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仕事放棄宣言

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 グラ爺さんは、のんびりと差し入れを食べている。

 顔がとっても幸せそうだ。


「しかし、このおにぎりとは面白いの。家畜の餌だったとは驚きよ。それに水田栽培だから、比較的()()が少なかったんじゃな。ウン、エグミが少ないわい♪」


()()って何?」


「詳しくはわからん。ただ戦禍の残滓らしいの。私は比較的早い段階で、寝かされたから…… ただ魔守り主が言うには、空からの強烈な光が、地上の大地を焼いたんじゃと。だから焦げた大地の苦みが、食べ物のエグミになると言ってたの。」


 そう言って、5個目のおにぎりを食べ始めた。

 四郎と中は何の味じゃと聞いて、とっても楽しそう。

 しかし戦禍か……… 教国に資料とか残っていないのかな?

 ちょうど家にいる、枢機卿の顔を思い浮かべて考えた。


「そうじゃ!!私がグリフィンである事は、内緒じゃよ。お主達の領民は懐っこくていかん。『背中に乗せてくれ!』と子らにせがまれ辟易したわ。別に乗せるぐらいはいいが、『空を飛べ!』はのう。危なかろうに、妙に無謀な子らが多い。これはワームらの甘やかしが原因じゃよ。しっかりせんとな!」


 ほら見ろ!やっぱりうちの領民おかしいんだよ。

 魔物に注意されるってどうよ、というかどう注意すればいいんだよ。


「全く!!今までまったく相手されなかった分、浮かれおって…… まるで付き合い始めのバカ男の様じゃ。実際貢ぎまくりじゃろう。どうするつもりじゃ、魔物じゃぞ?みんな仲良し子好し、してくれる訳がないんじゃぞ。」


「ええ?!バカ男はヒドイよ。でも~確かにサービスはしてるかな♪」


「オイ、うちの領民どうすんだよ。今更魔物は危ない生き物ですから、気をつけてください。何て告知するのか?!というか普通魔物はそうだろう?」


 グラ爺さんも、四郎も俺が言った事を聞いて、ため息をついた。


「何にしても今更じゃな……… 私の仲間も遊んどるしの。」


「アセリア領周辺だけって事にすればいいんじゃない?」


 なるようにしかならない。一応勧告だけはしておこう。ウン………




「クリス~、そろそろ屋敷へ帰ろう。建国関連も目途が立ちそうそうだよ。3日は自由時間♪何をしようかな~♪」


「それじゃあ、ご主人様の所へ行こうよ♪」


「ア~…… それは無理だ。さっき一郎から連絡があって、風魔と一緒にヒノクニへ出掛けるって。」


 ”なんだって?!”


「それどういう事?!行く時は俺も一緒に行く予定だったのに!」


 酷いよ、フィル。俺も楽しみにしていたのに………


「お主そんな暇なかろう?落ち着いたら連れて行ってやろう。」


 グラ爺さんが優しく申し出てくれた。ありがとう。

 俺は感謝でいっぱいだ。


「あの国の主食は、このおにぎりと同じなんじゃな。どんな美味しいがあるか楽しみじゃ♪」


 …… 所詮食い地の張った親切かよ。感謝する必要なかった!


「グラ爺、行った事ないの?」


 四郎がキョトンとした顔で聞くと、グラ爺さんはウンザリした顔をしながら………


「あの国は鶏肉が好きでの。私を見る目が捕食者での…… そういう事じゃ。」


 何ともいいようのない顔をして、ため息をつくグラ爺さん。

 よっぽど嫌な思いをしたのだろう。

 実際グラ爺さんはでかい。食べ応えがある様に思うんだろう……


「そんな感じなら、行ってもいいのか?嫌なんじゃないの?」


「それはお主がおるから、私は騎獣扱いになるだろう。それに人化するからの♪」


「わかった。それじゃあグラ爺さんも屋敷に来るだろう。美味いモノあるし、紹介もしたい。」


「美味いのは惹かれるの。ヨシヨシ行こうか♪」


 さて今から屋敷に戻るが、俺に自由時間はあるのかな。


「ところで飛んでみるか?」


 グラ爺さんがニヤリと笑って俺を見た。

 確かに三郎に乗って行くと、明日体じゅう凄い事になるだろう。

 三郎は「エ~~…。」と言っているが、俺は自分が可愛いんだ。


「お願いしてもいいですか?」


 快く了承されて、人生初の空の旅。


 ”すっごくワクワクする♪”


 顔が自ずと緩くなる。嬉し過ぎだ。


「多分……… 浮気された女の人の気持ちって、こんな気持ちなのかな?」


「三郎、その例えおかしいから、ついでに無表情怖いから止めようね。」


「お前ら……… 自分の性別考えやがれ。」


 俺がジロリと三郎と四郎に睨んで言うと、


「はて?ワームに性別などあったかの?」


 グラ爺さんが暢気な様子で呟いた。

 それを聞いた俺はギョッとして、ワームの二人を改めて見る。

 そのワーム二人はキョトンとした顔で、俺を見ていた。


「僕達に性別の括りはないよ。だってどっちもあるからね♪」


「好みだよね。性を選べるから、ラッキー的な感じ?」


 二人は暢気にそう話す。ラッキー的な感じって何だよ………


「もともと性があるモノにとっては、不思議な感覚よの。何とも不安定な感じがして、ラッキーとは思えんわい。」


 グラ爺さんの言う様に、俺もどちらかと言うとそんな感じがする。

 でもまぁ三郎は三郎だよな。そこはブレない、俺。




 ****************




 屋敷の庭に降り立つと、屋敷の者達は大騒ぎ。

 そりゃあグリフィンが来たんだからね。更に背には俺達がいた。

 屋敷の者達は目を見張り、ポカーンと口を開けている。

 そんな中、進み出て来る者がいた。


「クリスティオ様、空からご帰還されるとは思いませんでした。」


 フィルの世話係ハロルドが、困った顔で俺達を見つめる。


「ごめんよ。空への欲求を抑えれなかった。今度ハロルドもどうだ?」


 俺がそう言うと、チラッとグリフィンを見て挨拶をするハロルド。


「申し訳ございません。クリスティオ様は、空の旅で興奮状態の様で…… 私はハロルドと申し上げます。屋敷(こちら)まで送って頂き感謝します。」


 グラ爺さんに頭を下げ挨拶するハロルド。

 その後ろに使用人達も立ち直り、一緒に頭を下げる。


「ホッホォ~、なかなか道理を心得とるの。」


 そう言って人化するグラ爺さん。そして優雅に挨拶をして見せる。


「初めまして、グランドと申す。これからいろいろ世話になるだろう。よろしく頼むぞ。」


 微かな笑いとウィンクを飛ばす、グラ爺さん。

 屋敷のメイド達を悩殺してやがる。

 グリフィンと知ってるのに、顔を赤らめるとは、あり得ん………


 もちろん父上には、ギャイギャイと文句を言われた。

 それを宥めるロバート。ありがとう。

 枢機卿はグラ爺さんの話を興味深げに聞いている。


「ほとんど戦禍でなくなったのでしょうね。」


 多少残るその当時の魔道具とわずかな石板。

 戦禍がどれだけ酷いモノだったか良くわかる。

 次郎はのんびりとお茶を飲んで、四郎と三郎と話している。


 ”どうやらライオネスは帰った様だな……… ”


 後で賭けの内容を手紙に書かないといけない。

 彼が王都に帰り、どのように行動し導いていくのか。

 それによりあの国の方向を、選び決めて行くのだろう。多分………



「それじゃあ、王都へ出発は三日後。それまでに準備しないとな。いろいろと♪」


 俺は頭でアレコレ考えていると、父上が念押しと予定を伝える。


「その三日後から、今回の件よろしく頼むぞ。私はホント疲れたよ。温泉にゆっくり浸かって1週間ほど休みを貰う。後処理は任せたからな!」


「クリスティオ様、それは私も同様ですので、よろしくお願い致しますね。」


 二人から三日後の仕事放棄宣言を受ける。


「確かに忙しかったよの。老体は労われねばな。」


「私も終わったら、一度こちらに戻ってもよろしいでしょうか?」


 老体4人は、休暇の過ごし方を話し合う。

 それまで俺達は今回の件の後処理に、奔走しないといけないらしい。


「クリス、後片付け大事。」


 ポンと肩に手を置かれ、ハァ~と諦める俺だった。


「クリス、一応決まった事を話そう。王都に向かう護衛は次郎が選ぶと言うが、それでいいのか?三郎とケルピー兄妹もついて行くらしいぞ。」


「確かにお願いしてるよ。枢機卿の従者みたいな役目でね。何があるか判らないし、用心に越した事はないだろう。」


「私も心強いですね。それに泉さんも、いろいろやる事があるみたいですから。」


 ニコニコ笑顔で話す枢機卿。終わった後の休暇が楽しみなのだろう。

 しかし三郎も護衛で付くと言う。顔の造詣はホントにいいのだ。

 王都の奴らがほっとくだろうか?


 ”イヤ、それはないな。変な目立ち方をしそうだ。”


 ホントこの三日間でどうにかしないといけない。

 誤魔化せる程度に持っていきたい。その前に本人に自覚が必要だ!


「三郎、いい加減表情を作れ。顔の筋肉を使うんだ。」


 俺がそう思い三郎に言うと、皆も思っていたのだろう。


「三郎様、もしよければお教え致しましょうか?顔を作る事は側仕えには必須ですので。」


「貴族もそうだろう。私が教えよう?」


「エ~、どうしようかなぁ」とのんびり言っている………

 だがその顔に、やはり表情らしきモノは無いだ。(目は素直)


 ”これはちょっと問題じゃないかな?!”


 上手い具合にしないと、うざい状態になりそうだ。


「どうする?三郎はどちらから習うんだ?私なら凛々しい男性像になると思うぞ。」


「三郎様、私ならば頼りになる男性像となるでしょう。いかかでしょうか?」


 父上とロバートは、いかに自分が教えればどんな男性になるのか力説していた。


「いいか三郎。何事にも第一印象は大切だ。つまり姿形と表情だ。そして第二に会話。わかるか!第一と第二が合わないと気持ちが悪いんだ。とても重要な事だぞ。」


「三郎様はとても魅力的で素敵な男性です。美しい上に上品な雰囲気をお持ちなのです。そんな方がハァ~イ♪って暢気な挨拶をしたら、ビックリするでしょう?」


 時折する三郎の挨拶をマネたロバートに、父上がギョッとした顔をする。

 俺もロバートが、ハァ~イ♪と言った事にびっくりし、枢機卿とグラ爺さんも飲んでいた飲み物を吹き出した。

 やはり人物像と行動がかけ離れると、違和感が半端なく感じる。


「エ~~、でも僕面倒だよ。美味しいご飯食べた方がいい。」


「ですが王都で、人化して潜入捜査する事があると思いますよ?」


「そうだぞ、三郎。やるなら完璧にやった方がいい。泉と大河だって出来ているじゃないか。」


 三郎は凄く嫌そうに断るが、その気持ちは伝わらない。

 三日後にはアセリア領を後にする。

 旨い飯をたらふく食べて、遊びたい気持ちなのだろう。

 分かるよ、多分俺もそうなると思うよ。


「でも、でも、今度いつ帰って来るかわからないし……… 」


 三郎のごねる気持ちもよく分かるんだよ。

 三郎の眼が訴える”た・す・け・て”。

 人形の様な顔で目だけ生き生きしていて不気味だ。

 やっぱり問題だわ、無表情(これ)

 しかし目が、めちゃくちゃ縋って訴える。


 ”help me!!”


「さて、どちらにされますか、三郎様?」


「ウウウゥ……… 」


 仕方がない、三郎とは友人だからな。


「三郎は俺が教えるよ。いつも連絡取り合うし、気楽だろう。」


 パァ~っとした空気が三郎の方から流れた。

 そして高速ウンウン中、三郎は必死だった。

 本来ワーム姿で土の中だもんな。


 でも顔の筋肉動かす事を、面倒くさがるのもどうかと思うよ。

 確かに貴族はポーカーフェイスが基本だ。

 だから一応口の端を上げる練習を、させておけば大丈夫なはずだ。




読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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