非日常の訪れ
ふと俺の視界に黒い影が走った・・・その瞬間ものすごい勢いで俺は玄関に駆け込む。あるものを探していた・・・・「あったあった!ゴキゲット」これを手にした俺に敵などない。
自信と緊張に満ち溢れリビングに戻る。「・・・いない!」ゴキあるあるの忍法隙間隠れ。こうなったら見つけ出すまで寝れるわけがない。噂ではあるが、ゴキブリは寝ている人の口に入ることがあるらしい。
都市伝説のようだが信じちゃう「だって男の子だもんっ・・」まずテレビの裏を恐る恐る覗く、ここにはいないようだ。次はソファの裏、その次は・・・と思い当たる場所を除いたが見つからない。
眠気も限界まで来て集中力も切れてきた。ウトウトして顔を上に向け寝に入ろうとした瞬間だった。なにか黒いものが徐々にまるで大粒の雪のように、そうしんしんと降ってきた。「なんだ?」
そう思い眼を凝らして見ていた。だんだんとピントが合ってくる。俺が認知した時には遅かった。「あっ!」と大きな声が出たと同時に、その黒い雪は俺の口の中に入った。
「俺ねてねぇのに口にかよ・・・」そんなことを考えていた。しかし驚くほど気持ち悪さは無かった。むしろいつもより体が軽くなぜか気持ちよくなっていく。「これは夢か・・・」そう思っていると。
あたりが真っ暗になった。しばらくすると声が聞こえてきた「しっかりしてください。だいじょうぶですか!」周りはとても慌ただしく何やらサイレンも聞こえてくる。
理解が追い付かない、だが救急車に乗せられたのは確かだ。「俺の体に何かあったのだろうか・・・、しかも両親まで同乗している・・・」はっきりとは聞こえないが母は泣きながらなにか救急隊員と
話をしている。そこでやっと気づいた「俺、死ぬのか・・・?」緊急治療室に運ばれたが俺の体は全く動かず意識だけが残っていた。そしてかすかに聞こえる心肺停止のピーという音。俺は死んだ。
医師と母が話しているのが見えた。医師が話し始めると母の顔色は一変した。号泣から一変し大爆笑をはじめたのだ。なぜなら、俺の死因はゴキブリが口に入ったことによる、ショック死だったからだ。
「それにしても母ちゃん、あなたの息子死んでるんだよ?いくら死因が面白いからって笑うかい?」そんな突込みをしながら俺の人生は幕を閉じた。
と思っていた。
・・・・なぜか意識がある。光は感じない。でも視界はとても低いところにあるのはわかる。声も出ない。まったく状況がつかめない。
とりあえず、動いてみる。自分が地を這っているような感覚だった。「人間じゃないみたいだ。」そう思った。とりあえず町へ出てみようそう思い歩き続けた。恐ろしいほど進むのが遅い。
やがて光が見えてきた。残りの力を振り絞り光へと進んだ。人の姿がみえた。近づいていくと俺と目が合った。「ど、どうも・・・」そう話しかけてみた。彼は顔が真っ青になり叫び声をあげた。
まるでこの世の終わりかのように。そして続けて言った「しゃ、しゃべってる。」よくわからないが俺は聞いてみることにした「俺どんな姿してるの?」彼は驚きながら恐る恐る話し始めた
「ほ、ほんとのこと言ってもいいの?」何度も確認してきた。何をもったいぶっているのかと思ったが早く知りたいので「うんうん。早くしてくれ」俺がそう答えると、彼は答えた
「・・・・ご、ゴキ・・・・ブ・・・リ」聞き取れなかったので聞き返す。「ゴ、ゴキブリですよっ!!」あたりに沈黙がはしる。俺の思考も止まる。「ん?なんだって?」
しっかりと聞こえたはずなのに。聞こえていない。というより聞こえたくない。「俺はゴキブリなのか?」そう聞き返すと「は、はい。」そう答えた。
ゴキブリと言われれば這っている理由もよくわかる。そしてこんなに視界が低いことも納得がいく。しかし認めたくない俺「鏡をみせてくれ。」そう頼むと鏡を持ってきてくれた。
好きな子に告白する以上の緊張が俺の体にはしる。鏡に反射した光が一瞬目をくらませ、徐々に見えてくる一匹のゴキブリの姿。長い触覚にあの特有の見た目。
色々言い訳は考えたがそれにもつかれ俺はゴキブリであることを認めた。
ここから俺(G)の二度目の人生が始まることになる・・・・