑です。

風魔の全体的に白。ただ裾の方に青い雲の様な絵柄が入っていた。

長いローブを着込んだ様な民族衣装だ。


「俺はコレとコレ。」


どこか恥ずかしそうに渡す海流。

確かに女性の服装を考えるイメージはない。

こちらはどちらかというと……


”袴だね。明治時代の女学生じゃないか!”


蒼をベースに波がらに扇の絵柄。袴は黒に蝶の刺繍。


「私これ好きよ。もう一着欲しいかも♪」


私がそう言うと、海流は嬉し気に色違いを探しに向かう。

海流自身は、同じ蒼をベースにシルバーの菱形の柄が全体的にあり、上着は腿まで長さで動き易そうだ。

そして下も私と同じ色の黒のズボンを選択していた。


”皆見た目はいいから、何着てもに合うね♪”


私はのんびりとお茶を飲みながら、皆が服選ぶのをほのぼの気分で眺めていた。

お船さんも私と一緒に、のんびりと一緒にお茶して貰っている。

お互い気疲れしたもんね、フウと言って苦笑する。


”私もクリス兄やハロルドとか選ぼうかな♪というか結構な人数いるね!”


私はお船さんと話をしながら、紙に書き出しリストアップしていた。

そうする事でアセリアの者達がヒノクニの品を気に入れば、交易が拡がる可能性がある。

今回の失態はとても国として痛い事だった。

でも私の存在は、ある意味ヒノクニにとっては命綱ともいえた。

私もそれがわかるから、素直にお詫びの品を受け取る。


”実際いろんな物をタダで貰えるなんてラッキーじゃない♪”


フィルが100歳のばあさんでもある。

何処か所帯じみたがめつさがあるのだ。

そういうフィルの気持ちが分かる従魔達も、機嫌上昇のご主人様が嬉しい。

だけどそんな平和な雰囲気を壊す者が現れた。


「だいたい貴女何様なのよ!」


店先で現れた途端この言い草だ。さすがのフィルもびっくり!

もちろんお船さんも驚き、口を開けている。

そんな二人の前に出て、対応したのは風魔だった。


「邪魔だ!!お前に関係ない事だ。」


その顔はとても険しく、言い方も突き放した物言いだった。


「なんでよ!お船だって何故そこにいるの?」


「あっちに行け。お前嫌い。」


一郎が冷たいで淡々と言った。

お船さんもため息を付いて、頭を振っている。


「私は王族で姫なのよ!!」


「だからなんだ?そういう地位の家に、たまたま生まれただけじゃないか。」


「姫といいながら、姫という仕事をしない人間に姫とは言えない。ただのバカ女。」


更に喚く姫様に、風魔と海流が容赦ない言葉を浴びせる。


「こんな幼女のどこがいいの!」


「「「全てだ。」」」


どこまでも平行線、ある意味図太いとも言えるだろう。

お船さんはそんな姫様の姿を見て、ほとほと愛想がつきた様だ。


「姫巫女様、我が国の一応姫になりますが、大変申し訳ございません。」


この言い方で分るように、彼女はもう姫という称号はなくなるのだろう。

彼女はたぶんそれだけの地位と名誉があるようだ。


この国の王族には、長女、次女、長男の子供がいる。

そして今ここで騒いでいるのは次女であった。


「ねぇ、お船さん何故ここにいるんだろう?」


とてもとても素朴な疑問?

国の実情を聞いている頃なんだけど、おかしいよね。

この女がここにいる事から、それも怪しく感じる。


「こんな乳臭さ幼女にこんないい男が三人も、可笑しいじゃない!」


状況も全くわからず、自分の思った事を垂れ流す。

こんなのが国を代表する顔になるのだ。

一体どう考えているのだろう。


「ホントにコイツは、さっきから何を言っているんだ?」


王様はいったい何してんだろうね。


「まったくだな。父親から何も聞いていないようだ。」


そうだね。結構時間経ったと思うけどね。


「僕は、別に男じゃない。」


ああ、そう言えばそうだったね。

女物も買った方がいいのかね?


ホントあの王様、ちゃんと話しているのかな?

お船さんは目を瞑り口を噤み、考えている様だった。


「姫様!王のお呼び出しにも来ず、何をされているのですか!!大変申し訳ございません。すぐ連れて行きますので…… 」


ほどなくして、姫様の側仕えがやって来た。


「ちょっとそんなのどうでもいいでしょ!私はこの生意気な色ボケ女に話があるのよ!」


…………色ボケ女?!って誰?……もしかしなくても私の事なの!!


「姫様その様な事を言われてはいけません。人には人のご事情が……」


「ちょっとおまちなさい。その人には人のご事情ってなんなの?」


私は側仕えの言い方が気になった。そんな言い方勘違いするよね。

今までの騒ぎを静観して見ていた人達も、私達を訝しげに見ている。


「いえ…… このような通りで言える事では……」


更に言うのがコレ……

態度もオロオロと目を彷徨わせたモノだった。


「俺達は気にしない。言えばいい。」


海流も側仕えの物言いにイラっとした様で、冷たく言った。

お船さんも、その側仕えをジッと見ている。

側仕えもお船さんの存在に気づき、自分のやった事に蒼褪める。

その様子から、側仕えに悪意があったことが分かった。

側仕えは、慌てるように何か言い募ろうとするが………

周りに詰めかけた者達が、私達に対して悪しざまに言い始めた。

その状態に姫様も、ほら見なさいと言う風に私を見て………


「私が言っている事は間違いないのよ。だから私に仕えた方がいいわよ♪」


と言ったのだ。

だがそれを隣で聞いた側仕えは、自分の起こした事態に……


「も、申し訳ございません!!」


恐れおののき、頭を下げ謝った。

だけどそれはこの三人の、所業を知ってるがゆえだと思われた。

強気に出れないそんな感じに、回りは勝手にそう思う。

おかげで周りは、私達を嫌う気配を匂わせ出始める。


”ホントに…… なんでこの国なのだろう。”


せっかくいい物があるのに…… だんだんと心が冷めていく。

憧れたヒノクニ。前世に似ているだろうと胸を躍らせた。

国元のヒノクニの人達は、とても親切でいい人達だった。


だからこそ、とても残念で哀しくなった。 



読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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