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前々世1 【 ドリアス視点 】

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 フィーが隣で寝ている。

 いつも通りの朝だった。

 だが今日はなぜか胸騒ぎがする。

 久しぶりにフィーの寝顔を見る。

 何時ぶりだろうか?何だかんだと一年経っているかもしれない。

 昨夜フィーがいる執務室に向かった。

 するとフィーは机の上で寝ていた。

 その顔はとても疲れていて、目の下に濃い隈が出来上がっている。

 私は起こさない様にソッと身体を抱えベット横たえ隣で寝る。

 

 ”いつも苦労をかけてすまない。私がもう少し強くあればよかったのだが……… ”


 父上が離宮に行ってから、色々と可笑しなことが続いている。

 例えばフィーに会えなくなった事だ。

 周りの話では、のんびりしている、遊びまわっている、仕事の邪魔をしていると、とにかくわけのわからない噂ばかりが飛び交うのだ。

 具体的に見たのか、どこで遊んだのかと聞けば、その実態は存在しない。

 実際フィーの疲れ果てている姿を見れば、全て嘘ばかりという事は一目瞭然なのだ。

 書類は手書きな分、見れば仕事をしているのがフィーだとわかるのに、すぐバレる馬鹿な噂の意味がわからならない。

 そしてほぼすべての仕事にフィーが関わっている気がして訝しんだ。

 探して見れば案の定フィーは疲れ果てボロボロ状態。

 ご飯だってまともに食べた形跡がない。

 まず傍仕えの侍女がまともな者ではなかった。

 部屋はホコリがたち、私が与えた宝石類が行方不明。

 衣装を見ても新しい物が見当たらず、正妃とは名ばかりな状況だった。

 着ている服だって着古したモノ。コレはどういう事だ?

 フィーの予算を一体誰が使っている?

 無駄遣いをする正妃として言われるフィーの現状は、余りにもかけ離れていて不安が募る。

 今まで私は周りの話を真摯に受け止め対応する事に努めた。

 私にはいろいろと()()()()()()分、周りに気を使うのだ。

 だからフィーについての話もその様に受け止め、フィーに改めて貰おうと思った。

 だが現実はどうだ?幻想から覚めたような気分だ。


 幼い頃、()()の言葉をかけたくても、それは()()()()と母に言われた。

 甘やかしたらつけ上がり、大変で面倒な事になるからと言われた。

 でも逆に側室や側近には労い、時には甘やかす事が必要だと………

 私は不思議に思いどうしてか?聞くと、正妃は自分の一部だと言う。

 だから言う必要もないし気遣う必要もないと言う。

 実際身体を気遣うのは臣下の務めであり、自分自身が気付く前に気づかれる事が多い。

 だから晩餐の時、私は父上に聞いてみたのだ。

 そんな話をする母上は正妃で、だから父上も母上に気を使わないのかと?


「身体の一部と同じと母上が言っていました。父上も母上を気遣う必要がなく、甘やかす事もないという事ですが、父上もその様に対応しているのですか? 」


 それを聞いた父上は、静かに母上をチラリと見て「なるほどな」と短く呟き席を立つ。

 「今までは忙しくても家族の時間だからと気遣っていたのだが、必要がない様だ。そういった意味では私は失格のようだな。これからはその様に対応しよう。それが正しいあり方なのだろう」

 母上は顔色を青くして、翻し出て行く父上の後を慌てて追う様に出て行った。


「殿下、今の話はする必要がございましたか?建前というモノの話ではないのですか?」


 筆頭執事のライオネスが静かにそう告げるが、言っている意味がわからない。


「母上が言った事を伝えただけではないか。何を持って建前というのだ。大人の言い分を子供にも理解する様に教育する場の話だ。その教育で言った話が建前では、建前もない現実は一体何なのだ?子供の私がわかる訳がない。何が正しくて何が悪いのか、全く訳がわからなくなる」


「申し訳ございません。確かに7歳の殿下に求める事ではございませんでした。今回の事は王妃自身の身から出た錆でございます。出来ましたらどのような事を話されたのか、教えていただけないでしょうか?」


 だからライオネスに、母上が言った話を私は事細かに言い聞かせた。

 それを聞いたライオネスは眉間にシワを寄せ静かにため息をつくと言った。


「全く持って意味のない話でございます。殿下が正しいと思う事を行ってくださいませ。」


 そう言って頭を下げ近くのメイドに後を頼むライオネス。

 気づけば部屋には私と数名のメイドが残るのみとなっていた。

 それ以降両親揃って食事をする事もなくなり、私は一人で静かに食事をする事になったのだ。

 ライオネスとも、あれから会う事もなくなった。

 常に父上の傍にいる側近だからだ。

 つまりアレ以降父上とは会う事もなく、陛下の父上に時々会う。

 だからライオネスの言った言葉の意味を、詳しく聞く事が出来ずに忘れてしまう。


 後に、その言葉の意味を思い至った時には何もかもが遅く、母上の二の舞を演じていた。



 その日もいつも通り何事もない日常だった。

 隣国にいつものメンバー側室と側近と共に渡り、通商条約を結ぶのが今回の目的。


「相変わらずあの方は寝ていらっしゃるのかしら?」


「書類を読むのに時間の掛かる方なので……… 」


 ホントならフィーと行きたかった、隣国との外交。

 隣国にはフィーと仲のいい公爵令嬢がいたから、久しぶりに逢わせてあげたかった。

 だが………


「あの子にはいろいろとお願い事をしているの。別にあの子じゃなくてもいいでしょ?暇をあげては楽を覚えてしますわ。私?フフフ……… 可笑しな事を言うのね?私もそろそろ王宮を離れるわ。孫もいる事だし、離宮に行くつもりよ。だからよろしくて?」


 私の身体の一部と同じだと言われたフィー。

 だが実際はどうだ?最近ではフィーと会う事もなくなった。

 私のと言うよりも母上、それともこの王宮の一部の様な扱いをしていると思う。

 一部の大臣から私の正妃の扱いについて、苦言を呈する者達もいる。

 逆に役立たずの正妃だと馬鹿にする者達もいる。

 一体どれがホントの事なのか?

 最近の私はフィーと一緒にいる事も、関わる事もほぼない。

 ホントは昨夜フィーに問いただしたかった。

 でも久しぶりに逢ったフィーは、起こす事を躊躇うほどに、痩せ細り疲れ果てていた。

 このままではフィーが病気になってしまう。

 医師にフィーの状態を診て貰い休息が必要だと言われる。

 やはりフィーの悪い噂話はウソだとわかる。

 じゃなければあんな姿になっている事の説明がつかない。


「いつもいつも王宮で何をしているのかしら?優雅にお茶でもして飲んで過ごしているのね。私なんか子供もいて忙しいのに外交もしてるのよ」


「全くですよ。役立たずな正妃です。子も産めず、サインしかできないのですか」


「殿下、いつまであの方を正妃にしてらっしゃるのですか?」


 ”ホント好き勝手な物言いに、目に余る態度だ”


 その事にイラっときながらも今まで私は、そんな者の言葉を信じて同じ様に思い、彼女にヒドイ態度で接してきた。

 そしてそういう者達を諫めもせず追従したのは自分自身。


 ”今頃ゆっくり休んでいるだろうか……… ”


 母上にフィーの事をお願いをした。

 フィーの体調が思わしくないから、仕事を代わってやって欲しいと………

 だがその事が少しずつ不安になる自分がいる。

 母上はちゃんと私の言った事をやってくれるだろうか。

 母上はフィーの事を娘の様に思っていると言っていたが、ホントだろうか?


 ”フィーにお土産を買って行こう。”


 よく考えたらそういった事を、今まで一度としてしなかった自分に気づく。

 他の者達にはしていた事なのに、たった一度も彼女に対してしていないという事実。

 そして思い出す。アレから陛下としてしか会わなくなった父上との出来事。

 それと同時にライオネスが言った言葉を思い出したのだった。


「殿下が正しいと思う事を行ってくださいませ。」


 ああ………、私は今までどうだった?

 今まで自分が正しいと思った事をしてきただろうか?

 そして思い至るのだ、何もしていないのだから………


「私は何と愚かな事を?!」


 余りな事に愕然とする。

 私は何故母上の失敗を目のあたりにして、母上が言った様な事をしている?

 アレは父上が母上を見限った瞬間だったのではないか。

 だから私も必要以外関わらず、同じような人間になるのかと一線を引いた。


「いかがされました?あの方になにかありましたの?」


「確かにいつも愚かな事をしては時間を割かれる方ですねw」


 いつもの様に小馬鹿にする者達。

 何で私はこんな者達を側近にし、今まで信じていたのだろうか。

 今までは黙ってほほ笑んで煙に巻いていたが、私はそれを今後もしたいのか?


「煩い!この条約はフィーが考えたモノだ。フィーは愚かではない。凄いのだ!偉そうにしているが、お前達は何をしていた?昨夜のフィーはボロボロな状態で寝込んでいた。いつも仕事をしているではないか!」


 私はフィーを守らなければならなかったのだ。

 何故今までそれをせず、皆と同じように放置していたんだ。

 皆の言う事鵜吞みにし、フィーの姿を碌に見もしなかった。


「正妃がどの様な話をされたかわかりませんが、すごく遺憾です!」


「殿下は、正妃の話を信じたのですか?」


「どちらにしろ正妃が凄いとは面白い。どうしてそう思われるのか?」


 何処までも愚かで嘘つきな奴ら、厚顔無恥とはまさにこの事だ。


「それがホントかどうかはわかる。フィーは今病気だ。とにかくフィーには休息が必要だ。」


 私がそう言うと、側室は呆れた顔つきで言った。


「病気?だったとしても休むことはできないはずよ。だって今日から皇后は離宮に行かれるはずよ。王宮の仕事は全てあの人が関わるしかないですわ」


 嘲り交じりに言うその言葉に私は愕然とする。

 そんな側室の口を慌てて塞ごうとする側近達。

 つまり城の皆は知っていた。

 フィーの今の状況を………


「どういう事だ!何故王宮全ての仕事がフィーに?仕事は書類を読んでサインするだけと言っていたが、やっぱり違うではないか?!」


 彼らが仕方なしに話す真実を聞くと、私はフィーが心配でたまらなくなる。

 特にひどい扱いをしていたのは母上だと言うのだから。

 また私の彼女への扱いや態度のせいで、王妃としての尊厳もなくただお飾りと思われ、使い勝手のいい者扱いになっているという。

 それこそ下位のメイドさえ雑に扱っている始末。


「でも仕方ないじゃない。貴方は周りに気にかけるのに、あの人には何もないんだもの。どうでもいいと思うわ。だってそうなんでしょう?もう世継ぎもいるから必要ない人よ」


「そうです。代わりになる者はたくさんいます。次の陛下は殿下です。捨ておいてもいいのでは?」


 どういうつもりだ?そんな気持ちなど一切ない!

 コイツ等はフィーに対する私の気持ちを全く理解していないのだ。


「フィーをどうでもいいと思っていない。彼女は私の正妃だ。どんな事があろうとも絶対に変える事はない。彼女は私の半身だ。」


 私が皆に訴える様に言うと、理解できないと驚愕した顔をする。


「殿下、貴方は何を言ってらっしゃるの?!」


「半身などと!まるで唯一無二の存在の様ではないですか!」


「殿下、どういう事なのですか?その様な態度がどこにあったのです?」


「そのままの意味だ。彼女は私の大切な人だ。私の唯一守りたい者」


 私が睨み付け憤入りを抑え言うと、皆が苦虫を噛み潰したようなとても苦し気な表情で私を見る。

 ある者などとても悲し気で憐れみを感じる様な目をしていた。


「殿下、本気で言ってらっしゃるの?そのお気持ち正妃にお伝えなされました?私達は貴方様の様子でイヤイヤ結婚されたと思っていました。それこそどうでもいい存在であるかのようでしたわ」


「その気持ちお言葉にされた事ございますか?それならなぜ正妃にツラく当たられる?それこそ人の尊厳を踏みにじる様な事をよく言えましたね。それで大切な者とは、呆れ果てます。」


「誰にも殿下の気持ちを理解できないでしょう。どこに守る様な振る舞いをされた?貴方が彼女を踏みにじる姿こそ見れ、庇われるところ等見た事がございません。それこそ正妃にも伝わっていないと思います。」


 何を言っている?

 まるで私の振る舞いのせいでもあるかの様ではないか?

 私はただ母上が言っていた事をただそのままに………

 しかしその行いの不味さを、先程気づいたのだった。

 つまり全て私は間違っていたのだ。

 どうしようもない憤りと焦りでどうにかなりそうだった。

 出来ればすぐにでも取って返し今までの事を謝り、一から彼女との生活をやり直したい。


「フフッ殿下はホントに素直な方ですわね。何もかも今更ですわ。それほど思っていらっしゃるのに何も伝えず摂取するだけ。唯一守護すべき殿下は今まで何をされて?今更善人ぶるのも大概ですわね。ふふふ」


「全くです。貴方も彼女にとっては同じ穴の狢ですよ。むしろ親玉じゃないですか」


「正妃は今どうしているのでしょうね。ホントに療養出来ているのでしょうか?」


「無理じゃなくって?彼女後ろ盾ないもの。天涯孤独の身ですわ。あの皇后が気にするかしら。」


「むしろ使い潰そうと思ってらっしゃるのでは?」


「あの方は実の姉さえ残酷に扱い、正妃の両親を脅し追い落とす。自分の罪を擦り付けその娘さえ慈悲なく使い潰す。ホント悪質で際限がないお方だからな。陛下も辟易して嫌悪されていた」


「今の王宮を離れている事は安全なんですよ。帰る頃にとんでもない事が起こっていたとしても、私は驚きませんね」


 私は何故フィーから離れココにいる?

 私は一番の敵にフィーを預けたという事実に戦慄する。

 そして同時に父上の心配もする。

 母上は父上を驚かそうと内緒で行くのだと言っていた。

 それがどんな結果をもたらすのかと思い私はゾッとしたのだった。



 公爵令嬢の嫌味をどうにか躱し宥め、どうにか交渉を終え何とか帰路に着く。

 しかし国で待っていたのは最悪としか言えない事態だった。






読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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