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世界は理不尽に出来ている

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 

【クリスティオ視点】



 何というか世の中理不尽にできてるんだよ、たぶんね。

 とにかく今はドリアスと考えている。


 ・収納付きの指輪を持っているのか?

 ・どの指輪が収納付きの指輪なのか?


 まだそういう物があると分かっても、今の段階では可能性でしかない。


「指にジャラジャラつけていますから、全く判りません。」


「聞いてないの?こんな素敵な指輪を手に入れたの~♪って報告なかったの?」


「興味ありませんから、記憶にもないです。」


 つまりどうでもいい人扱いだったという事ね。


「ですが…… これが原因なんですね。誰もが興味がなく適用に相手していたから、好き勝手出来ていたんですね。言ってもわからないアホだから………」


 そう言う事なんだろうね。

 アホだから、そんな大それた事をするとは思わなかった。

 だけどアホだから、大それた事かどうかなどわからない。

 アホだから、そんな大それたことを一緒にしようとは思わない。

 適当に合わせ、都合のいい時に利用する。

 アホだから、簡単に利用される。

 でもアホだから、たかが知れた事しか頼まない。

 自分の不都合にはなりたくないから。


「忙しいですからね、王宮。優秀な人ほど忙しいです。」


 次から次に仕事が舞い込む。難しい案件が積み上がる。


「無駄な人達をどうにかしたくても、そこまで手が回らないんですよ。」


 だから王妃はなおの事、好き勝手出来る環境にあったのだ。

 運がいいから、自分の都合のいい事が回って来る。


「ある意味スゴイよ。ホントどう言ったらいいんだろう。ただ一言で表すなら…… 」


 俺はつくづく思ったんだ。


「私も解りますよ。一緒ですよね……」


 お互い見合わせて、せーので言ってみた。


「「うらやましい。」」


 だよな、やっぱりそうだよな…… 何なんだろうね。


「理不尽ですよね。前世でもそうだったんでしょうね。私なんて……」


 ドリアスの落ち込み半端ないよな。


「だから言っただろう。お前は悲惨な程不器用だって……」


 そう言って慰めながら、俺だってそうだ。

 家も家族も何もかも、最悪な無くし方をするのだから……


「「………………」」


 お互い死んだ様な目で見つめ合う。

 何この理不尽極まりのなさ………


「国を滅亡させたんですよ、私は。罪人にもなりましたしね。」


「ああ、俺が坑道へ落したんだよな。でも仕方ないだろう。」


 そんな俺達を「面白いの~♪」と笑いながら見ているグラ爺さん。


「「やっぱりあの女が一番最悪で、元凶だろ。」です。」


 とにかく今世とことんまで突き落してやろうと、一致団結するのだった。

 そこに前世や前々世の蟠りはなかった。



 ****************



「大体俺に記憶ないからな。というかコレが普通だ。」


「そうですね。それが普通なんです。」


「私も今生きている記憶しかないぞ。」


 俺達が思った事を言っていると、グラ爺さんものほほんと言った。

 それが普通なんだが、魔物もそうなんだよなぁ。


「私は魔物よりも、おかしな生き物なのでしょうか…… 」


 ドリアスはなんともいえない顔をして、ため息をついた。


「でもこれで判るよな。大司教が何をしたのか。」


「ええ、あの女に()()()()()を提案し、()()()()()()()()をプレゼントしたんでしょうね。」


「そいつもラッキーボーイって奴なんだろうな。」


 世の中ホント理不尽だ。


「それを考えると、ラッキーとは面倒ですよね。どんなに策略を巡らせても、ラッキーで逃げおおせそうじゃないですか!」


 ドリアスが怒りながら言った事は、あり得そうで堪らない。


「………よし、こういう時はワーム達にお願いしよう。大丈夫だ。前の分まで、とことん追い詰めよう。」


「ホントに大丈夫ですか。今世の最大の目標状態ですよ。よろしくお願いしますね。」


 ドリアス…… 一応お前の母親なんだけどな。

 前世のせいで母親という感覚は完全に失っている。


「一番いい方法は、指輪を見せて貰う状況を作る事だよな。」


「一つ一つ指輪を見れる状況って、どうなんです?」


 グラ爺さんは面白そうに俺達の話を聞いている。


「指輪だけ見ても、収納付きかどうかわからんぞ♪」


 グラ爺さんは横から補足を付け足す。


「どうしたらわかるんだよ?魔道具探知とかでわかるの?」


「アレは特殊での、魔力は亜空間へ流れる様になっておる。じゃから探知じゃわからん。」


「使って貰うしかないのですね?」


「そういう事じゃ♪」


 なかなかハードルが高そうだ。

 そんな風にいろいろと話し合い考えていると、気を失った護衛騎士二人が目を覚ます。




 二人の護衛騎士は戸惑った顔をし、自分達の状況を確認している。


「あの私どもはその……… 」


「どうしたのでしょう?」


「グラ爺さんは強いからね。殺気にやられて気を失ったんだよ。」


 一応慰めになるかわからないが、理由を話し謝る俺。


「護衛騎士の癖に弱々じゃのう。ダメダメじゃな。精進せい♪」


 しかしフフ~ンという様に、騎士達を見下す、グラ爺さん。

 そんなグラ爺さんを、ドリアスは微笑ましい顔で見ている。


 ”ドリアスも特殊なヤツだ。どこか共感するとこでもあるのかね。”


 おれはため息をついて、仕切り直しをする事にする。


「さて二人とも、お前らが気を失っている間に、考えていた事を言おう。」


 二人の騎士は気を引き締めた顔をして、俺を見る。

 今まで話していた事を伝え、今後する内容を話していく。

 その過程で、市井や地位の低い者達の考えを知りたいと思った。

 それはドリアスとて同じらしい。


「まずお前達は、王妃の事をどう思っている?または知っている?王宮で気がついた事、気になる事があったなら、今ここで言ってしまえ。」


「そうだね。王宮(あちら)に言ったら、そう簡単に言える環境じゃなくなる。出来るだけ言って貰った方がいい。」


「しかし…… こちらの方々がおられる所でよろしいのでしょうか?」


 ドリアスは俺を見て苦笑するが、頷き護衛騎士に言う。


「確かにクリスティオ殿はもう他国の方ですが、私のはとこになります。身内の王宮(いえ)の事情を話しても大丈夫ですよ。」


 俺達は上の地位にいる者は、足元をなかなか見る機会がない。

 だからこそ聞いておかなければならなかった。

 どういう訳があの王妃、市井には人気なのだ。ホント不思議な事に……


「そうですね。以前は天真爛漫なお方だとお見受けしておりました。」


「何かと気苦労の多い方なのだと思っておりました。」


 ブフォ~~~…?!、クックック……… バンバンバン!!


 グラ爺さん大爆笑……


「……なんでそう思ったのかな?」


 ドリアスが理解しがたい様な目で、護衛騎士達を見ている。


「いつも忙しい中、ニコニコと俺達に挨拶をされます。時々ドジを踏まれた時、恥ずかしそうにされる表情が、たぶん()()()になっているのです。」


 何だよそりゃ?!うわ……… なんかどっかで聞いた事ある。


「あの人はとても我儘な方ですよ。」


 ドリアス、いろいろ思う事もあるだろうな。


「ですが私どもにいつもお疲れ様と、声をかけるのはあの方だけですよ。」


 バンバンバン!!! 声が出ない程、腹を抱えて笑うグラ爺さん。

 俺は話を聞きながらめまいがした。

 ドリアスに至っては、不愉快極まりないようだ。

 王妃の男漁りを好意的な印象で、受け止めている事実に顔が引き攣らせる。

 さすがラッキーガール。


「王妃に心酔している者もいるようです。」


「いろいろと差し入れされますからね。」


 イヤ~…… ここまで下との認識が違うとは思わなかった。


「気になる事と言えばドリアス殿下に話した、市井で騒ぎが良く起こる。下位貴族の嘆願書が急増。王宮貴族のキレ易さ、とにかく多岐に亘りますね。」


「たぶん麻薬関連なんだろう。」


「それから教会帰りの者が、突然自殺を図る者が増えております。若い女性が多いです。」


「その話は今初めて聞いたよ。いつからなんだ?」


「一応書類は上げているはずですが…… ここ半年程です。」


 半年…… 大司教が変わった後ぐらいか……


「それに関連した噂は何かないか?」


 二人の騎士が言うには、調査をしようとすると横やりが入るそうだ。

 大体が王宮貴族の者達。自殺する者も調査など無駄だと言うらしい。


「市井はそれに関して何と言っている?」


「なんでも恋人を取られた為の自殺だと、そんな感じですね。それに付随するような、眉唾な噂もございます。なんでも王妃様がよく隠れて市井に降りられていると………


 市井でも男漁りしているのよ……

 ドリアスは頭を振りため息をついた。

 愛想が尽きましたって感じかな?


「クリスティオ殿は知っている?母上の出生に関して。」


「いや、知らないが?」


「母上は市井育ちなんだ。母親が亡くなり、父親(公爵)が彼女の存在を知り引き取ったんだ。それから貴族になり、学園へ通い父上と出会う。」


「そして結婚か……。まるで乙女ゲームじゃねえか……」


 俺はフィルから異世界の話を聞いた時、この手の話も聞いた。

「100歳のばあさんが何してんだよ!」と思えば、ひ孫の遊びに付き合って知ったそうだ。


「 ……えっ?!この世界乙女ゲームだったの!ウソ…、マジで?!」


 何このなんとも言えない切迫した様な感じ…… 最悪じゃないか?!


「クリスティオ殿?何を言っているのですか?」


 ドリアスが不思議そうに俺を見ている。


「ハッ?!イ、イヤ……」


 俺は慌てて首を振って返事を返す。


「何ですか乙女ゲームとは?」


 他の護衛騎士もきょとんとした顔で俺を見ている。

 グラ爺さんも何やら面白いモノを見つけたような目で俺を見ていた。

 皆とっても耳がいい様だ。


()()()()とはどういう意味でしょう?まるで()()()()を知っているようです。」


「なるほどのう、納得したわ。だからいろいろと面白い事が出来るのじゃな。」


「でもそれはクリスティオ殿ではないですよね。」


 目を細め俺を見るドリアス。

 まるで逃がさないとでもいう様な捕食者の顔があった。


 ”コイツ…… 何か感づいてないか?”


 俺は警戒をする。

 ホントにコイツは、フィルを忘れているのだろうか?


「もしかして妹君は、異世界の記憶をお持ちなのですか?だからあのような発明をされ、更に土の改良。このアセリアの発展もそうでしょう。私は港で、フィラメント嬢を拝見しています。」


 ニッコリとほほ笑むドリアス。


 ”コイツは、フィルを認識していたんだな。”


「とても可愛いらしい方ですね。あの短く切った髪もとても似合って素敵でした。」


 とても優しい微笑みを乗せ、どこか遠くを見るような目で話すドリアス。


「フィルに会ったんだ。」


「ええ、とても幸せそうに笑っておられました。婚約できなくとても残念です。」


 どこか寂しそうな顔で、切なげに呟いた。


「ところでじゃ、ホントに異世界の記憶があるんじゃな?」


 場の空気を読まず、話始めるグラ爺さん。

 だが護衛騎士の二人も同じらしく、俺の顔をジッと見詰めている。


「どんな異世界なのですか?そこにはこの領の様な、()()()()()()が広がっているのでしょうか?それにクリスティオ殿が作った様なモノで、溢れ返った世界なのでしょうか?」


「どうなんじゃ、教えろ!!というかひとっ飛びして聞こうかの♪」


「わかった!わかったから落・ち・着・け!!」


 これは俺の失敗だ。皆には秘匿という契約をして話す事にした。

 空を飛ぶ乗り物で、一っ飛びで旅に行けると言うと、グラ爺さんが競争だと言い出す。

 ドリアスはパソコンなる情報をすぐ手に入る箱に興味津々。

 護衛騎士らは、銃や戦闘機など、目を輝かせ物欲しそうに俺を見た。

 期待されても困るってもんだ……


「いいですね♪いつか行ってみたいです。そしてそのパソコン?なるモノをしてみたい♪」


 何処か夢見るような顔で話すドリアス。


「行こうと思って、行けるもんじゃないけどな。」


「神職に就いた後、必死に神へ祈り願いましょう。どうかその異世界へ行きたいと。」


 何処か確信めいたその表情、コイツは何か知っているんじゃないのか?

 そんな訝し気な顔をした俺を見て、ドリアスは静かに笑った。





読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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