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前々世8 【 ドリアス視点 】

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。




夢を見ていた。

夢の中の私達はとても楽し気に、どこかの花畑で駆け回り無邪気に戯れ笑い合っている。

どこか冷静に見ている私と、その状況を楽しんでいる自分。

嬉しいでも哀しい。

これは夢の中だとわかったうえで、僅かな幸せな時間が長引く事を願いながら………


でも目を覚ましてしまう。


「殿下、お目覚めでございますか?」


ライオネスが部屋に入り朝の準備を手伝ってくれる。

私の様子を見て、


「今日はいい夢をご覧なられたようですね」


優しくほほ笑んだ顔に、私もほほ笑み返し部屋を後にする。

下に降りれば伴った騎士達の歓声が聞こえてくる。


「フフッ、朝食も最高みたいだな」


「ええ、ねぼすけの騎士さえも今日は早々と起きだし、テーブルについた様です。朝食が美味しいと自然に早起きになるみたいですね(笑)」


私が部屋に入ると「早く食わせろ」とばかりに血走った目を向ける騎士達。

鬼気迫る顔にひきつらせ、「では食べようか」と一言声をかけ椅子に座った。

騎士達は私がイスに座ると同時に席を立ち、思い思いに料理を取りに向かう。


「ライオネス、アレはなんだ?自分で取りに行くのか?」


「その様です。なんでもバイキングというモノで、好きな料理を自分で選び盛り付け食べるそうです。通常だと野菜を嫌い成り立たちませんが、この領では皆野菜を率先して取りに行くので大丈夫なのでしょう。」


確かに肉ばかり盛りそうな騎士達が、生の野菜を山盛りに取りソースを振りかけている。

野菜の種類も豊富にあり、従業員に聞いて好みのソースを選んでいる様だ。

どのテーブルにも、まだ肉やパンが乗っていないから面白い。


「楽しそうだな。私も選ぶとしよう♪」


「フフフ殿下、実は裏ワザを従業員に教えて頂きました。どうぞ私に付いて来て下さい」


とても楽し気におどけるライオネス。

その姿はどこか滑稽で大人げない。

従業員に選んで貰ったパンをナイフで切り込みを入れ、うっすらと焼いて貰う。

そしてテーブルの料理を確認し吟味している様だ。


”そこまで真剣な眼差しをする必要があるのかな?”


私はそんなライオネスをアホの子の様にボーと眺める。

従業員がライオネスに香ばしく焼いたパンを渡す。

顔を綻ばせテーブルに目を向ける。

ライオネスは、野菜をパンに挟みソースを少しかけ、その上にベーコンとチーズを挟む。

出来上がったサンドしたパンを眺めて、とても満足気に笑った。


「いかかですか殿下?自分好みを組み合わせ一つの料理にするのです。初めてにしてはなかなかの出来だと思いませんか?」


確かに凄く旨そうなサンドだ。

だが自分の好みと違うので、頷きながらもテーブルの料理を見る。

その中には昨日食べたポテトサラダもあった。


”よし、ポテサラを中心に考えるぞ。”


従業員に合うパンを選んで貰い、レタスに薄切りのトマト、その上にポテサラと燻製されたハムを配置してパンを上に乗せ挟む。

従業員がそれを預かり、軽く押さえ包丁を入れ皿に盛り付けた。

その見た目も美味しそうで、とても食べるのが楽しみだ。

私は渾身の作品をライオネスに見せる。

それを見たライオネスも嬉しそうに、互いのサンドを半分交換し合う。

騎士達も私達の料理を見て立ち上がり、パンと肉や卵など料理関係に向かった。

常日頃マナーに気を配る騎士達、だがその姿はどこにもなかった。



「朝からなかなか濃厚な時間だったな……… 」


あれからも盛況な賑わいとなった。

皆こだわりがあり、様々なサンドがお目見えする事となる。

中にはあり得ない組み合わせの物もあり、それを見た同僚達に「コイツに料理は無理だ」と認識されていた。


「騎士達には遠征があり、各自当番制で料理を作りますからね。ある意味死活問題です。」


ありとあらゆるものを乗せられたサンド。

切るのも大変だが食べるのはもっと大変そうで、パンがソースでベチョベチョだった。


「欲張ってはダメなんですよ。なんでも適度な選択をしなくてはなりませんね」


料理の食材選択と人生の岐路の選択は、似ているのかもしれない。

天にも昇るほど幸せになるか、胸糞最悪な気分になるか。


”食ってホントに大事だよな。”


実際この領から王都に戻ることができるか不安だ。

今更クソ不味な野菜は食べれない。


****************



騎士達は温泉派とアスレチック派に分かれた。

アスレチックとは、子供が遊ぶ公園とは違う大人が遊ぶ遊具の事らしい。


「昨日温泉で聞いた所、なかなかスリリングで面白楽しいそうですよ♪」


とてもワクワクとして、この領の者の様に短縮語を使って言っていた。

皆と別れて、ライオネスと護衛騎士3人で公園へ向かう。

その公園は”水の御社”というらしく、清らかな水が滾々と湧きだしている。

池の近くには立派なリンゴの木があり、瑞々しいリンゴが子供達の腹の足しになっている。


「殿下、ホントに一人でそちらの公園で遊ばれるのですか?」


私は金髪の髪を茶色に変え、商人の息子が着る様な格好をしている。

昨日見た中にもこの様な格好の子供が何人かいた。


「もちろんだ。大人同伴なんか恥ずかしいだろう。その間そっちの用事を済ませればいい」


私はそう言って公園に向かって走る。

考えて見れば前世でも、私は子供らしい遊びをしなかった。

それに貴賎関係なく遊んだ記憶もない。


公園に着くといろんな遊具で遊んでみるが、縄を登るモノは力足らずで登れない。

ブランコという物は漕ぎ方のコツが掴めず、揺れが続かず止まる。

唯一問題なく楽しめたのは、シーソーとジャングルジムだった。

そうやって遊んでいると、子供達とも仲良くなり話を聞く事が出来る。

この領に住んでいる子供達の話を聞くと、フィーは縄を登れるらしい。

他にも泳いだり魚釣りをしたりと、活発に動き遊んでいる様だった。


「とにかくうちのお姫様は変わってるけど可愛いよ。」


「変わっているけど楽しいから、僕ら大好きなんだ」


領の皆に受け入れられ、髪を短くしている女の子もいるそうだ。

前世のフィーとは比べ物もない程のバイタリティーと発想力。


”ホントにフィーは凄いな。領の民に愛されている”


そんなフィーが誇らしくそして羨ましかった。

私も負けられないと思い、同時に脅かす予定のモノの確認をする事にした。



****************



ライオネスと護衛騎士が戻って来ると、私は港へ行きたいと伝える。


「可能性があるのですか?」


「わからないけれど、用心した方がいいでしょう。それに交渉の材料にならないかな?」


ライオネスも考え込んでる。

馬車の中はとても静かだ。お互いいろんな事を考えている。

港に着くと昼時なので広場で食事をとろうと、屋台でいろいろ見繕う。

ある一角の屋台に白い髪の綺麗な少年が寝ている。

おかげで人だかりができ、店主が苦笑しながら客を捌いている。


「殿下、アレは旨い物です。絶対です。」


護衛騎士は屋台を見ながら確信めいて言う。

ライオネスも種類を見ながら、注文する様だ。

持ち帰ったモノを見ると、焼き色のついた団子の様なモノ。


「殿下、この中に肉が入っています」


物を受け取り眺めながら恐る恐る食べると、独特な風味の肉と野菜が混ざったモノが現れた。

他にもいろんな味の物があり食べ応えがある。

店の方を見ると白い少年はいつの間にか消えていた。


「いつの間にかいない……… 」


「あの白い少年でしたら商品を受け取り、どこかへ行かれましたよ」


そう言って黙々と食べているライオネス。

それは護衛騎士も同じで何個目だろう?

そんな二人を眺めているとざわめきが聞こえる。

何だろうと視線を移して見ると………



遠めに見えたのはフィーだった。

髪が凄く短くほっそりとしている。

だが不健康な印象はなく、屈託ない笑顔を見せ頬がフクフクとして可愛らしい。

”ああ、フィーがいる!”

ずっと逢いたいと思い続けたフィーがいた。

周りには見目の良い男達が、フィーをを守る様にいた。

その者達に無邪気に笑顔を振り撒いている。

それを遠目で見るしかできない。


”無邪気に近づいて話しかけてみようか……”


フィーがもし前世を知らなければ、ここで縁が出来る。

でも知っていたら………


”交渉する事が出来なくなる”


近づきたい思いに蓋をしてグッと我慢する。

でも目は逸らせず、フィーを見続けた。

遠くなるフィーの姿。

でもその姿は凄く元気で明るく朗らかで、前世のフィーと余りにも違う。

如何に前世の王宮でフィーに無体をしていたかよく判る。

もちろんその中に私も存在し、中心人物と言ってもいいだろう。

もう目にフィーは映らない。


「殿下……… 」


ライオネスが哀し気な目を私に向けていた。

私はそんなライオネスに笑い言った。


「フィーがとても可愛い笑顔を見せていたね。私は一度も見た事がないんだ。とても無邪気で明るい姿を見られた。それだけで私は嬉しいんだ。(こころ)が満たされるんだ。それだけで私は………」


私はあふれる涙で風景が歪む。

なんて残酷で満ち足りた世界なのだろう。

それが今世私が生きる世界だった。



心を落ち着かせ当初の目的地へ行く。

前世この港の香辛料に混ざった麻薬、それも原因の一端だった。

母上は偽造の王印を使っている。

まさかこの頃からとは思わないけれど確認する必要があった。


「ライオネス、鑑定の魔法を使える者いない?」


「騎士に一応連れて来ております。用心の為に……… 」


前世鑑定でもわからない程微量入りだった麻薬混じりの香辛料。

ただ一種類の麻薬と認識して鑑定をすれば、照準を当てられ精度が上がりわかる事があった。

たぶんブレンドされた香辛料だとは思うんだけど………

その区画に着くと香辛料を扱う店が沢山あるのが見え途方に暮れる。

店の中には沢山の香辛料とブレンドされたモノがあり、そこからあるかないかわからないモノを探すのは不可能だ。

考え込む姿の私を見て、ライオネスもあっちこっちと辺りを見回し店主に話を聞いている。

護衛騎士は鼻を抑え眉間にシワが寄って辛そうだ。


「大丈夫か?」


「申し訳ございません。実は祖父が犬の獣人だったので、鼻にキてますね」


苦笑交じりに笑い、鼻を抑える護衛騎士。

……………、試しに聞いてみる。


「ねえ、このブレンドされている種類わかる?」


私は護衛騎士に聞いてみる。


「う~ん、塩、唐辛子、オレンジの皮?それにニンニクですね。それに魚の香りがします」


”魚の香りってエビのことだな。”


試しに何種類か聞いてみると、7割程度正解していた。

この匂いが充満している中ではツラいのだろう。

5本目あたりからギブアップしている。


「殿下、騎士いじめはダメですよ。」


涙目の騎士を見て、ライオネスが呆れ顔で私に言った。



ライオネスが店主にいろいろ話を聞いていた。

最近どんな香辛料が売れるのか。

特にどんな料理が人気があり、近場のおすすめ名店は何処なのかなど………

そして………


「好調な領に最近新しくできたお店があるそうです。それも神官の出入りがあり不思議なんだとか……」


前世教会に関する記憶は余りにも少ない。

というのもそこに関わる様な仕事をした事がないからだ。それに………


「母上は教会と何か関係があったかな?」


私はライオネスを見て聞いてみる。


「寄進やバザーなど、まあいろいろと雑務があるので、それなりに関わりはあるでしょうね」


今の時点では母上との関係はよく判らないが、何故か凄く気になる。

だって禄でもない事ばかり言うからだ。

フィーを拉致するような事をしそうな者が多く、危険極まりない気がするからだ。


「フィーを魔女だ聖女だと騒いでいたよな。隠家でフィーに害悪及ぼすような店かもしれん。確認するぞ」



店に近づくと確かに神官らしき者が出入りしている。

そしてそれと別に客の出入りもあり、繁盛している様だ。


「殿下あれは巡業神官です。それにあの旅姿の者はスラム街で見た事があります」


護衛騎士が警戒する声で告げた。


「顔見知りの者か?」


「可能性はあります。何度か見かけ声をかけた事が……… 」


私はライオネスに顔を向けると、頷いて服を着崩し髪を乱して、ブラブラと歩き店に一人で向かう。

私と護衛騎士は離れた所で待機する事にする。

その間いろいろと考えを巡らす。

この領までくる間騒いでいたスラムの者達、そして巡業神官の出入り。


「巡業神官は各領地の教会に向かうんだよね」


「ええそうです。ただこの領ではここ最近教会はなくなったと聞きました。なんでもこの領のお嬢様にいろいろとされたようで……… 」


そのいろいろが問題なんだろう………

だいたい娘を魔女だ悪魔だと言われたら頭にも来る。

そして有用だと知ると聖女だと言って誘拐まがいな事をすればな。


「教会もないのに何でこの領に、それも香辛料の店に出入りしているのやら……… 」


「怪しいですね。それもスラムの者達までいるとは変ですね」


公爵達がいる事も先程人混みの遠目で確認している。

多分今日その辺を聞いた可能性はある。

前世では普通に教会があり分かり辛いだろうが、今世は目立つ状態になっている。


”多分私達の存在も気づいているだろう。ライオネスが戻ったら明日辺りが妥当だろう”


公爵家との交渉をする材料はコレがいいだろう。

色々調べられる前にこちらから提供し協力体制を取り付けた方がいい。


”じゃないと我々王宮の策略と勘違いされたら、即建国まっしぐらだ”


あの店を始めから無かった事にすればいいのだ。

そして建国手続きをすれば全ては闇の中。

でもそうなると偽王印の糸口も消え、国としても破滅する。


ゆっくりする時間はそう余り残されていなかった。








読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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