先人 やはり味噌と醤油
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
意外に疲れていたのかね。グーグー結構寝た気分だよ。
外ではバンバンと音がする。どうやら牢の鍵が開いたようだ。
私はあくびをして、身体をコキコキと鳴らす。
どれぐらいホントに寝たんだろうね。
外はどうなっているだろう?
最近私自身も変わってきたと思う。
前世ならこんな所で、時も選ばず寝る事はないだろう。
だけど……前世があるから、寝れるとも言えるだろう。
戦争とは理不尽だ。国同士の戦いに、個人の願いなど関係ない。
ただ心の中では、身近な人が無事国へ帰って来る事だけだ。
どんなカタチでもいいから………
だから何というか、何処かで冷めた部分があるんだろう。
前世の記憶と前々世の記憶…… 死んでもまだ先がある。
私がため息をつき、待ちの姿勢になると……
タイミングを見た様にコロ助は、膜を解除した。
でもそれだけコロ助自身は、巨大化し私にゴロゴロと引っ付いている。
私はヨシヨシと頭を撫でると、嬉しそうに後ろの先端が尻尾の様に揺れている。
そんな私の様子に、ドン引きした様なこの国の王と多分将軍と宰相かしら?
王妃かな?と年輩女性はいなかった。
全く子供相手に何なんだろうね?
「おはよう、アレからどれくらい経ってるの?」
私は幼女7歳、フィルちゃんです。
大人な対応をするつもりは、全くなくなった。
だって起こった理由は、たぶん幼稚な考えからだと思う。
幼女の持ち物だから、簡単に自分のモノにできるとでも思ったのだろう。
それだけでも、かなり腹が立つ事案じゃないか。
私だからよかった、でももし違ったら?
こんな幼子が護衛達と引き離され、あんな牢屋に閉じ込める事考えてごらん。
そして護衛達だって、普通に人間だったらどうなるんだい。
もし知り合いの子供を預かってだったら?
自分の子供だってあるだろう?
そんな訳の分からない争いごとに、ただ強いからと巻き込まれ頼りにされて……
その間自分のせいで巻き込まれ、もし自分が死んだらと………
幼子をあんな牢屋でいつ前で待たせるつもりだった。
それどころか、護衛が死んだらその後幼子どうするつもりだった?
牢屋に入れていること自体、目に見えるってもんだ。
”ふざけるんじゃないよ…… ”
ホントに国同士の争いは、個人の願いや思いは意味がない。
だけど……全く関係ない者にとっては、厄介ごとでしかないのさね。
私はスッと王妃時代の姿勢へと変える。
ガキだと思って侮るんじゃないよ………
するとコロ助がモニョニョと動き頭の上で動き、何かを私に付き出す。
見るとそれは琥珀色の魔石、つまりアクセに使っていい?と聞いているのかな……
「コロ助、好きにしていいよ。」
私がそう言うと、やはり髪をいじり出した。
そんな様子の私達を見ている、大人の男性達。
私はそんな大人達をジッと見ていた。
「アセリアの姫巫女様、この度は大変ご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。」
そう言って、いる者達が一斉に頭を下げる。
それに対して、私は言葉をかける事はしなかった。
一時すると宰相らしき、先程の男性が頭を上げた。
私は横目でチラッと見るだけに留める。
「姫巫女様、ご迷惑をお掛けしておりますのは重々承知しております。ですがお力をお貸し願えないでしょうか。」
この男何を言っているのか…… そのお力は何に対しての事なの?
どちらにしろ、貸すつもりありませんが……
ツーーーンとする私。
「お連れの護衛の方々がお怒りのあまり…… このままでは国そのモノが無くなってしまいます。どうかお助け願えないでしょうか。」
そう言ってもう一度頭を下げる……
「でもそれ…… そもそもあなた達のせいじゃない?違う?なんで私ココにいるの?まさか私が勝手にここに来ましたとでも言うの。」
護衛が怒ってるからって、怒らせたの君達だからね。
そんな風に思っていると…… ビシッ!
斜め後ろか音がしたので振り向くと、黒衣の者が…… ウン……
「アレ何かしら?」
私はとってもいい笑顔で聞いた。
コロ助はゴロゴロともっと褒めていいんだよ、という様に甘えている。
たぶん後ろから私を捕獲か、襲撃か判らない。
どちらにしろ足を一歩踏み出し足元に、棘を形成し身動きを封じたのだった。
”それもえげつないデカさの棘だった。”
私がニコニコ笑顔で聞く姿に、蒼褪める者達がいる。
幼女と思って舐めるなよ。戦争体験者だ。
生きているだけめっけもん、そういうことだ。
「申し訳ございません。一部の者が暴走した様で…… 」
額の汗を拭い言う王だけど……
「ずっと暴走してるよね?統治出来てる?」
私は嫌味を言った。だってそれで巻き込まれてるんだもの。
子供の言い草に、憤る大人の男性が幾人かいるが……
まだ我慢できる様だ。
「と、とにかくどうぞ牢から出て下さい。護衛のいらっしゃる所までお送りいたします。」
「別に送らなくていいよ。満足したら迎えに来るから…… そうでしょ、コロ助?」
私がコロ助に聞くと、首をウンウンと返事する。
ウンウン、うちの子可愛い。こんなに人も素直ならいいのにな♪
そんな返事に、さっきまで憤っていた者も蒼褪めた。
まあ……何だかんだと話し合って、今御輿に乗ってます。
公家の者達が乗ったような御輿だよ。
ホントなら、コロ助に乗って行った方が速いんだ。
だけど…… どうしてもお願いしますと言うからさ。
その願い聞くために、お重箱をただで頂きました。
それ以外でも服でしょ、染料に技術関係……
食もある程度目途がついて終わりじゃないかな?
ならば次は、おしゃれじゃないかと思うんだ♪
フフフ、ここに来たのはただの食材探しだった。
でもそれ以上にいいモノが手に入り、いい感じで終われそうだ。
海辺を見れば、沖に高い波が見える。
潮が一気に引いたのだろう。魚が砂浜で飛び跳ねている。
雲はどす黒いぶ厚く渦巻いて、空気圧が上昇している様だ。
ときおり稲光も起きていて、皆が頭を下げ祈っている。
地震はもう起きてないけど……
海辺の方で、地割れが起きております。
だから津波来ないのね、なるほど……
かなり怒ってるけど、どうしてだろう?
そこが疑問でしょうがない。
だって私に何か怒る心配はしてないはずだ。
だけど怒っているとは、これいかに?
風魔も海流もだし………
「こりゃあれだね。私関係なく怒りを増大させた奴がいる訳だ。」
私がそう言うと、年輩女性のお船さんが落ち込んでいる。
「それは、若様と姫様という事でしょうか?」
「そう。特にね…… 妄想と花畑はだっ嫌いなの。自己中心的な人もうダメね。」
私が言うと、顔を蒼褪めている。
「自分が一番綺麗、私の言う事を聞いて当たり前、私がする事に間違いはない。私程の人物はいない。」
ドンドン上げ連なっていく私。
「自己完結ならいいけど、回りに振り撒くならはた迷惑よね。」
私はニッコリ笑いながら言うと、前を見る。
「だいたい自分の恋愛を成熟させるために、なぜ赤の他人を巻き込むの?」
私がそう言って、お船さんを見る。
「おかしいでしょ。自分はそれをしていい人物だと、思い上がっている証拠よ。そんな人が上の人間と婚姻していいのかしら?申し訳ないけれど私、お姫様と結婚する相手の方を同情するわ。」
私の言葉に蒼褪め唇を震わせる、お船さん。
「国を背負える人じゃないわ。破滅させるなら、納得ね。よかったじゃない。予定通り破綻するわ。」
私がそう言うと、お船さんは俯いた。
「ひ、姫様はその後どうなるのでしょう?」
「何が?」
「この婚姻がダメだったらです。」
「知らないわ。なるようにしかならないわ。」
私は淡々と言った。大体好きな人いる訳じゃない。
自分の好みじゃないというただそれだけで、こんな事を起こしているのだ。
そして若様も…… 自分の兄になる人なら強い人。
兄弟揃って花畑以外の何者でもない。
それだけの為に、婚姻予定の島へ戦争とか馬鹿じゃない。
そりゃ怒るわ、うちの従魔達が………
そんなバカげた事で、みすみす掠め取られたのだ。
”怒り狂うだろうな……”
ホントどうでもいいや~~だよ。マジで……
「とにかく自分達の姫様だから、自分達でどうにかして。」
「ハイ…… 」
「ホント…… いい歳した人が恥ずかしいわ。」
「……………………」
私はもうそれ以上何も言わなかった。
現場に着くと、三匹の従魔達はいた。
それもちゃんと人化したままで、魔力を放出した様だ。
御輿から私から私が出て来ると……
三人ともコロッと見事に態度も顔も変わる。
一郎に至っては、揃いの服な分とっても嬉しそうだ。
風魔も海流も揃いにしたい、合わせたいと言う。
だから一緒に選ぼうといい、他の人達の分も用意しようと話をする。
風魔達は持参金の心配をした。
でもね………
「今回の迷惑料で、買ったもの全てタダにして貰うの。」(笑)
それ以外でも、醤油と味噌一年分タダという契約をした。
代わりに、肥料関係と交換する事にしている。
お互いwinwinの関係てヤツだ。
ついでにおせち料理もこの国には存在していた。
同じかといえば、多少同じという感じだった。
だからおせちの中身の材料はいろいろと買えた。
そして…… 海が見渡せる高台に石碑がある。
その石碑には……
”……見ぬ……日本、い…恋しや…… 海機 … ”
ほとんどコケや風化で壊れかけていたが……
「まさか同郷がいるとはね…… 」
ひい爺様がそうかと思えば…… さらに先がいたとは……
ありがたい事だね……
この人が頑張ってくれたから、私はこの世界で味噌汁が飲む事ができた。
お煮しめだって食べる事もできたんだ。
ありがとう、本当にありがとう……
私は石碑に手を合わせ冥福を祈った。
その石碑の隣には、桜と椿の木が植えられていた。
どちらも散るという意味合いのある花だ。
死に際の散り方に、こだわりのある御仁なのだろう……
人それぞれ…… そう… 人のこだわりは人それぞれだ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




