理想と願望
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
誤字脱字報告ありがとうございます。
助かります。(/ω\)
【 王妃視点 】
最近ホント面白くない事ばかりだわ。
王太后は煩いし、陛下も冷たいし、全く何が気に入らないの?
書類の仕事なんて、他の人にさせればいいじゃない。
私は他にやる事あるんだもの。考えればわかる事だわ。
机の上であくせく仕事をする姿は綺麗?素晴らしく見えて?
何で一々報告や連絡、相談しないといけないの?
それを言うなら、こっちからそんな事を言われる前に気づきなさいよ。
ただ周りの者が仕事をしない、出来ない、気付かないだけじゃなくって。
何で私がそんな者達の為に、フォローしてあげなきゃならないの?
私意味がわからないわ。自分の事で手がいっぱいなの。
やらなきゃいけない事はやれる人がやればいいの。
出来ない事を出来る人が、代わりにすればいいじゃない。
だって私王妃よ。国一番の女性よ。
とても高貴で、優雅と気品に満ち溢れた存在なのよ。
周りが大切に慈しみ、尊ばなければならないの。
ホント仕事しろ、無駄遣いをするな、遊ぶなと煩いわね。
私ちゃんと仕事しているわ。平民は私の味方よ。
無駄遣いって私王妃よ。国一番の女性が、見すぼらしくていいのかしら?
それに何で、欲しいと思うモノを、我慢しなくちゃならないの?
私が欲しいと言っているのよ。逆にありがたがるモノじゃないの。
ホント最近いい事ないわ。
周りの取り巻きも、ホント変わり映えしないしとても退屈。
最近私の実の姉も取り上げられて、最悪だわ。
それも王太后の侍女だなんて!
ドリアスの婚約者になったあの子も、ホント使えない子だったわ。
愛想ばかりで、ぜんぜん勉強しないんだもの。
私出来ます!と言いながら、全く何一つできないんですもの。
泣いて誤魔化して、甘えてホント鬱陶しい!
もうホント最悪、役立たずな上にお荷物よ。
まぁ没落した時の姿は、とても滑稽で見苦しくて、フフッ……
それはそれは素晴らしく面白かったわ。
そこはとても楽しませてくれてありがとう。
とても感謝しているのよ。多少イライラが治まったもの。
学生時代、初めて会った陛下のカッコいい姿に一目惚れしたの。
私達の運命的出会いなはずなのに、陛下の冷めて見る瞳にムカついたわ。
私が素敵なほほ笑みを向けて無視するんですもの。
ホント…… 今思い出してもムカムカするわ。
でもわかっていたの。いつか貴方が私のモノになる事を………
私の夫になる事をわかっていたから、どんな態度でも許せたの。
貴方のその態度はただの照れ隠しだし、自分の恋情を誤魔化したのよね。
それに婚約者もいたんですもの、仕方がないわ。
だけどその婚約者が、まさか自分の姉とは思わなかった。
だって生真面目で勉強ばかりしていて、私みたいに華やかでも綺麗でもない。
そんな姉があの男性の妻、それも王妃になるなんて間違ってるわ。
だから私の価値を周りに示したのよ。
私がいかに綺麗で優しくて、思いやりがある事を………
心に傷がある者や荒んだ者達も、ちゃんと道を示しさえすれば役に立つのよ。
今ではとっても素敵な人達になっているわ。
いつも私のお願いを聞いてくれるもの。
王都民も私が王妃になって、とっても喜んだじゃない。
前の陛下も私の価値が解ったからこそ、私を王妃にしたのよ。
私達は「真実の愛と絆」で結ばれているの。皆もそう認めてくれた。
だから私の邪魔をした姉を、制裁しても別にいいのよ。
だって真実の愛を邪魔するのは罪だもの。
神の定めを邪魔したのと同じ事だと思うのよ。
だけどホント現実は残酷だわ。理想と違うんだもの。
「ホント最近イヤになるわ。」
私は目を伏せて、ソッとため息をついた。
だって結婚して終わりみたいなエピローグは……
「どうしました?美しいお顔に憂いを乗せて?」
彼は私の頬に優しく手を添え、愛しげに私を見つめている。
現実の世界では、新たなプロローグにしか過ぎなかった。
「わたしが不出来だと…… それにドリアスの婚約者も決まらないわ。」
「貴女はとても優しい女性です。ドリアス殿下も誇っておられます。」
私は頬に添えられた手を軽く払い除け、そして顔を背ける。
その後チラッと流し目をし、涙目を湛えて見つめるの。
ホント現実は、理想の様に素敵なモノじゃなくて、
「最近……… ドリアスも冷たいわ。陛下も王太后も、私にとって王宮は針の筵だわ。」
そしてソッと目を閉じて、溜めた涙が頬を流れる。
すると彼は私を強く抱きしめるの。
そして言って欲しい言葉を、言ってくれるわよね。
ねぇ?そうでしょう、エステバン………
とっても残酷で無残なものだったわ。だからお願い………
「王妃……… もう我慢されなくても大丈夫です。心労が弱っているのでしょう。大丈夫です。私に全てお任せください。」
「ありがとう、エステバン。貴方を頼りにしてるの。誰よりも…… 」
そして顔を上げ、はかなげにほほ笑むのよ。
渾身の微笑みを顔に乗せて………
ハラハラと涙を流して見つめるの。
私をいつまでも素敵な恋愛を見させて欲しい。
私は王宮から、教会の養護施設へ行く。
心労による病気療養のために………
ココからゆっくり今後の事を考えるしかないわ。
だってホント王宮って煩わしいんだもの。
現実なんてウンザリだわ。私は願望の世界で生きたいの。
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少し前の王宮ー
最近アセリア領の噂が、なにかと入る様になってきた。
領産の食材が凄く美味しく出来るらしい。
それを例えれば、天上の食べ物と言ってもいい程に………
「王妃様、アリセア領の食べ物の話を聞かれまして?」
「ええ、聞いているわ。」
「私、先日商人からたまたま頂き、食べてみたのです。」
「あら!そうなのね。」
「ハイ、それでその噂はホントでしたわ。エグミも臭みもほとんどない、瑞々しいキュウリでしたの。驚きましたわ。」
周りの貴族達も、その話を聞いて色めき立つ。
食べた野菜もキュウリで、美味しいと言う。
エグミと青臭みが強い、生でしか食べれないモノ。
私は扇を口元に置いて、ほんのりほほ笑んだ。
「凄いですわね。」
ソッと言葉を添えて、心は腹が立っていた。
”なぜ自分が食べる前に、私に贈らないの!というか話だけじゃなく、野菜を持って来なさいよ。”
「そういえば王太后の別邸では、アセリア領の作物が毎週届けられていますよね?」
ある貴族がふと漏らす言葉に、私は目を向ける。
「あら!でしたら王妃様も、もう召し上がっていらっしゃいますわね?」
私はその問いに………
「フフッ… 」
楽し気に微笑んだ。
周りは皆私が食していると思っている。だけど………
”どういう事…… もしかして私だけ食べてないのではなくって?”
部屋へ帰ると、実姉がいつまでたっても帰って来ない。
どういう事、おかげで執務室が書類で汚くなっている。
コンコンコン………
「失礼します。処理済みの書類を取りに伺いました。」
「ごめんなさい。今朝から頭痛が酷くて、全く出来てないの。」
私は目を伏せ目ショッボリして謝った。
「大丈夫ですか?今日は休まれますか?」
「ごめんなさい。」
「わかりました。陛下にもそうお伝えします。」
実姉が帰って来ないおかげで、私が謝るハメになったわ。
ホントに腹が立つわね。どう仕返ししよかしら………
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アセリア領と同時に、最近では娘の話も………
婚約者になるのを拒否するですって!
田舎者の癖に何様なのかしら。
何ですって!世界的発明をしたのが、あの子なの?!
最近、周りの取り巻き貴族が騒がしい。
またフィラメントの話題、従魔を、それも天災級のワームを5体も従えた。
その一方で、婚約の打診を拒否するアセリア領。
王印があろうとなかろうと関係ないらしい。
アセリア領には、それだけの権限が兼ね備えられていた。
ホント頭に来るわ。
最近アセリア領の話題ばかりで、面白くないわ。
それにしても公爵の娘のフィラメント、どれだけ有能なの。
傍にいれば、とっても便利で役立つのがわかるわ。
だって、発明で得た名声も金も、そして土地に港、そして従魔………
どれだけ一人占めしているのかしら………
「アセリア領のフィラメント様、可笑しな山猿と思っていましたのに……… 」
「ホントですわね。一つくらい取り柄がないと。」
「アラ!従魔もいらっしゃるのではなくって?」
「オホホ……… でもワームですのよ。気持ちが悪いですわ。」
「そうですわね。やはり田舎は野蛮ですわよ。」
嘲笑いながら、腹の中じゃ羨ましくて妬ましい。
何処かに繋がりがないかと、会話をしながら探る王宮の貴族たち。
最近アセリア領産の作物が、とても美味しいらしい。
一度食べれば、もう普通の食べ物は食べれなくなるとか………
そう言えば、最近アセリア領の方々、王都にお見えになられませんわ。
やはり食べ物の話、ホントではなくって………
先日偶然手に入り食べましたわ。天上の味でしてよ!!
ホントイライラすわ。なぜ思い通りにならないの。
「王妃様、書類をいい加減出して頂かないと困ります。」
「王妃様、過分な躾はなりません。」
ホントに私は王妃なのよ。
なんであんた達のいう事を聞かなきゃならないの!!
アセリア領で、医療特化地区というモノが出来たそうだ。
毎日いつでも温泉に入れるらしい。
夜の街灯が明るく、朝まで灯っている。
いつも楽しく輝いて、街中とても賑やかだそうよ。
ホントに頭に来るわ。何よ何なのよ……… !!
「王妃様、いい加減にして下さい。」
「アッ、陛下…… 私…… 」
陛下がいる事に気づき、助けを求めても………
「皆に迷惑をかけるな。やはり君に王妃は無理だと思う。」
一体なんだって言うのよ………?!!
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最近王都では、嘘か真かの流行の噂があった。
「オイ聞いたか、アセリア領の話。」
「あぁ……… ありゃウソだろう。娘の汚名を消す為だけの噂だろう。」
「とんでもねぇ、ブス女らしいなw」
「髪なんか残バラに、切り落としたらしいぞ。」
酒場では飯のタネ代わりに、皆で馬鹿にし合う。
だいたい田舎者がなにを偉そうに!各国に気に入られたからといい気になるな。
「だがなぁー、あの一輪君彼女の発明だろう?」
「それこそウソに決まってらー、親バカの所業だよ!」
「ちげ~ねぇ」とゲラゲラ笑う王都の者達。
「俺はそれより、食いモンがうめーってのが気になるぞ。」
「あぁ~それな!実は馬の糞だったりしてなぁw」
ゲラゲラと笑いテーブルをバンバン♪叩く。
「それをうめー!」とか「笑えるw」と騒ぎながら、受け入れがたい現実に目を背ける。
最近王都に食料が入るのが少なくなってきた、理由はアセリア領。
最近海外産の物が手に入り辛くなってきた、原因はアセリア領。
最近の面白い話題は、………アセリア領。
アセリア領には、天上の美味に溢れている。
民達はいつも楽しく、毎日風呂に入っている。
夜遅くまで街明かりを赤々とし、夜なのに昼の様に明るい。
魔物の脅威がないから、夜遅くまで遊べる。
その裏で………
「だがなぁー、麻薬で領民ヘラヘラと操り人形状態なんだろ。」
「夜遅くまで働かされているから、灯りがともされているらしいぞ。」
「まさに麻薬天国だろうよ。麻薬モノ食って、妄想に入ってよー。」
「お前いい事言うな!まさにそれが噂の真相だろう♪」
スゲー、スゲーと囃し立て騒ぐ。
そしてその話は噂になり王都全体に、拡がっていった。
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【 ある場所で 】
白衣装の男性が、薄汚れた男と向き合っていた。
薄汚れた男は、白い男性に頭を下げ膝をついている。
「どうであった?」
「ハイ、思う通りに成りましてございます。」
「そっか、それはよかった。最近お顔が憂いておる。また頼むぞ… 」
「ハッ……… 」
ホントに最近は何かと忙しい。
教国でも何か動きがあるともいうが………
なかなか思う様にはいかないか。
それが人生だという者もいたが、クソみたいな話だ。
自分の生を、思いのままに出来るようにするのが人生。
「まぁ……… 種はそろそろ芽吹いても、収穫するにはまだ早い。」
だがさっさと取り込んで、こちらで熟成させればいいだけの事。
ただそれだけだ………
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




