墓場デート
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
【クリスティオ視点】
異世界の話をしながら、ドリアスは考え込んでいる。
「あの変な事を、言ってもいいでしょうか?」
そんな中言いづらそうな顔で、俺に訊ねる声騎士の一人。
俺が首をかしげると、おずおずとした動作で言った。
「クリスティオ様の話している異世界の話は、前世のフィラメント様ですよね?」
「そうだよ。」
「そのフィラメント様は、100歳で大往生されたのですよね?」
「そうだね。」
「……… あちらの世界の人の寿命は、違うのでしょうか?」
何を言ってんだ?
「イヤ、一緒だが?」
「………100歳ですよね?」
「そうだよ。何を言いたいのか、はっきり言ったらどうだ!」
「100歳と言ったら、ほぼミイラのような状態じゃないですか!な・の・に・なんでそんなに元気なんです?同じ人でも、人の素材が違うのですか?さっきの乙女ゲームだって、100歳近いばあさんが、やる事じゃないですよ。なぜ異世界の対応ができるんですか!おかしいですよ。変です!!」
ゼーゼー言いながら、一気に言いやがった。
「アレク…… 100歳になろうとも女性なんだよ。恋する気持ちがあるなんて、素敵な事じゃないか?ミイラなんて失礼だよ。とっても可愛いおばあちゃんだと思うよ。」
ニコニコと微笑みながら、ほのぼのとした顔で話すドリアス。
ミイラと言った時は、ギロリと睨みつけていたが………
”ホントに記憶ないんだよな?”
………いろいろと怪し過ぎる。
「俺も話を聞きながら、ばあさんが何やってんだと思うけど、ひ孫やら何やら、いろいろとばあさんに知恵を授けるんだと…… それだけ仲が良い大家族だったんだ。」
「とても素敵な前世だったんですね。よかったです。」
何故かドリアスが幸せそうに微笑んだ。ホントドリアスは良く解らん。
「しかしこの世界、ホントにその乙女ゲームなんですか?」
もう一人の護衛騎士も、不可解な顔で聞いて来る。
確かにそんな馬鹿げた世界に生まれたと知ったら、何処かに飛び降りたい気分にさせられるだろう。
「ホッホッホー♪私も配役があるのかの?ロマンスグレーで攻略対象者枠かの♪」
妙にノリノリなグラ爺さん。
常日頃枯れている分、潤いが欲しいのだろう。
「お主……… 今失礼なこと考え何だか?」
「い、いいえ滅相もない。」
契約してる分、思った事がバレ易そうだ。
「よくある話ですよ。それに母親がヒロインとか、攻略対象者になる者達が可哀想です。」
俺達は、王妃の周りの男達を思い浮かべる。
陛下、父上、ライオネス、大司教、宰相、騎士団長に魔術団長。
「大司教と魔術団長は、攻略されてないか?」
「アレは利用されているであって、攻略されているのは母上です。」
だよな……
「じゃがその話面白いの。花畑には持って来いじゃな♪」
グラ爺さんはニンマリと笑って、俺達を見た。
確かになるほどな…… ドリアスもその事に気づき考える。
「若い男でもオッケーのようじゃ。年甲斐もなく万年発情期のようで良かったの。」
「グランドさん、母上は発情はないのです。恋愛が好きなのです。身持ちは固いです。」
「なんじゃ?!男は生殺しか!!あり得ん!私には無理じゃ。男は肉欲に溢れるでの。」
グラ爺さん…… もうお願いだからお口を閉じようか………
護衛騎士達は苦笑交じりに笑うし、ドリアスお前も頷くなよ。
お前見た目7歳だからな?わかってんのか。
「まあ良かったじゃないか。つまり恋愛ごっこをすればいい。」
「そうですね。その程度なら我慢も出来るでしょう。」
「確かに、接触するのは腕を組むぐらいでしょうか?」
「なんじゃ、kissはないのか?」
「グラ爺さん、今はお口を閉じてくれないかな?もちろんkissはなしだ。ババアとkissする趣味はない!」
「「………………」」
「クリスティオ殿、ババアはやめて貰えませんか?一応…… 母上なので…… 」
「ごめん…… 」
確かにババアはなかった。グラ爺さんは大爆笑だ。まったく………
「とりあえず…… 状況を整理しよう。」
「そうですね。母上の今の状態を知る必要があります。」
「それと女性に相談しないとな。こういうのは同性の方がいいだろう。」
「そうですね。どうしても性別の差が出るでしょう。」
「じゃな、いくら年を取ろうとおなごは謎じゃよ。」
とにかく素敵な恋の演出をして、指輪を一つ一つ確認するシチュエーションが出来るようにしないとならない。
「しかし指全部に、嵌めている訳じゃないよね?」
「同じ指にいくつか付けています。」
それを聞いて俺達は、途轍もなく高いハードルに挑む事となりそうだ。
一体どんなシチュエーションをすればいいんだ?
その後には、墓場デートだぞ?!
「全然思いつかない。想像もできない。ただ大変という事だけはわかる。」
護衛騎士達も、頭を抱えている。
「ドリアスこの際だ。どうしたらいい?」
「いやいや?!何故この際で、私なんでしょうか?」
「俺はどちらかというと、肉体言語派だと思う。女性に関しては……… 」
「「私達は常にそうです。」」
言葉で女をその気に口説くなどムリ。当たって砕けろ派だ!
護衛騎士達も共感したのか、すぐ同意した。
「そんな情報は要りません!!」
ドリアスは泣きそうな顔で言った。
「策略するのは好きだよ。でも恋愛はちょっと違うよね。」
「そうです。面倒くさいです。」
「いい時と悪い時の落差が面倒です。」
「そこはどの生物もそうじゃな。ほんに面倒じゃよ。男女の機微とは。」
生きた年月は関係ない様だ。ホント大変だよな。
「何かの占いで恋愛とギャンブルは同じ扱いなんだ。そして結婚と人間関係が同じらしい。」
「なるほど…… 確かに結婚は社会性や信頼関係が必要ですね。」
「よく女性が言う、恋人と結婚相手は違うという、言葉の意味が解ります。」
ドリアスは不可思議そうに、首を傾げている。
「そうなんですか?私は結婚相手と恋愛できるなら、嬉しいと思いますが?」
俺達は思った。やっぱり王妃の息子だなと。
”そっかこんな所で確認できるんだ………”
「皆さん、私を生暖かい目で見つめるのは、止めて頂けませんか。」
ドリアスは頬を膨らませ、とても不愉快な顔をしていた。
とりあえず女性を交えて、話をする必要がある。
そこで浮かんだのは、泉とセイレーンの二人だ。
母上やマリリンもいるが、ちょっとタイプが違うと思う。
「ライオネスもいた方がいいですね?学園時代の母上の様子が解ります。」
「そうだな、大司教の事も聞いたが、今一つ詳しく解らなった。」
しかし色仕掛けとは、こんなに難しいものなのか?
普通の策略の方が楽と思うのは気のせいか?
三郎の為にも分散型にして、負担を減らそうと思ったんだが……
なかなか思う様にいかない。
泉達がいる所へ行くと、そこには母上とマリリンもいた。
どうやら女子会なるモノをしていた様だ。
「ヘエ~~… 乙女ゲームねぇ。」
マリリンはナイスバディな肉体を見せつけ、魅惑的な肉厚の唇を舌で舐めてみせる。
「マリリン、そんな仕草いらないから…… 」
俺がうんざり気味に言うが、他の男達は顔を真っ赤にしている。
グラ爺さんは、ホッホッホ♪と楽しそうだ。
フィルから貰ったマリリンという名はセックスシンボルらしく、一度は性的な魅力を見せつけ反応を見る。
「クリス、マリリンの楽しみを取ってはダメよ。フィルから貰ったお仕事なんだから。」
今日のマリリンは真っ赤なマーメイドドレス。
ハイネックタイプで、後ろを振り向けば背中がパックリ空いていた。
泉とセイレーンも、それぞれ自分に合うドレスを着て楽しんでいる。
母上はどうやら、着せ替え人形遊びをしていたようだ。
「しかしどうなんだろうね?」
マリリンは俺達の話を聞いて、微妙な顔をしている。
それは母上もそうらしく、どこか悩んでいる様子だ。
「要するに指輪が亜空間収納の指輪かどうか、確認が必要という事ですね。」
「でもソレだけの為に恋愛ごっこをするのは、面倒だと思うわ。」
「セイレーンの言う通り、無駄な時間だわ。それにデートが墓場ってどうなのよ?」
「あり得ないです。行く訳ないと思います。」
痛烈なダメ出し、わかっていたさ。だから聞きに来たんだ。
「大体何故墓場でデート何ですか?」
「墓場で収納の指輪の契約解除したいんです。」
「つまり王妃を墓場まで、絶対連れて行かなければならないという事ですね。」
泉とセイレーンが次々と聞いて来る。必死に答える俺。
何で俺ばかり応えなきゃならないんだ?!
グラ爺さんはのほほんとロバートから、紅茶を貰って飲んでいた。
「ねぇ、絶対墓場じゃないといけないの?行く墓場も決まりがあるの?」
そういや墓場ばかりで、どんな墓場か聞いていなかった!
グラ爺さんは母上の質問に、のんびりと答える。
「墓場に闇の魔力があるからじゃよ。契約解除にはその魔力が必要じゃて。」
「なるほど………だから王印の契約には、王家の廟所で行われるのですね。」
今まで空気の様に存在を隠していたくせに、ドリアスはフンフンと納得している。
「なら墓場じゃなくても、闇魔法が使える所ならいいのかい?」
マリリンがグラ爺さんに聞くと、そうじゃ♪返事が返って来た。
「闇の魔力が死の香りのする処にあるのなら、処刑場でもいいのでは?」
「王妃の部屋でも良かったりして(笑)」
セイレーンのブラックジョークは、ジョークになっていないかもしれません。
「それを言うなら自殺の名所でもいいのでは?」
俺はドリアスを見る。自殺の名所………
「以外に綺麗な場所が多いでしょう…… 墓場よりデートに誘い易いと思うのですが。」
「確かにドリアス殿下の言う通りだわ。」
母上は微笑み、どんな所があるのか考えている。
「あの~……」
ドリアス以上に黙っていた、護衛騎士達が動き出した。
「どうしたんだ?何か思いついたのか?」
「その… 自殺の名所と言えば最近、突然自殺される方の場所など如何でしょう?」
「ちょうど王国教会の礼拝堂の近くなのです。なので、その結婚する予定の女性がその…」
「礼拝堂の近く…… あの木々が生い茂る散歩道かしら?」
「ハイ、そうです。所々に花々も咲いています。少し離れたところには、噴水とイスがありますし…」
護衛騎士がチラチラ見ながら話していくと、その話を聞く女性達の目が鋭くなった。
”さすがの護衛騎士も怖いよね。まさに捕食者の目。”
「クリスは王妃をどうしたいの?ドリアス殿下もどの様にしたいの?それによっては、やり方が変わって来るわよ。」
母上のいろいろな思いを込めた問いに、俺とドリアスは決意した。
母上達の考えたやり方で、どういうモノになるのかわからない。
母上達は盛り上がり、嬉々として行動力なシナリオを考えている。
俺達はその様子を見ながら、だた粛々と素直に指示に従おうと密かに思った。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




