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前前世4 【 ドリアス視点 】

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 


 まず起こった事は使者が勝手に婚約の取り付けに向かった事だろう。

 王印がある事からこちらから何も言えず、どうする事も出来ない。

 信用に関わる問題と、権威の低下にも繋がる。

 とにかく犯人を捜す事を優先した。

 その間公爵の対応は棚上げになり、もし婚約出来るならという思惑もあった。

 だがあちらからの返答はNO。

 フィーは領にとって欠かせない人材だという。

 それに対し大いに文句を言ったのは、もちろん母上だ。

 王家を蔑ろにしている、それなりの制裁をしたほうがいいと……

 だが王家を蔑ろにし、馬鹿にしているのは母上だと知っている。

 自分の欲の為に、王家の権威を自分本位に使おうとする。


「貴女ヘンな事を仰るのね。婚約の返事如きで、なぜそんな事をする必要があるの?それが許されるほど、あちらはこちらに貢献しているのよ。貴女はそれが言えるほど、何かされているかしら?フフ… 幼女以下よね(笑)」


 王太后の辛辣な皮肉に、顔を真っ赤にする母上。

 王太后の後ろには、静かに実姉が侍女として佇んでいる。

 王妃の執務は、現在滞っている状態だ。


 ”痛烈だな。さすがおばあ様。”


 母上は怒り心頭のまま席を立ち部屋を出て行く。

 王太后も静かに立ち、笑って部屋を出て行った。

 父上達はそれを確認し、王印を勝手に使える状況について考える。

 王印は指輪で、普段は指に嵌めた状態だ。

 つまり使える状況とは、意識がない時か外れている指輪を持ち去るしかない。


「最近指輪を外した記憶がないな、意識をなくすほど寝た記憶もない。」


「陛下、よくお考え下さい。ホントにございませんか?」


 ジッと考えている父上と同じように、前世を思い出しながら私は父上の周りにいる女性関係を考える。

 母上と関わりのありそうな人物はいなかっただろうか?


「最近遊びでその場限りの女性など、ホントにいないのですか!」


「ライオネス!子供のいる前でなんて事を言うのだ!!」


 前世こんな気安げな二人の様子を見た事がなかった。

 なんとなく気を許されている様で嬉しく思う。


「父上、最近深寝した事はございませんか?」


「どうだろうな?基本私が寝ている時も影がついているはずだが……… 」


「それじゃあ、やはり指輪を外した時しか使えないじゃないですか?」


「イヤ、外した記憶はないな。」


 見事な手詰まり状態……… どうしたらいいの?



 ****************



 そうして時間ばかり過ぎて、フィーの領はどんどん様変わりする。

 例えば作物が凄い事になった。

 成長が速く、たわわに実り、丈夫に育つ。

 更に味も格段に良く、生でそのまま食べる事が出来る。

 隠密で潜り込んでいるメイドなど、そのまま移住するとあちらに寝返る素振りをする始末。

 これにはさすがのライオネスも慌て何とか事を収めたが、いつ寝返ってもおかしくない。


「父上、婚約者周辺も怪しい動きをしているのですよね?」


「そうだ。公爵から抗議の手紙が来たよ。だが、それよりも不可思議な状況が起きている」


 父上が口を引き締めて、ライオネスをチラリと見る。


「憶測の域ではありますが、フィラメント様に危害を加える様子がないので大丈夫と思いますよ。」


 フィーに暗殺者を差し向けた婚約者の一族。

 しかしその暗殺者達は、いつの間にか消えている。

 そしてフィーが作る裏山の土に、不思議な状況が起こる。

 だがその土を使う事で、味がよくなり、発育も良くなる魔法のようなモノ。

 フィーを起点に、周りでいろいろな事が起こっているそうだ。


「土の件ですが、うちの影にも試しにやらせてみましたが、あの様に魔素を含む土は出来ません。ですが普通の土よりは確かに発育が良く、味も多少マシな物が出来る様です。フィラメント様の話によれば、畜産と同じ様に土に餌を与える事で、食物の味や発育が良くなると考えたとの事。聞けばなるほどと納得します。子供ならではの発想で、素晴らしいです」


「それ以外にもあるだろう……… 」


「全くこの感動がわかりませんか?とにかく信じられない事に、フィラメント様の土遊び場がワームの住処になりました。フィラメント様は知らず知らずのうちに餌をお与えになり、毎日つつがなくお過ごしでございます。困った事ですね。公爵様はまだ知らない様です。」


 フィーはワームの住処の上を歩き回り、土を掘り起こしているらしい。

 唖然とし眩暈が起きそうになる。


「ドリアス、今そんな状況だ。暗殺者は忽然と消えるし、ワームの存在もある。だから変に介入する事も出来ない。とにかく令嬢は平穏に過ごしている。」


 ヤレヤレという風に父上は頭を振り、無理やり納得している様だ。

 するとどこからともなく影の者の一人が現れた。


「お伝えします。やはりワームが動いておりました。その様子から知能を有している様なので、試しにお願いをした所、暗殺者を数名確保して頂きました。そして尋問すると婚約者一族の依頼である事がわかりました。」


 その話を聞いて、違った意味でまた眩暈が起きそうになる。


「ハハ……… 魔物と連携をとる日が来るとは思わなかった」


「そうですね。アナタも良くやりました。報酬を差し上げましょう」


 父上とライオネスの黄昏る姿に、いろいろと感じるモノがあった。

 

 そして偶然にも、不明だった王印の謎が解かれる。

 捕縛した暗殺者の中に関わった者がいたからだ。

 王印の型を取った粘土みたいな物を使い偽造したという。

 もちろん型を取るには、王印が間近になければ無理。

 するとその写しを取った者は誰か自ずとわかる。


「どう考えても母上ではないですか?」


 たぶん今も懐に偽造の指輪を所持しているはずだ。

 そして見えない所でコソコソと使い悪さをしている。


「王印を偽造するなんて、とんでもない事よ!ちゃんと調べれば偽物とわかるけど、それでも王宮にその訴状を持って調べなきゃわからないわ。これは大変な事よ!王宮から離れていく程、王家への不信の度合いが高いのよ。ここ最近特にそんな感じが見受けられたから気をつけていたのに!!やってくれたわね!最悪な事態を想定した方がよさそうだわ」


 ああ、やはり母上は国の最悪を呼ぶ元凶だった。

 まだ表面化していないけど、水面下で何かが起こっている可能性がある。

 早急に対応しなければ、とんでもない事が起こりそうだ。


 ・婚約者とその一族に対応する。

 婚約は理由を述べ、当然破棄とした。

 するとその数日後、フィーの領地へ襲撃。

 もちろんワーム()の撃退で早々に終結した。


 その様な事を起こせば当然処罰される。

 今までおもねっていた貴族達。

 関係ないとばかりに、嫌味と批判的発言をして馬鹿みたいだ。

 とにかくそちら関係は処理を早急に済ませる。



 ****************



 その後もフィーの領地は、更に変化しとんでもない事になっていく。

 使者となって行った者らの話では、フィーはワーム5匹と遊んでいたそうだ。


 ”ワームが5匹って……… ウソだろ?!”


 災害級の魔物を使役したフィー。

 領地では”豊潤の姫巫女”と言われているらしい。

 だが話はそこで終わらないのが、この世界のフィーだ。

 使役する魔物がどんどん増えていく。


 ・サラマンダー

 ・フェンリル

 ・ケルピー 3体(1体は亜種)


 次々と事態は急変して行き父上達も対応に追われ、王印の対処が後回しになる。

 子供の私にできる事など何もなく、せめて母上の見張りをする毎日だ。

 その間も王宮ではフィーの領土の話題が尽きない。

 次々に起こる出来事に妬みや皮肉を言って、己の矜持を守ろうとする姿は滑稽で笑いを誘う。


 例えば馬鹿げた事を言う者達。

 フィーの領地の豊作は王立魔術団の研究成果だそうだ。

 研究結果を奪われたと言って、深く追求すると魔術の神髄なのですと煙に巻く。

 誰にも出来ない研究をする意味があるのか?

 バカバカしくて潰してしまえと思った。

 他にもフィーを研究対象にしようと平然と言う。

 教会は魔女だ、聖女だと騒ぎ、引き渡して当然と思う理由がわからない。

 己の欲に塗れ醜い者達ばかりで反吐が出そうだ。


 ”だいたいフィーを何だと思っている!”


 

 こんな腐った奴らばかり、まともな者がいるのか?

 私は余りにヒドイ王宮の状態に驚きを隠せない。

 おかしい……… まともな者が余りにも少な過ぎやしないだろうか?

 私は不安を抱え 、父上のいる執務室へ向かった。


 部屋に入ると疲れ果てた父上の姿が目に映る。

 まるで最後に見たフィーのような状態だった。

 その横にいるライオネスも同様に………


「ご飯は食べましたか?少し休憩いたしませんか?」


 私はそう言って近くにいるメイドに、お茶の用意を頼む。

 そして別のメイドには、甘味の用意をお願いする。

 甘みは疲れた身体に良いと、剣術の先生が話していたからだ。


 父上は目頭を押さえ疲れたような表情だった。

 そんな父上をライオネスは静かに見ている。

 その姿がとても不安を募らせる。

 まるで王宮を後にしたアノ時の父上の様だ。


 ”一体何が起こっているんだ……… ”


 まだ子供の私に入る情報は余りにも少ない。

 周りの噂を聞きながら、前世と照らし合わせて考える毎日だった。


「ドリアス、伝えなければならない事がある。フィラメント嬢との婚約は無理だ。今回の襲撃事件や婚約打診した王宮の者達の態度にいろいろと不快感を募らせている。それに彼女の価値は世界的にも高い。」


 スーーー……… と血が引くように目の前が暗くなる。


「………、大丈夫ですか?!」


「ご、ごめん……… どうやらかなりショックみたいだ」


 倒れそうになった私は、何とか身体を立て直す。

 今だ身体や手の震えが止まらない。

 そして目から涙が溢れ出した。


「ドリアス……… 会ってもいないのに何故そこまで………? 」


 私の様子に父上が静かに訊ねる。

 確かに今世ではまだフィーに会っていない。

 婚約は出来ない。ならせめて一目だけでも会いたい。

 質問の内容には答えず、私は自分の気持ちを話す。

 

「父上、せめて一目だけでも会いたい。どんな方なのか私は会ってみたいのです」


 今世のフィーは、前世と余りにも違い過ぎる。

 お転婆で、賑やかで、まるでビックリ箱のような人だ。

 大人しく誰にでも黙って従う、前世のフィーとはまるで違う。

 だけど人間的で生き生きとしているフィー。

 そんなフィーの姿を、一目見たいと思った。


 父上は困った表情をしながらも、ライオネスと一緒にフィーの領地へ向かう事を許してくれた。

 実際向かう理由もあった。

 これまでこちら側の不手際と対応に対する謝罪だ。


 フィー達公爵家を中心とした周辺の領地が、国から離脱するという動きが水面下である様だ。

 状況的にも最悪で、後ろ盾をしようという国も幾つか存在するらしい。

 つまり、いつでも建国できるような状態だという事だ。


 なぜこんな事になっているんだ?!

 前世と余りにも違う状況に戸惑いながら、私は王都を旅立つ。


 ただ旅立つ準備をしている数日に、母上が偽造王印を使う所を確認した。

 その手紙はどうする事も出来ないが、届けられる所がちょうど向かうフィーの領地の為その時確認する事にした。

 もちろんその旨は、フィーの領地へ本物の王印で手紙で知らせた。



 母上は王印をまたどこかに隠す。

 どうやら母上は特殊な魔術を使い、上手に隠している。


 ”一筋縄じゃ行かないって事か……… ”


 母上は悪事以外にもちゃんと特技があった様だ。

 この件は父上にお願いする事となる。




読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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