実は準備の時間が一番楽しい。
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
今回複数の視点が入ります。
読みづらいかとは思いますが、ご了承ください(/ω\)
【 次郎視点 】
オスバルドは死んでいた。
そしてロバートも死んでいる様だ。
「最悪だね… 」
「フッ……… 」
マリリンは、静かに目を閉じた。
マリアナは俯いて、身体を抱きしめる。
震える身体を鎮める様に………
「幕……… 」
「フッ…フフッ……ッ… 」
マリアナは、とても苦しそうだ。
「次郎……… 部屋の様子を、変な風に伝えるんじゃないよ。」
マリリンにジロリと睨まれた。
「真実を伝えた。」
「ええ、間違いなく真実だわ。次郎は正直者ね!」
さっきまで笑いを堪えていたマリアナ。
腹の震えを抑えて、大笑いを我慢できたようだ。
淑女とは大変だ。僕は無理。
さて困った事になった。
オスバルドとロバートが復活しない。
「オスバルドはほぼ昇天している。ロバートも同じさ。」
「現実逃避のその先に、別の世界はなかったはず……… 」
「何意味の分からない事、言ってんのさ。」
マリリン、最近僕に厳しいと思う。
そんな僕たちを楽し気に見ている、マリアナ。
「でも時間余りないんでしょ。私でいいなら聞くわよ。今オスバルド達は建国関連で、更にバタついてるのよね。」
ヤレヤレという風に首を振る。
フム……… 確かにオスバルド達は大変。
「準備が出来次第、警告音が鳴り響く。まずアリセア領は5日間領から出られない。門は閉じる。」
「な、何だって?!」
アッ、復活した。
「おはよう、オスバルドにロバート。」
僕はちゃんとあいさつをする。僕はエライ。
ロバートはほほ笑んで、挨拶してくれたが………
「……… それより閉めるとは、どういう意味だ。」
シラ~~とした目で見るオスバルドは、挨拶を無視した。
そんなに現実逃避の邪魔が許せない?
「僕たちは考えた。王都の状況は最悪。離脱やむなし。」
僕がそう言うと、苦し気で哀しそうな表情のオスバルド。
「オスバルド、クリスは次期当主。今は未来の分岐点、選ぶのはクリスだ。クリスの概念は家族愛から由来する。領地・公爵家。守るべきモノ。それは僕たちも同じ。」
オスバルドは優しすぎる。
もちろん厳しさも鋭さも持ち合わせているが、同じくこちらも概念は家族愛。
つい考えてしまうのだろう。
「オスバルド、私は死にたくないわ。貴方はどうしたいの?」
マリアナは率直なセリフを言って尋ねた。
前々世と同じ事になりたいのかという様に………
オスバルドは静かに首を振り………
「私も死にたくはない。全てクリスに任せよう。」
と呟いた。そして………
「だがな!その後の処理も、もちろん全てお任せだぞ。それはしっかりと伝えてくれ!!」
机の上の書類を指差しながら、しっかり念押しするオスバルド。
「面倒くさい……… 」
僕はそこら辺は得意じゃない。
地下でのんびりと疲れを癒すんだ。話すのは疲れる。
「ク・リ・スに、しっかりと伝えてくれ。今回の件もしっかりと、自分達で最後までキッチリ処理する事。いいね!!」
「………も?」
僕が不思議そうに頭を傾げていると、
「未来の分岐点……… これからも度々起こるだろう。選んで行動するのは任せよう。ただしちゃんと話してくれ。後はお片付けだ。ヨロシクな!」
フム……… 散らかしっぱなしはダメという事らしい。
確かにご主人様も「料理の作業はお片付けまで」と言っていた。
「わかった。ちゃんと伝える。」
僕がそう言うと、オスバルドは凄くいい笑顔で言った。
「それなら好き勝手やっていい。私だと、どうしても迷いが生じる。後の事は頼んだぞ。」
「オスバルド、忙しくなりますね。」
マリアナはオスバルドに微笑んでいた。
だがその横では、マリリンが眉を潜めている。
……… ああなるほど、もうそろそろ警告音がなる予定だ。
「もうすぐ警告音が鳴る。」
僕がそう告げた後………
警告音が領内に響き渡りだした。
「始まったね……… 」
「うん……… 」
他の皆も今頃、開始の音で動いている。
だから僕も言う。
作戦コードネーム『損して得取れ』開始!!
****************
【 五郎視点 】
さてさて♪魔宴の準備を急いでしよう♪
何てったって、僕が打ち上げ花火の職人だから♪
ドドンっと派手に決めるんだよな。
思わず顔がニヤニヤするな!楽しいな♪楽しみだな♪
「アレ、五郎どうした?兄弟たちに会いに行ったんだろう?」
領内の巡回をしている兵士達が、僕に声をかけた。
”この人たちは砦の人達だったな!”
僕って運がいいよね♪
「おつかれ。もう会ってきて、今から砦に向かう所だったんだ。」
僕がニコニコして言うと、砦の兵士も笑顔になって、
「何だ?ミミズ達の用事なのか?」
確認の為、ミミズというネームを言う兵士。
だから僕が頷くと、笑顔から顔を引き締めた。
「わかった。一緒に行こう。忙しくなりそうだな。」
兵士達はそう言うけれど………
「確かに始めはメチャクチャ忙しくなるけれど、後はいつも以上にヒマになると思うよ。」
僕がそう言うと、「えっ?!」という風な顔で愕然としている。
「皆で一緒に聞こうね!」
今から魔宴の下準備♪愉しいな~~~♪
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【 四郎視点 】
僕も早々お仕事しなくちゃなんだけど………
目の前にはケルピーの大河がいる。
水系の魔物らしく、ジメジメしている。
「どうせ僕は役立たずだよ。水の御社で子供と遊ぶのが仕事なんだ。」
皆がお仕事しているのに僕だけ………
「海流はなんて言ってるの?」
「水辺とアスレチックで遊ぶ子らの安全を守る。でも僕にも特別な仕事が欲しい。」
全く忙しいのに、水系はいじけると大変なんだよ。
ホントしつこくて面倒くさいんだ。
「大河には大河の良さがあるじゃないか!皆を応援するのが大河の仕事だよ。」
確か大河にはそんな力があったはず。
「ホントに………?どんな?」
だから僕は言ってあげるよ。
「応援する事。よろしく。」
皆に成功の祝福を送ってね。
ウンショ♪ウンショ♪
皆に比べて僕は広範囲なんだもの。
ホント時間との勝負、大河も引き込み手伝って貰ってる。
”さて僕は交渉ね。ココを抑えれば大丈夫♪”
ウンショ♪ウンショ♪
アセリア領の外を警護する魔物達を束ねる魔物の住処。
凄いよね。種族を越えたボスって♪
”ごめんくださ~い♪”
僕は元気よく挨拶をする。
「ワームよ。目の前にいるのに、その挨拶はおかしい。」
鋭い眼差しの中に優しさがある。
だから僕も彼の事は好きなんだ。
”これお土産。皆で食べてね♪”
僕はたくさんの魔石とポップコーンを贈る。
ポップコーンは何と、マリアナとマリリンの合作だったりする。
マリリンは火の属性だもんね。上手にできてる♪
それに不思議そうに見ている姿が面白い。
「何だこれは?初めて見る。」
「それね。コーンね。マリリンも手伝って、料理したモノ。」
すると彼は、不審げな眼差しをポップコーンに向ける。
「サラマンダーだよな。大丈夫なのか?食べたら、腹の中で破裂とかしないか?」
「それ料理中に破裂したから、もうしないよ。」
グリフィンは確認の為、他の魔物に食べさせた。ヒドイよね。
皆で奪い合う様に和気あいあいと食べる。
魔物同士がこんな光景、ココでは珍しくない。
ホントならおかしいんだよ。でもここには美味しいがある。
美味しいは世界を繋げる。美味しいは世界に笑顔をもたらす。
「ホントに旨いなぁ…… この領の食べ物は。だからこそお主の主人をしっかり守れよ。我らはこの領を守ろう。全世界に拡まる事が、ここにいる魔物の願いだ。」
実はすっごい大昔に、美味しいはたくさん存在していたんだって。
ココにいる魔物達は皆、かなりのご高齢者。(といってもあと300年はOK)
だからこそ、種族違いでも仲が良いんだ。
「ところで何か用があったのか?」
「うん♪ちょっと王都が不穏なんだって。だからここで一発ぶち嚙まそうかと作戦を立てたんだ。」
「ほお~…… 面白そうだな。聞かせて貰おう。王都の者らの素行の悪さは、魔物でも目に余る。」
獰猛な目を向けて、鼻を鳴らした。
****************
--- 砦にて ----
「では作戦の内容を話す。まずアセリア領は5日間、検問を閉じる。橋の前に立札を立て通達する。兵士らがする事は、説明と指示に従う者達の保護。保護する場所はある目印を使う予定。その目印は後で持って来る。ここまでの質問は?」
誰もいない。それじゃあ次♪
「まず警告音を鳴らす。四半刻後、領内を巡回し対応。襲って来る者、反抗する者は捕縛。殺害も許可された。領内は騎士が対応。砦と領外の対応は兵士だ。そしてここが重要だが、領外の戦闘関係は魔物らが対応する。兵士はあくまで従う者達の保護だ。兵士が保護している。それが魔物達にとって目印になる。質問は?」
数名いるなぁ…… とりあえず聞こうか。
「原因と理由が知りたいのですが?今回の作戦に至った経緯というか……… 」
ああ、ほとんどがその質問だったんだ。
確かに突然どうした?になるよな。
「まず、王都から離脱する。煩い!王都が最近怪しい動きをしている。わが領で麻薬を作成している。これに関しては、教会も加担している。とにかくわが領が欲しいそうだ。だが最大の理由は、この国が危ないからだ。巻き込まれたくないもんな?」
うんうん、いい表情だね♪
皆凄く嬉しそう、そんなにこの国から離れたかったんだ。
確かにうんざりしちゃうよね。もうそれも無くなるからね。
「五郎♪持って来た~!!」
「応援に僕も来たよ♪」
四郎の手に縄。大河が押してる一輪君にも大量の縄。
魔物達のマーキングが、タップリ沁み込んでいる。
「それはなんですか?」
一人の兵士は、不思議そうに眺め質問をする。
「コレを使って簡易的休憩所を作るんだ。無数の魔物達がやってくる。このロープの内側にいれば、身内扱いになるんだ。四郎そうだろう!」
「そうだよ。魔物達は言ってたよ。美味しいが全世界に拡がる様、この領を守るって。だから皆も頑張ろうね。美味しいは世界を救う。美味しいは正義だ!!」
「皆気合を入れて、がんばって行くぞォー--!!」
四郎が発破をかけ、大河が檄をとばす。
確か成功する祝福と体力増進があるよな♪
騎士や兵士らを見ると、大河の力が働いている。
一人一人に力強い挑戦者の様な挑む眼差しがあった。
こりゃ、成功間違いなしだな♪
それじゃあ盛大に花火をブチ噛まそう♪
美味しいを拡げる盛大なファンファーレを響かせよう♪
全世界に向けて!
こうして強大なワームの壁が出来上がった。
船の上で待機していた他国もその壁を目撃する。
その衝撃は全世界を駆け巡り、アセリア領の脅威と存在を印象付けた。
ただし合言葉が「美味しいは正義」だったので、好印象で受け入れられる。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




