早めの対応
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
【 クリスティオ視点 】
”さてと今日は3日目だな。早ければ今日か……… ”
屋敷の庭で素振りをしながら、今日の予定を立てる。
昨夜は三郎と、夜通し遊び話し合った。
おかげで、いろいろと急がなければならない。
”父上もどこか暢気な所があるから…… ”
ぶんぶんと木剣を振っていると、
「おはようございま~す。早起きですね。お散歩しませんか?」
ケルピーの泉が、本来の姿で誘いにやって来る。
「おはよう、泉。珍しく一匹?」
汗を拭い振り回して、周辺をキョロキョロする。
「いつも一緒だと息が詰まります。大河は水の御社で、子供達とアスレチックで遊んでます。」
「アスレチックは、大河には小さいだろう?」
「アスレチックに合わせて、身体小さくしてますよ。」
「そんな事できるんだ?」
「そうですよ~♪」
ブルルン♪ブルルン♪と、首を上下に動かして楽し気だ。
「そう言えば、昨日三郎さんから頼まれた件は了解しました。頑張ります♪」
「面倒な事させてごめんね。」
「全然大丈夫です♪謝るなら散歩に付き合って下さい♪」
首を傾げて覗き込み、顔を擦り付けた。
「喜んでお供しましょう。」
ちょっとおどけて、マナーに則った仕草で返事を返した。
すると泉も人化して、素晴らしいカーテシーを披露する。
「誰に教わったんだ?」
何故知っているのか不思議だ。
「それは乙女の秘密で~す♪」
シ〜〜と指を立て、ナイショという仕草をする泉。
魔物はホントに、謎多き生き物である。
まだ朝霧が立ち込める森を抜け、小高い丘へ向かう。
屋敷からは多少遠くなるが、ケルピーの足ならすぐに着く。
「今日は霧が目隠ししているね。それはそれで幻想的だけど…… 」
「朝が早いので、霧で見え難いですね。」
薄っすらと見える田園の景色。
チラホラと朝早くから、働く領民の姿が見える。
「朝早くから頑張っていますね。お疲れ様で~す!!」
大きな声を出して声援を贈る、泉。
せっかくだから俺も言おうかな。
「朝早くから、ありがとう~~~~!!」
澄んだ朝の空気の中、大声を出すのは気持ちがいい♪
「フフフなんだか楽しいですね♪」
「そうだな(笑)」
今日はとってもいい一日になりそうだ。
*************
なんて、思っていたんだけどな………
そう簡単に問屋が卸さない。
王都の方で、かなりきな臭い状態に成りそうだと、連絡が三郎に入る。
「どうしようかな?先に向かった方かいい?」
「チビ達で対処出来ない事なのか?」
「ウ~~ン、どうだろう?」
王太后がお住まいの別邸で、麻薬入りの香辛料が混入していた。
理由は教会経由のメイドの仕業だったらしい。
屋敷の者に麻薬入りの件が知られない様、チビ達が食べて証拠はない。
「もう、マズイマズイって泣き声が聞こえてさぁ。可哀そうに、チビ達子供だよ。」
チビ達に同情する三郎……
それを王都の民は、高い金を出して買っている。
「とにかく♪王太后は狙われている。理由は笑えるけど、仕事が出来ない事を隠したいから!今王妃の執務室は書類で溢れているよ♪王妃は体調不良で療養中。教会の療養施設に逃げているって訳♪」
「フ~ン、教会ね。」
「あの王妃、書類を見ると破りたくなるんだって!」
「破りたくなる……… 」
「その書類を書くのに、どれだけ人が関わるか解らないって凄いね!」
「なんでそれを理解するんだ三郎?魔物なのに……」
「魔物はピンからキリまでいるからね。高位の知能の高さは、長生きだからこそだよ。進化するごとに、付随する知識も知能も更新される♪」
「………なんかズルくない?」
俺達人間は、生まれた時から同じだぞ。進化の更新なんてない。
「神の恩恵があるでしょ。まあ頑張れ人間!」
何かいろいろ思うと、やるせないよ。
「それから泉からアノ事聞いた?」
三郎が確認の為尋ねた。
今朝、泉に誘われたのは、その件を伝えるためだ。
なんかホント救われないね。
確かにコレは俺だけ案件だった。
「いろいろ大変だなぁ……… 」
俺が苦味潰した顔で言えば、三郎は俺の顔を覗き込む。
「やっぱりクリスも優しいね。家族だね♪」
「からかっているのか?」
俺がブスくれた顔で言うと、クルクルと踊った後、
「僕たちはクリス好きだよ♪」
突然の告白めいた言葉を言われ、思わず顔が赤くなった。
「バカみたいな踊りした後、言われても微妙だぞ!」
赤らめた顔を誤魔化して文句を言う。
「ええええええ…… 羞恥心に耐えて言ったのに~……」
わざとらしく両手で顔を隠し、イヤイヤするように顔を横に振る三郎。
チラチラと指の隙間から、俺の様子を見ている。
”そんな仕草も、いったい何処で覚えてきたんだ?”
ホント魔物は謎多き生き物だ。
三郎のそんな滑稽な姿に呆れて笑う。
そんな俺を見て、三郎もニヤリと笑った。
*************
”そんな感じで、三郎と遊んでいたんだけど………”
目の前のライオネスを見ると、ため息をつきそうになる。
めちゃくちゃ顔色は悪いし、頬もこけている。
「ライオネス殿、ちゃんと休まれていますか?」
なんかいろいろと追い込まれてない?
俺達まだそこまで、何もしてないよ。
「申し訳ございません。いろいろと考え過ぎて眠れず、気がつけば朝になっていました。」
ダメだこりゃ……… もう仕方ないね。
自分自身で追い込んで、体調不良になるとは………
「とにかくしっかりしてください。これからもっと大変になるのですよ。」
「申し訳ございません。」
頭を下げるライオネス。
そんなライオネスの姿を、心配しながら見ている父上。
しかしまだ何もしていないのに、変に王都組から勘繰られないか?
ヤレヤレと思い、今度はため息をついた。
「それじゃあ、俺が話を進めて行くよ。伝える事は何件かある。まず教会!」
とにかくサッサと、話を進めて終わらせよう。
時間との勝負だ。もういい加減フィルのご飯を食べたい。
「麻薬入りの店に、神官の出入りを確認しているよね。ライオネス達はその件で何かある?」
「はい、殿下も可能性を考え調査されました。そこで判明した事は、麻薬はジクテリア。王都の教会のみ花を栽培しています。鑑定で場所も我が国産と出ました。また神官たちは巡礼を装って持ち込み、王都スラムの者達が運んでいます。」
なかなかやるじゃん、俺は思わずニヤリとした。
その情報はある意味、とても都合がいいモノだった。
「追加情報だ。その教会で王妃は病気療養中でいるよ。三郎が言うには、仕事拒否という病気らしい。おかげで執務室は、書類で溢れかえっているそうだ。」
その話を聞いたライオネスの目が鋭くなった。
ついでに俺の父上は、なんだそりゃと呆れ顔。
「なんでも書類を見ると、破りたくなる症候群という病気の合併症らしい。」
「それはとても大変な、ご病気に侵されていますね。」
ロバートが馬鹿にした様に言いながら、ライオネスの前にシナモン入りのミルクティーと、ケークサレを置いた。
「どうぞお食べ下さい。飲み物にはミルクが多めに入っています。食べねば戦えませんよ。」
ロバートがほほ笑んで、食べる様に促す。
ライオネスは頭を下げ、少しずつ味わう様に食べ始めた。
”このタイミングで王太后の話は出来ないな。”
喉に詰まるか、食べれなくなるかのどちらかだ。
「しかし便利な病気だな。私も重症だ。今すぐ療養するべきだな!」
父上は羨ましそうに、今度言い訳に使おうと言う。
「しかし王妃のお立場は、無理ですね。別の方に代わるべきです。」
「だよね~。体面も体裁も必要だけど、出来ない人にやらせるとか、本末転倒じゃない?」
父上とライオネスは、お互いに目を見合わせため息をついた。
ホント二人とも、あの女が苦手なのだろう。
得体が知れなくて不気味だし、ストレスが溜まりそうだよ。
「ライオネス、食べ終わったね。次の情報は、王太后お住まいの別邸に、麻薬入りの香辛料を持ち込まれた事かな。幸いそちらは処理済みだよ。つまり!いよいよ王妃は焦れて来たようだね?」
父上は顔を強張らせ、ライオネスは真っ青、相変わらずロバートはすまし顔。
時間がないから、次々と行かせて貰おう。
「だからもうのんびり出来ないと思ってね。泉に教国のお偉いさんを連れて来るよう、お願いしたよ。すでに出発し、2~3日後に到着予定だから、歓迎パーティーよろしくお願いします。」
「お前そんな大事な事、一人で決めるなよ!!」
ライオネスは驚いて、目を大きくしたまま茫然としている。
父上は突然の仕事に愕然、ロバートも眉間にシワを寄せる。
「枢機卿が多分お見えになるはず、神託されているからね。教会関係は、これで解決するはずだよ♪」
「懸案が片付く事はいいのですが、大変ですね。」
「いろいろと王都の方で、きな臭い事になっているんだ。だからもう王都とは分かれる。これ決定事項!神託もある事だし、その方がいいと思う。そこでライオネス、俺と賭けをしないか?」
蒼褪めた状態のライオネスに、、俺は提案した。
この件に関しては、父上より息子の俺が優先される。
悪い夢を見ている様な気分だろう。
だけど王都に着けば、その意味がよく解かるだろう。
父上は俺をジッと見つめているが何も言わない。
いろいろ思う事は在れど、俺が動いた理由も解るはずだ。
「賭けの対象はまた後日に言うよ。だからライオネス、それまでじっくりと休め。殿下が目覚めた様だ。」
サラマンダーが顔を、窓から覗かせている。
そして殿下の状態を伝える。
「ボ~… と窓の外を眺めて、時折泣いているよ。」
ライオネスは頭を下げ、足早に退室して行った。
「目覚めるのが少し早くない?大丈夫なの?」
「……… こればっかりは本人次第だからね。」
「そっか……… 不憫な奴。」
「不器用なんだろう。」
俺とサラマンダーが話していると、父上は不思議そうに首をかしげ、ロバートは静かに目を伏せていた。
****************
ガチャガチャ………
俺は魔道具を作っている。
フィルから聞いた異世界の物を、いろいろと試し作っている最中だ。
最近俺の趣味は魔道具作成。今までもいくつか作成し皆を喜ばせている。
「どう?なんとかなりそう?」
さっきからフィルの作ったおにぎりを、旨そうに頬張る三郎。
「やったー!ツナマヨだ!!」
大河も同じ部屋にいて、嬉しそうにおにぎりを頬張る。
「ウ~~~ン……… 」
唸り声をあげる風魔。
彼がフィルの処から、差し入れのおにぎりを持って来た。
そして今は、魔道具の作成を手伝っている。
片手におにぎりを持ち、魔法陣を観察・発動・やり直しと繰り返しながら、ムシャムシャ食べている。
意外と職人気質なのだろう。
出来上がったモノが気に入らず、やり直しを何度も何度も繰り返している。
「卵が卵じゃなくなっている。これは香りが飛んでいる。これはカビが生えそうだ……」
頭を抱え捻りながら、何故か幼児体型の風魔。
「フフフ♪」
そんな風魔を楽しそうに見ながら、母上も食べている。
手づかみで頬張る姿は、淑女としてどうかと思うが、コレがこの食べ物のマナーと楽しんでいる。
「幼児姿の風魔が、おにぎり持っている姿が可愛いわ。」
「そうだな。眉間のシワさえ、可愛く見えるな。」
両親は微笑ましそうに、普段ガタイの良い風魔を幸せそうに見ている。
「魔法がないのに、どうやって作るのかな。異世界に研修に行きたいよ。」
「ウム…… 俺も大変だ。微調整が難しい……… 」
二人でブツブツと試行錯誤を繰り返す、まだまだ先は長そうだ。
「風魔様その微調整は、料理の味を変えればいいのでは?」
ロバートが何気に言った言葉に、俺と風魔が振り返る。
「魔法がないのなら味を変えて、調整した方が楽なのでは?魔道具をまた始めから作るのは、大変ではないのでしょうか?」
確かにロバートの言う通りだ。風魔は愕然としている。
「料理長を呼ぼう。」
母上は風魔の頭を撫で、ヨシヨシと慰めている。
そんな母上を愛おしそうに見つめながら、父上は言った。
こうしてこの世界初となる。
家庭用インスタント生産機が完成した。
更に風魔は、真空魔法も創った。
とにかく風魔はがんばった。
美味しいを拡げる為に………
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




