またいつか。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
【クリスティオ視点】
いろいろしているうちに、出立という事になったけれど……
「四郎よろしく頼む。ホントごめん。」
ヤッパリ三郎には無理だった。
色仕掛けするぐらいなら、女になると言いやがった。
だが女だと男が群がるぞと話し、助けてとまたhelp視線だ。
「最終的に寡黙設定になったな?」
「そうなんだ。まあそっちでいいかも、三郎は王都の人間嫌いだもん。人化イヤって言うくらいだしね。」
そしてライオネスに持たされた、綺麗な3段のお重。
「この紙に描かれているでしょ。この通りに入れるの。貴方がするの。できるわよね?」
母上に何度も言われ続ける、ライオネス。
もちろんですと返事をしながらも、自信なさげに目が彷徨う。
そんなライオネスを見るに見かねて、
「私がこういった芸術面は得意なので、私が責任持ってやりましょう。」
「あら?!ドリアス殿下がしてくれるの?ならお願いね。料理はこの袋に入ってあるわ。この袋マジックバックよ。言っている意味わかるでしょ?」
神妙に頷くドリアスとライオネス。
「私の部屋で責任持って致します。」
とにかく用心に越した事はないと、再認識した様だ。
枢機卿が幸せそうな顔で、巾着袋を見つめている。
フリル付きの巾着袋が、命綱の様に大事なのだ。
「その…… 申し訳ありません。言葉足らずだったばかりに……」
「いいえお気になさらず。逆に誰も触らないと思いますよ。怪しすぎて……」(笑)
確かに不気味ではあるかもしれない。
いい歳をしたおっさんが、大事そうに持つフリルの巾着袋。
よほど図々しいヤツ以外、その袋に突っ込みを入れないだろう。
身分的にも無理だ。場合によって権力は、王より上になる事がある。
ホント宗教とは恐ろしいモノだよな。
元々俺の伝え方が悪かった。
いや、詳しく事情を聞けばよかったんだ。
「ねぇちょっと!魔道具の材料をちょうだい。ついでこの本ぐらいの大きさの袋を5つちょうだい。」
だから俺は侍女に…………
「妖精がこの本ぐらいの袋を、5つ欲しいそうだ。作ってくれないか。」
なぜ突然、袋を欲しいと言い出したのか?
なぜ5つ必要なのか?なぜ俺は、話を掘り下げなかったのか?
「そりゃお主が、面倒くさがったからじゃろうて。」
俺は、なんという事をしちまったんだ。
「ほんに笑えるの。誰もこのフリフリ可愛いピンクの巾着が、マジックバックとは思うまい。ある意味目くらましになって、良かったかもしれんぞ。」
「言うんじゃねぇよ。ホント俺の一生の不覚。なんでこんなもんを、マジックバックにしちまったんだ。」
俺はがっくりとして俯いていると……
「まったく…… この巾着自体は、とても可愛くよう出来とる。あの妖精の物と思えば、そりゃこうなろうて……」
グラ爺さんが俺に言い聞かせる様に言う。
「だからじゃ、この巾着は悪くない。指示を出したお主が悪いのじゃ。つまり作ったのはお・ぬ・しという事じゃ。」
このピンクフリフリ巾着を所持しする者は……
ドリアス、枢機卿、四郎、泉、ライオネス。
ウン…… よく考えたら大丈夫だよね。
馬車に皆乗っているから見られない。
でも外に出る時、持って出なければならない。
こんな事なら、肩かけタイプのバックにすればよかったんだ。
あの巾着を見る度に、後悔ばかりが先に立つ。
「まったく……苦虫を噛み潰した顔をしているわね。」
母上が面白そうに笑っている。
「母上…… 」
理由を知っているだろうに、ホント意地の悪い人だ。
「しかし目立つわね、あの巾着。ホント面白いわ♪」
「クリスの、面倒くさがりの主張ってヤツだね。」(笑)
何でか俺の周りの女性は、強くて意地が悪い人物が多い。
だがその分、凄く頼りがいのある女性達だ。
「あの王妃や大司教の事は、私達に任せなさい。貴方達は、建国をするの。前に進むのよ。後ろの憂いは取り除くわ。大丈夫よ。」
ニッコリと力強い微笑みを浮かべる母上。
父上も出立する者達を、ジッと見つめている。
そして、父上がライオネスに花束を渡した。
何かを告げると、ライオネスが泣き笑いの様な顔をして頷く。
ドリアスも不思議そうにしているが、何も告げる事なく馬車の方へと促す。
枢機卿の周りには、人に扮した者達がいる。
泉とセイレーンが聖女見習い。大河が従者。執事に四郎。護衛騎士に三郎。
そしてティックは枢機卿の肩にいた。
妖精は精霊と同じ括りで、実体化どうかそれだけの違い。
だから……
「ホントによろしいのですか?騙す為とはいえ、私が妖精の加護持ち扱いで?」
妖精と契約している者は、加護持ち扱いとなる。
それだけ世界と密接な関係にあるのだ。
「精霊は逃げ場ないからね。私達が匿ったモノだけが助かったの。妖精はこの世界とは別の世界を維持しているからさ。」
この世界の精霊は少ない。
でも妖精は、世界の枠に居りながら外れた存在だった。
気ままに世界を渡り歩き、時々気まぐれに悪戯をして……
「でもその悪戯は、必要だからよ。」
そしてここにいる理由も……
「必要だからよ。」
それが生まれた頃から、名前があるという意味らしい。
何かに促さ流されて、自由な様で自由じゃない。
気まぐれに行動しながら、何処か促され、でも自由気ままに行動をしている。
「大丈夫です。イヤならティックも了承しません。そうだろう?」
「そうよ。必要だからココにいるのよ。それに貴方の肩は安定してるわ。そのお髭もちょうどいいの。」
「掴むヒモ扱いですか…… 」
困った顔で苦笑する。とにかく気にしなくていいのだ。
俺はドリアスを見る。
ドリアスも俺に気づき、俺のいる方へ向かってくる。
今度会うのは、この国が正式な建国式を行う時だろう。
その頃には全てが終り、片付いている事だろう。
頑張れと心の中でソッと応援をする。
そして俺を辺りを見回す。フィルは見送りに来ない。
土産のお重とインスタントのスープを持って来た風魔。
フィルに伝える様に言った。
”多分行かないと言ったのだろう。”
そう考えると、ホント男は女々しいのかもしれない。
特にうちの女達は、潔過ぎる所がある。
「それではそろそろ出立しましょうか?」
ライオネスが周りの者にそう声をかけると、嫌そうな顔で渋々と所定の位置へと移動する。
その様子を苦笑して見つめる、ドリアスとライオネス。
誰もがそうだろうなと思うので、注意する気も起こらない。
最後にドリアスに声をかける。
これからが正念場で、いろいろと大変だろう。
「それじゃ達者でな。まあ… 無理だけはするなよ。」
「わかっています。いつかまた異世界の話をお聞かせください。」
コソッと耳物へ囁き、馬車へと向かい乗り込む。
「ライオネス、手紙は読んだな。」
俺が言うと、ライオネスが頷く。
「ならそういう事だ。頑張れよ。」
俺は肩をトントンと叩いた。
ライオネスは苦笑交じりな顔で、頭を下げ馬車へ向かった。
一行は終始渋々な出立となる。
それがなんとも滑稽で、おかしくて……
道行く者が騎士達に、見送りの食べ物を恵む姿が見受けられた。
「ホントにこの国の者達は優しいな。」
その様子にグラ爺さんは面白うに笑っている。
俺もそんな甘さがあるのだろう。
去って行く一行の行く末を、願わずにおれない。
そしてただ一言、頑張れよ!
****************
【 ある男の視点 】
王都の一行が屋敷から離れる頃、アセリアを囲んでいたワームの壁も解除される。
今回警戒音はなく、静かに潮が引く様に低くなるワームの壁。
裂け目からは溢れる様にワーム達が、辺り一面を埋め尽くす。
その状態を見れば、まだ警戒状態は続いている事が良くわかる。
だが口は軽くなる様だ。
「よし!これでアセリア領へ入れるな。」
「よかったぜ。大人しく言う事を聞けば、大丈夫の様だ。」
「なるほど、なるほど……… つまりあんたらは下心ありという事だ。」
突然身近に声が聞こえて、驚きその場を飛び退た。
そこにいたのは、自分と変わらぬ破落戸達。
「何だよ!脅かしやがって………」
「別に脅かしてねぇよ。コソコソしやがって。」
逆に睨まれ詰られる。何とも居心地の悪い状況だ。
「すまねぇ。状況が状況だからよぉ…」
わざと気弱なふりをして纏えば……冷めた目で見られる。
”どうやらそう簡単に問屋が降りなさそうだ。”
辺りはすっかり壁はなくなった。
ワーム達も少しずつ裂け目へと戻っている。
だが周りにはうじゃうじゃとまだワームらがおり、数匹の魔物がワームらと戯れていた。
”まさか魔物同士でコミュニケーションを取っていたとは……”
その事を王都へ伝えないと、とんでもない事になる。
だが俺達は、アセリア領に入らなくてはならなかった。
麻薬の証拠を握るフリして、戦争を仕掛けるというもの。
だが……
”戦争をして、負けるのは王都じゃないか?”
だから戦争しないで、冤罪に持ち込むという話だが……
”建国したという噂はホントか?”
商業ギルドの者が、建国したらしいと話している。
兵士らもやっと別の国だなと言う。
”そうなると冤罪なんて意味がない。”
別の国なら戦争をするしかないだろう。
だが戦力負けしているのは、我が国だ。
「お前、薄気味悪いな…… てめえ王都のもんだろう?それも隠密だな?」
破落戸が俺達を見ながら、ニヤニヤと笑いながら言い出した。
「グフフフ、オイオイ!!お前ら戦力差が解んねぇのかよ。」
「ギャハハハ……… 多分冤罪組じゃねえの。」
「「「なぜ知っている!!」」」
「もしかして……王印の手紙でお前ら来たのか?」
ニヤニヤと笑いながら、俺達を包囲しだす破落戸達。
完全に取り囲まれ逃げ場を塞がれる。
逃げたくても…… ヤツらが破落戸とは名ばかりの玄人だと判る。
「なあ…… お前らその手紙呼んだのか?」
「上司が見てましたじゃないのか?」
ドンドンとこちらの状況を話していく、破落戸達。
何なんだ、どういう事なんだ。
俺達は冷や汗を流し、如何にか突破口を開こうと考える。
「おかしいと思うよな。わかるよ、その気持ち。何故お前らの状況がわかるんだと思うよな。」
この集団のリーダーらしい男が言い募る。
「お前ら気づかねぇか?よく人の顔を見ればわかるだろう。なあ………」
そう言うヤツの顔を、まじまじと見て俺達は驚いた。
アセリア領へ潜り死んだと言われた、暗部の第三部隊、部隊長。
よく見ると他の者達もそうじゃないか!!
「なあ…… それで聞くけどよ。俺が言っている事当たりだろ?」
同じだ、一体何が起こっているんだ?
そう思うと疑問が浮かび…… 俺達は頷いた。
「そっかぁ、クッククアハハハハハ!!」
部隊長が笑いだし、他の者達も楽しそうに笑い出した。
とても楽しい事が起こっている様に、嬉しげな顔で笑う。
だが目だけは…… 血肉に飢えた獰猛な獣が潜んでいた。
「お前らご苦労だな。その手紙偽物だぜ。非難の的になってる偽押印の手紙。お前らもその一味の片棒を担がされているのさ。イヤ―お疲れ様。ご苦労様です。それじゃあそのまま死ぬか?」
俺達は今、何を聞かされている?
偽王印とはなんだ?その一味の片棒だって?!
知らない。そんなの知らない!一体どういう事だ!!
俺達は王命だからと、言われて来たんだ。
どんな嫌な仕事でも、王命だからこそ来たのだ。
なのに…… その手紙が偽物!
俺達は愕然した。一体国で何が起こっている?
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




