ヒノクニへ… 一郎の人化
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
ここから、フィルのヒノクニの旅。
その後、王都へ…
風魔に乗って空の旅。もちろん下は見る事ないよ。
日本みたいに、安全確保出来てないからね。
私もマゾじゃないから、恐怖を感じる事をしないのさ。
「しかしお嬢は偉く歌が堪能だな♪」
”ご主人様、歌が上手。”
「そうかい♪結構通ったからね、カラオケ屋。」
「そのカラオケ屋ってなんだ?」
「歌を歌うのがメインのお店だよ。」
”「歌?」”
「今疑問形だった?」
一郎は顔は何処かわからないし、風魔も正面向いて犬顔だし、分りづらいね。
「疑問形だな。訳が分からん。」
そういう風魔の言葉を受けて、そういえばこっちに来てから歌を聞いた事あったかな?
前世ではどこでも歌が流れ、聞かない日はなかった。
買い物しても流れているし、畑仕事しても流れていたし、それこそトイレに入っても流れていたね。
「あれ?でも歌はあるだろう?」
”教会で曲が流れているの聴いたよ。”
「歌なら吟遊詩人達のを聞いたな。」
前々世ではどうだろう?ダンスの音楽は聞いた。
私自身、ピアノぐらい弾けた。
それじゃあ歌はどうだろう?
「………あれ?」
でも領では普通に聞いているよ。
畑仕事をしてる者達が、歌っているじゃないか?
「お嬢が数え歌や遊び歌を子供達に教えて、大人達もそれが普通になったんだ。だから、うちの領民が歌うのは、当てになんねぇぞ。」
「ホントに?!」
「自覚なかったのかよ!!」
”ご主人様だからね。仕方ないよ♪”
歌って普通に前世で流れてたから、あまり気にしなかったよ。
遊び歌や数え歌、子供や孫達と良くしていたし、それこそひ孫達にもしていたさ。
子供と遊ぶと言えば、手毬・おはじき・お手玉・あやとり・そして歌じゃないのかい。
おままごとは、料理を直に教えるのが一番効率がいいのさ。
「その様子じゃ、ホントに自覚なかったんだな。」
”ご主人様、面白すぎ♪”
「仕方ないだろう。コチラでは忙し過ぎて、気が休まらなかったんだから。」
私は顔を背けながら言った。
後ろを見れば、空の景色が青々しいね。イヤ蒼々しいかね。
とにかく蒼いっぱいに拡がっている。
何処まで行っても蒼。
上も下も蒼、境なんてほぼない。
「ホント空は自由で綺麗だね。」
前々世を考えれば、こんな自由な世界がある事を、自分自身に教えて上げたくなるよ。
泣きたくなるほどの、自由で広大な世界。
「風魔、ありがとうね。この光景を見れただけでも、めっけもんだ。」
前世母が良く使っていた「めっけもん」という言葉を、思わず使う。
「お嬢が喜んでくれてよかったよ。もうお嬢は自由だ。何者にも縛られない。縛るとしたら自分自身だ。」
”ご主人様は自由!!”
ホントだね。私は自由だ。
どこまでも続くこの空の様に……
”ひい婆は自由だよ。お空を飛ぶお船だよ。いろんな料理を見せよう。”
歳も80後半のヨボヨボなばあさん。
日がな一日日向ぼっこ状態で……
やる事もなく、もう自分の役目はないんだなぁと思っていた頃、小学生のひ孫が、「ひい婆の料理をWebに載せたい」と言い出した。
”結局6年間続けたんだよね。”
ヨボヨボのばあさんが、カレーを作ったり、グラタンを作ったり……
婆さんと洋食が受けたのか、結構見てくれる人がいた。
普通に漬物も煮しめを作れば、食べたいと絶賛される。
”気づけばWebの中にも、孫やひ孫が増えたんだよね。”
いろんな若い子からメールを貰い、たくさんの人から励まされ……
ひ孫は私が死んだ後も続けているのだろうか?
”ひい婆のホヨホヨした笑い顔が、大好きだよ。今日も元気そうでよかった。”
ひ孫の顔が浮かぶ。あの子はご飯を食べているだろうか?
私が死んだ後も、元気にしているのだろうか?
何だかんだと、あの子が一番私に懐いてた。
いろんなラノベの話をしたのもあの子だった。
Web上の孫もひ孫も、乙女ゲームの話やら魔法の話。
”セイレーンもその時聞いたんだよね。フェンリルもそうだね。”
それが今では、こうやって乗っかってるとは(笑)
「何だ?なにか楽しい事でもあったのか?」
「イヤね。前世の話でね……… 」
空の上で話す内容は異世界の話。
それもそれでオシャレじゃないか。
「ホントに世界は、面白いねぇ♪」
「まだまだたくさんあるぞ、お嬢♪」
”沢山探そうね。ご主人様♪”
「そうだね。とりあえずヒノクニから攻めようかね!」
さてさてなにがあるのやら、とりあえずおせちの材料はあるのだろうか?
ヒノクニに着いたのは、もう日が落ちようとする頃。
「出発が遅かったもの。これからどうしたらいいの?」
「とりあえず宿だな。だが俺達はこの辺りでは目立つ。一度入国しなくちゃな。」
目立つだろうね。
だって馬も荷物もなく歩いてる。
手には空の買い物袋を持っているけれど……
(ショッピングカゴと同じサイズのバックだよ。)
そして風魔が持ているのは、至ってシンプルな巾着袋。
妖精がマジックバック使用にしてくれた。(入るサイズは2畳分)
「一郎、俺一人だと護衛が足りない。人化出来るよな?」
”わかった。ちょっと待ってて。”
「うん?人化ってなんだい?」
「要するに、ワームから人に化けるって事だ。」
「一郎が人になるって事?!」
「そういう事。」
……あたまに浮かぶのは、ミミズがスーツを着ている所。
要は全く想像がつかない、ただ大丈夫?
私の不安げな顔をながめ、風魔が言う。
「主人のお前に言うのもアレだが、お嬢以外、ほぼ全員ミミズ一家の人化を見ているぞ。一郎が全くしないだけだ。他の者達は、ほぼ人化なんだ。」
”何ですと?!”
ガザッ……
一郎が消えた方がら、葉擦れの音がし振り向くと……
「………………」
……………誰コレ??
「お嬢……… 現実逃避するのはいいが、こんな顔が後4つあるからな。慣れろ。」
「……………!! マジで?」
イヤ~、なんであのミミズが?それこそミミズに手足がついた、訳の分からない生物から……
どうやってこれを想像しろというの?!
いくらなんでも無理でしょ!それもコレが後4つ!!
「マジ勘弁!!どこのホストクラブじゃー!!」
フィルの叫びが空に虚しく響いた。
「落ち着け、お嬢。」
「イヤ無理だ。何だこのイケメンわ!」
「そりゃ褒め言葉だよな?」
「僕何でご主人様に、怒られているんだろう?」
「「つっつ………?!!」」
目をひん剥いて一郎を見る。
「どうしたの?」
首を傾げキョトンとしている。
「オイ!!」
「ヤバい!いろいろとヤバい!!」
風魔の身体をバンバン叩く、フィル。
ヤバいのは風魔の身体だと思う。
「ご主人様、気に入らなかった?」
泣きそうな顔で、ウルウルしている長身の男性。
「どうしたらいいの~~~~?!!」
「お嬢!パニック状態になる前に、コイツをどうにかしろ!!」
そう二人が騒いでいるうちに、一郎、遂に泣き出した。
「「ギャ――――――!!!」」
二人は抱き合ってパニック!
長身の見目の良い男性がグスグスと泣いている姿は、いろいろとシュールだ。
ワイルドイケメンの風魔と小っちゃい美幼女フィルが抱き合って震えている。
その光景もまたシュール。
オールバックした黒の短髪に、怜悧な赤い瞳を涙で濡らす。
見た目は冷淡で、何となく傲慢な雰囲気の一郎。
魔王降臨と言われても納得がいく男性なのだ。
なのに……
「グスン、グスン、ぼ、僕ご主人様にき、嫌われたら…… 」
てな感じで泣いている。
「ご主人様、どうにかしろ!!」
「わ、私のせいなの?!」
フィルとしても、態度が悪かったと思う。
だが常日頃のイメージとあまりに違い過ぎて、度肝抜かれてしまったのだ。
「一郎…… 嫌ってない。ぜんぜん嫌ってないからね。」
まずコレ大事。嫌ってませんよ~、ただ驚いただけだ。
一郎が私をジッと見る。
”ホントめちゃくちゃいい男だな、オイ!”
心の中に飛来するのは、なのにこんなに純粋無垢で大丈夫なの?
ここは私がご主人様として、しっかり守らなきゃならないんじゃない?!
これこそ母性!100歳のばあさんだっただけに、その感情はぶ厚かった。
「一郎はすっごいいい男よ。これ本当よ。だけど、そんなに無垢じゃ危ないわ。仮面よ、仮面が必要なのよ!」
フィルが突然、変な事を言い出した。
一郎はキョトンとしている。
それを見ていた風魔は、ア、これ違う意味でヤバくねぇ……と、心の中で思った。
”海流、俺一人では無理だ。早く戻って来てくれ。メーデー!メーデー!”
風魔はフィルに教えて貰った、救命信号を海流に飛ばす。
海流は最短で、フィルの所へ急ぎ戻った。
その間どれだけ風魔が、二人に振り回されたかはわからない。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




