探せ。せとその調味料
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
今日は家族みんなで領の港に行く。
そこには他国の商人もおり、市が並ぶそうだ。
知らない食材や調味料を見て回りたい。
「しかしまさか馬車に乗る機会があるとはな」
楽しそうにしているのは、フェンリルの風魔。
今回は食材アドバイザーなので人化している。
見た目はワイルドイケメン。歳の頃は30前後といった所か。
髪は白銀に近く軽いウェーブで、瞳は大気の色の蒼だ。
ニヒルな笑顔が似合うイケメンが私に聞く。
「でお嬢は何をお求めで?」
風魔は私の事をお嬢と呼ぶ。
何だかヤクザの娘か何かになった気分になるが。
「大豆で出来た調味料を探しているの。発酵させたものでね、黒くて塩辛い物。知らない?」
風魔もジッと考えて、更に話を促した。
「大豆じゃなくてもいいの。貝や魚で出来ている調味料でもいいのだけど」
「多分それに似た調味料を見た事がある。材料か何かわからないが、塩辛く色も黒目、独特な風味があったと思うが、作られている所は孤島が連なる国だったか。島によって独特な食文化があったと思う」
イメージ的にインドネシアみたいな感じだろうか?
ただそこもご飯文化だから、もしかするとあるかもしれない。
「確かにそんな国があったが、うちの港に来ていただろうか?」
「あまりうちの国と交流なかったよね?」
私も前々世思い出すが記憶にないという事はそうなのだろうか。
だとすると港にないんじゃないか?ショックだ!
「まあ…… いざとなったら俺が連れていってやろう。あっという間に着くからな♪」
頭を撫でながら宥める様に言ってくれる。
ミミズ一家には感謝だな。風魔を連れて来てくれて。
というか、たくさんの仲間が出来て私は毎日楽しい。
いつも賑やかで領の皆もとても生き生きしている。
「その時は俺も連れて行ってくれないかい。独自の文化だから興味があるんだ。なかなか遠くて行けそうにもなくて諦めてたんだ。」
クリス兄が風魔に頼んでいると、凄く楽しそうな顔をして言う。
「なんだ?家族みんなで行けばいいじゃないか?その時は転移という方法がある。俺一人だったら皆は無理だが、ケルピーらが手伝えばあっという間だろう?」
実際今馬車を引いているのはケルピー達だったりする。
出かけると聞き姫巫女の馬車をたかが馬が引くなんてと一歩も引かず、馬に擬態して自分達が引くと言う事になったのだ。
「転移と言えば大がかりなイメージだが?」
オスバルドが疑問顔でいうと、風魔は首を振り否定する。
「大がかりになるのは魔力が足りないからだ。その分を魔素で補うために陣を敷かなきゃならない。だが俺とケルピー達ならその心配はないんだ。往復分余裕で大丈夫だ。」
ヤッパリ転移は莫大な魔力が必要なのだろう。
フェンリルだけじゃなくケルピー達まで必要ってどれくらいなんだ。
「距離によって魔力放出量も変わるが、あの場所はダンジョンも結構ある魔素だまりの巣窟なんだ。だからその分転移に魔力を吸われ易いって事。だからその分魔石の産出量もいい」
魔石か……… 前々世ではホントいろいろと大変だったな。
でも今の話だと、魔素だまりやダンジョンの近くに魔石を産出するって事だよね。
「うちの領にも魔石を産出出来ればいいんだが」
「そうね。フィルが考える物はいろいろと魔石がいるものね」
「イヤその辺は大丈夫だろう。確かに魔素だまりやダンジョンはないが、そこら辺を作る素はたくさんいるのだから。多分地下に沢山あるんじゃないか?お嬢ミミズ殿に聞いてごらん」
一体どういう事だろう?
「あの魔石の素ってもしかして高魔力のある魔物ですか?」
クリス兄が確認のために聞いている。
「まあそうだな。垂れ流しの状態の魔力が固まって魔石になるんだ。地下にはミミズ一家の部下も沢山いるだろう。でもあっちこっちにできない様に調節していたはずだよ。魔石も溜まり過ぎるとあまり良くないから、そろそろ連絡来るんじゃないか?」
どうやらいろいろとしているミミズ一家。
今度お礼に美味しいご飯作ってあげよう。何がいいかな………
そうこうしているうちに港に着き、皆でグルッと見回る事にした。
両親は挨拶をして領の関係者らを労いに行くというので、その間見て回る。
メンバーは私、クリス兄に風魔、そしてハロルド。
遅れてケルピー達が人化して合流するという事だった。
だから、騎士ら全員両親に付く。
さああっちこっちと見回って、食材を探しに行くよ。
ハロルドが私を抱っこしようとすると、風魔が俺がすると言う。
実際ハロルドよりガタイもいいし、力持ちだからよろしくした。
こうやって歩き回っていると、ホントにいろいろな物が所狭しと並んでいる。
気になるモノの値段を聞いて回ると、一般的値段がわかって来る。
野菜系統はだいたい一袋50円前後の取引の様だ。
そして肉関係は100g150円前後。
そう考えると物価が高く感じる。
「ここに置かれている物は、海を渡ってきている物だから高いんだよ。肉なんか冷凍されているからね」
逆に品質管理がいらない布や装飾品関係がお手頃価格になるらしい。
なるほどねー、だから香辛料関係も高いのだろう。
そうなると調味料も高いかもしれない。
直接買い取り検討の余地ありだわ。だってたくさん欲しい。
キョロキョロ見ながら、物色する私。
風魔が気軽に声かける白い髪の双子の兄妹と黒髪の男性。
白髪の双子は歳の頃は20前後で可愛い感じで、ほんわかとしている。
黒髪の男性は涼やかな風貌のイケメンで、風魔よりは若い感じだ。
「姫巫女、キョトンとされてどうされた?」
どうやらケルピー達の人化した姿だったらしい。
「姫巫女様、そろそろ私達にも名前が欲しいです。」
「いつまでもないのは寂しいよ?」
「アレまだつけてなかったの?サラマンダーは?」
私が縮こまって困っていると、ため息をついて直ぐつける様に言われる。
でも名前なんてそんなにすぐ出てくるもんじゃないんだよ。
「今日中につけてくださいね。姫様」
「よろしくね、姫ちゃん」
黒のケルピーが手を出すと、風魔が私を渡す。
「姫巫女私が運びますので、風魔殿は本来護衛なれば」
「そういう事だ。それに俺はアドバイザーだからな」(笑)
「そうそうミミズ一家から種を買ってくるように言われたよ。」
「美味しそうな物を買ってきて欲しいと言われていました」
皆で賑やかに移動しているが、はっきり言ってイケメン率が高い団体だ。
皆から注目の的であるし、クリス兄とハロルドは笑いながら武器屋を覗いている。
そして白い双子もあっちこっちとひやかしている。
なかなか自由人な団体だった。大丈夫なのコレ?!
「しかし狭い道に密集してるから、なかなかに探しづらいな」
「話は間接的に聞いているが、あの国の者がここまで来ているか」
「大きな商会に立ち寄って情報を仕入れて見よう。その方が早いだろう。ハロルドと俺達が聞いて来るから待ち合わせをしよう。」
「それなら僕がそちらに行くよ。妹と以心伝心だから便利だよ。」
「それじゃ兄様よろしくね。」
「こちらは香辛料を探してみよう。所々にあるはずだ」
そう言ってクンクンと鼻を動かしそちらに向かっていく。
なるほど犬の嗅覚は鋭いからね。
「姫様、私どもの鼻もなかなか鋭いんですよ。風魔様ほどじゃないけれど」
「ですが香辛料は香るだけでピリッと来るのがなんとも……… 」
「ああ確かにそれはあるな。だから近くなると鼻栓したくなるよ」
「「ですね」」
えっと付いて来て貰ってよかったのかしら。
私がオロオロとしていると、クスクス笑いながら頭を撫でる。
「ちゃんと対策しているから大丈夫だ。それぐらい違いがあると伝えたかった。」
そう言って歩いていると、私でもわかるくらいの香辛料独特の香りがしてくる。
その香りだけで異国情緒溢れる印象になるから面白い。
「あちらの店より、こちら側の方が品質が良さそうです」
「だな。混ぜ物してあるし、少し怪しくないか?」
「この香りは麻薬系統のような気がするな。クリス達が合流したら伝えた方がいいだろう。」
その時頭にかすめた記憶が蘇る。
香辛料に混ざる麻薬………
確か大きな事件に発展したはずだ。
それでそこに関わった領の貴族が廃爵となり、取り潰しになったのだ。
忙しくてどこの領だったかはっきり思い出せないが、もしかして?!
「あのね。その香辛料を買ってきてくれない。ついでにその店の後ろに誰がいるのか、どんな繋がりか調べたいんだけど」
「へえ……… 何か前々世の記憶に関わる重大な事があるんだな。」
「それならミミズ一家におでまし願おう」
「ですね。三郎様がその辺が得意です」
そう言って何か念話でも飛ばしたのか、目は鋭く笑っていないのに笑顔で応える。
多分後で説明を求められるのだろう。
黒ケルピーが私を風魔に渡し、その怪しい店へ向かって行く。
「それじゃあ俺達は買い物を続けようか」
そう言って、ニヤリと笑いながらおススメの香辛料の店へ向かった。
中に入ると所狭しとたくさんの香辛料が山ッと盛られて売られている。
それ以外には、潰すための鉢なども置かれている。
”うちの屋敷にもあるのかしら。しまったわ”
ないと困る物ではあるかもしれないから買う事にする。
そして香辛料を見ていく。文字が書いてあるけどわからない。
私が眉を下げ困っていると、風魔が読み上げていく。
ホントにアドバイザーだわ。
それをもとに香辛料を選んでいく。
コリアンダー・ターメリック・カルダモン・カイエンペッパー・クミン・マスタード·ナツメグ。
シナモンもあるし、唐辛子と胡椒も買う。
「ニンニクとかしょうがはどこに売ってあるんだろう?」
「それらは薬師が扱っているから、そちらの店に行こう」
そう言ってお店にお金を支払い外に出る。
外には黒ケルピーが待っていた。
三人ともだいぶ離れて、深呼吸を何度かしている。
”まさか息を止めていたって事?!”
三人とも苦笑して返事を控えているというとはそういう事なの?
対策と言っていた時にちゃんと言って貰わないと困る。
今回サッと買ってこれたけど、あっちこっち時になったらどうなっていた事か。
「大丈夫だ。丸一日は無呼吸でも大丈夫。それに壁を作ればどうにでもなる」
「我々も水の中でも大丈夫なので、ただ気分的に深呼吸したくなるのです」
「アレはなんでだろうな?」
「気分の問題ではと思います」
そう言ってのんびりと話す三人に、胸を撫で下ろすのだった。
そしてクリス兄達もそろそろ合流するというので待っていると、両親達が先に合流した。
「アラ、あなた達ここで何をしているの?」
黒ケルピーはスッと消える。
この状況を見られない方がいいと判断したからだ。
私もそう思うけど、どうしたらいい。
するとオスバルドがニッコリと笑って、
「どうだい、この市は楽しかったかい?またここで会うとは驚きだね。あのあたりにある屋台もなかなかのモノだから食べてごらん。」
そう言ってたまたま知り合った者達の体で行動した。
”ん?一体どういう事??”
私は疑問に塗りつぶされながら、そのおススメの屋台が或るエリアへ向かう。
そしてそのエリアに着くと黒ケルピーとクリス兄達が待っていた。
「お疲れ様。なかなか刺激的な事があったようだね。まあその辺の話は後にしてお昼にしよう♪」
クリス兄とハロルドが屋台にいろいろと注文をしていく。
私も近くの屋台をキョロキョロして気になるモノを物色していった。
するとおやきのような物体に遭遇。
”肉まんもどきのおやきだね。”
私がジッと見ていると、店の店主が小さ目な物を私にくれた。
クリス兄がお金を出そうとすると、売り物じゃないからと固辞する。
ならばと何種類かのおやきを買うと、逆に申し訳なかったなと笑う店主。
”この店主いい人だ。大好きだわ!”
私はパアーーッ思わず満面の笑みを浮かべて、アムアムとおやきを食べる。
すると懐かしい味がするではないか!
”こ、これはまさかのお味噌?!”
私はモグモグと味わいながら味を確認していく。
すると確かに味噌っぽいがもろみのような気がしないでもない。
という事は醤油があるという事になるがどうだろう。
確か味噌があるから、醤油が出来たという感じだった。
ゴクンと飲み込みおもむろに尋ねた。
「おじちゃん、この味付けの調味料は何?凄く美味しいの!」
無邪気な様子でニコニコと訊ねる。
私のその様子にクリス兄も買ったおやきを食べ驚いている。
「ああその調味料はミソンというモノを使っているよ。あの赤い屋根のお店の左角2番目を曲がると、ちょっと雰囲気が変わったお店が見えるはずだ。名はヒノクニだったかな。行ってごらん」
店の名が日本を彷彿とさせて、期待が膨らむ。
「ありがとう、おじちゃん。行ってみるね♪」
「ご主人、追加で全種類を各4つ頂けないだろうか?」
「ええぇぇ?!えっと出来ますがお時間を頂いてもいいでしょうか?」
クリス兄はどうやら皆のお土産に選んだ様だ。
店主もいい人だし、是非とも繁盛して貰いたい。
白ケルピーの兄が、のんびりと出来上がりを待つそうだ。
元々お昼寝好きだそうで、横でひと眠りしたいらしい。
店主も笑いながら枕もどきのようなものを渡して、気にかけとくと言っている。
隣で早々に寝てしまった白ケルピー兄。
申し訳ないが、お願いしてお店に向かう事にした。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)