世の中は知らない事ばかり
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
誤字脱字報告ありがとうございます。
とても感謝しています。
【泉視点】
「なるほど…… 」
ガツガツと欠食児の様に、ご飯を食べているセイレーンと妖精。
妖精の身体に合わない量が、身体の中に消えている。
横にいる風魔が、「どこに消えるんだ?」「デカいウン〇か?」と、下品な事を言いながら首を傾げている。
”はっきり言って食べてなくて良かったわ。”
前の欠食児達は、幸い食べる事に必死で聞こえなかった様だ。
さて私が今どこにいるかというと……
「しかし災難だったな。ワームの壁で阻まれて。」
そう…… 、今私は姫様のいる日本家屋にいるのです。
ここはアセリア領から少し離れている、中立地帯の山の中。
誰もここに人が住んでいるとは思わない。
「私も海流兄さんみたいに、空飛べたらいいんだけど。」
枢機卿らを伴ってアセリアの屋敷に向かったら、ワームの壁に阻まれてビックリ。
壁になってるワームらもどうしよう?って感じで焦るし、枢機卿らも気を使う状態だったわ。
海流兄さんに言ったら、姫さんの所に来るように言われた。
枢機卿も姫様に合い、更には美味しいおにぎりとお味噌汁(お漬物付き)を頂いて幸せそう。
お礼を言って先程旅立って行ったけど、この二人……
その間もガツガツと食べていて、枢機卿も苦笑していたわ。
「しかしよく食べるね~。それだけスタイルいいのに…… やっぱり水泳がいいのかね?」
フムフムと言って、のほほんとお茶を飲む姫様。
ここにいる事で、すっかり今までの疲れも精神的疲労も癒えたようだ。
”良かった。姫様の空気が柔らかいわ。”
なんだかんだとやっぱり警戒して、ピリピリしていたもの。
普通な様子だったけれど、寝ている時はうなされていたわ。
柔らく笑う姫様を見て、泉は心からホッとした。
「しかしタイミング良かったな。俺達、ヒノクニへ行く所だったんだ。」
風魔がどら焼きを食べながら私に言った。
「何でヒノクニに行かれるのですか?まあ離れる事はいいと思うけれど?」
「お父様が陛下に、私の料理をお土産に渡したいと言われたの。せっかくなら真骨頂を渡すべきかなと思ったのよ。」
「真骨頂ですか?」
「そりゃ日本食だろう。せっかく真空の魔法も作ったんだし、インスタントも出来たしな。」
「作る予定の料理は保存食ではあるけれど、一週間以上は長すぎるもの。ホント風魔が頑張ってくれて良かった。」
何でかの国の王様に姫様の手料理を食べさせなきゃならないの。
姫様もなんで、真心込めて作るのだろう。
だぶんオスバルドの気持ちを考えての事だろうけれど……
”なんかむかつくのよね。”
元はと言えば、自分の奥さんをきちんと管理できなかったのが原因じゃない。
「お父様も建国する事で、いろいろと考えるんじゃない?私なんか仕事量が減った程度の気安さで、内情の手紙を送ればいいと思うけれどね。」
「大体管理出来てねぇんだ。代わりに管理してくれて、ありがとうの礼状貰ってもいい訳だ。」
「別に今生の別れって訳じゃないでしょ?妙に感傷的に、手向けの土産にと言われてね。」
姫様も苦笑して、ヤレヤレと言った風情だ。
「でもまあ、ヒノクニは行きたいと思ってたから、ちょうどいいと思ってね。ちょっと遠出して来るよ。今ほど気楽に行ける事もないだろうし♪」
「そうですね。お土産楽しみにしています。」
私が姫様とほのぼの話をしている最中に、やっと落ち着いたセイレーンと妖精。
「美味しかった~~。美味しいが更に美味しいに進化するなんて♪私の勘は正しかった。生きててよかったわぁ~~~~………グスン……」
ちょっと今度は泣き出したわよ。止めてよ~~~……
「戦前のご飯より美味しい…… スゴイ…… 」
妖精に至っては、姫様を拝み倒して困らせている。
「す、すみません。私の知り合いが…… 」
「気にしないで、楽しい人達じゃない。ところでセイレーンって海の人よね?歌が上手いっていう。」
「そうよ。歌を歌うのが大好きなの。何か素敵な歌があったら、教えて欲しいわ。」
セイレーンは、歌と聞いたら泣き止んで、何かいい歌を強請っている。
いろんな歌を集めるのが大好きなセイレーン。
素敵な歌を聞けば現れて、一緒に歌い習得していくのだ。
”まあそれで魅了される男達も多いけれど……”
姫様はそうね……… と呟いて、どこか遠くを見る様に歌い出した。
「とおきやまに ひがおちて ほし〇そらを…… 」
何となく物悲しく、でも何故か懐かしく優しい不思議なフレーズ。
セイレーンもじっくりと静かにして聞いている。
それは妖精も同じ。だって泣いているもの。
姫様が歌い終わると、セイレーンは姫様に抱き着いた。
「わ、私こんな感動する素敵な歌、ありがとう。私今日ほど生きててよかったと思う事ないわ。」
「私も、長生きして良かった。寂しくても生きててよかったわ。」
セイレーンまで泣いているわ。
でも気持ちはわかる。風魔だって目じりの涙を隠してたもの。
「姫様、お歌も上手なんですね。」
「この歌はよく歌っていたからね。そんなに感動されると、もう一曲行こうかね?よくカラオケとか行って、近所で歌っていたのよ。」
そこからは姫様のオンステージになった。
次々歌われる歌に、みんなノリノリで踊り狂う。
「まっかにも~えた~……… 」
ホント姫様とっても元気で、幸せそう。
そんな様子の姫様を見て、心からホントよかったと思った。
その後はセイレーンが海藻を持って来て、料理と交換契約を結んでいたわ。
セイレーンもこんな草が、こんな美味しいスープに変わると知って驚いていた。
「確かに小魚や小さいモノが食べていたけれど…… 」
セイレーンはブツブツ言って姫様に、ちゃんと海藻を管理しながら採る約束をした。
姫様は風魔に乗って、ヒノクニへ向かう。
フェンリル姿になった風魔も、じゃあな~っと暢気に挨拶して出て行った。
もちろんワームの一郎さんも引っ付いて……
「しかしあれだけで、災害級の移動よね。見えないけれど………」
「そうね、緊張感もクソもないけど、災害級。」
セイレーンと妖精の突っ込みが痛いわね。
「さてそれじゃ、落ち着いたらあちらに移動しましょう?この地下道を通って。」
「そうね。でも温泉とかあるって言われたし、晩御飯も作ってくれたのよ。一泊よね?」
「もちろんよ。今からいろんなお話をするわ。」
私がジッと意味深に見つめて言うと、二人はニッコリと笑う。
「アラ楽しみだわ。私その手のお話大好きよ。」
「私も大好き。悪戯するの好物だもの♪」
二人は姫様を気に入ったから、協力してくれると思ったの。
何だかんだと男所帯で、マリリンと辟易したわ。
おんな協力者大歓迎よ。男には分からない事があるはずよ。
「しかしここは天国ね。温泉と美味しい料理、そして暖かい家。これだけあれば十分だわ。」
「ホントね。これだけで幸せと思うんだけど。」
セイレーンと妖精がほのぼのと言う。私だってそう思うの。
なぜそれを邪魔するのかと、自分にとっても利があるのにホント不思議。
「先の大戦もそんなしょうもない事で、世界を巻き込んだ記憶があるわ。おかげで精霊ほぼいないでしょ。妖精もほぼいない。無意味な争いだわ。始めは痴話げんかからだったような、権利の争いだった様な…… とにかく大戦になるほどの理由じゃなかった……とだけは覚えているわ。だって興味なかったんですもの。」
うんざり気味に話す妖精の、何とも言えない寂しげな様子。
仲間にほぼ会う事はない。いつも兄妹でいる私にはわからない。
「とにかく、今日はここでのんびりね。」
「そういうことよ。あちらに行くのも楽しみね。」
そう言って夜は更けて行くのだった。
****************
そしてその後はクリス様に会って、アセリアの魔道具ツアーをして、ウロウロと堪能していた。
「ホントここサイコーだわ。私も住みたいくらいよ。」
「私クリスに契約して貰うわ。魔道具三昧。美味しい三昧。楽しい三昧。サイコーじゃない♪」
この二人はアセリアを殊の外気に入った様だ。
セイレーンはお金獲得の為、歌を歌って日銭を稼ぎ食事をするし、妖精も魔道具を覗いて調べている。
「まったく妖精がここまで勤勉だとは知らなかったわ。」
私がそう呟いていると、セイレーンがキョトンとした顔をする。
「アレ?私あの子の名前言ってなかったかしら?」
そう言われて私は知らないわよと首を振る。
「あの子ティックって言うのよ。」
「え?あの子も誰かと契約しているの?」
「妖精は生まれた時から、名前があるのよ。契約関係ないわ。」
ビックリだわ。生まれた頃から何かに縛られるという事かしら?
「だからあの子の事ティックって呼んであげてね♪」
「わかったわ。」
世の中私の知らない事ばかりだわ。
今は女子会ならぬ、作戦を立てている最中よ。
男どもの浅すぎる作戦に、驚きを隠せないわ。
何であんなクソ女を、喜ばせなければならないのかしら?
そんな事したら時間が無駄にかかるだけ……
ヒマ人がする事だと思うのよ。とにかく面倒なのは確かなの。
「王都へ行くのは、泉とセイレーンとティックちゃんね。」
姫様のお母様、マリアナ様から確認される。
「それに大河と三郎、それに四郎も来るようになったわ。」
「私がバッチリ魔道具のメンテナンスするから、安心すると良いわ。しっかりバッチリやるわよ。」
「まあティックちゃん、可愛いだけじゃないのね♪頼りになるわ。」
「とにかく短期決戦!コレ必須よ。飯マズは耐えれないのよ。」
「そう、美味しいは正義よ。短期決戦!!コレ大事!!」
ホントその事、男どもは忘れているのかしら?
三郎は魔石でも我慢出来るけれど、枢機卿だって私や大河は我慢できないわ。
枢機卿からも言われたの。
「ココのご飯食べた後、王都に行くのは辛いですね。いやホントに死ぬほど……」
神様がどう思っているかわからないけれど、サッサと済ませるわ。
美味しいは正義よ。飯マズは回避よ!!
風魔さんに今ほど感謝した事ないわ。よくぞ真空魔法作ってくれた。
そんな風に思っていると、ティックが動き出す。
「私作るわ。必要だもの。絶対今すぐの急務よ。」
ティックは突然そう叫び。クリスを脅し材料を貰う。
そして出来上がったのは、その名もマジックバック。
大戦前では当たり前に流通していた道具だ。
時間停止機能を付けるほど、作る時間はないけれど、たくさん料理を真空して持って行く事が出来る。
「よくやった!ティック!!」
「当たり前じゃない。美味しいは正義よ♪」
如何にか飯マズを回避できる様だ。
そしてその後、ワームに性別がない事を知る。
ホント世の中知らない事ばかりだわ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




