ゴミ屋敷
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
たくさんの方に読んで頂き、創作の意欲の励みになります。
ホントにありがとうございます。
前作 おばあちゃん空腹の腹を抱える。
1位の張り手で気合が入りました。
頑張って行きたいと思います。
合わせて誤字脱字報告ありがとうございます。
見落とし多くて申し訳ございません。
とても助かります。
【 クリスティオ視点 】
部屋からフラフラと、退室して行く人物の背を見送る。
「どうだ?」
「どうとは?」
父上が唐突に聞いて来た。
突然話を振られても、何の事か判らない。
「ライオネスの事だ。」
「ア~…… ねぇ…… 」
「なんだそりゃ?どういう意味だ?」
胡乱気な視線を向けるが、感想と言えばそれだけだ。
何と言うか、三郎が言っていた意味がよく解る。
「フフッ…… いろいろと考えていらっしゃるんですよ。」
ロバートは微笑み、コーヒーをテーブルに置いた。
鼻をくすぐる香りに、自然と心が軽くなる。
”なかなか思う様に進まないな“
ため息をつきそうになる。
そしてライオネスという人物の事を考えた。
****************
ライオネスの話す王宮は混迷を極めていた。
ドン詰まりだ、どこもかしこも………
”きれいさっぱり燃やした方が、早く片付かないか?”
くそ面倒と思って、顔が引き攣る。
父上とロバートなんて、途方に暮れた目をしている。
そうなる理由も判っている。
ホント貴族って階級社会は面倒くさいよ。
皆が皆雁字搦めで、身動きが取れなくなっている。
”ある意味、亡国は在りだよ。”
スッキリ、キッチリ片付けたい。
普段掃除をしない俺がそう思うんだ。
ロバートなんかイライラするんじゃないか?
チラッと見てみると涼し気な顔をしながら、青筋が立っていた。
「こちらの情報から話そうよ。それを踏まえて王都の話でいい?もう迷走中で終わりが見えないし、時間もない!ハイ決定!!」
俺が勝手にそう結論づけて、父上を見ると椅子に深く座り直していた。
ガチャッ!バタン!!
……… ドスン!
勝手に俺の隣の椅子に座る次郎。
「何か飲まれますか、次郎様?」
いつもの事なんだろう。
ロバートは微笑みながら次郎に言った。
「うん……… 」
たったそれだけの返事を返し、ロバートは飲み物を用意する。
父上もロバートに追加をお願いする程度で、そのままである。
ただ一人蒼褪めた顔で、身体を強張らせている。
”どうやら接触したようだ。”
次郎はジッとライオネスを見つめていた。
「どうぞ次郎様。今日はロシアンティーにしてみました。」
「うん、甘酸っぱいの好き。」
「それはようございました。ジャムはフィル様特製ですよ。」
「………うん♪」
ほんのり笑いゆったりと飲んでいる。
そんな次郎を見て、父上とロバートは和んでいた。
次郎は父上達の癒しなのだろう。
「んじゃ話すね。」
俺がそう言うと、ハッと気がついたように姿勢を正すライオネス。
彼にとっては、次郎は恐怖の対象だろうけどね。
そんな状況を、愉しいと思う俺は性格が悪い。
「見せしめとして、間者や悪さした者は王宮に捨てた。ゴミ溜めにゴミを捨てただけ。」
次郎の一言に身体を震わせる、ライオネス。
「領民をかどわかす様、指示したのは王宮の者。本人に確認はした。間者も悪質なら始末した。」
「つまり悪質じゃないなら、始末していないという事ですか?」
ライオネスは蒼い顔をしながら言った。
「そう、代わりに有用な情報をこちらに流してくれる。とっても便利。」
青から白に変わったな。
ロバートが温かいお茶を準備している。
「ついでに領内は俺達ワーム。領の外は従魔じゃない魔物達だ。」
「うん?どういう事だ??」
話を次郎に任せて、書類を捌いていた父上が、顔を上げ質問する。
どうやら父上は知らなかった様だ。
「この領の食べ物は美味しい。美味しいは皆を魅了する。それは魔物とて例外ではない。美味しいは正義だ。」
素晴らしく心理的言葉だ。
ライオネスも心当たりがあるのだろう。
実際とても悔しそうに、顔を歪めている。
「アリセア領関係者と、契約したい魔物で溢れている。領周辺はそんな魔物達でいっぱいだ。そんな周辺で人を襲えば、これ幸いと襲いに行く。無差別だから、これ親切な助言。」
「アリセア領の者か判断できないから、とりあえず助ける。違っても食べ物を貰えて、ラッキー的なものだろうね。魔物の方がしっかり相互利益を理解してる。ハハ… 」
「「「………………」」」
コレが笑わずしてどうするのさ。
こんな面白い事、早々お眼にかかれないと思うよ。
「魔物も美味しいは魅了される。だから今ワームらで美味しいを全世界に拡める。ご主人様の夢だから……… 」
「ちなみに諸外国もだよ。肥料を輸出して欲しいという話があるんだ。美味しいは全世界に拡がるよ。俺達もフィルの願いは叶えたいからね。王都を中心とした所は、その流れから取り残されているのさ。」
何にも言えませんって感じかな?
話をしながらも、俺はライオネスを観察する。
今の気持ちは、さながらブリザード状態って所だろうか。
「魔物もその流れに、しっかりと乗っている。美味しいを食べたいと畑を耕す魔物もいる。」
………嘘だろ?!
さすがに俺達も、その話には驚いた。
そして ………ライオネスは気を失う。
魔物にも後れを取った事実に、心を抉られたようだ。
*************
”あれには確かに、同情したな。笑えたけど……”
思わず思い出して、笑いが口から漏れる。
しかしライオネスかぁ………
「考え込んでいますね。クリスティオ様」
「まぁね。三郎の視点で、ライオネスの話を聞いたからね。」
「確かに独自な視点でしょうね。とても興味深いです。」
「そっか…… ロバートも次郎と話すね。」
「そうです。とても面白く新鮮な気持ちになりますよ。」
「新たな視点だから若返るんじゃない。」
「私はいつも若者のつもりですが?」
ニヤリと笑うロバート、まだまだ現役続行だ。
「全くお前達は暢気でいいな。」
不機嫌な様子でたくさんの書類を、バッサバッサと処理をする。
だが書類は片付けても片付けても、減る事はなく増える一方だ。
「クソッ!陳述書ばかりだ。どれもこれも王都関連の被害、最後には建国してくれだ!いっそフィルが言うアンケートという手法で、王都から被害受けましたか?建国する?しない?の文面作成でもするか?」
「それはいい考えですね!さっそく致しましょう。」
「いいアイデアだよ!さすが父上。」
「なぜか褒められた様に感じない。」
父上は訝しげにしながら、次々と書類を片付ける。
「しかし王宮大変だね。人員は沢山いるのに、後手に回る。ホント王宮は優秀な人にとっての墓場だね。」
今の王宮はゴミ屋敷だ。
役に立たない貴族を捨てきれず、いらない貴族が溜まっていく。
そんな貴族が放つ腐臭が、次第に優秀な者達も腐らせていく。
ホント王宮は、強欲で自己中な者達の住処だ。
それにしても今の王宮は、国の置かれている状態を正しく認識していない。
何処かで情報規制ならぬ妨害の横行で、上に正しく情報が回っていないのだろう。
国として全く追いついておらず、危険極まりない状態だ。
「父上、さっさと建国した方が良くない?巻き込まれない様にさ。」
「……… それもそうなんだが……」
「旦那様はなんだかんだと陛下を弟の様に、可愛がっておられましたから。」
ロバートは苦笑交じりにそんな事言うけれど………
その気持ちが仇となり、前々世死んだそうじゃないか。
そしてフィルもその犠牲になっている。
「父上、同じ様な轍を踏まないでよ! 」
俺が目を見据えて父上に警告すると、「もちろんだ」という様にしっかりとした目で頷いた。
”……… いくつか片付けた方がいいかな?”
こっそりと策略を巡らす。
父上は優し過ぎるし、母上はそんな父上に甘い。
だから俺が用心しなきゃならない。
「そろそろ俺は部屋に帰るよ。」
俺は立ち上がり部屋を出て行く。
そんな俺の背中に、「手伝えよ!!」と喚く父の声と、宥めるロバートの声が聞こえた。
我がアリセア領は、ホントに楽しくて賑やかで、そして穏やかだ。
皆とても幸せに満ちて、笑い声が絶えない。
だからこそどんな汚い手を使っても、守り通してみせる。
この幸せを壊されない様に………
「ハァ~イ♪」
俺がいろいろ深く考えていると、突然ミミズの三郎が声をかける。
思わずの警戒体勢をとってしまった。
「ビックリした。いつ来たんだ?」
心臓がとんでもなくドキドキしている。
そんな俺の気持ちを考えないで、いつもの様に暢気に話す。
「たった今だよ♪ホント美味しいよね。領にいるうちに、いろんなご飯を食べてるんだ♪」
とっても朗らかに、楽し気に会話する三郎。
だがその見た目は美麗な男性で、話し方との違和感が凄い。
「何か俺に用事?」
「フフッ♪内緒の話をしようと思うんだ。」
「そっか、実は俺もなんだ♪」
「さすが僕たち友人だね。そう言うの一子相伝って言うんだよ♪」
「イヤ違う。確か以心伝心だ。お前と俺は結婚できない。」
とんでも間違いを食らわす魔物に、顔を引きつらせる。
コイツ等ワームはどういう訳か、異世界の四字熟語がお気に入りだ。
ちなみに父上は、弱肉強食を焼肉強食と、いまだ言い母を楽しませている。
****************
三郎はのんびりと屋台巡りを楽しんでいる。
領民の子らがお願いすれば身体に乗せて遊ぶ。
水上スキーならぬ、地上スキー?三郎の頭の上に乗った子らの、大喜びの笑い声が楽し気だ。
三郎が人化を解いたのは、皆が避けて通るからだ。
それとワーム姿が楽だし、皆も喜ぶ。
”楽しいな♪楽しいな♪久しぶりの子らとのふれあい。嬉しいな♪嬉しいな♪”
ウネウネしながら踊り歌えば、領民の子らも一緒にウネウネ。
もちろん一緒にいた親達も、子に催促されて、ウネウネダンス。
”一体何を見せられているんだろうね……… ”
アリセア領は今日も平和だ。
王都方面のろくでもない状態がウソの様に、穏やかな日常が流れている。
”クリス~!一緒に踊ろうよ。楽しいよ♪”
「人にはイメージとか個人のこだわりが在るんだ。」
俺がウネウネ踊るとか、想像するだけで恥ずかしい。
頭の上に両腕を突き上げ、ウネウネと身体を動かし踊る自分を想像する。
”バカだ……… ”
俺は頭に浮かんだそのイメージを打ち消した。
三郎はその後も子供達といろんな遊びをし、お礼に領民から貰ったお菓子に喜んで、ユ~ラユ~ラと横に身体を揺らしていた。
”ねぇ、麻薬のお店どうする?あのままにしておくの?”
「イヤ消そうと思っているよ。五郎がチビ偵察を送ってるんだろう?」
”そうだよ。何匹かのチビは出入りした人についてった♪”
「そっか、楽しい旅だといいな。」
”生まれてすぐに旅行って贅沢だよね。”
「いやむしろイヤだろう。外の飯は不味いから」
”そうだった。この領感覚で間違えた。”
「だな。領以外の場所でも美味しいがないと困るな。」
”四郎頑張ってる。クリスも楽しみにしてね。”
「もちろん楽しみにしてるさ♪ところで……… マジで魔物が畑を耕しているの?」
”魔物だって死活問題なんだ。美味しいは正義だからね。”
「確かにそうだな。魔物も頑張ってるんだ。人も頑張れよ………」
”人は欲深いからね~♪”
「困ったもんだよな、ホント……… 」
アセリア領は今日も夜遅くまで、賑わいを見せる。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)




