ねころいど
「俺は自由をこよなく愛する人間です」
はいはい門限はよる七時
トリックは実に簡単で
限られた時間の中でできるだけ遊ぶこと
そういう枠にはめ込まなけりゃ実感できないんだ
やつらの言う自由ってやつは
ああ、自発的に家に帰って家族サービスという奉仕活動を
自由意思によって行っているのだ、なんて
言い出した日には最悪もこの上ない
それが「自由」だって
つまり自分からがんじがらめになる自由さ
他人の言いなりになる自由
自分を幸せだと思い込む自由
自分から洗脳されにいく自由
猫が猫として生きるのを糾弾するやつはいない
だが人が人として生きることはとたんに罪だと言うのだ
生き物を殺して食べる
「かわいそう!」
必要なだけ充分に眠る
「怠けるな!」
じぶんの意見を主張する
「わがままを言うな!」
子孫を残そうとする
「ふしだらだ!」
そんなものが知性だと言うなら俺は獣に帰るよ
本能を捨ててしまったんじゃないのだろうか、やつらは
なにによって動いているのだろうか
ぜんまい仕掛けでも驚かないよ
俺が俺のために自由に生きることは
唾棄すべき悪徳だということになっている
トリックは実に簡単で
嫉妬、強欲、暴食、色欲、そんなものたちを
解放すると大変なことになるのはやつらの方さ
生きる目的を見つけていないから
糾弾して押さえ込む以外に対策がない
鏡を見て吠える犬のようだね
放っておけば俺は殺人をすることになっている
放っておけば俺は強盗をすることになっている
放っておけば俺は120キロオーバーまで太るし
放っておけばレイプも暴行も破壊活動も
することになっている
やつらの中では
そういうことになっている
自分の影を見ているのさ
そうでない自分をアピールするために
自分の「自由」はいい自由で
がんじがらめのささいな自由を楽しむだけ
そんな小さくて善良な人間を演出しているんだ
謙虚!謙虚!尊敬!敬愛!
他人の行動を束縛するための謙虚!
そんな美しい世界で何事も成し遂げないことを望む
いや、他者が何事も成さないことを望む
己は美しい世界の礎となることを成し遂げると思っている
美しい自己犠牲の精神さえもって
わかるかい、俺は
人を殺しても幸せにはならない
盗んでも太っても無理やり犯しても幸せにはならない
自分の幸せに寄与しないからやりたいとは思わない
嫌いなやつはすぐ殺したい、
欲しいものは盗んででも欲しい、
好きなものを好きなだけ食べて好きな子を好きなだけ犯したい
それで幸せになれるのはおまえらの方だろう?
他者のいない世界に住んでいるからさ
あれみたいだね、なんか
猫のロボットみたいだね




