都会のボロアパートでホームレスだった爺さんが呟いた「タ ス ケ テ」と
ガタガタ、ギシギシ。
私は都会の片隅で死にかけていたホームレスだった。
ガタガタ、ギシギシ。
死にかけていた私は炊き出しのボランティアをしている人たちに助けられ、区画整理で取り壊されるまでとの約束でこのボロアパートに住む事を許される。
ガタガタ、ギシギシ。
チョッとした風でガタガタギシギシ言うボロアパートだが、住所を得た事で生活保護を受ける事ができるようになりストーブや炬燵で暖をとる事ができるようになった。
ガタガタ、ギシギシ。
区画整理も市の予算の関係で進まず、あと10年か20年は取り壊しに着手できないだろうと聞かされている。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
それなのに、都心にゾンビが現れたと思ったら瞬く間に周辺にゾンビの感染が広がり、ボロアパートの近くにもゾンビが現れ逃げ遅れた人達を襲いゾンビの数を増やす。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
このゾンビども、音に敏感でチョッとした物音に反応し群れ集まって来る。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
そう、ボロアパートの周辺を徘徊していたゾンビどもが風でガタガタギシギシ言うボロアパートの音に引き寄せられ、ボロアパートの取り壊しを行っているのだ。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
このままではボロアパートの倒壊に巻き込まれて圧死するかゾンビの餌となってしまう。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
叫んで助けを求めたい、だけど、叫んだら、更に多数のゾンビを引き寄せてしまう。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキ。
だから私は小さく呟いた。
「タ ス ケ テ」と。
ガタガタ、ギシギシ、パリーン、ガシャーン、バキバキバキバキバキ、ガラガラガラ、ガシャーン!