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平穏な日常

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。


表現の難しさを痛感………

出来るだけがんばりました(/ω\)ヘニョン



【 ある男視点 】



その日も朝から忙しかった。

沢山の書類と手紙、そして指示書を片手に確認していく。

ゆっくりと侵食していく予定が、急きょ罠を仕掛ける事になったようだ。


「参ったな。まだ現時点では物足りない… 」


それに、上手くやらないと自滅で終わりだ。

大至急とか、ハードルを上げ過ぎじゃないか?

ただでさえアセリア領には、ワームの魔物達がうろついている。

領の外にはたくさんの魔物がいて、領を囲む様に彷徨っているらしい。


「上手くやらねば全てが水の泡だ。ホントに面倒くさい…… 」


店の前ではガラの悪い男達が、ゲラゲラ笑いふざけあっている。

また神官達は、麻薬の入った袋を渡して、足早に店を後にした。

いつも思う。その後ろ姿の愚かさを……

自分達のやっている事を、判っているのだろうか?

教会が神のお膝元で、麻薬の栽培から販売までするとは思うまい。

敬虔な者ほどこの領を『悪魔の楽園』と言い、鉄槌だと言って()()()事をしている。それを罰当たりと言う事なかれ、ただ現実的なだけだ。

心に不安を抱けば、自然と神へ救いを求める。

そういう者が増えれば増えるほど、教会は今以上に地位が高まるだろう。

人と魔物が手を取り合うなど、あってはならない事なのだから……


今日もスラム街から多くの者達が、小遣いを稼ぎにやって来る。

王都に土産に麻薬入りの香辛料を持ち帰り、少しずつ拡散するのが目的だ。

それにより王都民は、精神誘導にかかり易くなる。

まともな判断が出来なければ、怪しくても安易な選択に飛びつくだろう。

今回も教会(じぶんたち)に都合のいい選択を、選ぶように誘導するのだ。


ある意味これが俺の日常。

薄暗い闇の中でどす黒く暗躍する俺の人生。


俺は安易に考えていた。俺は上手くヤレル。

絶対大丈夫だ。俺の後ろには神がいるのだからと…………


俺は何故か愚かにも、神を裏切り、神に守られていると信じていたのだ。




突如起こる不気味な警告音に、()()な日常が引き裂かれる。

俺は目を見開き注意を向ける。そして現状の確認に急いだ。


”一体何が起こっているんだ。”


()()な日常が、突如打ち破られる。

店先に出てみれば、ほとんどの者が店じまいに急いでいる。


通りを歩いていた人々も、何故か冷静に慎重に動き、潮が引く様に建物の中へ消えて行く。


”どういう事だ?”


近くにいた者に事情を聞くと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そう契約に書いてあるそうだが、俺は知らない。


”そんなものあっただろうか?”


碌に契約書を読まずサインした事に、今更後悔した。

聞いた相手は、大急ぎで店内を片付け引き籠った。

店に戻れば他の者達も確認に動き、同じ様な内容の話を聞いた。


「ケッ!誰が指示に従うかよ!!」


それを聞いて、怒りと腹立ちに従わない者達もいる。

そういった者は警告音など無視し、外へ飛び出して行った。

その後には数名が残り、とりあえず店内で様子見をする事にする。

不安にまんじりと構え、店内でジッとしていると、足元から微かな振動を感じ始めた。


ドン!!ドドドドドドドドド………


突如凄まじい破裂音が、大きく鳴り響く。

そしてその後遠くの方から、何かが近づく様なそんな地鳴りの音がする。

振動も音の大きさに比例して、揺れの激しさから棚の物が幾つも落ちた。


ザンバァアアア!!バシャン!………ワァー……ウォー-……… ドドド…


盛大な水飛沫の音が何度となく続き、人々の大きな叫び声が上がった。


ドン!! ドドドド………  バサッ!……… ガラガラ………  


足元の方から引き裂くような音と重低音……

不規則に鳴り響き、揺れもその度に突き上げた。

音がする度に、せり上がる不安と恐怖。

それを打ち消す様に、歯を食いしばりジッと耐えた。

他の者達も同じ様で、目を瞑る者、抱きしめ合う者と泣き出す者、人それぞれに不安を抱えている。

 

どれくらい続いていたのだろう?

突如、ピタリと揺れも音も収まり静かになる。

店内はありとあらゆる物が落下して、足場はヒドイ惨状だった。

麻薬を扱っているだけに、この状態は余り好ましくない。

売っていても、自分に使うつもりはないのだ。


「店内が最悪だ。片付けるぞ。」


とにかくできる事から少しずつやり、心の不安を取り除きたい。

他の者達もそうなのだろう。口を噤みいそいそと作業を開始する。

そんな中一人の男が呟く。


「一体何が起こったんだ?」


スラム街の男が怯えた目でオドオドと、俺達に聞いて来る。

誰も何が起きたのか、そんな事わかる訳がない。

だからとりあえず無言で片付け、精神(こころ)を落ち着かせよう努力している。

そんな事もわかろうとしない男に、俺は思わず睨みつける。

おかげでより一層怯え身体を震わす。


「ごめんくださ~い♪」


店先から暢気そうな若い男の声がする。

先程の状況がウソだったかの様な、そんな気が抜けた声。

ピリついた神経を落ち着かせるように、両手で髪をかき上げ現状を考える。


「ごめんくださ~い♪」


また先程の声が、店の者を呼んでいる。

ホント暢気な声だなぁ。

俺はため息をついて、先程のスラム街の男に接客を依頼した。

スラム街の男は知り合いと二人、声のする入口へ向かって行く。




店内から暢気な声と、もう一人の若い声が聞こえる。

馬鹿な事を言う声と、それを諫める声。親友同士なのだろう。

俺は散らかった書類を一枚一枚拾い上げながら、先程の事が幻かのような日常。

一人の神官が考え込むように、部屋へやって来た。


「どうしたんだ?」


「いえ……… ちょっと………」


そう言うと部屋の片づけを手伝ってくれる。

店先ではまた馬鹿な事を言ったのか、笑い声が上がった。

神官は眉間のシワを深め、ため息をつく。


「店先が賑やかだが、外の様子は確認したか?」


「まだ見てません、というかドアが開きません。先程の揺れで建付けが悪くなったのでしょう。」


この建物には窓がない。麻薬を扱うので、いろいろと差し障りがあるからだ。

だが今回それが裏目に出て、あの青年たちの入り口しか外に出られない。


「もう一人の青年が入り口に寄りかかっているので、確認できないです。多分、貴族だと思います。」


この領地の貴族と言えば、もうアセリア公爵家しかない。

何故?バレたのか?!だが…… 店先では賑やかな話し声。

俺は状況判断の為、仕方なく入口へ向かう。

神官はこの部屋の整理を続けてくれるそうだ。



入口の方へ向かうと二人の男性がいた。

一人は今まで見た中で、一番の造詣美を誇る男性。

そして入り口に寄りかかり、外を眺めている青年、クリスティオ・フォン・アセリア。


”公爵子息が何故ここにいる?”


俺は用心しながら、声をかける。まだバレているはずがない。

それに、外が一体どうなっているか気になる。


「いらっしゃいませ。どの様なご用件で本日お越しになられたので?」


俺は下手に出て、顔色を伺いながら言う。

そんな俺の顔を、じっと見つめる公爵子息。

もう一人のな男性も、赤い瞳で俺を見ている。

だがその瞳に愉し気な残虐性が潜んでいた。

そんな男性に、楽し気に話すスラム街の者達。

その美麗な男性の暢気な声と無表情に、何とも言えないもどかしさを感じた。


「別に。領内見回りだ。」


子息がニヤリと笑うと、美麗な男性もニヤリと笑う。

その顔を見て、撃沈するスラム街の男達。哀れだ………


「申し訳ございません。この者らがご迷惑をおかけしました。」


「別に。次郎は楽しそうだ。」


「旦那!さっきまでの揺れは何だ?何があったんだ?」


スラム街の男が美麗な男に訊ねると、ニヤーと嗤う。


「お前達で確認すればいいじゃないか。見ないと状況判断できないだろう?」


シラーとした表情で子息が入り口から寄りかかりを解いた。

そしてゆったりとした調子で、通りの方へ向かう公爵子息達。

俺は恐る恐る入り口に近づき、入口から顔を出す。

誰一人いない表の通りの光景と、全ての店が閉まっている光景。

時折遠くから聞こえる。警笛の音・怒声・叫び声………


”一体何が起こっている?”


見た目は平穏で、聞こえてくる音は不穏………

だが何故かヤバいという直感が働き、外に出る事にした。

俺は巣穴から出て来るウサギの様に、辺りをもう一度見渡して、恐る恐る入り口から外へ出る。

足を一歩一歩慎重に踏み出して………

そんな俺の様子を笑うスラム街の男達は、躊躇いもなく外へ出て行った。

不穏な音は未だときおり聞こえて来るのに、何故だ?


「「オオーーーーー!!スゲーーーー!!!」」


港のある方を眺めて、歓声を上げている。

その横にいる公爵子息達も、何かを見てニヤニヤと笑っている。


”一体何を見て騒いでいるんだ。一体何が起こっている?”


俺は急ぎ駆け出し、その場所へ向かった。

そして目に見えた光景は………


沖を取り囲むどす黒く蠢く巨大な壁。

時折生物の様に表面が脈打つ聳え立つ壁。

度肝を抜かれた俺は、立ち竦み余りの恐怖に慄いた。


そんな俺の様子を嘲笑うかの様に、後ろから………


ミシッ……………… バキバキ………

 

不気味な音が店の方から聞こえる。

嫌な思いを感じながらも、俺はおそるおそる後ろを振り向いた。


想像を絶する光景に… 吐き気がする……


グワァアアアアア!! バッグンー!! ゴキュン!!…


ヌラヌラとした巨大な化け物に食べられ……


「「「た、助けて……」」」バギバギュ………


中にいた者達も一緒に……… 押しつぶされて……


店諸共 ……! 「ギャ……」 噛み砕かれ……


店などなかったかのように、消えた……… 


後に残るのは、黒く蠢く不気味な穴…! 噓だろ?………


「アラ~~…… 食べられちゃった。」


「「ホントですね。綺麗に無くなりましたね~。」」


後ろの方でどういう訳か、美麗な男性とスラム街の男達の気の抜ける声。

そして暢気な言葉に戦慄する……… な、何故だ……

スーーと神経が凝結したような気味の悪さ。

スラムの男達は、そんな俺を挟む様に両肩に手を置き、声をかける。置かれる手に恐ろしさ。

ガチガチと歯を鳴らし、スラム街の男達を見上げた。


「ヒィッ!?……な!…」


冷や汗がダラダラと流れ出し、足はガタガタガタ……と震え出す。

そんな俺を不思議そうに見るスラム街の男達。


「どうしたんだ。店主?」


「そんなに怯えて、どうしたんだ?」


嘲り交じりなセリフを吐いて、俺をニヤニヤ見て笑う。


「お前がこの店の店主か?」


公爵子息が、面倒くさそうに俺に訊ねる。

俺は一体これからどうなるのか…

美麗な男は静かに見ている。

微動だにしない表情が、余計に恐怖を助長させる。


「店主~♪返事は?」


「そうそう返事は?」


そんな中で、スラム街の男達の異常な暢気な声………


バキバキ…… バキ… ガラガラ、、ドシャ………


「そ、そうです。私が…… この店の………… 」


身体を震わせ、俯いた状態で呟くように返事を返した。

足元からときおり、絶叫の悲鳴が聞こえてくる。

店のあった場所には、どす黒い生物が何匹もうねり蠢いて


”聞きたくない、聞きたくない、聞きたくない”


「そうか。ところで何故こういう事になったのか。言わなくてもわかるよな?」


何処までも静かに俺を見ている。

何故だ?何故わかったんだ?俺は上手くやっていた。

絶対バレるようなやり方はしていないはずだ。


「あのさ、この領に教会あった?ないのに神官が異様に出入りしたらおかしいでしょ?」


美麗な男が嘲り交じりに言う言葉に唖然とする。

この領には教会がない?!そんなまさか!!


「なのに神官がウロウロしてたら、領民達も不審に思うよ。」


「とにかく一緒に来て貰おうか?行くぞ…… 」


俺はスラムの者達からズルズルと引きずられる。

蠢くどす黒い処に………


「い、イヤだ……… や、うぁ……やめてくれ…… 何でもする!お願いだ!!」


「ヤダな~♪何言ってるの。」


「ほらほら、大丈夫ですから♪」


目の前に拡がる悍ましい光景…… 本能的な恐怖が全身を支配する。


「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ……… 」


恐怖と戦慄で歯がガチガチと鳴り、全身の震えが止まらない。





グチュグチャグリュ……… 目の前の光景が近づいて来る。

見たくない光景を目を瞑り遮断する。

出来る事なら耳も塞ぎたい!!


「やめてくれ。…お願いだ…… 許してくれ……」


絶望に染まる感情のままに、呟き続ける慈悲の願い。

涙を流し喘ぐ言葉は掠れても、思いを必死に懇願する。


背中に感じるそえられる手……… 死の恐怖が絶頂を越える!


「や、やめてくれー--!!」


目を開け周りを見回し助けを乞う。涙を流しながら叫ぶ。


「「バイバ~イ♪ またね。」」


だが無情にも


……ドン!!


血を吐くような絶叫を上げ、蠢くどす黒い穴へ堕とされた。






読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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