即決は大事
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
誤字脱字報告ありがとうございますm(_ _)m
【クリスティオ視点 】
年寄り組(グラ爺さん込)は、あの後すぐに仕事終了宣言をして酒盛りを始めた。
グラ爺さんも楽しそうに、酒を飲んで話している。
まあ、晩御飯の時間ではあるもんな。
「クリス話がある。」
次郎から言われ、俺達は地下道へ移動した。
「今後の話し合いをしたい。整理は必要。今結構ぐちゃぐちゃ、後が大変。」
次郎が言うには、いろんな話が飛び交っているそうだ。
だから話を擦り合わせて、同じ対応をしないと面倒な事になる。
「ならまず僕、三郎から言ってもいい?」
三郎からは王都の今の状況を話したいらしい。
実は王都貴族らがアセリア領に対して、麻薬使用の罪を捏造しようとしていた。
もちろん今は、証拠の店も麻薬もなく処理済み。
領の寄進を拒否すれば無理やり戦争に持ち込み、取り込もうと考えていた。
「どうやら騎士達が近くで待機していたようだ。だがあのワームの壁と魔物襲撃を目撃して、スタコラと逃げ帰ったらしいよ。」
だから王都では、物凄い騒ぎになりそうだ。
とんでもない数の魔物が、王都領民を敵として食い殺したのだから……
”ヘエ~…… 思った以上に情報が、早く向こうに入りそうだな。”
宣戦布告した感じになりそうだけど、まぁどっちが先かの違いだよね♪
「だから王宮でもバタついているよ。だってドリアスとライオネスがこの領にいるんだもの。」
たぶんだからこそ、このタイミングだったのだろう。
麻薬を扱ったという生き証人に仕立て上げる。
騎士達が近くに待機していたのも、陛下からの命令ではない。
王妃の派閥が勝手に動いての行動だった。
……というか今までもそうなのだろう。
だからこそ日和見の貴族達は、今回の件で焦る事になる。
アセリア領が離脱する可能性が、ほぼ確実になって来る。
”というか離脱するんだけどね。もう各国ギルド経由で、通達済みだから♪”
こちらに訴状や手紙で確認したくても、壁に阻まれる。
かといって近くで何かをすれば、魔物達の恰好の餌になる。
「今更陛下を頼ったりして(笑)だけど陛下辺りも、それどころじゃないさ。まあそれも仕方ないんだけどねw」
三郎が珍しくケラケラを笑った。ニヤリじゃないんだな。
そして四郎が手を挙げて、報告をする。
「ハ~イ、そのそれどころなんだけど、どうやら王妃のやらかしだよ♪今まで机の上に書類溜めまくったでしょ。なんでも下っ端のメイドに命令したんだって、適当にサインする様に(笑)今、養護施設にいるでしょ。だからメイドが泣きながら訴えたらしいよ。」
確かにサインしたら犯罪者確定だもんね。
王妃がいないなら、訴えもし易かっただろう。
「だからもう王妃は剥奪確定されるよ。婚姻も解消されるだろうね。だって王国教会が認めなくても、枢機卿が近いうち来るからね。権限はこっちが上だしね♪」
実際、王宮と教会がわちゃわちゃとやり合っているそうだ。
「なんでも『王妃は心労で疲れているから、これ以上無慈悲な事はしないで欲しい』って笑えるよね。」
四郎は大爆笑だ。一体どんな心労だよ。
自分の思いどおりにいかない心労だろうよ。ばかばかしい!
「どれだけ甘やかされているんだか、呆れるよね。ホント妄想と願望の世界で生きているんだね。尊敬するよ。現実を見ずに生きていけるその根性。凄いよね、それを現実にしようとする執着も♪」
ホントにそうだな。普通は無理だ。
だがあの女は、それを実現し現在王妃だ。
ホントいい事ならば、よほどいい王妃になっただろうに……
「そこを上手く使うのが、男の度量って言うらしいよ。陛下度量なかったんだ。結婚するからには、ちゃんとしないとね。子供作るだけなら、結婚する必要ないもんね♪」
四郎は凄く楽しそうに笑って、スッと真面目な顔をする。
「というおふざけな情報だけじゃなくて、他国にも遠慮がないんだ、あの女。なんでもアセリア領の産物はすべて国の物、勝手な交易は禁止する。という手紙を出していたんだ。王印付で(笑)」
“オイオイ!!ビックリだ、なんだそりゃ?!”
アセリア領は勝手な交易ができる程、税と産物を納めている。
もちろん各国それくらい知っている。
そんな事すればどうなるか考えないんだな。
「どういう事だと文句言っているうちに、アセリア領から建国するって話が、ギルド経由で入るでしょ。 すると何があったか判るじゃない。だから多分いろんな国から、届いたんじゃないのかな?戦争をするならアセリア領につく、という様な内容の手紙。」
「一つ、二つならいいものを、どれだけ手紙出したんだろ、王妃様♪」
四郎と三郎がとっても楽しそうに言っている。
「クリス、タイミングよかった。オスバルドだったら巻き込まれた。即決大事。」
今回の大々的なデモンストレーションは、世界にも発信された。
そのおかげでアセリア領の考えを示し、手紙以上のインパクトを与える事が出来るだろう。
「そっか……… とにかくよかったよ。うん……… 」
知らないうちにギリギリだった。怖っ…
政治とは、駆け引きの難しさと恐ろしさ。
そういった意味でも、情報はホントに大事だ。
コイツ等がいなければ、どうなっていた事か。
「ありがとう。ホント、お前達のおかげだよ。ホント、ありがとう。」
俺は心の底から感謝する。
今までフィルの幸せを考え行動した。
フィルを守れば、公爵家も守れ、アセリア領も守れるのだ。
それを手助けしてくれる仲間がいる。
それも裏も表も助けてくれる仲間が………ホントに感謝だ。
「そういえばクリス、魔道具を用意すると言っていたけど、準備は出来たの?」
三郎がふと思い出したように言う。
だから俺もここに来るなら、持ってくればよかったと気づく。
「ココの魔石で試そうと思っていたんだ。」
俺が悔しそうに言うと、次郎がワームに指示を出した。
「クリス、取りに行ってくれるって♪」
「ついでに何か食べ物とか、飲み物が欲しいかも。」
三郎と四郎が言うと、次郎がまたワームに伝える。
二匹のワームは何処か向かって行った。
「クリスどうしたの?」
ワーム達を見ている俺に気づいた。
「イヤ三郎、ワーム二匹は屋敷に向かったのか?」
「違うよ。連絡係で、屋敷には別の者が取りに行くんだよ。」
「でもワームだろ。俺の部屋、ごちゃごちゃしてるから大変だろう?」
「ワームじゃないよ。一応人だよ。」
何故か今意味深な、言葉を聞いたような気がする。
三郎はニヤニヤした顔をしている。
先程さんざん言われ、努力している最中らしい。
「何だよ。その一応ってヤツ。」
なにか隠し事してないか?その事に気づき俺は睨む。
「その話は、今から話す。」
次郎が俺に言うと、立ち上がり俺を見た。
「僕達ここで、魔道具と食べ物を待ってるね。」
「いってらっしゃーい♪」
「……ん。」
次郎は、後に付いて来る様に促した。
「晩御飯食べた後じゃダメなのか?」
「すぐ終わる。」
「そうかよ。」
直ぐに話は終わった。多分こんな風にすぐ終わるのだろう。
連れて行った先は、捕らえられた者達の収容所。
牢の中に入れられ、蒼褪め震えている。
牢の外はワーム達がウロウロしているのだ。
逃げ出したくても、どこにも逃げられる所がない。
”アセリア領、ワームの壁で囲まれているからね。”
大人しくしている方が正解だった。
「コイツ等どうするんだ?」
「王都の騎士に渡す。」
「なるほど、お前ら三日後には出れるぞ。それまで大人しくしとけよ。」
「そう、王都の騎士に渡す。」
ホッとする人間とエ~と悲鳴を上げる人間。
「美味しいは正義、外の世界は激マズ。」
なるほど……… という事は、ホッとしたヤツらはスネに傷持ちか。
俺がチラッと次郎を見ると、頷きワームに指示を出す。
「こっち。」
次郎の後をついて行くと、後ろでは喚き声が聞こえた。
先程のスネ持ちが、牢から出されたのだろう。
ある場所に着くと、数名の男達がいた。
その中には麻薬商人もいて、同じ時捕まった神官もいる。
俺に気づき二人は頭を下げた。
”一体どうなってんだ?”
****************
【 三郎視点 】
クリスは次郎の後を付いて行った。
どう思うかな?ビックリはするだろうな。
でもその後どう思うのだろう。僕はそれが心配。
「大丈夫だよ。クリスは合理的なヤツだもの。」
「ならいいけどね。」
魔物にもいろいろ特徴があるんだ。
僕達は雄雌がなく、分裂でも卵でも増やす事が出来る。
土を耕し魔力を循環させる。これは人の営みだと思った。
だけど自然環境を、循環させるのはワームの仕事だったのだろう。
だから好き勝手に増やす事が出来るし、勝手に消滅するんだ。
僕達の死骸は溶けて魔石に変わる。
世の中上手くできているよね。
普通ならその事を、本能が知っているのになぜか知らない。
一郎が、大地の変異が原因だろうと言っていた。
僕達みたいに、自然に直結したモノ達は他にもいるだろう。
魔物達も足りない何かに気づき、試行錯誤で動いているんだ。
世界各国だって、美味しいの為にがんばって動いている。
ありとあらゆる者達が、種族関係なく動く奇跡。
そんな奇跡のきっかけを創った人が、僕たちのご主人様だ。
「どんどん変わっていくね。僕達は今凄く充実してる。」
「そうだね。世界が変わる瞬間まで頑張ろうね。」
ご主人様の願いが僕達の願いになり、いつしか魔物全体の願いになった。
その願いは、そのうち全世界へと拡がるだろう。
「僕達もこの世界の一部だったんだね。」
「ホント、つくづくそう思うよ。」
僕達は笑い合いながら、のんびり今後の話をした。
僕は王都に行き、四郎は世界へ向かう。
行くところは違うけれど、願いは同じ。
今日一日は、ホントに忙しかった。
分刻みだったもんね。大変だよ。
「今日ほど働いた日はないよ。」
「ホントだよね。めちゃくちゃ濃厚な一日だったよね。」
たぶんずっと忘れないと思うんだ。
「死んでも忘れなさそう♪」
四郎も同じこと思っていた。
「僕ご主人様より、クリスとの時間が濃厚だよ。」
「それを言うなら僕だってママさんと濃厚だよ。」
その言い方どうなのかな…… 四郎はニヤニヤ……
わかって言っているんだ。ヤレヤレ……
「三郎は王都に行くよね。少しは表情筋鍛えなよ。使えるモノは使いな。」
四郎が僕に言った。つまりこの面の事だ。
「かなり有効に使えそうなの?僕その辺わからないな?」
「かなり有効だよ。だから三郎がどんなタイプを選ぶかに依るよ。」
四郎は人差し指を立てて、僕に言い聞かせるように言った。
考えているタイプは3つ。
・無口だんまり系。 ・少し笑うツンデレ系 ・口調に合わせて軽薄系。
「三郎はどれがいいの?一番楽なのはだんまり系だよね。」
確かにだんまり系は楽ちんだ。喋んなきゃいい。
でもずっとだんまりってキツイよね。
それでもヘラヘラって、人に愛想を振り撒くのもイヤ。
「ツンデレしかないよ。笑顔の練習するよ。」
僕がイヤイヤ言うと、四郎も練習に付き合うという。
オスバルドやロバートに比べれば、気心知れてるからいいだろう。
その後、四郎と笑顔の練習をして、クリスに成果を見せ驚かせる。
もちろん魔道具も、晩御飯も準備済み。
帰ってきたクリスの様子が、いつもと同じ事にホッとした事は内緒だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




