能力の開花
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
【クリスティオ視点】
執務室で仕事をしていると、途中からライオネスが合流した。
何だかんだと陛下の側近だから、ある意味とても助かっている。
「もう三国承認を頂いているのですね。建国お祝い申し上げますと、言わないといけないのでしょうね。」
困った様に笑う姿に、ホッとする俺。
二人だけになった時、魔付きになった事を聞いた。
「クリスティオ様が謝られる事ではございません。これは私自身の戒めであり、命綱なのです。」
何処か付き物が落ちた様な表情のライオネス。
肩の力が抜け、とても自然体に俺と接している。
「殿下は罰を受けているのに、私自身に何もない事は苦しいものです。それに魔付きになった事で、怖いモノがなくなりました。ある意味最強になった気分ですよ。」
いろんなものが吹っ切れたのだろうか。
次郎を見ると、そんなライオネスの姿にニヤリと笑っている。
お前わかってやったのか?それとも偶然か?
「そういえばライオネス。王宮の敷地の植物は枯れた状態。まずそこをどうにかするべき。」
「どういう事ですか、次郎様?」
すっかり忘れていた!!。
そういえば三郎が最低の成分にしてやると言っていたな。
「ちょうどいい。力の使い方の勉強になる。がんばれ。」
「ん?ちょっと待て力って何だ?」
「そうですよ。力って何ですか?せいぜい体が丈夫になる事と、仲間の連絡しか聞いていません。」
ライオネスも知らなかった様で、ビックリした様子だ。
オイオイ、適当過ぎやしないか、次郎。
「まさか分裂するとか在りませんよね?」
「そうなったらいいな、と思う事はあるんじゃないか?」
今の王宮は大忙がしだからな。今すぐ使いたいと思うはずだ。
「誰も物理的にそんな事求めませんよ!気持ち悪いです。」
ライオネスはそう言うが、便利だと思うぞ。
そして気持ち悪いと言われた次郎、ショックを受けている。
「とにかく明日までに教えて下さい。次郎様。」
「ウン…… 」
まあ、うちの領というか国でやる事は、もう建国の準備ぐらいかな。
「ライオネス、がんばれ。国の命運はお前にかかっている♪」
俺がそんな事を言うと、ため息をつき………
「私は臣下です。国も命運も陛下または、王族の方が決めるべきかと思います。私自身もう人ではなくなりましたので知りません、という事でいかがでしょうか?次郎様。」
「うん、よく言ったライオネス。それで間違いない。」
次郎はとても嬉しげな様子で、返事をしている。
王族の者達を、甘やかすなと言いたいのだろうか?
「王宮は変。自分でお尻を拭かない。」
「次郎様、当たっておりますが違います。」
「とんでもなく下世話な話に変わったな。間違いではないが……… 」
もう考えるのはやめにしよう。次郎の言いたい事はわかった。
「ところでライオネス、実は魔道具を作ったから、持って行って貰いたい。」
何処かいい所に、設置して貰わねばならない。
あちらではアセリアを、麻薬国家とでも思っている様だからな。
そこを正さないとな♪麻薬はお前達、王都だろうw
「魔道具ですか?どういった物なのでしょう?」
「証拠を掴む為のモノさ。カメラという一瞬にして景色を写し撮るモノ。そして盗聴と隠しカメラ。音声と行動を映像に残すモノさ。使い方説明ついでに、見せてあげるよ。」
「了解しました。とても嬉しく思います。証拠がなくて苦慮しているんですよ。」
苦笑交りに言って、好奇心が疼いているライオネス。
そういえば、俺は大司教の事を聞きそびれていたな。
「あのさ、大司教にエステバンとは、一体どんな人物なんだ。俺聞きそびれてさ。ただ王妃の信望者なんだろう?」
「彼はまぁ……… よくわからない人です。何故王妃を甘やかすのか、私にはわかりません。理解も出来ません。何を考え行動するのかホントに分からない人物ですよ。」
何処か歯切れの悪いライオネス、どうやらとても複雑な人物の様だ。
しかしなんで未だにあの女が王妃なんだろうな。
実際今までもいろいろとやらかしているのだから………
教会がというが、ソレだけと言えるのだろうか?
ライオネスにその事を聞くと、王妃という身分のせいで曖昧な証拠では、起訴にも捕縛にも持ち込めないと言う。
「彼女はホントどういう訳か、自分自身では動きません。いつも示唆で終わるのです。」
だからこそ、証言だけでは弱すぎて、物的証拠も1つ2つ程度では足りない。
現行犯か多数の物的証拠と証言が必要だそうだ。
「ですから先程の魔道具は、ホントにありがたいのです。王宮貴族もどういう訳か結託するので!」
どれだけあの王妃にイラつかせていたか、よく分かった。
「ライオネス、人間辞めてホント吹っ切れているな。」
「そうです。繋がりや人間関係を考慮して行動するのは、ホントに疲れるのですよ。」
何とも困った顔で言うライオネス、ホント今まで気を使っていたのだろう。
「足の引っ張り合いですからね。今回の件では、殿下と私に難癖を付けると思いませんか?」
確かに王宮貴族のやりそうなことだよな。
「それか王族を供物にして、自分達の平穏を願うのではないですか?今偽王印のおかげで、信用がなくなっていますから……… 」
「世界各国に今の王を降ろして、新たな王で旅立つか……」
ありえそうだよ、ホントに……
ライオネスもその可能性を考えている様だ。
「……… 次郎様、感謝します。どうやら王宮にも部下が潜り込んでおりますね。」
どうやら新たな能力を使う様だ。
目はとても挑発的に輝いているが、顔はとても嬉しそうにである。
「うん、たくさん引っ付いて行ったから。」
俺達が王宮のアレコレを考えている時、のんびりとお茶をしていた次郎。
われ解さずで返事をした後も、お菓子を食べ舌鼓をうっている。
「……… 先に麻薬商人と神官を出立させます。」
「いいよ。リーダーはライオネスだから。」
ライオネスはいろいろと考えて、何処かに指示を出している様だ。
その顔は今まで、控えにいた側近の顔とは違った。
どこか好戦的で狡猾な表情を、ときおりチラつかせ対応していた。
「それが本来の姿なのか?それとも影響なのか?」
俺がそんなライオネスに聞いてみたが、ライオネスはニッコリと笑い飄々とし返事はなかった。
「とりあえず王宮の方は大丈夫か?」
「そうですね。ワーム達が部下を送るので、明日には王都に着くでしょう。出来れば私どもも送って欲しいモノです。」
「次の日、筋肉痛が凄いぞ。握る所がないから大変だ。」
砦だけでも結構身体に来たんだ。
王都までなら、一体どうなるのだろう。
「彼らは大丈夫でしょうか?クリスティオ様より、鍛えていませんよね?」
それを聞いて不安そうなライオネス。
俺も麻薬商人や神官など頭によぎる。
「大丈夫、魔付きは丈夫。」
次郎の呟きに、ホントに?という顔をして見るライオネスだった。
****************
父上達が戻った後、俺はドリアスに会いに向かった。
ドリアスは全てが終わったら、神職に就くと言ったそうだ。
”記憶がなくても、一人の幸せを祈りたいっか………”
「いろいろ考えているようじゃ。今から行くのか?」
次郎の提案に乗り、グラ爺と会いに行く。
「ああ、王印の偽装は何となくわかったが、魔術を使ったという王妃が良く解らない。」
「オスバルドから聞いた。どんな感じで消えたのか、聞くんじゃろ?」
「そうだ、それに王妃の事もな。フィルは王妃の記憶は余りない様だ。」
「なるほど、いつも第三者を立てるらしいの。ずる賢い女じゃの。」
ホントうんざりする事ばかりだが、アセリアはもう他国になる。
うん……… あと少しだ、俺。
****************
【 エステバン視点 】
まさかアセリア領が建国をするとは………
王印の濫用のせいで、各国から信用を失いつつある国。
王宮はその対応で、バタついていた。
王宮貴族達も普通の顔をしているが、内心ハラハラ状態だろう。
ソレはソレで面白くて愉しいが………
その状況を作った王妃だけがのんびりと、何をわかっていない。
自分の事しか考えていないからなw
「何だか王宮がバタつきているわね。私がいないからかしら?」
何処までも自分本位にしか物事を考えれない。
「アセリア領が建国をするそうですよ。」
ワタシがそう言うと、驚いた顔をして言った。
「あそこは私のモノになる予定なのに、建国なんてできないわ。そうでしょう、エステバン。」
一体どうして自分のモノだと主張出来るのか?
まったくアセリアと接点がないのに、そう信じて疑わない。
「いいえ、正式にはもう建国した状態が正しいでしょう。」
ギルド経由で聞いたから間違いないだろう。
私がそう言うと身体を震わせ、ここまで人の顔は醜くなるんだと感心する様な、欲に黒く染まった顔で言った。
「でも無理よ。だってあそこは麻薬に取りつかれたところだものね?」
そういう風に持って行こうとしている様だ。
顔と言い方が余りにも違っている。
騎士でも派遣できると思ったのだろう。確か待機させていたな。
「なんでもワームの巨大な壁で領には入れないそうです。」
「それなら軍でも派遣して、その壁を破壊すればいいわ。」
なぜ軍を動かせると思っているのだろう。
ホントに、どこまでも自分中心な人物だ。
「周辺はオーガやグリフィン、フェンリルなど、無数の魔物で溢れているそうですよ。アセリアに敵対する者は食い殺されるようですね。」
「それなら神の名で討伐すればいいのよ。魔物達が力を貸すなんて、なんか怪しい術でも使っているのだわ。危険だもの排除よね。」
神の名さえ自分の為に使おうとする。
怪しい術などお前の妄想に比べれば、大した事ではないと思う。
「しかし神はどうもアセリアをお認めの様です。教皇が建国の承認を認めたようですよ。」
ホントみごとなまでに、アセリアへ手出しができない様になっている。
我が国はそれどころではなく、ボロボロだ。
「でも麻薬を領民に使っているのでしょ。それを世界各国に教えてあげるべきだわ。」
それは君が妄想した話だろう。
ついでに麻薬を、王都民に使っているのは君だ。
自分のしている事を、堂々とアセリアがしていると擦り付ける。
ホントにどこまでも腐った女だよ。
「しかしその世界各国から、我が国は信用を失っているんですよ。王印のせいで、フフッ今王宮はその対応でバタついているのです。世界各国から非難の嵐ですよ。そんな国が何か言った所で、誰が信用するのでしょう。」
愉しくて、愉しくて堪らないよ。
とても悔しそうな顔をしている女の顔を見て、とても愛おしく思えた。
ホントに(笑)何故悔しく思えるんだ?
そんな状況を作り、追い込んだのは君じゃないか?
「ねぇ、どうにかできるわよね。エステバン。貴方だけが頼りなの。」
また言っているよ、この王妃は………
これを言えば、言う事を聞いて貰えると信じているんだな。
ホントにおかしくて仕方がないよ。
「どうできると言うんだい?逆に教えて欲しいよ?」
僕が愉しそうに彼女を見て言うと、彼女は驚いた顔をしていた。
ホントに、その顔が面白くて堪らない。
しかしここで、もうジ・エンドかな?
もう少し有頂天に上げたかった。
最高潮から、一気に絶望へと変わる瞬間の顔を見たかったのに……
残念だ、ホントに残念で悔しくて堪らないよ。
「やっぱり悔しく思っているじゃない。ねぇ大丈夫よ。貴方ならまだやれるわ、エステバン。」
とても嬉しげな顔をしている。王妃の顔を見て………
何処までも自分本位な王妃が、可笑しくて仕方がなかった。
”ある意味とても幸せな人ですよ、貴女は。”
誰よりも王妃の絶望に歪んだ顔を愉しみにしている者に、無邪気に甘えるのですからね。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




